《風俗恐喝被害》デリヘル利用で脅迫・恐喝され示談金を請求されたケース

弁護士 若林翔
2020年07月28日更新

風俗トラブルにおいて、脅迫・恐喝トラブルは切っても切り離せない問題といっても過言ではありません。
そこで今回のケースは、デリヘルで本番についての軽はずみな言動は行ったものの不当に示談金を請求された風俗トラブルの解決事例を紹介します。

デリヘル等の風俗店で恐喝・脅迫されてしまった場合の対処法については、以下の記事も参照してください。

リンク:デリヘルで恐喝・脅迫された場合の対処法5つを風俗弁護士が徹底解説!

デリヘルから脅迫・恐喝された経緯

栃木出身の50代後半の独身男性。

相談者は両親と実家に暮らし、真面目に仕事をし、稼いだお金は趣味や遊びにつぎ込む…
そんな安定した生活の中で、新しい刺激を欲した相談者にとってデリヘル通いは、最近の楽しみであり足繁く通っていました。

とある仕事の休憩時間、喫煙所でたまたま会った同僚から聞く話によると、最近見つけたデリヘル店に若くて可愛いキャストがいて非の打ち所がないサービスだったので「マジでオススメだから騙されたと思って行ってきな!」と。
せっかく同僚が勧めてくれたこともあり「近々行ってみるわ」と回答。

早速仕事終わりの週末、相談者は自宅からほど近い宇都宮駅周辺にあるオススメされた目的のデリヘル の受付所に足を運びました。

中に入ると、同僚に聞いていたキャストを指名。
出てきたキャストは、同僚の話に違わず若くて可愛らしい見た目で相談者も気に入りました。

サービス中、盛り上がった相談者はキャストに対して冗談気味に「本番をしてもいい?」と本番行為するフリをしつつ確認。
するとキャストが嫌がったので、スッパリ諦めて通常どおりのサービスを受けてプレイを終えました。

サービス終了後帰ろうとすると、お店の男性スタッフが部屋にいきなり押しかけてきて
「本番行為をするよう脅迫しただろ!」
怒鳴るように言われ、半ば強引に事務所へ連れて行かれました。

事務所ではまず、免許証、保険証、名刺の提示を要求され、当然断れる雰囲気でもなかったので、しぶしぶ責任者の携帯にて撮影されることに
その後責任者から「お店のルールに反したので代理人を立てて問題にするか、なんとしてでも罰金30万円払え。無理なら家族や会社に連絡して今回の件をバラして金を持ってこさせるぞ!」と脅迫。

相談者は家族には連絡したくないが、お金を持ち合わせていない旨を伝えると「じゃあ近くのコンビニにATMがあるから引き出してこい」と催促されました。

個人情報が控えられているので家族バレによるトラブルをなんとしてでも避けたい一心でコンビニに向かい、ATMで30万円を引き出し、その場で渡しました。

すると責任者は携帯を操作し、「控えていた免許証と保険証の写真は消しといたから、これ以上問題にするんじゃねえぞ」と言い放ち、相談者はようやく開放されることに。

翌日、冷静になって考えると、責任者は消した旨を言っていただけで実際に消したか確認していなかったことに気づきました。
また仮に消していたとしても、復元しようと思えばできるんじゃないかと。
というか、そもそも示談書等の書面でのやり取りもない以上、追加でさらに何か請求されることもあるんじゃないかなどの不安が膨らんできました。

そこでインターネットで風俗トラブルにて多岐にわたる解決事例を記載していた当事務所のHPを見つけ相談に来られました。

恐喝トラブルにおけるリスク確認と解決案提示

まず弁護士は相手方店舗のHPを確認。
禁止事項の中には“本番行為及び本番行為を持ちかける行為の禁止”との項目があった一方、罰金や違約金などの項目はなし。

それゆえ、たしかに相談者の言動は禁止事項に該当し得る行為であったことを説明。

しかしながら今回のケースは、本番行為をしていない以上、強制性交罪(強姦罪)などの性犯罪にはまったく該当しないことを伝えました

また、キャストに対して暴行や脅迫などを用いたわけではなく冗談気味に誘ってみただけなので、民事上の不法行為に基づく損害賠償や債務不履行に基づく損害賠償義務が生じることもありませんでした。
それゆえ、そもそも店舗側に損害が発生していないといえるケースでした。

つまり、法律的には罰金請求を拒否できた可能性も十分にあったと伝えました。

他方で、相談者から聞いた責任者の態度や「30万円払え、じゃないと家族や職場に連絡するからな」などの発言は脅迫・恐喝行為であるので返金請求も可能だと。

家族や職場に風俗店を利用したことをバラすぞと伝える行為は、人の名誉に対する害悪の告知であり、通常、人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知といえ、「脅迫」行為に該

そして、脅迫を用いて畏怖させ、もって、30万円という財物を交付させているので恐喝罪にも該当しうる行為ということです

刑法

(脅迫)
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

くわえて民法上も、脅迫による意思表示は取り消すことができるし、30万円を恐喝した行為は不法行為に該当し、支払った30万円の損害について賠償請求が可能でもあります。

民法
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

ただ、お店側は相談者の個人情報を未だに握っている可能性があり、返金請求することによって逆上・暴走し、家族・職場バレのリスクがないわけではないことも説明。

すなわち、強気で返金請求をしていくという選択肢もあるが、他方で家族・職場バレのリスクを下げるために返金請求をあえて行わず
支払った30万円を示談金とした合意書締結という選択肢もあると。
具体的には、個人情報をバラさない、これ以上の追加請求はない旨を記載した条項を盛り込んだ合意書を締結し、不安・リスクを低減する手段です。

なお現実問題として、本番行為のみならず本番行為を持ちかける行為自体も禁止事項として盛り込んでいる風俗店は多数あります。
それらを知らなかった利用者が、本気かそうでないかにかかわらず禁止事項に抵触してしまい、お店から恐喝行為が行われ罰金や違約金などの名目で多額の金銭が請求されるケースが後を絶ちません。

実際に示談金として多額の金額を恐喝し請求した風俗店経営者などが恐喝罪で逮捕されている事例もあります。
詳しい内容については下記ページをご参照ください。

関連記事:風俗トラブルで示談金要求をした風俗店経営者が恐喝罪で逮捕!?

相談者は、知らなかったとはいえキャストに対してHP上の禁止事項に該当し得る行為を行い、不安を与えてしまった事を反省。
返金請求の可能性も理解したうえで、責任者の逆上・暴走による個人情報の流出リスクなどから高齢の両親に迷惑をかける結果はなんとしてでも避けたいとのこと。

そこで、合意書による解決ができるならと、ご依頼を受けることに。

依頼者の要望に応えるべく、口外しない条項を加え、今回得た個人情報については恒久的に削除し、かつ追加請求をなくすべくいわゆる清算条項も記載したうえで、支払い済みの30万円を示談金として合意書の締結交渉を行っていくことで方針決定。

弁護士によるデリヘルの責任者との交渉

弁護士は早速お店に連絡。

まず依頼者の代理人になった旨を伝えるとともに、弁護士は窓口となるので依頼者への直接連絡は差し控えてもらうように伝え、お店の責任者より了承していただく。

責任者は「キャストに対して本番行為を行おうとしたことは事実であり、それは禁止行為に該当する。なので罰金請求を行い、支払ってもらったに過ぎない」と。

まず事実確認として、依頼者よりキャストに対して禁止事項に該当し得る本番行為を匂わせる言動があったことについては謝罪
しかしながら、キャストが拒否したことを素直に受け入れ、本番行為は行わず、もちろん強制性交罪など何ら犯罪に該当する行為は行っていないことを伝えました。

一方、「家族に連絡する」などと脅迫し罰金を徴収した行為は、恐喝罪にも該当し得る行為であると説明。

恐喝罪にも該当し得る行為と伝えたことが功を奏したのか、責任者は、依頼者側から恐喝で警察に被害届を出したりしないかを確認してきました。

こちらとしては支払い済みの30万円を示談金としたうえで、個人情報削除に同意してくれるのであれば,互いに今回のトラブルにつき被害届や告訴など刑事事件化しない条項を合意書に追加することは可能と回答。

翌日、責任者は「キャストに再度確認したところ、たしかに本番は持ちかけられたものの強引な誘い方ではなかったと判明した。そして、お店としても今回のトラブルでキャストに負担をかけたくないし、キャストもそこまで問題を大きくしたくないと言っているので、合意書による早期解決をしたい」と。

その後、責任者及びキャストと依頼者との個人情報保護の条項や刑事事件化しない条項を主とした合意書の締結に至り、1週間を経たずのスピード解決となりました。

今回の事例に即した弁護士からのコメント

今回のトラブルに関しては、依頼者の言動はお店の禁止事項に該当し得る行為だったものの罰金請求を拒否できた、事後には返金請求も可能であったケースでありました。

もっとも依頼者のご要望で、キャストへの不安を与えたことは事実であるし、また家族に迷惑をかけず穏便に解決したいとのことでしたので、支払った罰金を示談金とした合意書締結にて解決に至りました。

そして今回のトラブルのように、風俗店利用に際して軽はずみな言動はあったものの、それをダシにして罰金・違約金・示談金・解決金などの名目で不当な脅迫行為、恐喝行為が行われるケースがいくらでもあります。

実際にも、利用者に対して恐喝を行っていた風俗店が警察に取り締まられたケースについて、当事務所が対応したこともあります。
なお現実問題としては、一度お金を支払ってしまうとなかなか返金に応じてもらえないケースが多いのが実情です。

ですので、トラブルになった際には、お金を支払う前にすぐにでも弁護士か警察へ相談し介入させるのが理想といえます。

ただ状況によっては連絡させてもらえない場合や、恐喝され冷静さを失った中で選択に迫られる場合もあるでしょう。

したがって、そのような場合は連絡が可能になった段階で、すぐさま警察や弁護士へ相談すべきです。

さらに金銭をすでに支払った、又は合意書を交わし解決したなどと勘違いしたがゆえに、カモにされ次々と請求されてしまったケースもありました

具体的には、支払った示談金はキャストに対してのもので、お店に対する示談金はまだ支払っていないとか、キャストが休む・辞めることになったとしてその損害を追加で支払ってもらう必要があるとか様々な理由をつけて請求してきます。

そんな連鎖的に起こる風俗トラブルにおける脅迫・恐喝を未然に防ぐためにも、警察や弁護士へ相談することをおすすめいたします。

最後に、数多くの風俗トラブルにおける脅迫・恐喝行為を解決に導いてきた当事務所へご気軽にご相談ください。

また、風俗店勤務のドライバーがキャストとの交際を疑われて、恐喝された事例については、以下の記事をご参照ください。

リンク:風俗店からの恐喝・脅迫被害相談解決事例〜ドライバーが店から罰金400万円払えと脅された事例〜

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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