犯行から時間が経っても現行犯逮捕できる?時間的接着性の基準を解説

犯行から時間が経っても現行犯逮捕できる?時間的接着性の基準を解説
弁護士 若林翔
2025年10月15日更新

「犯行から時間が経ってからでも現行犯逮捕できる?」

「現行犯逮捕による身柄拘束には時間制限があると聞いたけど、どのくらいの時間なの?」

「現行犯逮捕後されたときの対処法を知りたい」

現行犯逮捕は、犯行の最中や直後に行われる逮捕方法ですが、「犯行から時間が経っているのに現行犯逮捕された」というケースも少なくありません。

実は、現行犯逮捕には「時間的接着性」という考え方があり、犯行から一定時間内であれば逮捕が有効とされる場合があります。しかし、どのくらいの時間が許容されるかには明確な基準がなく、状況によって判断が分かれるのが実情です。

一般的には30~40分程度が一応の目安とされていますが、追跡が継続しているならそれ以上の時間が経っていても現行犯逮捕は可能です。

本記事では、

・現行犯逮捕の時間的な限界や判断基準
・現行犯逮捕までの時間が争点となった実際の判例
・逮捕後72時間以内に取るべき対応

などについて詳しく解説します。

ご家族が逮捕された場合の緊急対応や、早期解放を目指すための弁護士依頼の重要性もあわせてご紹介しますので最後までお読みください。

犯行から時間が経っても現行犯逮捕される?

現行犯逮捕は、犯行の最中や直後に行われるのが原則ですが、実際には「事件から時間が経っているのに現行犯逮捕された」という事例も存在します。

では、犯行からどのくらいの時間までであれば現行犯逮捕は可能なのでしょうか。以下では、現行犯逮捕の定義や時間的な限界について説明します。

犯行直後でなければ「現行犯人」とはいえない

刑事訴訟法212条1項は、現行犯逮捕を「現に罪を行い、または行い終わった者」を逮捕する手続きと定義しています。つまり、犯行の最中や犯行直後でなければ現行犯とはいえず、逮捕も許されません。

たとえば、事件から数時間が経過して、犯行現場から離れ、服装や持ち物も変えてしまっている場合には、現行犯逮捕が違法となる可能性があります。

現行犯逮捕は、逮捕状を必要としない反面、被疑者の人身の自由を大きく制限するため、厳格な条件が求められるのです。

どのくらいの時間なら現行犯逮捕可能?実際の判断基準

現行犯逮捕における「時間的接着性」については、法律上明確な分数や時間の基準はありません。しかし、判例や実務ではおおむね30〜40分程度がひとつの目安とされています。

ただし、それには例外もあります。たとえば、被疑者を警察官や目撃者が途切れなく追跡していた場合には、1時間以上経過していても現行犯逮捕が認められた事例があります。逆に、追跡が途切れ、被疑者の所在が分からなくなった場合には、短時間でも現行犯性が否定されることがあります。

要するに、「犯行現場との時間的・場所的なつながりがどれだけ保たれていたか」が判断のポイントです。現行犯逮捕の時間は単なる経過時間ではなく、その間の状況によって可否が左右されます。

現行犯逮捕までの時間について判断した判例|最高裁昭和31年10月25日決定

現行犯逮捕が適法か否かは、犯行からの経過時間だけでなく、現場との場所的近接や状況の連続性が重要です。以下では、犯行から逮捕まで30〜40分が経過していた事案で、現行犯逮捕が適法と判断された最高裁判例(最高裁昭和31年10月25日決定)を紹介します。

【事案の概要】

被告人は飲酒酩酊状態で下着姿のまま路上を歩き、特殊飲食店「くれたけ」で従業員の胸を突き、硝子戸を破損。その後、近くの店「みどりや」に移動し、大声を上げていたところを巡査が発見し、現行犯逮捕しました。

・犯行から逮捕までの時間:約30〜40分

・現場から逮捕場所までの距離:約20メートル

【裁判所の判断】

裁判所は、犯行から逮捕までの時間が短く、かつ犯行現場と逮捕場所が近接しており、犯行後の状況が連続していたことから、刑事訴訟法212条1項後段の「現に罪を行い終わった者」に該当すると判断しました。

そのため現行犯逮捕は適法とされ、逮捕時に被告人が警察官に暴行した行為について公務執行妨害罪の成立も認められました。

【実務上のポイント】

・30〜40分程度の経過であれば現行犯性が肯定されやすい
・犯行現場との物理的な距離が近いことが重要
・状況の連続性(時間的・場所的接着性)があれば、多少時間が経過しても現行犯逮捕が成立し得る

現行犯逮捕による身柄拘束には時間制限がある|逮捕後の基本的な流れ

逮捕後の基本的な流れ

現行犯逮捕は、逮捕状なしで即座に行える強制処分ですが、逮捕後の身柄拘束には厳格な時間制限が設けられています。以下では、現行犯逮捕から起訴・不起訴までの流れとそれぞれの時間的制限を説明します。

【逮捕後48時間】取り調べ・検察への送致

警察は逮捕後、被疑者の身柄を最大48時間以内に検察官へ送致しなければなりません。

この間、警察は、被疑者の取り調べや証拠収集を行い、検察官への送致の要否を判断します。48時間を超えても送致しない場合は、原則として釈放しなければなりません。

【送致後24時間】検察官による勾留請求

検察官は警察から身柄を受け取った後、24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留請求を行うか釈放するかを決めます。

勾留請求は、証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合に限られ、裁判官の許可が必要です。

【原則10日・最大20日】勾留・勾留延長

裁判官が勾留を認めた場合、原則10日間の身柄拘束となります。

また、やむを得ない事由があるときは、さらに最大10日間延長できます。つまり、逮捕から起訴・不起訴までの身柄拘束は、最長23日程度に及ぶ可能性があります。

検察官による起訴・不起訴の判断

勾留期間の満了までに、検察官は起訴するか不起訴とするかを判断します。起訴されれば裁判手続きへ、不起訴であれば即時釈放となります。

逮捕後72時間が重要だといわれる理由

逮捕後72時間が重要だといわれる理由

現行犯逮捕を含む刑事事件では、逮捕から勾留に移るまでの最大72時間が極めて重要といわれます。この期間にどのような対応を取るかによって、その後の身柄拘束の有無や事件の進行が大きく変わる可能性があります。以下では、72時間が分かれ道となる具体的な理由を説明します。

勾留による身柄拘束を阻止できるかどうかの分かれ道

逮捕後、警察は48時間以内に被疑者の身柄を検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留請求するかを判断します。この合計72時間以内に弁護士が動き、示談交渉や証拠提出などの活動を行えば、勾留請求を回避できる可能性があります。

もし勾留が認められると、原則10日、延長すれば最大20日間も身柄を拘束されるため、仕事や学校生活に重大な影響が出ます。そのため、勾留請求が行われる前の弁護活動が早期釈放を目指す上で重要なポイントとなります。

長期間の身柄拘束により解雇や退学のリスクが高くなる

勾留が長引けば、会社員は職場を欠勤し続けることになり、解雇や懲戒処分の対象となるおそれが高くなります。学生の場合も、欠席が続けば退学や休学に追い込まれる可能性があります。

また、長期間拘束されることで社会的信用を失い、事件が終結しても元の生活に戻ることが難しくなるケースも少なくありません。早期に釈放を実現することは、単に自由を取り戻すだけでなく、社会的ダメージを最小限に抑えるうえでも重要です。

現行犯逮捕後すぐに弁護士に依頼すべき理由

現行犯逮捕後すぐに弁護士に依頼すべき理由

家族が現行犯逮捕されてしまったときは、一刻も早く弁護士に依頼することが重要です。以下では、現行犯逮捕後すぐに弁護士に依頼すべき主な理由を説明します。

逮捕中は弁護士以外の人との面会ができない

逮捕後は、家族や友人であっても、面会が制限される場合があります。特に、接見禁止がつくと勾留に切り替わった後でも弁護士以外との面会は原則不可能です。

弁護士であれば、接見禁止中でも被疑者と面会(接見)でき、事件の状況や本人の意向を直接確認できます。これにより、家族への連絡や必要な準備も迅速に行えます。

勾留を阻止して早期の身柄解放を目指せる

弁護士は、勾留請求前に示談成立や証拠の提出などを行い、検察官に勾留請求を断念させる働きかけができます。

また、勾留決定後であっても、準抗告や保釈請求(起訴後)などの手段で早期の釈放を目指すことが可能です。初動が早ければ早いほど、身柄拘束の長期化を防ぐ可能性が高まります。

不利な供述調書を取られるリスクを回避できる

逮捕直後は精神的に動揺しているため、警察の誘導により不利な供述をしてしまう危険があります。

弁護士が早期に関与すれば、取調べの受け方や黙秘権の使い方を助言でき、不利な内容の供述調書が作られるのを防げます。これは後の裁判や不起訴交渉において非常に重要です。

家族が現行犯逮捕されてしまったときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

家族が現行犯逮捕されてしまったときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

家族が現行犯逮捕されたと知らされると、多くの方は突然の出来事に動揺し、何から行動すべきかわからなくなります。

しかし、逮捕直後の72時間以内に適切な対応を取らなければ、勾留されて長期間身柄を拘束される可能性が高まります。この期間をどう動くかが、その後の結果を大きく左右します。

グラディアトル法律事務所では、刑事事件に特化した弁護士が即日対応し、最短でその日のうちに警察署へ接見に向かいます。接見では、事件の経緯や本人の希望を直接確認し、取調べへの対応方法や今後の見通しをアドバイスします。さらに、示談交渉や証拠提出、検察官への意見書提出などを通じて、勾留請求の阻止や早期釈放を目指します。

また、当事務所は24時間365日相談可能で、深夜・早朝や休日でも迅速に対応することができます。刑事事件は時間との勝負ですので、迅速な対応ができるのは本人や家族にとって大きなメリットといえるでしょう。

もしご家族が現行犯逮捕された場合は、まず落ち着いて情報を整理し、すぐにグラディアトル法律事務所へご連絡ください。経験豊富な刑事弁護チームが、迅速かつ的確なサポートで、大切なご家族を守ります。

まとめ

現行犯逮捕は犯行直後に行われるのが原則ですが、判例上は30〜40分程度の経過や追跡が継続している場合には1時間以上でも適法とされることがあります。重要なのは「時間的・場所的接着性」です。

また、逮捕後は最大72時間以内に勾留されるか釈放されるかが決まり、この期間の対応が今後の結果を左右します。勾留を阻止し早期釈放を実現するには、逮捕直後から弁護士を依頼することが不可欠です。

ご家族が現行犯逮捕された際は、迷わず刑事弁護の経験豊富なグラディアトル法律事務所までご相談ください。

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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