現行犯逮捕とは|逮捕から勾留・起訴までの流れと正しい対処法を解説

現行犯逮捕とは|逮捕から勾留・起訴までの流れと正しい対処法を解説
弁護士 若林翔
2025年09月27日更新

「現行犯逮捕とはどのような逮捕なの?」

「現行犯逮捕と通常の逮捕との違いは?」

「現行犯逮捕されたときの対処法を知りたい?」

現行犯逮捕は、犯罪をしている最中や直後に行われる逮捕で、令状がなくても行えるという特徴があります。場合によっては、警察官だけでなく一般市民(私人)による逮捕も認められており、痴漢や万引き、暴行、飲酒運転など身近な事件でも多く適用されます。

しかし、現行犯逮捕されるとそのまま警察署に連行され、取り調べや勾留を経て起訴される可能性もあり、早急かつ適切な対応が不可欠です。対応を誤れば、不必要に長い身柄拘束や重い処分につながるおそれがあります。そのため、家族や友人が現行犯逮捕されてしまったときは、一刻も早く弁護士に相談するようにしてください。

本記事では、

・現行犯逮捕の定義や要件
・通常逮捕・緊急逮捕との違い
・逮捕後の手続きの流れ
・現行犯逮捕された場合に取るべき正しい対処法

などを詳しく解説します。

突然の逮捕に直面した際でも慌てず行動できるよう、事前に知識を身につけておきましょう。

目次

現行犯逮捕とは

現行犯逮捕は、逮捕令状を必要としない例外的な逮捕方法です。犯罪が行われている現場や、その直後であることが明白な場合に、逃亡や証拠隠滅を防ぐために迅速に身柄を確保する目的で行われます。

現行犯逮捕の大きな特徴として、以下の2点が挙げられます。

①誰でも逮捕ができる現行犯逮捕は、警察官や検察官などの捜査機関だけでなく、一般市民でも行うことが認められています。これを「私人逮捕」と呼びます。たとえば、商店で万引きをした人物を店員や他の客がその場で取り押さえ、警察に引き渡すケースが典型例です。ただし、私人逮捕を行う際は、必要以上の力を加えたり、長時間拘束したりすると逆に不法行為となるおそれがあるため、慎重な対応が必要です。

②令状がなくても逮捕ができる通常の逮捕は、裁判官が発付する逮捕令状がなければできません。しかし現行犯逮捕は、犯行が明らかであるため、令状なしでも合法的に行うことができます。これは、犯人を取り逃がさないための緊急性が重視されているためです。

このように、現行犯逮捕は迅速性が求められる反面、誤認逮捕や人権侵害のリスクも伴います。そのため、現場では「本当に現行犯の要件を満たしているか」「必要な範囲での身柄拘束か」を適切に判断することが重要です。

現行犯逮捕の要件

現行犯逮捕の要件

現行犯逮捕は令状なしで行える逮捕方法ですが、誰でも自由にできるわけではありません。刑事訴訟法上、現行犯逮捕が認められるためには、一定の条件(要件)を満たしている必要があります。以下では、現行犯逮捕の具体的な要件を説明します。

逮捕される人が犯罪を行っている最中または犯罪をした直後であること

現行犯逮捕は、被疑者が犯罪を実行している瞬間、または犯行直後であることが明らかでなければなりません。

たとえば、万引きした商品を持ったまま店外に出ようとしている場合や、暴行を加えた直後にその場にいる場合がこれに当たります。

時間が経過して状況が変わった場合は現行犯逮捕の要件を満たさず、通常逮捕や緊急逮捕の対象となります。

一定の軽微犯罪では住所・氏名不詳または逃亡のおそれがあること

法定刑が3年以下の懲役(拘禁刑)または罰金・拘留・科料しかない軽微犯罪について現行犯逮捕するには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

・逮捕される人の住所や氏名が分からない
・逃亡のおそれがある

たとえば軽微な道路交通法違反の場合、本人が身元を明らかにし、逃亡の危険がなければ現行犯逮捕は認められません。

この制限は、不必要な身柄拘束を防ぐための人権保障の観点から設けられています。

現行犯逮捕されやすい主な事件

現行犯逮捕は、犯行が目撃されやすい事件や証拠がその場で明確な事件で多く適用されます。特に、日常生活の中でも起こりやすい以下のような事件は、現行犯逮捕の対象となることが少なくありません。

痴漢・盗撮事件

電車やバスなどの公共交通機関、商業施設のエスカレーターや階段などで発生する痴漢や盗撮は、被害者や周囲の人の通報によってその場で取り押さえられるケースが多い事件です。

痴漢や盗撮は、現場で証拠隠滅が容易であり、逃走の危険も高いため、現行犯逮捕が積極的に行われます。

暴行・傷害事件

路上や飲食店、イベント会場などで発生する暴行や傷害事件も、現行犯逮捕が適用されやすい事件のひとつです。

加害者が被害者に暴力を加えている様子を目撃された場合、そのまま警察官や周囲の人に取り押さえられることがあります。特に、飲酒絡みのトラブルや、口論から発展した殴打などは、現行犯逮捕の典型例です。

窃盗(万引き)事件

デパートやスーパー、コンビニエンスストアなどでの商品窃取、いわゆる「万引き」は、防犯カメラや防犯タグによる検知、従業員の目撃によって即時に発覚しやすい犯罪です。

店外に出る前、または直後に店員が取り押さえて警察に引き渡すケースが多く、私人逮捕の代表的な場面でもあります。

薬物事件

覚醒剤や大麻などの違法薬物を使用・所持している場合職務質問や家宅捜索の際に発覚すれば、その場で現行犯逮捕されます。

薬物事件では証拠隠滅の可能性が高く、迅速な対応が求められるため、現行犯逮捕となるケースが多いです。

交通違反

無免許運転、飲酒運転、過度な速度超過などの重大な交通違反は、警察官による交通取締りや事故現場での確認により、その場で現行犯逮捕されることがあります。

飲酒運転の場合はアルコール検知器による数値測定が即時に行われるため、証拠が明確であり現行犯逮捕につながりやすい傾向にあります。

通常逮捕・緊急逮捕と現行犯逮捕との違い

逮捕には、現行犯逮捕のほかにも「通常逮捕」「緊急逮捕」という2つの方法があります。それぞれの逮捕方法には要件や手続きが異なり、適用される場面も違います。

ここでは、それぞれの概要と現行犯逮捕との違いを説明します。

通常逮捕とは

通常逮捕は、犯罪の嫌疑があり、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に、裁判官が発付する「逮捕令状」に基づいて行われる逮捕です。

現行犯逮捕と違い、犯行現場での逮捕でなくても可能ですが、必ず事前に令状が必要であり、警察や検察が証拠を収集し、裁判官に令状請求を行わなければなりません。

緊急逮捕とは

緊急逮捕は、殺人や強盗など「死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役・禁錮(拘禁刑)」にあたる重大事件で、かつ逮捕の時間的猶予がない場合に令状なしで行える逮捕です。

ただし、逮捕後は直ちに逮捕状を請求し、裁判官の発付を受けなければなりません。現行犯逮捕とは異なり、犯行の現場でなくても適用されますが、対象となる犯罪の範囲は限定的です。

3種類の逮捕の違い

現行犯逮捕・通常逮捕・緊急逮捕の違いをまとめると以下のとおりです。

逮捕の種類要件令状の要否誰が行えるのか主な適用例
現行犯逮捕犯罪を行っている最中、または直後で犯人と明白に分かる場合(軽微事件は住所不詳・逃亡のおそれが必要)不要警察官・検察官・一般市民(私人逮捕)痴漢、万引き、暴行、飲酒運転など
通常逮捕犯罪の嫌疑+逃亡・証拠隠滅のおそれ必要(事前に裁判官が発付)警察官・検察官詐欺、窃盗、傷害、薬物事件など
緊急逮捕長期3年以上の懲役・禁錮(拘禁刑)にあたる重大事件+時間的猶予なし不要(ただし逮捕後直ちに請求)警察官・検察官殺人、強盗、不同意性交等など

現行犯逮捕の流れとその後の手続き

現行犯逮捕の流れとその後の手続き

現行犯逮捕は、犯行の直後に身柄を拘束されるため、その後の刑事手続きも迅速に進みます。逮捕から起訴・不起訴までには、刑事訴訟法で定められた厳密な時間制限があります。ここでは、逮捕後の一般的な流れを時系列で解説します。

現行犯逮捕された被疑者が警察署に連行される

犯行現場や直後に、警察官または一般市民によって身柄を拘束されます。

警察官による場合は、その場で逮捕理由を告げられ、必要な場合は手錠が掛けられます。私人逮捕の場合は、速やかに警察に引き渡されます。

警察官による取り調べを受ける

現行犯逮捕後、被疑者は最寄りの警察署に連行され、警察官による取り調べが行われます。また、取り調べで供述した内容は、調書にまとめられ後日の裁判の証拠となります。

この段階での発言は後の裁判にも影響するため、弁護士が到着するまでは黙秘権を行使することが重要です。

被疑者の身柄が検察官に送致される|逮捕から48時間以内

警察は、逮捕後48時間以内に、被疑者を検察官に送致するか釈放するかを決定しなければなりません。送致されると、被疑者の身柄は、検察庁に移送されます。

検察官による取り調べを受ける

検察官は、被疑者を取り調べ、証拠や供述内容を精査します。検察官が身柄拘束の必要がないと判断すればこの時点で釈放となります。

身柄拘束を継続する場合、検察官が勾留請求をする|逮捕から72時間以内・送致から24時間以内

検察官が被疑者の身柄拘束を続ける必要があると判断した場合、逮捕から72時間以内かつ送致から24時間以内に裁判官に勾留請求を行います。

裁判官が勾留の可否を判断する

検察官の請求を受けた裁判官は、被疑者に対する勾留質問を実施し、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかを判断し、勾留の可否を決定します。

勾留・勾留延長による身柄拘束が続く|原則10日間・最長20日間

裁判官による勾留が認められると原則10日間の身柄拘束となります。また、勾留延長も認められるとさらに最長10日間の身柄拘束となります。

すなわち、逮捕から合計すると最長で23日間にも及ぶ身柄拘束を受ける可能性があります。

検察官による起訴または不起訴の判断がなされる

勾留満了前に、検察官が起訴するか、不起訴(釈放)とするかを決定します。起訴されると刑事裁判が始まり、不起訴となれば事件は終了します。

現行犯逮捕されてしまったときの対処法

現行犯逮捕されてしまったときの対処法

現行犯逮捕は、犯行直後に令状なしで身柄を拘束されるため、その後の対応が非常に重要です。誤った行動を取ると、長期間の身柄拘束や起訴・有罪判決につながるリスクが高まります。以下では、現行犯逮捕された本人や家族が取るべき正しい対応を説明します。

すぐに弁護士を呼ぶ

逮捕後は、すぐに弁護士に連絡し、速やかに接見を依頼してください。

弁護士は、逮捕の適法性や勾留請求の阻止、被疑者の権利保護などを行います。現行犯逮捕は時間との勝負であり、初動対応の速さが結果を大きく左右します。

特に、私選弁護士であれば、土日・夜間でも即日対応してくれる事務所もあるため、家族は事前に連絡先を控えておくと安心です。

弁護士と面会するまでは黙秘権を行使して供述を拒否する

警察の取り調べでは、被疑者には黙秘権が保障されています。

無理に供述すると、不利な形で調書に残され、後の裁判に不利に働く可能性があります。弁護士と相談するまでは、不用意に事件について話さず、「弁護士が来るまで話しません」と明確に伝えることが大切です。

供述調書への署名押印は内容を十分に確認してから行う

取り調べの最後に作成される供述調書は、後の裁判で重要な証拠となります。

内容に誤りや不明確な部分があっても署名押印してしまうと、後から訂正するのは困難です。納得できない内容であれば署名せず、修正や削除を求めるべきです。

勾留を阻止して早期釈放を目指す

勾留されると、原則10日間(延長で最大20日間)身柄拘束され、社会生活への影響が大きくなります。弁護士は、勾留請求が不当であると主張し、裁判所に勾留却下を求める活動を行います。

また、家族や勤務先への連絡、身元引受書の提出なども早期釈放に有利に働きます。

家族ができる支援

逮捕された本人は外部と自由に連絡を取れないため、家族の動きが重要です。弁護士への依頼や、勤務先・学校への連絡調整、必要物資の差し入れなどを行い、本人の精神的負担を軽減しましょう。

現行犯逮捕されてしまったときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

現行犯逮捕されてしまったときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

現行犯逮捕は、発生から勾留・起訴までの時間が非常に短く、対応の遅れがそのまま結果に直結します。

特に、勾留請求や起訴の判断は、逮捕からわずか数日から数週間以内に行われるため、早期に弁護士を依頼し、迅速な弁護活動を開始することが何よりも重要です。

グラディアトル法律事務所では、刑事事件に精通した弁護士が、以下のようなサポートを提供しています。

24時間365日対応で、逮捕直後の段階から即日接見が可能
・勾留請求の阻止や準抗告による早期釈放の実績多数
・家族や勤務先への連絡・調整、身元引受書の作成支援
・被害者との示談交渉による不起訴処分獲得
・裁判に備えた証拠収集や刑の減軽に向けた弁護活動

刑事事件の初動対応を誤ると、不必要に長い身柄拘束や実刑判決につながるおそれがあります。

もしご家族や知人が現行犯逮捕されてしまった場合は、迷わず当事務所までご連絡ください。迅速かつ適切な対応で、最善の結果を目指します。

まとめ

現行犯逮捕は、犯行の最中や直後に行われる逮捕で、令状なしで行えるという特徴があります。場合によっては一般市民による逮捕(私人逮捕)も認められ、痴漢や万引き、暴行、飲酒運転など身近な事件でも多く適用されます。

しかし、逮捕後は短期間で勾留や起訴が決まるため、初動対応が結果を大きく左右します。弁護士への早期依頼、黙秘権の行使、供述調書の慎重な確認などが重要です。

ご家族や知人が現行犯逮捕された場合は、迅速かつ適切な弁護活動によって早期釈放や不起訴の可能性を高められます。そのような状況に直面したときは、迷わず刑事事件に強いグラディアトル法律事務所までご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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