逮捕とは?3つの逮捕の種類と手続の流れを弁護士がわかりやすく解説

逮捕とは?3つの逮捕の種類と手続の流れを弁護士がわかりやすく解説
弁護士 若林翔
2025年09月16日更新

「逮捕されたら即犯罪者」

「逮捕=刑務所行き」

「逮捕されたら一生前科が残る」

こうしたイメージを持っている方も少なくありません。しかし実際には、逮捕されたからといって必ずしも前科がつくわけではなく、直ちに刑務所に入るわけでもありません。

逮捕とは、警察などの捜査機関が被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐために、一定の時間その身柄を拘束する手続きです。つまり「刑罰」ではなく、あくまで「捜査のための強制処分」にすぎません。

ただし、逮捕後には取り調べや検察への送致、勾留請求などが続き、最終的に起訴されれば刑事裁判に進む可能性もあります。そのため、逮捕が人生に大きな影響を与える重大な局面であることは間違いありません。

また、ひと口に逮捕といっても種類があり、現行犯逮捕・緊急逮捕・通常逮捕の3つに分かれています。それぞれ逮捕の条件や流れが異なり、どのような場面で行われるのかを正しく理解しておくことが大切です。

本記事では、

・逮捕の法律上の意味と目的
・3つの逮捕の種類とその違い
・逮捕後の一般的な手続きの流れ
・逮捕を避けるための方法や、家族ができる対応

などについて、刑事事件に精通した弁護士がわかりやすく解説します。

万一、自分や家族が逮捕に直面しても、正しい知識を持っていれば慌てずに適切な対応をとることができます。

逮捕とは?|法律上の意味と目的

逮捕とは?|法律上の意味と目的

逮捕という言葉はニュースでもよく耳にしますが、その正確な意味や目的を理解している方は意外と少ないものです。逮捕は、「有罪判決」や「前科」とは直結せず、法律上は捜査のための強制処分にすぎません。以下では、逮捕の定義や目的、任意同行との違いについて説明します。

逮捕の定義|逮捕=前科ではない

逮捕とは、捜査機関が被疑者の身柄を強制的に拘束する手続のことをいいます。ここで重要なのは、逮捕=前科ではないという点です。

逮捕は、あくまで捜査の一環として行われる「強制処分」に過ぎず、逮捕された段階ではまだ「有罪」が確定したわけではありません。最終的に起訴されず不起訴となるケースも多く、逮捕されたこと自体が自動的に前科につながるわけではないのです。

逮捕の目的

逮捕の目的は、

・被疑者の逃亡を防ぐこと
・証拠隠滅を防止すること

にあります。

刑事事件の捜査では、被疑者を自由にしておくと、証人に口裏を合わせる、証拠を廃棄する、または逃亡する可能性があります。これを防ぐため、逮捕によって一定期間身柄を拘束することで、捜査や取り調べを円滑に進めることができるのです。

つまり、逮捕は「刑罰」ではなく「捜査を確実に行うための手続き」である点を理解することが大切です。

逮捕と任意同行の違い

ニュースなどで「任意同行」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。任意同行とは、警察が被疑者や参考人に「事情を聴きたいので署まで来てください」と依頼し、本人の同意を得て警察署に同行してもらう手続きです。

逮捕と決定的に違うのは、身柄の拘束があるかどうかです。任意同行はあくまで本人の自由意思に基づくもので、途中で帰宅することも可能です。一方で、逮捕の場合は強制力を伴い、本人が拒否しても拘束されます。

この違いを知らないと「任意同行された=逮捕された」と誤解してしまう人もいますが、両者は法的にまったく異なる手続きです。

逮捕の3つの種類|現行犯逮捕・緊急逮捕・通常逮捕

逮捕の3つの種類|現行犯逮捕・緊急逮捕・通常逮捕

逮捕と一口にいっても、実際には「現行犯逮捕」「緊急逮捕」「通常逮捕」の3種類があります。それぞれ逮捕の条件や手続きが異なり、どのような場面で適用されるかも変わってきます。以下では、3つの逮捕の種類とその違いについて説明します。

現行犯逮捕とは|逮捕状なしで逮捕可能

現行犯逮捕とは、犯罪を行っている最中、または直後の被疑者をその場で逮捕する方法です。

現行犯逮捕は、犯罪の事実が明白であり、誤認逮捕のおそれが少ないため、例外的に逮捕状なしで行うことができます。

たとえば、万引きをした直後の人物を店員や警察官が取り押さえるケースが典型例です。

また、現行犯逮捕は警察官だけでなく一般市民も行うことができ、これを「私人逮捕」といいます。

緊急逮捕とは|事後的に逮捕状請求が必要

緊急逮捕とは、重大な犯罪の被疑者について、逮捕状を請求する時間的余裕がない場合に、例外的に逮捕状なしで行う逮捕のことです。

ただし、逮捕後には速やかに裁判官へ逮捕状を請求しなければならず、事後的な司法審査を経る点が現行犯逮捕との大きな違いです。

緊急逮捕が認められるのは「死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役・禁錮(拘禁刑)にあたる罪」の被疑者で、犯罪の充分な嫌疑があることが必要とされています。

通常逮捕とは|逮捕の原則的な方法

通常逮捕とは、裁判官が発する逮捕状に基づいて行う逮捕のことです。これがもっとも原則的で、基本的な逮捕の方法とされています。

警察や検察は、裁判官に逮捕状を請求し、裁判官が被疑者を逮捕する必要性と理由があると認めた場合に限り、逮捕状が発付されます。

通常逮捕が行われるのは、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるときです。つまり、犯罪の疑いがあるだけでは足りず、逮捕の必要性が具体的に認められる場合に限られるのです。

各逮捕手続きの違いまとめ

ここまで説明した3つの逮捕の違いを整理すると、以下のようになります。

 通常逮捕現行犯逮捕緊急逮捕
要件①罪を犯したと疑うに足りる相当な理由②逃亡または証拠隠滅のおそれがあること犯罪が行われている最中または直後①重大犯罪であること②充分な嫌疑があること③逮捕状請求の余裕がないこと④逮捕後直ちに逮捕状請求すること
逮捕状の有無必要(事前に裁判官が発付)不要不要(ただし逮捕後に直ちに請求)
誰が逮捕できるか捜査機関誰でも可能捜査機関
対象となる犯罪制限なし制限なし死刑・無期・長期3年以上の懲役/禁錮(拘禁刑)
特徴もっとも原則的な逮捕方法犯行が明白なため即時に身柄を確保できる例外的な制度であり、厳格な要件を満たさなければ違法とされる

逮捕されたらどうなる?逮捕後の一般的な流れ

逮捕されたらどうなる?逮捕後の一般的な流れ

「逮捕されたらすぐに刑務所に入れられるのでは?」と誤解している方も少なくありません。実際には、逮捕から起訴・不起訴に至るまで、法律で厳格に定められた手続きが進んでいきます。以下では、逮捕後の一般的な流れを時系列に沿って説明します。

逮捕・取り調べ

逮捕されると、そのまま警察署に連行され、警察官による取調べを受けます。取り調べの内容は、供述調書という書面にまとめられ、その後の処分や裁判における重要な証拠となりますので、取り調べには慎重に対応する必要があります。

なお、被疑者には黙秘権が認められており、無理に供述する必要はありません。また、弁護士を呼んで助言を受けることもできます。

検察官への送致|逮捕から48時間以内

警察は、逮捕した被疑者を、逮捕から48時間以内に検察官へ送致(送検)しなければなりません。送致とは、事件記録や証拠とともに身柄を検察に引き渡す手続きです。

この期限内に送致をしない場合は、被疑者を釈放しなければなりません。

検察官による勾留請求|逮捕から72時間以内かつ送致から24時間以内

検察官は、送致を受けた後、必要に応じて裁判所に「勾留請求」を行います。勾留とは、さらに長期間被疑者の身柄を拘束する手続きです。

勾留請求ができるのは、逮捕から72時間以内かつ送致から24時間以内と法律で定められています。この期限内に請求しなければ、被疑者は釈放されることになります。

勾留・勾留延長|原則10日・最長20日

裁判所が勾留を認めると、被疑者は、原則として10日間拘束されます。さらに、やむを得ない事情がある場合には、追加で10日間延長され、最長20日間の勾留が可能となります。

この間、被疑者は、繰り返し取調べを受け、検察官は起訴するかどうかを判断するための証拠収集を進めます。

起訴または不起訴の決定

勾留期間が終了するまでに、検察官は被疑者を「起訴」するか「不起訴」とするかを決定します。

・起訴の場合……裁判にかけられ、刑事裁判で有罪・無罪が判断される。
・不起訴の場合……被疑者は釈放され、事件はそれ以上進まない。

不起訴になれば前科がつくことはありませんので、必ずしも逮捕が有罪判決につながるわけではないのです。

逮捕を回避するためにできる4つの対処法

逮捕を回避するためにできる4つの対処法

すべてのケースで逮捕を避けられるとは限りませんが、適切に行動することで逮捕の可能性を低くすることはできます。警察から事情を聴かれている段階や、被害者とトラブルを抱えている段階での対応次第では、逮捕に至らずに済むこともあります。以下では、逮捕を回避するために考えられる4つの方法を紹介します。

自首する

自ら警察に出頭して罪を認める「自首」は、逮捕を回避するための有効な手段の一つです。警察がすでに事件を把握している場合でも、逃亡の意思がないことを示すことで、逮捕ではなく任意捜査に切り替えられる可能性があります。

さらに、自首は量刑において有利に扱われることもあり、刑の軽減につながる場合があります。

警察からの任意出頭の要請があったときは素直に応じる

警察から「任意で事情を聴かせてほしい」と要請があった場合、これに応じず逃げたり拒否したりすると「逃亡のおそれがある」と判断され、逮捕される可能性が高くなります。

一方で、任意出頭に応じれば「逃亡の意思がない」と評価され、逮捕されずに在宅事件として進む可能性があります。

被害者との示談交渉を進める

被害者がいる事件では、被害者との示談が成立しているかどうかが、逮捕・勾留の判断に大きな影響を与えることがあります。被害者が「処罰を望まない」という意思を示せば、逮捕を回避できる場合やその後の不起訴処分につながる場合もあります。

もっとも、示談交渉は感情的な対立も生じやすいため、専門家である弁護士に依頼するのが安全です。

弁護士に相談する

逮捕を避けたいと考えるなら、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが重要です。弁護士は、警察とのやり取りをサポートし、任意捜査にとどめるための働きかけや被害者との示談交渉も代行してくれます。

また、弁護士の関与は「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」と判断されやすくなるため、逮捕を防ぐ効果が期待できます。

逮捕されてしまったときに家族ができること

逮捕されてしまったときに家族ができること

家族が逮捕されてしまうと、突然の出来事に混乱し、どう対応してよいかわからなくなる方も少なくありません。しかし、逮捕後は時間が限られており、家族の行動次第でその後の処遇に大きな影響を与えることもあります。以下では、家族ができる代表的なサポートを紹介します。

刑事事件に強い弁護士に相談・依頼する

もっとも重要なのは、できるだけ早く刑事事件に強い弁護士へ相談・依頼することです。

弁護士は、接見(面会)によって被疑者に助言できるほか、勾留を阻止する活動や示談交渉など、早期の身柄解放に向けた行動を取ってくれます。

家族が自分で直接できることには限りがあるため、専門家を頼ることが最も効果的です。

面会・差し入れ

逮捕後、勾留されると家族も面会できるようになります。ただし、事件の性質によっては接見禁止が付く場合もあり、その場合は弁護士以外の面会は制限されます。

また、生活必需品や衣類、本などを差し入れることができ、被疑者の精神的な支えとなります。逮捕後は心身ともに不安定になりやすいため、家族の支援が非常に重要です。

職場や学校への連絡

本人は、身柄拘束中のため職場や学校に直接連絡できません。そのため、家族が代理で連絡を取る必要があります。

ただし、逮捕されたことを不用意に広めてしまうと社会的な不利益が大きくなる場合もあるため、弁護士と相談しながら、必要最低限の範囲で連絡することが望ましいでしょう。

身元引受人の受諾

勾留請求を回避したり、保釈を実現したりするためには「身元引受人」が必要とされる場合があります。身元引受人は、被疑者が逃亡しないことや裁判に出廷することを保証する役割を担う人です。

家族がこれを引き受けることで、身柄解放の可能性が高まることもあります。

逮捕されてしまったときに弁護士ができるサポート

逮捕されてしまったときに弁護士ができるサポート

家族や本人だけでは、逮捕後の手続きに対応することは困難です。刑事事件に強い弁護士に依頼することで、逮捕後の不安を軽減し、早期の身柄解放や不起訴処分の可能性を高めることができます。以下では、弁護士が具体的にどのようなサポートを行えるのかを紹介します。

取調べ対応のアドバイス

逮捕後の取調べでは、供述内容がその後の処遇に大きく影響します。軽い気持ちで発言したことが、後に不利な証拠として扱われるケースも少なくありません。

弁護士は接見(面会)を通じて、どのように取調べに臨むべきか、黙秘権を行使するかなどのアドバイスを行い、不利益を最小限に抑えるサポートをします。

勾留阻止・準抗告・保釈などの身柄解放に向けた活動

逮捕後、検察官や裁判所が勾留を認めれば、最長で20日間も身柄を拘束される可能性があります。弁護士は、勾留の必要がないことを主張して勾留阻止に努めたり、裁判所の判断に不服がある場合には「準抗告」を申し立てることができます。

さらに、起訴後には「保釈請求」を行い、裁判を受けるまで自宅で過ごせるよう働きかけます。

被害者との示談交渉

被害者がいる事件では、示談が成立しているかどうかが処分の軽重を大きく左右します。被害者が「処罰を望まない」という意思を示せば、不起訴や執行猶予につながる可能性も高まります。

弁護士は被害者との間に立ち、冷静かつ法的に妥当な内容で示談をまとめることができるため、加害者本人や家族が直接交渉するよりもスムーズかつ安全に示談交渉を進められます。

被疑者と家族との連絡役

逮捕後は、家族が自由に面会できないことも多く、被疑者が孤立して不安を募らせてしまうケースがあります。弁護士は接見禁止が付いていても面会できる立場にあり、本人の意向を家族に伝えたり、家族の声を本人に届けたりすることが可能です。

こうした連絡役としての役割も、被疑者の精神的な安定につながります。

家族が逮捕されてしまったときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

家族が逮捕されてしまったときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

家族が突然逮捕されてしまったとき、多くの方は「どう動けばよいのか分からない」「どこに相談すべきか不安」と強い混乱に陥ります。逮捕直後から72時間以内の対応は、その後の勾留や起訴の可否に直結するため、初動が極めて重要です。こうした緊急時に頼りになるのが、刑事事件に精通した弁護士です。

グラディアトル法律事務所は、刑事事件の弁護に豊富な経験を有しており、逮捕・勾留の段階から迅速に対応します。逮捕された直後に弁護士が接見に赴き、取調べに対する適切なアドバイスを行うことで、被疑者が不利益を被らないよう守ることが可能です。また、勾留阻止や保釈請求といった身柄解放に向けた活動、さらには被害者との示談交渉まで一貫してサポートします。

さらに、当事務所では家族へのサポートも重視しています。接見禁止がついて面会できない状況でも、弁護士が橋渡し役となり、被疑者の希望や状況を家族に伝えることができます。これにより、家族も安心して生活を支え続けられる環境を整えることができます。

刑事事件は、スピード勝負です。逮捕から時間が経過するほど選択肢が狭まり、状況が不利に傾く可能性が高まります。だからこそ、家族が逮捕されたと知ったら、ためらわずにすぐグラディアトル法律事務所にご相談ください。経験豊富な弁護士が迅速かつ的確に対応し、最善の解決に導きます。

まとめ

逮捕とは、あくまで捜査のために身柄を拘束する強制処分であり、直ちに前科や刑務所行きにつながるわけではありません。ただし、逮捕後は、勾留や起訴の判断に進むため、早期に適切な対応をとることが重要です。

家族ができることには限りがありますが、刑事事件に強い弁護士に依頼することで、勾留阻止や保釈、示談交渉など有利な展開を導くことができます。

グラディアトル法律事務所では、逮捕直後から迅速に接見し、被疑者と家族を全力でサポートします。大切な人が逮捕されたときは、一刻も早くご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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