「家族が逮捕されたのに、接見禁止で面会できない…」
今、あなたはこんな状況に直面されているのではないでしょうか。
接見禁止とは、逮捕・勾留された人に対して、弁護士以外との面会を禁止する処分です。
突然家族と会えなくなり、状況も分からないまま時間だけが過ぎていく…本人はもちろんですが、残された家族も同じように苦しい思いをされていることでしょう。
しかし、接見禁止中でも弁護士を通せば、メッセージや差し入れを届けたり、ご本人の様子を確認したりできます。また、弁護士が準抗告や一部解除の申立てをすれば、家族との面会を実現できるケースも少なくありません。
本記事では、接見禁止の内容や、家族ができるサポートなど、ご家族が知っておくべき知識について、実例を交えながら解説するほか、弁護士ができる解除方法も分かりやすくお伝えします。
ぜひこの記事を読んで正しい知識を身につけて、一日でも早く大切な人との再会を実現しましょう。
目次
接見禁止とは?

接見禁止とは、逮捕・勾留中の人に対して、家族や友人と面会したり、手紙や物の授受をしたりするのを禁止することです。
接見禁止の主な目的は、証拠隠滅や口裏合わせの防止です。
身柄拘束中、犯罪をした疑いがある人が外部と接触すると、犯罪の証拠を破棄したり、改ざんしたり、隠したりするかもしれません。もし共犯者がいれば、口裏を合わせて証言内容を統一し、取調べに支障が出る可能性もあるでしょう。
こういったおそれを防ぐため、裁判所が接見等禁止決定をして、外部との接触を制限するのです。
■チェックポイント
接見禁止中でも、弁護士なら接見ができる
接見等禁止決定がされると、外部との面会がすべて禁止されますが、弁護士だけは面会ができます。これは、弁護人には「接見交通権」という権利が認められているからです(刑事訴訟法39条1項)
弁護人の「接見交通権」は、接見禁止等決定の影響を受けないため、施設職員の立会いなどもなく、被疑者と接触して、必要なサポートができます。
したがって接見禁止中に、「家族に連絡したい」、「会社に何かを伝えたい」、あるいは「家族から被疑者に対して差し入れをしたい」といったときは、すべて弁護人を介して行うことになります。
接見禁止によって制限されること
ここまでお伝えしたとおり、接見禁止が決定されると、外部との接触に大きな制限がかかります。2章では、具体的にどのような制限を受けるのかを説明します。

弁護士以外の面会(家族・友人など)が禁止される
接見禁止になると、家族や友人、会社の同僚など、弁護士以外との面会ができなくなります。接見禁止の対象となるのは、弁護士以外のすべての人です。
■接見禁止の対象となる人の例
・ (家族)配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹、祖父母など
・ (知人・友人)交際相手(彼女・彼氏)、親友、友人など
・ (会社関係者)上司・同僚・部下など
■チェックポイント
接見禁止には「一部指定」というパターンもある
接見禁止には、すべての人との接見を禁止する「全部禁止」だけでなく、特定の人のみを対象とする「一部指定」というパターンもあります。
実務上、これがよく見られるのは少年事件の両親です。
少年事件では、少年に対する配慮が必要なので、警察官の立ち会いのもとにはなりますが、両親のみ面会(接見)が認められるケースが多いです。
同様に、接見禁止等決定がされた後でも、弁護人から一部解除の申立てを行えば、特定の者(家族など)との接見が解除されるケースもあります。
書類(手紙など)の授受も制限される
書類(手紙など)の授受も、接見禁止決定の範囲に含まれることが多いです。
たとえば、次のようなものが制限の対象となります。
■制限の対象となる物の例
・ 家族からの励ましの手紙
・ 被疑者から家族へ向けた手紙
・ 家族や友人との写真
・ 書き込みのある市販の書籍 など
なお、現金や食べ物、衣類、日用品などの差し入れは制限されませんが、すべてが認められるわけではありません。地域やタイミングによって取り扱いが異なるので、留置所への確認が必要です。
接見禁止が認められる理由(要件)
では、そもそもどのような場合に接見禁止が認められるのでしょうか?
接見禁止が認められる理由(要件)を説明します。

逃亡または罪証隠滅のおそれがある
接見禁止となる最も一般的な理由は、「逃亡または罪証隠滅のおそれ」があることです。たとえば、以下のようなケースが考えられます。
・ 共犯者に連絡して、凶器や薬物などの証拠を処分するおそれがある場合(罪証隠滅のおそれ)
・ 目撃者に口止めをしてもらおそれがある事件(罪証隠滅のおそれ) など
もっとも、外部との接見(面会)によって「逃亡のおそれが生じる」というケースは少ないです。そのため、実務上はほとんどが「罪証隠滅のおそれ」を理由に接見禁止等決定がされています。
裁判員裁判の対象事件で、裁判員に接触するおそれがある
裁判員裁判の対象事件の場合、「裁判員に接触するおそれがある」という理由でも接見禁止が認められるケースがあります。
外部との面会により、何らかの形で裁判員に圧がかかってしまうと、公正な裁判が期待できなくなるからです。
そのため「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」によって、接見禁止理由に、「裁判員、補充裁判員若しくは選任予定裁判員に、面会、文書の送付その他の方法により接触すると疑うに足りる相当な理由」という内容が追加されています。
第六十四条 第二条第一項の合議体で事件が取り扱われる場合における刑事訴訟法の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる同法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句とする。第八十一条 逃亡し若しくは罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由又は裁判員、補充裁判員若しくは選任予定裁判員に、面会、文書の送付その他の方法により接触すると疑うに足りる相当な理由
漫然と接見禁止を決定して、違法になった判決もある
ここまで、接見禁止がつく理由(要件)について説明してきました。
ここで留意しておきたいのが、これらのおそれがあっても、必ずしも接見禁止が認められるわけではないということです。
接見禁止は、あくまでも、逮捕・勾留などの身柄拘束だけでは賄いきれない捜査上のリスクがある場合にのみ認められるものです。
つまり、すでに身柄を拘束されていることで証拠隠滅の危険性が十分に防げるのなら、接見禁止は認められません。
ところが現実には、なぜ身柄拘束だけではダメなのか、本当に接見禁止の必要性があるのか等について検討がされず、漫然と接見禁止決定がされているケースがあります。
直近でも最高裁で、盗撮の未遂で逮捕された容疑者に対して、接見を禁止した地裁の決定が違法だという判決が下されました。
“盗撮未遂の容疑者に接見認めない地裁決定は違法” 最高裁
(出典:NHK「”盗撮未遂の容疑者に接見認めない地裁決定は違法” 最高裁
2025年8月16日 18時09分」)
上記のような事件は、決して珍しいことではありません。
接見禁止等の決定が相当ではないと考えられるときは、速やかに弁護人に相談して、解除の申し立てをするなどの対処が必要です。
接見禁止中の被疑者に向けて家族ができること
次に、接見禁止中に被疑者に向けて、家族ができることを見ていきましょう。

弁護士を通じて励ましのメッセージを伝える
接見禁止中は直接面会できませんが、弁護士を通じてメッセージを伝えることはできます。
「みんな待っているから、心配しないで」「仕事のことは大丈夫だから安心して」といった言葉を伝えてもらうだけでも、被疑者にとって大きな励みになるでしょう。
また、弁護士から被疑者の様子を聞くこともできます。健康状態や精神状態、今後の見通しなど、家族が知りたい情報を弁護士経由で確認できます。
身柄拘束中、被疑者と家族や友人などのつながりを保つことも、弁護士の大切な役割です。
弁護士を通じて日用品や手紙などの差し入れをする
接見禁止中でも、日用品の差し入れは可能です。
替えが必要な衣類や、本人が好きな食べ物(制限はあります)を差し入れるだけでも、精神的な支えになるでしょう。
同様に、施設内で購入するための現金も差し入れできます。
なお、家族から被疑者にあてた手紙や、被疑者から家族にあてた手紙も、弁護人経由なら認められる場合があります。接見禁止決定は、あくまでも被疑者と弁護人以外との関係を規律するものだからです。
弁護人を介して、第三者(家族・恋人など)と手紙をやり取りすることは、弁護人の接見交通権の範囲に含まれると考えられています。(出典:接見交通権マニュアル 第19版)
もちろん罪証隠滅のおそれがあるような内容は渡せませんが、励ましのメッセージを書いた手紙などは弁護人の判断で授受できるので、相談してみましょう。
接見禁止はいつまで続く?
接見禁止がいつまで続くかについて、法律上の規定はありません。
これは、接見禁止が「逃亡や証拠隠滅のおそれ」がなくなるまで続くものだからです。裁判所がこのおそれがなくなったと判断すれば解除されますが、そのタイミングは事件によって大きく異なります。
一般的には、起訴決定のタイミング、つまり逮捕から10日(勾留延長なら20日)が1つの目安になります。
ただし、共犯者がいる場合は、お互いの裁判に影響を与えないよう、起訴後も接見禁止が続くことがあります。暴力団などの組織的な犯罪でも、証拠隠滅や証人への圧力を防ぐため、長期間、接見禁止が続くケースが多いです。
なお、逮捕直後の72時間(最長3日間)は、そもそも接見禁止決定の有無に関係なく、原則として弁護士以外は面会できません。
接見禁止を解除するために弁護士ができること

では、接見禁止決定が相当でないと考えられる場合、弁護士には何ができるのか。
ここからは、刑事事件で接見禁止を解除するために弁護士が行う手続きの方法を紹介します。
接見禁止決定に対して、準抗告・特別抗告をする
まず考えられるのが、接見禁止決定に対して、準抗告・特別抗告をする方法です。
準抗告とは、裁判所の決定に不服がある場合に、その決定の取り消しや変更を求める手続きです。接見禁止決定が不当だと考える場合、弁護士はまず決定をした裁判所に準抗告を申し立てて、再度の判断を求めることができます。
準抗告が棄却された場合でも、さらに特別抗告という手段があります。
4章で紹介した判決でも、弁護人が準抗告を申し立てています。一度は棄却されたものの、その棄却決定に対してさらに特別抗告を行い、接見禁止が違法だったという判決が下されました。
接見禁止の一部解除の申立てをする
接見禁止等決定に対する準抗告・抗告が認められなかった場合、接見禁止の一部解除の申立てをするという方法もあります。
接見禁止の一部解除の申し立てとは、裁判所による職権での接見禁止解除を促す手続きです。
前述したとおり、接見禁止決定はあくまでも必要最小限の範囲で認められるべきものです。
そのため、「特定の時間に、特定の人(家族)とだけ面会する」などの条件付きなら、接見禁止が解除されるケースもあります。
勾留理由開示請求をする
最終手段として、「勾留理由開示請求」をするという方法もあります。
勾留理由開示請求とは、勾留されている被疑者・被告人が、なぜ自分が勾留されているのかという理由を、公開の法廷で裁判官から開示してもらうという手続きです。
接見禁止が解除されるわけではありませんが、傍聴席から被疑者の顔を見れるので、接見禁止中の被疑者と顔を合わせる方法として利用できます。
被疑者の様子を確認できることはもちろん、法廷で意見を述べることで、間接的に被疑者を力づけるような効果も期待できるでしょう。
ご家族の接見禁止を解除するなら、刑事事件に強いグラディアトル法律事務所へお任せください
ご家族が逮捕され、接見禁止で面会できずに不安を抱えている方は、ぜひ弊所グラディアトル法律事務所にご相談ください。
刑事事件は、逮捕・勾留による身柄拘束だけでなく、前科がつくことで今後の人生に大きな影響を及ぼす重大な問題です。特に、接見禁止が付されると、家族とも会えない状況が続き、被疑者も家族も精神的に追い詰められることになります。
こうした状況を打開するには、一刻も早く刑事事件に精通した弁護士に相談することが重要です。
グラディアトル法律事務所の弁護士は数多くの刑事事件を取り扱っており、圧倒的なノウハウと実績を有しています。
それぞれの弁護士が得意分野をもっておりますので、逮捕された方や取調べを受けている方に対し、刑事事件に強い弁護士ならではの充実した刑事弁護を提供いたします。
早期に対応できれば、接見禁止の解除や一部解除を実現できるだけでなく、不起訴処分を獲得して前科を防げるなど、ご家族の将来を守る結果にもつながります。
「家族と面会できず心配」「今後どうなるのか不安」「示談をどう進めればよいかわからない」など、どんなお悩みでも構いません。24時間365日相談を受け付けていますので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
最後に、記事のポイントをまとめます。
◉接見禁止とは?
・ 弁護士以外との面会が禁止される処分(家族でも面会不可)
・ 手紙など、書類の授受も制限される
・ 罪証隠滅のおそれがある場合に裁判所が決定する
・ 一般的には起訴決定までに解除されるケースが多い
◉接見禁止中に制限されること
・ 弁護士以外の面会(家族・友人など)
・ 書類(手紙など)の直接の授受
◉接見禁止中に家族ができること
・ 弁護士を通じて励ましのメッセージを伝える
・ 弁護士から被疑者の様子を聞く
・ 日用品(衣類・食べ物・現金など)の差し入れ
・ 弁護士経由での手紙のやり取り
◉接見禁止を解除する方法
・ 準抗告・抗告|接見禁止決定の取り消しや変更を求める
・ 一部解除の申立て(特定の人(家族)との面会のみ解除を求める)
・ 勾留理由開示請求(法廷で被疑者の顔を見ることができる)
以上です。
この記事が参考になったと感じましたら、ぜひグラディアトル法律事務所にご相談ください。一日も早く接見禁止が解除され、大切な人との再会が実現することを願っています。
