被告人質問とは?流れ・質問内容・答え方の注意点を弁護士が解説

被告人質問とは?流れ・質問内容・答え方の注意点を弁護士が解説
弁護士 若林翔
2025年11月17日更新

「被告人質問とはどのような手続きなの?」

「被告人質問ではどのようなことが聞かれるの?」

「被告人質問に臨むにあたって注意すべきポイントとは?」

刑事裁判では、被告人自身が弁護士や検察官、裁判官から直接質問を受ける「被告人質問」という手続きがあります。被告人質問は、事件の経緯や動機、反省の有無、今後の生活設計などを明らかにし、裁判所が量刑を判断する上で重要な役割を果たします。

しかし、どのような質問がされるのか、またどのように答えるべきかを理解していないと、不利な評価につながるおそれがあります。特に、反省の態度や更生計画の伝え方は判決に大きな影響を及ぼす可能性がありますので、被告人質問の流れや質問内容、答え方などをしっかりと理解しておきましょう

本記事では、

・被告人質問の流れやよくある質問内容
・被告人質問における答え方の注意点
・被告人質問での法律上のルールや弁護士のサポートの重要性

などについて詳しく解説します。

被告人質問を控えて不安を感じている方やそのご家族にとって役立つ情報をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

被告人質問とは?

刑事裁判の中でも「被告人質問」は、被告人が自らの言葉で裁判官に向き合う重要な場面です。単に事実関係を確認するだけでなく、反省の有無や再犯防止の見込みを判断するうえで大きな意味を持っています。以下では、被告人質問の意義や目的、証拠調べ・証人尋問との違いについて説明します。

被告人質問の意義・目的

被告人質問とは、刑事裁判において被告人本人が弁護士や検察官、裁判所から直接質問を受け、自らの言葉で答える手続きのことです。

刑事裁判の中心は、証拠調べや証人尋問ですが、それだけでは被告人の人となりや反省の度合い、再犯防止の見込みなどを十分に把握できない場合があります。そこで、被告人質問を通じて、事件に至る経緯や動機、犯行後の反省、今後の生活設計などが裁判官に伝えられるのです。

被告人質問は、量刑判断に大きな影響を与えることが少なくありません。たとえば、同じ罪でも「深く反省している」「被害者に謝罪している」「再犯防止の具体的な努力をしている」ことが明確になれば、刑が軽減される可能性があります。逆に、反省の態度が乏しいと判断されれば、より重い処分を受けるおそれもあります。

このように、被告人質問は単なる形式的なやり取りではなく、裁判の結論を左右し得る重要な場面といえるのです。

証拠調べや証人尋問との違い

被告人質問とよく混同されるものに「証拠調べ」や「証人尋問」があります。これらと被告人質問との違いを理解しておくことは大切です。

①証拠調べ証拠調べは、刑事裁判において検察官が証拠によって犯罪の証明を行う手続きです。証拠調べの対象となる証拠には、大きく分けて以下の3つがあります。・証拠物(物証)・証拠書類(書証)・証人(人証)被告人質問における被告人の供述も証拠となりますので、被告人質問は証拠調べに含まれているといえるでしょう。
②証人尋問証人尋問は、事件に関わった第三者が証言を行う手続きです。被害者や目撃者、専門家が出廷し、事実の裏付けや評価について証言します。
③被告人質問被告人質問は、被告人本人が自らの体験や心情を説明するものです。証人尋問のように宣誓義務が課されず、偽証罪にも問われませんが、虚偽の供述をすれば裁判官の心証を悪化させる結果につながります。

刑事裁判における被告人質問の流れ

刑事裁判における被告人質問の流れ

被告人質問は、刑事裁判の中でも証拠調べの最後の段階で行われる手続きです。つまり、裁判の最初からいきなり質問されるわけではなく、証人尋問や証拠の取り調べが一通り済んだ後に実施されます。以下では、被告人質問が行われるタイミングと、その際の質問の順番について詳しく見ていきましょう。

被告人質問が行われるタイミング

被告人質問が行われるのは、公判期日の中盤から終盤にかけてです。具体的には、証拠調べの最後に位置づけられています。

刑事裁判の流れを整理すると、冒頭手続→証拠調べ(証人尋問や書証の取り調べ)→論告求刑・弁論→判決、という順序になります。

そのため、被告人質問は、裁判官が事件全体の証拠関係を見たうえで、被告人の言葉を確認する場面であるといえます。

この段階での受け答えは、裁判官が最終的な判断を下す前の重要な材料となるため、入念な準備が欠かせません。

被告人質問の順番

被告人質問では、以下のような順番で質問を行うのが一般的です。

①弁護人からの質問

まずは弁護人が被告人に質問します。ここでは、事件の経緯や反省の態度、更生への取り組みなど、被告人に有利な事情を丁寧に引き出すことが目的です。

②検察官からの質問

続いて検察官が質問します。検察官は、被告人の供述に矛盾がないかを確認したり、反省の態度が表面的ではないかを問いただしたりすることがあります。厳しい質問が想定されるため、事前に十分な準備が必要です。

③裁判官からの質問

必要がある場合に限り、最後に裁判官が質問します。裁判官の質問は、供述の不明確な点を補うためや、量刑判断に必要な事情を確認するために行われます。

このように、被告人質問は、「弁護人→検察官→裁判官」という順番で進むのが基本です。弁護人が先に質問することで、被告人にとって話しやすい雰囲気が作られる点も特徴といえるでしょう。

被告人質問における法律上の規制(刑事訴訟法・刑事訴訟規則)

被告人質問における法律上の規制

被告人質問は、被告人の供述を通じて裁判官が事実や人間性を把握する大切な手続きです。しかし、どのような質問でも許されるわけではなく、刑事訴訟法や刑事訴訟規則に基づき、一定の規制が設けられています。以下では、被告人質問における代表的な規制事項を説明します。

被告人を威嚇・侮辱する質問の禁止

被告人に対して威圧的な態度を取ったり、人格を否定するような侮辱的な質問を行ったりすることは認められていません。被告人の安全や尊厳を守るために、裁判官はそのような質問を制止する権限を持っています。

誘導尋問の禁止

「あなたはそのとき盗むつもりで店に入ったのですね」といった答えを誘導する質問は、原則として禁止されています。被告人質問においても、事実を被告人自身の言葉で語らせることが求められるためです。

重複する質問の制限

既に答えが出ている内容について、同じ質問を繰り返すことも許されません。裁判の効率性を保つとともに、被告人や証人に不要な負担を与えないための規制です。

意見や議論を求める質問の禁止

被告人質問は、供述を引き出すためのものであり、被告人に自らの見解を迫ったり、議論を挑んだりすることは不適切です。たとえば「あなたは刑の重さについてどう思うか」といった質問は認められません。

伝聞に基づく質問の制限

証人や被告人が直接見聞きしていない事実について問いただすことは原則できません。伝聞に基づく質問は信頼性が低いため、裁判の証拠としての価値が乏しいからです。

無関係な質問の禁止

事件と無関係な事項についての質問も制限されます。例えば、被告人や証人の生活上の細かい私事で、事件と関係のないものは裁判の審理に必要性がなく、却下される可能性があります。

被告人質問でよくある質問内容

被告人質問でよくある質問内容

被告人質問では、事件の細かい経緯や心情だけでなく、反省の有無や今後の生活設計など、幅広いテーマについて問われます。裁判官は、被告人の供述から「再び罪を犯す可能性が低いか」「更生への意思があるか」を判断しようとするためです。以下では、実際の裁判でよく取り上げられる質問内容を具体的に確認しておきましょう。

事件発生に至る経緯や動機

被告人質問ではまず、「なぜ事件に至ったのか」という経緯や動機が問われます。

たとえば「どうしてそのような行動を取ったのか」「事件前にどのような状況にあったのか」といった質問です。

これは被告人の責任の程度や再犯可能性を測るうえで重要な要素になります。

犯行当時の状況(心情・行動)

事件発生時に被告人がどのような心境で行動していたのかも、よく問われる内容です。

「そのときどんな気持ちだったのか」「冷静さを欠いていなかったか」など、供述次第では減軽事由の有無に関わることがあります。

犯行後の反省・謝罪の有無

犯行後にどのような行動を取ったのかも、裁判官が重視するポイントです。

「被害者に謝罪はしたか」「どのように反省しているか」といった質問が典型です。実際に被害者へ謝罪文を送ったり、被害弁償を行ったりしていれば、その事実を具体的に説明することが有利に働きます。

今後の生活設計・更生計画

再犯防止の観点から、今後どのように生活を立て直すのかが問われます。

「仕事はどうするのか」「家族の支援は受けられるのか」「更生のためにどのような努力をするのか」など、将来の見通しを具体的に答える必要があります。漠然と「頑張ります」と答えるよりも、具体的な就労予定や支援環境を示す方が説得力を持ちます。

家族・職場の状況

最後に、被告人を取り巻く生活環境についても質問されることがあります。

「家族の協力はあるのか」「職場復帰の可能性はあるのか」といった点です。家族や勤務先からの支援体制が整っていることは、再犯防止や更生の実現可能性を示す重要な要素になります。

被告人質問での答え方の注意点

被告人質問での答え方の注意点

被告人質問では、どのように答えるかによって裁判官の心証が大きく変わることがあります。形式的に「反省しています」と述べるだけでは説得力に欠け、かえって不利に評価されることもあります。以下では、被告人質問に臨む際に意識すべき答え方のポイントを紹介します。

偽証罪の対象にはならないが正直に回答する

被告人質問は証人尋問と異なり、宣誓義務がなく、偽証罪にも問われません。

しかし、虚偽の供述をすれば裁判官の心証を悪化させ、量刑に不利に働く可能性が高いです。事実を歪めず、誠実に答える姿勢が重要です。

質問に対しては簡潔に回答する

質問に答える際は、関係のないことを長々と説明しないように注意しましょう。

冗長な説明はかえって裁判官を混乱させることがあります。聞かれた内容に的確かつ簡潔に答えることが、有利な事情を裁判官理によりよく理解してもらうポイントです。

反省の態度や更生計画は具体的に回答する

「反省しています」と述べるだけでは十分ではありません。

たとえば「保釈されてから毎日反省文を書き、被害者への謝罪文を弁護人を通じて届けました」「今後は家族の支援を受けながら更生施設でのプログラムに参加する予定です」など、具体的な行動を交えて答えることで、誠意や更生の見込みを効果的に示すことができます。

被害者感情を踏まえた言葉選びをする

被害者や遺族が公判に出席している場合も少なくありません。

そのため、「迷惑をかけました」といった表現よりも「深いご迷惑とご苦痛を与えてしまい、本当に申し訳ありません」といった丁寧で誠実な言葉を選ぶことが大切です。言葉遣いひとつで、反省の伝わり方は大きく変わります。

検察官からの質問に対して感情的にならない

検察官からは厳しい追及を受けることもあります。

しかし、感情的に反発すると「反省していない」と見なされるおそれがあります。たとえ不利な質問であっても冷静に対応し、落ち着いた態度で答えることが求められます。

被告人質問の準備と弁護士の役割

被告人質問の準備と弁護士の役割

被告人質問は、裁判の中でも重要な山場であり、被告人がどのように答えるかによって判決に大きな影響を及ぼすことがあります。そのため、ぶっつけ本番で臨むのではなく、弁護士と十分に準備を重ねることが欠かせません。以下では、被告人質問に向けた準備の流れと弁護士の果たす役割について説明します。

被告人との綿密な打ち合わせ

弁護士は、刑事事件に臨む前に被告人と複数回にわたり打ち合わせを行います。

事件の経緯や心情、現在の生活状況、反省の有無などを整理し、裁判で伝えるべき内容を明確にします。打ち合わせの中で「どの質問にどう答えるか」を方向付けることが、説得力ある供述につながります。

被告人質問のリハーサルの実施

本番の法廷で落ち着いて答えるためには、事前のリハーサルが効果的です。

弁護士が質問役となって模擬的にやり取りを行い、答え方の癖や不明確な表現を修正します。繰り返し練習することで、自信を持って本番に臨めるようになります。

検察官からの質問を踏まえた想定問答の作成

検察官からは厳しい質問や矛盾を突く追及が予想されます。

弁護士は、過去の事例や事件の性質を踏まえ、どのような質問が出るかを想定し、あらかじめ答えを準備します。想定問答を繰り返すことで、突発的な質問にも冷静に対応できる力が養われます。

効果的な質問内容の検討

弁護士は、被告人に有利な事情を引き出すため、裁判官に伝わりやすい質問内容を事前に設計します。たとえば「反省の態度」「被害者への謝罪」「家族や職場の支援体制」「更生のための取り組み」などを効果的に示すことで、量刑判断にプラスに働く可能性があります。

裁判での被告人質問は経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください

裁判での被告人質問は経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください

被告人質問は、裁判官が被告人の反省や更生の見込みを判断するうえで非常に重要な手続きです。しかし、不十分な準備や不適切な受け答えをしてしまうと、かえって不利な評価につながることもあります。特に、検察官からの厳しい質問に冷静に答えるには、専門的な知識と豊富な経験を持つ弁護士のサポートが欠かせません。

グラディアトル法律事務所では、これまで数多くの刑事事件を取り扱ってきた経験を活かし、被告人質問に向けた綿密な打ち合わせやリハーサルを徹底しています。弁護人主導で有利な事情を引き出す質問を設計するとともに、検察官からの追及を想定した模擬問答を繰り返すことで、本番で落ち着いて答えられる体制を整えます。

また、被告人の反省の姿勢や更生計画を裁判官に的確に伝えるための表現方法についても、弁護士が丁寧に指導します。単に「反省しています」と述べるだけではなく、具体的な取り組みや支援体制を強調できるように準備を重ねることで、量刑に有利に働く可能性が高まります。

刑事裁判で不安を抱えている方や、そのご家族の方は、ぜひ一度グラディアトル法律事務所にご相談ください。経験豊富な弁護士が、被告人質問を含む刑事裁判全体を力強くサポートいたします。

まとめ

被告人質問は、裁判官が被告人の反省や更生の意思を直接確認する重要な手続きです。事件の経緯や動機、犯行後の態度、今後の生活設計など幅広い質問がされ、その答え方によって量刑に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、検察官からの厳しい質問に冷静に対応できるかどうかは、裁判官の心証を左右する重要な要素です。そのため、十分な準備を行い、弁護士とともに戦略的に臨むことが不可欠といえるでしょう。

グラディアトル法律事務所では、被告人質問に向けたリハーサルや想定問答を通じて万全の支援を行っています。不安を抱えている方は、早めに弁護士へご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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