「書類送検と逮捕は、どのような違いがあるの?」
「書類送検または逮捕された後の流れを知りたい」
「逮捕・書類送検で前科がつく?」
刑事事件に関するニュースを見ていると、「容疑者を書類送検」「〇〇容疑者を逮捕」といった言葉を耳にすることがあります。しかし、書類送検と逮捕は同じものではなく、手続きの意味やその後の流れに大きな違いがあります。具体的には、逮捕の場合は身体拘束を伴うのに対し、書類送検では身柄を拘束されないまま在宅のまま捜査が進む点が大きな違いといえるでしょう。
実際に自分や身近な人が刑事事件に関わってしまった場合、書類送検と逮捕の違いを正確に理解しているかどうかで今後の対応が大きく変わります。冷静に対応できるようにするためにも手続きの全体像を理解しておくことが重要です。
本記事では、
| ・書類送検と逮捕の定義や違い ・書類送検と逮捕のそれぞれの手続きの流れ ・書類送検と逮捕に関するよくある質問 |
などをわかりやすく解説します。
刑事事件に巻き込まれてしまった場合の見通しを理解し、正しい対応を取るための参考にしてください。
目次
書類送検と逮捕の違い|身体拘束の有無が大きな違い
刑事事件の手続きにおいて「書類送検」と「逮捕」はよく耳にする言葉ですが、その意味は大きく異なります。両者の最も大きな違いは、被疑者が身体を拘束されるかどうかです。以下でそれぞれを詳しく見ていきましょう。
書類送検とは
書類送検とは、警察が事件の捜査結果をまとめ、証拠や関係書類を検察に引き継ぐ手続きです。書類送検は、被疑者を逮捕せず、自宅にいながら手続きが進む「在宅事件」が対象となります。たとえば、軽い交通違反や万引きといった比較的軽微な事件で、逃亡や証拠隠滅の心配がないものが典型例です。
なお、書類送検の段階ではまだ「起訴するかどうか」は決まっていません。最終的に裁判になるかどうかは、検察官が受け取った資料をもとに判断します。
逮捕とは
逮捕とは、警察が被疑者の身柄を拘束し、警察署に連行する手続きです。逮捕後は最大48時間以内に検察官へ送致され、さらに必要に応じて裁判官に勾留が請求されます。勾留が認められると最長20日間、身柄を拘束される可能性があります。
逮捕が行われるのは、罪の重さが大きい事件や被疑者が逃げる、証拠を隠すおそれがあるときです。逮捕されると社会生活に大きな影響が出るため、会社や学校に知られるリスクも高まります。
書類送検と逮捕の違いまとめ
書類送検と逮捕の違いを整理すると以下のとおりです。
| 書類送検 | 逮捕 | |
| 身柄拘束の有無 | 身柄拘束なし | 身柄拘束あり |
| 対象事件の傾向 | 軽微な犯罪(例:万引き、軽い交通違反など)で、逃亡・証拠隠滅のおそれがない場合 | 重大事件や、逃亡・証拠隠滅の可能性がある場合 |
| 手続き後の流れ | 検察による取り調べ ↓ 起訴・不起訴の判断 | 検察に送致 ↓ 勾留請求 ↓ 勾留・勾留延長 ↓ 起訴・不起訴の判断 |
| 社会的影響 | 逮捕よりは小さいが、起訴されれば前科になる可能性あり | 会社・学校・家族に知られる リスクが高く、生活への影響が大きい |
書類送検の対象となる事件とは?|逃亡・証拠隠滅のおそれの有無
書類送検になるか逮捕されるかは、事件の内容や被疑者の状況によって変わります。ポイントとなるのは、被疑者に「逃亡」や「証拠隠滅」のおそれがあるかどうかです。
書類送検の対象になるケース
書類送検は、逮捕の必要がないと判断された事件が対象です。具体的には、以下のようなケースになります。
| ・比較的軽微な事件(例:万引き、軽度の交通違反、軽い傷害など) |
| ・被疑者が事件を認めており、逃げる可能性が低い場合 |
| ・証拠がすでに確保されており、隠滅の心配がない場合 |
| ・被疑者が定職についている、住所が安定しているなど、社会的に落ち着いている場合 |
このような場合、警察は身柄を拘束せずに在宅事件として捜査を進めます。
逮捕される可能性があるケース
罪が重い事件や被疑者に逃亡・証拠隠滅の可能性があると判断されれば、逮捕される可能性が高まります。たとえば、詐欺や強盗などの重大事件、被疑者が無職で所在が定まらない場合などは、逮捕される可能性が高いといえるでしょう。
書類送検された後の手続きの流れ

書類送検は逮捕と違い身柄を拘束されない手続きですが、その後の流れは逮捕された場合と同じく検察官が主体となります。以下では、書類送検後にどのような手続きが進むのかを見ていきましょう。
警察による取り調べ~書類送検
警察は、事件の通報や被害届を受けて捜査を行い、被疑者から事情を聴取します。その際、供述調書を作成し、証拠品や捜査記録を整理します。捜査が一通り終了すると、警察は事件の記録を検察官へ送付します。これが「書類送検」です。
書類送検の時点では、まだ起訴・不起訴は決まっていません。あくまで検察官に判断を委ねるための手続きであり、社会的制裁や前科が直ちに付くわけではありません。
検察官による取り調べ
書類送検を受けた検察官は、警察から送られた調書や証拠を精査します。そのうえで必要と判断した場合には、被疑者本人を検察庁に呼び出し、直接取り調べを行います。
在宅事件であっても、呼び出しに応じなければならず、正当な理由なく拒否すれば逮捕に切り替わる可能性もあります。
検察官の取調べは事件の核心部分を確認する目的があり、供述内容や反省の態度は、最終処分に大きく影響します。
起訴または不起訴の判断
検察官は、警察から送られた資料や証拠、被疑者の供述内容などを踏まえて最終的な処分を決定します。
証拠が不足していたり、事件の性質や反省の状況などを考慮して裁判にかける必要がないと判断されれば不起訴となります。一方で、裁判を通じて刑事責任を問うべきと判断すれば起訴されます。不起訴なら前科はつきませんが、起訴されて有罪判決を受ければ前科となります。
逮捕された後の手続きの流れ

逮捕されると被疑者の身柄が拘束された状態で捜査が進みます。在宅で進む書類送検と比べると、自由が制限される点で大きな違いがあります。以下では、逮捕された後の一般的な手続きの流れを説明します。
逮捕~警察による取り調べ
逮捕されると、警察署に連行されて警察官による取り調べを受けます。
この段階で被疑者には弁護士との接見が認められていますが、弁護士以外の第三者との面会は認められていませんので、家族や会社と自由に連絡を取ることはできません。
警察の取り調べが終わると、事件記録とともに検察官へ身柄が送致されます。
検察官に被疑者の身柄を送致
逮捕から48時間以内に、警察は被疑者を検察官へ送致します。この送致の手続きは「身柄送致」と呼ばれ、ここで検察官が事件の内容や証拠を確認し、勾留請求を行うかどうかを判断します。
検察官による取り調べ~勾留請求
検察官は、身柄を受け取った後、改めて詳細な取り調べを行います。そして、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断した場合には、裁判官に勾留を請求します。
この勾留請求の判断は、被疑者の処遇に大きな影響を与える重要な局面です。
勾留・勾留延長
裁判官が勾留を認めた場合、被疑者は留置場に収容され、身柄拘束が続きます。勾留は、原則10日間ですが、さらに必要があると認められると10日間延長され、合計最長20日間となります。この期間中、弁護士は接見を通じて被疑者の権利を守る活動を行い、家族への連絡や今後の方針について助言します。勾留中も取調べは続き、供述内容や態度が処分に直結します。
起訴または不起訴の判断
勾留の期間中または終了時に、検察官は最終的に起訴するかどうかを決定します。証拠が不十分または情状等を考慮して裁判にかける必要がないと判断されれば不起訴となり、身柄は解放されます。
一方、裁判で刑事責任を追及すべきと判断されれば起訴され、公判が開かれます。起訴後は保釈を請求できる場合がありますが、認められるかどうかは裁判所の判断に委ねられています。
書類送検と逮捕に関するよくある質問(Q&A)

書類送検や逮捕に関しては、多くの方が「前科との関係」や「社会生活への影響」について強い不安を抱きます。以下では、実際に寄せられることの多い質問とその回答を紹介します。
書類送検で前科は付く?
書類送検の段階では前科はつきません。これは警察が事件の捜査記録を検察官に引き渡す手続きにすぎず、処分が決定したわけではないからです。
前科となるのは、検察官が起訴し、裁判で有罪判決が確定した場合に限られます。不起訴処分になれば前科は残りませんので、前科を回避するなら、早い段階で刑事事件に強い弁護士に依頼することが重要です。
書類送検された後に逮捕されることはある?
通常、書類送検された事件が後から逮捕に切り替わることはありません。
ただし、検察官からの呼び出しに応じない、連絡を絶つといった行動をとった場合や新しい事実が明らかになり逃亡や証拠隠滅のおそれが高まった場合には、逮捕に至るケースもあります。
つまり、在宅事件であっても油断は禁物です。検察庁からの呼び出しには必ず応じ、誠実に対応することが逮捕を避けるために重要となります。
書類送検されたことは会社や学校にバレる?
書類送検の事実そのものが会社や学校に通知されることはありません。
ただし、マスコミに報道されるような事件であれば周囲に知られる可能性があります。また、呼び出しによる欠勤や休学などが続けば、間接的に疑われることもあります。社会生活への影響を最小限に抑えたい場合には、弁護士を通じた早期の対応が有効です。
書類送検されると必ず起訴される?
書類送検されたからといって必ず起訴されるわけではありません。
検察官は、証拠や事件の性質、被疑者の反省状況などを総合的に判断し、起訴・不起訴の決定を行います。初犯で軽微な事件の場合、不起訴となるケースも多くありますが、被害者への謝罪や示談が済んでいない場合や悪質性が高いと判断されると起訴される可能性が高まります。
起訴を避けるには、早めに弁護士に相談し、示談交渉などを進めることが大切です。
逮捕・書類送検に関するお悩みはグラディアトル法律事務所に相談を

逮捕や書類送検に直面すると、多くの方が「前科がつくのではないか」「会社や学校に知られてしまうのではないか」と強い不安を感じます。しかし、事件の結果はその後の対応によって大きく変わります。適切に示談交渉を進めたり、反省の意思を示したりすることで、不起訴となり前科を避けられる可能性も十分にあるのです。
グラディアトル法律事務所では、刑事事件を数多く扱ってきた弁護士が迅速かつ丁寧に対応いたします。ご依頼者様一人ひとりの状況を踏まえ、最善の解決策を共に考え、前科回避や社会生活への影響を最小限に抑えるために全力を尽くします。
刑事事件は時間との勝負です。少しでも不安を感じたら、ぜひ一度グラディアトル法律事務所へご相談ください。
まとめ
書類送検と逮捕は、いずれも刑事事件の重要な手続きですが、身体拘束の有無や生活への影響に大きな違いがあります。また、いずれもその後の対応次第で起訴・不起訴の結果が変わり、前科の有無にも直結します。
刑事事件は迅速かつ適切な対応が不可欠です。少しでも不安を感じたら、豊富な経験を持つグラディアトル法律事務所へ早めにご相談ください。
