「いきなり“令状があります”と言われたけど、立会人とか署名とか、何をどうすればいい?」
「警察が家中を調べるって本当?弁護士を呼べるの?後で違法だったと主張できるの?」
――こんな風に考えてる人、いませんか?
本記事では、住居での捜索差押えに必須とされる“立会人”の意味と役割を、条文・実務・判例に基づいてわかりやすく解説します。
| 【この記事の概要】 ・立会人とは誰か ・立会人が現場で行うこと ・立会い不十分な捜索が違法とされた判例のポイント ・弁護士を立会人にする三つのメリットと実務上の使い方 |
捜索差押えは“一度の判断ミス”が取り返しのつかない不利益に直結します。令状と押収品目録の写しを確保し、すぐに弁護士へ連絡することをオススメします。
目次
捜索差押における立会人とは?
立会人は「住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者」
捜索差押における立会人とは、文字どおり捜索差押手続に立会い、手続を監視する人です。刑事訴訟法114条は、住居等で捜索・差押えをするとき、住居主・看守者または「代わるべき者」を立ち会わせるよう明記しています。
家宅捜査で立会人が手続きの透明性を守る
法令により、家宅捜査に立会人をおくことは必須とされています。なぜなら、捜索差押に対して異議を述べられる者を必須とすることで、不当な捜索差押を防ぐためです。
例えば対象外の部屋に踏み込もうとしたり、リスト外の品を袋に入れようとした瞬間に、立会人のチェックが効きます。
そもそも家宅捜査とは何かについて詳しく知りたい人はコチラもご覧ください。
弁護士が立ち会うこともできる
専門家である弁護士を「代わるべき者」として選べば、現場での防御力は段違いに上がります。具体的には判例や実務経験に基づき、違法な捜査を止めることができます。弁護士を立ち会わせるメリット4つは4章にて記載しています。
実は、被疑者段階で「弁護人の固有の立会権」はありません。
しかし、住居主や看守者が「代わるべき者」として弁護士を指名することは許されています。
| 第百十四条 ② 前項の規定による場合を除いて、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内で差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行をするときは、住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者をこれに立ち会わせなければならない。これらの者を立ち会わせることができないときは、隣人又は地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。 |
これにより、捜査の現場において、法律のプロである弁護士を味方として立会わせることができます。
もっとも、抜き打ちで家宅捜査を行われてからだと、実際には間に合わないこともあります。
途中からの立会でも十分効果はありますので、令状に書かれていることの中身は覚えておいて、弁護士に伝えるようにしてください。
捜索差押における立会人は具体的に何をするのか?
令状の確認
第一にやることは、令状の中身のチェックです。
令状には、誰の家のどの場所を、どんな物について、いつまで有効かが書かれています。
立会人は、その記載と実際の捜索の動きが一致しているか、捜査を観察することが大事です。
令状の範囲を超えていないか、警察の行動を監視する
現場で最も重要なのは“捜査範囲を守らせること”です。
令状にない建物や物、人への強制捜査へ踏み込む動きがあれば、立会人が即座に異議を述べます。
押収される物をリストと照らし合わせて確認する
押収品目録は返還請求や違法主張の土台になるため、名称・型番・数量を実物と1点ずつ突き合わせ、誤りや余計な混入を防ぎます。
法令・実務でも押収目録の交付と管理が前提とされています。
立会人として署名
立会人は、手続に立ち会った事実を示すため、調書や押収品目録等に署名・押印を求められることが一般的です。
逆に言えば、その署名押印の時点が異議を唱える絶好のタイミングとなるでしょう。
押収物目録(コピー)を必ず受け取る
最後に“目録の受領”を確実に。押収があれば、その目録が交付されるのが原則で、これがないと返還請求も適法性のチェックも困難になります。
受領後は、弁護士に直ちに共有し、範囲逸脱や重複・誤記がないか精査してもらいましょう。
判例によれば、立会人による監視が十分に行えない捜索は違法

裁判所は、立会いの機会を奪った捜索・差押えや、被疑者本人への令状呈示を欠いた執行に違法を認め、その捜索差押に基づく証拠を却下したことがあります。
令和5年9月21日長野地裁松本支部決定は、被疑者は勾留中でしたが護送が可能なのに被疑者を立ち会わせず、令状の呈示もしなかった事案で、裁判所は110条・114条・222条違反の違法を指摘し、2回目以降の押収証拠の却下に至りました。
弁護士を立会人にすることの3大メリット
弁護士がいれば手続きの適法性をすぐにチェックできる
弁護士が到着した瞬間から、令状の記載・呈示手順・捜索範囲・押収物の関連性などを、その場で法的に点検できます。
違法・過剰があれば、即時に異議・記録化を行い、将来の排除主張につなげます。
不当な押収や範囲拡大に意見を述べてもらえる
弁護士は、令状記載と現場の動きのズレを指摘し、対象性の乏しい物・データの押収を限定させます。
住居主等の立会い義務や令状呈示義務という枠組みを盾に、拡大の芽をその場で摘むことが可能です。
その後の捜査・裁判への備えとしても有利に働く
現場で取った記録・異議申立て・目録精査は、その後の取調べ、勾留・不起訴交渉、公判での証拠排除まで一貫して効いてきます。
弁護士は裁判例を踏まえ、沈黙・供述の方針、示談や証拠保全のタイミングを設計します。
捜索の瞬間から法廷までをつなぐ道しるべを被疑者に対して示してくれるでしょう。
【まとめ】
| ・立会人は住居主等または代わるべき者で、捜索差押えに必須の存在。 ・立会における要点は〈令状確認/範囲監視/押収品目録の突合・署名/目録受領〉。 ・立会い機会を奪うと、その捜索差押の証拠は却下され得る。 ・弁護士を立会人にすると、適法性チェック・過剰押収の抑止・後続戦略化が可能。 |
立会も含め、刑事事件手続は非常に専門性が高く、また即時性の求められる難しい案件です。
迷ったら早急に弁護士へ、ぜひグラディアトル法律事務所へご相談ください。
