裁判での判決に納得できない場合は、再審請求によってやり直しを求めることができます。
しかし、再審請求は専門性の高い手続きであり、その効果や進め方について詳しく理解している人は少ないでしょう。
実際に再審請求を申し立てる場合も自力での対応は難しいため、弁護士のサポートは必要不可欠です。
本記事では、再審請求が認められる要件や手続きの流れなどを解説します。
再審請求が認められ、無罪を勝ち取った事例もまとめているので、参考にしてみてください。
目次
再審請求とは?
まずは、再審請求の概要を解説します。
再審に関する規定は、刑事訴訟法435条以下に定められています。

再審請求は一度確定した裁判のやり直しを求める手続きのこと
再審請求とは、一度確定した裁判のやり直しを求めるための手続きです。
日本では三審制が採用されており、ひとつの事件につき、地方裁判所・高等裁判所・最高裁判所で3回争うことができます。
そのうえで、控訴・上告などでは争えない状態になった確定判決には強い効力が持たされており、原則として覆すことはできません。
しかし、あとから重大な誤りや新しい証拠が見つかった場合、そのまま放置すると著しい不正義につながるおそれがあるため、救済手段として再審請求の制度が設けられています。
もっとも、確定判決の安定性を守る必要があるため、再審請求が認められる要件は非常に厳格です。
再審請求を請求したからといって、必ずやり直しになるわけではありません。
再審請求ができるのは有罪判決を受けた本人や直系親族など
再審請求ができる人は、法律で以下のように定められています。
- ◆ 有罪判決を受けた本人
- ◆ 有罪判決を受けた本人の法定代理人
- ◆ 有罪判決を受けた本人の直系親族(親・子ども)、配偶者、兄弟姉妹
誰でも自由にやり直しを求められると、判決の安定性が損なわれてしまうため、再審請求権者は判決による影響を受けやすい人物に限定されています。
たとえば、有罪判決を受けた本人が収監中で自ら動きにくい場合には、配偶者などの家族が弁護士とともに、再審請求をおこなうケースが一般的といえるでしょう。
また、有罪判決を受けた本人が死亡した場合でも、名誉回復のために、家族が再審請求を申し立てることも可能です。
再審請求に回数や期限の制限はない
再審請求には、原則として回数や期限の制限はありません。
何度でも、いつでも再審請求を申し立てることができます。
たとえば、一度再審請求が棄却された事件でも、その後に新たな証拠や証言が見つかった場合には、改めて申立てをおこなうことが可能です。
実際に再審請求が何度も繰り返されるケースは珍しくありません。
再審請求が認められる3つの要件
再審請求は簡単に認められるものではなく、厳しい要件を満たしている必要があります。
ここでは、再審請求が認められる3つの要件について詳しくみていきましょう。

無罪などを言い渡すべき新たな証拠が見つかった場合
無罪などを言い渡すべき新たな証拠が見つかった場合は、再審請求が認められやすいといえます。
これまで提出されていなかった証拠により、被告人のアリバイが裏付けられたり、真犯人の存在が示されたりしたケースです。
実際、再審請求の多くは、新たな証拠が見つかったことを理由におこなわれています。
ただし、新たな証拠が有罪・無罪に大きな影響を与えることが前提条件です。
単に心証を補強する程度の証拠を提出したところで、再審請求が認められる可能性は低いといえます。
証拠の偽造・変造・虚偽が証明された場合
証拠の偽造・変造・虚偽が証明された場合も、再審請求が認められる可能性が高くなります。
裁判所は証拠をもとに事実を認定し、判決を下します。
その土台となる証拠自体が事実を示していないのであれば、改めて審理する必要性が当然に生じるわけです。
たとえば、捜査段階で作成された供述調書が強要によるものであったことが発覚したり、鑑定書が虚偽のデータに基づいて作成されていたりしたケースなどが典型例といえます。
ただし、確定判決を覆す程度の偽造・変造・虚偽があったかどうかがポイントです。
その他の証拠によって確定判決の信頼性が担保されている状況では、再審請求が認められる可能性は低いと考えられます。
確定判決に関与した裁判官の職務犯罪が証明された場合
確定判決に関与した裁判官の職務犯罪が証明された場合も、再審請求は認められます。
裁判は、裁判官が公正な立場であることを前提としておこなわれるものです。
裁判官自らが収賄や職権乱用などに関与していたとすれば、中立性・信用性が根本から疑われるため、当然に裁判のやり直しが認められます。
もっとも、裁判官は厳しい規律のもとで職務を遂行しているため、職務犯罪が生じることはほとんどありません。
再審請求の流れ
再審請求にかかる手続きは、再審請求自体の妥当性を審理する「再審請求手続き」と、再審が認められた事件を審理する「再審公判手続き」に分けられます。
具体的にどのような流れで手続きが進んでいくのか、それぞれ詳しくみていきましょう。

再審請求手続き|再審請求自体の妥当性を審理する
再審請求手続きとは、再審請求の申立てから再審開始決定までの一連のプロセスを指します。
まず、原判決を出した裁判所(第一審の裁判所)に対して、請求理由などを記載した趣意書に原判決の謄本や証拠書類を添えて提出します。
このとき、前回の裁判時と同じ証拠を提出しても意味がないので、新証拠を揃えておかなければなりません。
その後、裁判所は提出された資料をもとに、検察官の意見を聴いたり、請求者に追加資料を求めたりして、再審請求の妥当性を審査します。
最終的に、要件を満たすと判断されれば再審開始決定が出され、事件を改めて審理する再審公判手続きへと進むことになります。
なお、再審請求が棄却された場合、それ以降、同じ理由で再審請求をおこなうことはできません。
再審公判手続き|再審が認められた事件を審理する
再審公判手続きとは、再審請求が認め裁判所が再審公判期日を指定し、証人尋問や新証拠の提出・検証、弁論がおこなわれますられたあとに、事件を改めて審理する手続きのことを指します。
裁判所が再審公判期日を指定し、証人尋問や新証拠の提出・検証、弁論がおこなわれます。
とはいえ、再審公判手続きに進んでいる時点で、相当な証拠があるということなので、前回の判決が覆る可能性は非常に高いです。
無罪になった場合は、被告人の名誉回復のために、判決要旨が官報・新聞に掲載されることになっています。
なお、有罪とされた場合でも、確定判決より重い刑罰を科されることはありません。
再審請求はほぼ棄却される?認められる確率は1%未満
統計上、再審請求はほぼ棄却されており、ごく一部しか再審開始に至っていません。
令和3年には442件の再審請求が受理されましたが、再審開始決定に至ったのはわずか1件にとどまっています。(参照:再審請求事件の既済人員数等|法務省)
つまり、再審請求が認められるのは全体の1%にも満たないのが実情です。
とはいえ、再審請求が認められ、無罪判決を勝ち取った事例も存在するので、可能性が低いからといって諦めるべきではありません。
再審請求が難しいといわれる理由
次に、再審請求が難しいといわれる3つの理由を解説します。

確定判決を覆す新たな証拠を見つけなければならない
再審請求が難しいといわれるのは、確定判決を覆すだけの新たな証拠を見つけなければならないからです。
「疑わしい」「納得できない」といった主観的な不満を述べるだけでは、再審請求は認められません。
事件当時のアリバイを裏付ける新証言や防犯カメラ映像、DNA型鑑定の結果など、前回の裁判を根本からやり直すレベルの証拠が必要です。
しかも、これまで提示したことのない証拠を用意しなければならないので、ハードルはさらに高くなります。
また、証拠をかき集めたとしても、裁判所に有効性や信憑性を認められなければ、再審請求を棄却されてしまいます。
検察が不服申立てをおこなうことがある
検察が不服申立て(抗告)をおこない、阻止しようとしてくるケースがあることも、再審請求が難しいといわれる理由のひとつです。
裁判所は検察の不服申立ても考慮したうえで最終的な判断を下すため、再審請求が棄却される可能性を高めることになります。
とはいえ、検察側も責任をもって被疑者を起訴し、裁判にかけているので、再審を求められることに反論するのは当然のことといえるでしょう。
一方で、検察の不服申立ては再審請求のハードルを上げるだけでなく、公判までの過程を長期化させる要因になるため、問題視されているのも事実です。
私選弁護人を雇う必要がある
再審請求をおこなうには、私選弁護人のサポートが必要不可欠です。
そのため、経済的な面で再審請求を諦める人も少なくありません。
再審請求では、新証拠の収集や趣意書の作成、裁判所とのやりとりなど専門的な手続きが多いので、弁護士費用も高額になりがちです。
依頼先や依頼内容によっても異なりますが、着手金だけで50万円程度、報酬金もあわせると100万円を超えるケースが一般的といえます。
また、難易度が高い事件の場合は、弁護士に受任を断られることもあります。
再審請求が認められた事例3選
再審請求は難しいとされていますが、実際に再審で無罪を勝ち取った事例も存在します。
ここでは、代表的な3つの事例をみていきましょう。
袴田事件|強盗殺人などによる死刑判決→再審で無罪
まず紹介するのは、再審で死刑判決を無罪に覆した「袴田事件」です。
| 事件の概要 | 1966年、静岡県清水市で味噌製造会社専務宅が全焼し、一家4人が刺殺された。従業員で元ボクサーの袴田氏が逮捕され、血染めの衣類などの証拠から、1980年に死刑判決が確定した。 |
| 再審請求の経緯 | 1981年の第1次再審請求は27年後に棄却。2008年の第2次再審請求でDNA鑑定などの新証拠が提出され、2023年に東京高裁が再審開始決定。 |
| 結果 | 2024年、静岡地裁が無罪判決を言い渡す。 |
(参照:袴田事件|日本弁護士連合会)
袴田氏は再審無罪判決により、48年ぶりに釈放されました。
再審制度の重要性を示す一方で、手続きが長期化しやすい課題を浮き彫りにした事例のひとつです。
足利事件|殺人・死体遺棄による無期懲役→再審で無罪
次に紹介するのは、無期懲役の確定判決を再審で無罪にした「足利事件」です。
| 事件の概要 | 1990年、栃木県足利市で4歳の女児が誘拐・殺害された。同市内に住んでいた菅家氏が逮捕され、DNA鑑定を主な理由として2000年に無期懲役が確定した。 |
| 再審請求の経緯 | 2002年に再審請求。2009年にDNA再鑑定の結果を受けて、再審開始決定。 |
| 結果 | 2010年、宇都宮地裁が無罪判決を言い渡す。 |
(参照:足利事件|日本弁護士連合会)
足利事件はDNA再鑑定が決め手となり、再審で無罪を勝ち取った事例です。
再審の厳しさを象徴しつつも、粘り強い証拠収集の重要性を物語っています。
湖東事件|殺人による懲役12年→再審で無罪
最後に紹介するのは、懲役12年の確定判決が出されたあとに、再審で無罪を勝ち取った「湖東事件」です。
| 事件の概要 | 2003年、滋賀県湖東記念病院で男性患者の人工呼吸器を外して殺害したとして、看護助手の西山氏が逮捕された。2007年、自白を主な理由として懲役12年の判決が確定した。 |
| 再審請求の経緯 | 2010年に第1次再審請求をおこなうも棄却。2012年に法医学鑑定などを新証拠として第2次請求。2019年、自然死した合理的疑いがあるとして再審開始決定。 |
| 結果 | 2020年、大津地裁が無罪判決を言い渡す。 |
(参照:湖東事件|日本弁護士連合会)
湖東事件では、検察官の不服申立てにより再審開始が1年以上遅れています。
再審請求にあたっては、不服申立てが大きな障壁になることを示した事例といえるでしょう。
再審請求に関してよくある質問
最後に、再審請求に関してよくある質問に回答します。

再審請求で無罪になった人はどれくらいいる?
日本弁護士連合会が支援した事件に限ると、これまでに20の事件で無罪判決が確定しています。(2026年1月現在)
| 事件名 | 確定判決 | 確定判決年(上訴棄却年) | 無罪判決年 |
|---|---|---|---|
| 吉田事件 | 無期懲役 | 1914年 | 1963年 |
| 弘前事件 | 懲役15年 | 1953年 | 1977年 |
| 加藤事件 | 無期懲役 | 1916年 | 1977年 |
| 米谷事件 | 懲役10年 | 1953年 | 1978年 |
| 滝事件 | 無期懲役 | 1953年 | 1981年 |
| 免田事件 | 死刑 | 1951年 | 1983年 |
| 財田川事件 | 死刑 | 1957年 | 1984年 |
| 松山事件 | 死刑 | 1960年 | 1984年 |
| 徳島事件 | 懲役13年 | 1958年 | 1985年 |
| 梅田事件 | 無期懲役 | 1957年 | 1986年 |
| 島田事件 | 死刑 | 1960年 | 1989年 |
| 榎井村事件 | 懲役15年 | 1949年 | 1994年 |
| 足利事件 | 無期懲役 | 2000年 | 2010年 |
| 布川事件 | 無期懲役 | 1978年 | 2011年 |
| 東電OL殺人事件 | 無期懲役 | 2003年 | 2012年 |
| 東住吉事件 | 無期懲役 | 2006年 | 2016年 |
| 松橋事件 | 懲役13年 | 1990年 | 2019年 |
| 湖東事件 | 懲役12年 | 2007年 | 2020年 |
| 袴田事件 | 死刑 | 1980年 | 2024年 |
| 福井女子中学生殺人事件 | 懲役7年 | 1995年 | 2025年 |
日弁連が支援していない事件も含めると、再審による無罪判決の事例はさらに多くなります。
再審請求の要件は厳しいものの可能性は残されているので、無罪を主張する際にはあきらめずに行動を起こすことが重要です。
再審が開始するまでに要する期間は?
再審請求から再審開始決定が下されるまでには、数年以上かかるケースが一般的です。
新証拠の検証や検察の不服申立てなど複数の厳格な手続きが生じるため、裁判所の審理は長期化する傾向にあります。
例えば、袴田事件では第1次再審請求の審理に約27年、第2次再審請求の審理に約15年を要しています。
精神請求に伴う手続きの迅速化に向けた法改正議論は、今も続いているところです。
再審請求をおこなう死刑囚が多いのはなぜ?
死刑囚が再審請求をおこなうのは無実を主張するためですが、死刑執行を遅らせる効果を狙っていることもあります。
法律上、再審請求に死刑執行を停止させる効力はありません。
しかし、実務上は、再審請求から再審開始決定もしくは棄却が決定するまで、死刑執行が見送られる傾向にあります。
そのため、時間稼ぎの手段として、再審請求を繰り返しおこなう死刑囚がいるのも事実です。
民事裁判でも再審請求はできる?
極めて限定的なケースでは、民事裁判でも再審請求ができます。
再審が認められるのは、主に以下のような再審事由がある場合です。
- ◆ 証拠の偽造・変造が明らかになった場合
- ◆ 証言や鑑定の虚偽が明らかになった場合
- ◆ 判決の基礎となった別の刑事判決・行政処分が覆された場合
- ◆ 裁判官が職務上の罪を犯していた場合
民事裁判においても、確定判決を簡単に覆すことはできません。
再審請求は、あくまでも例外的な措置であることを理解しておきましょう。
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本記事のポイントは以下のとおりです。
- ◆ 再審請求は確定判決のやり直し手続きのこと
- ◆ 再審請求ができるのは本人・直系親族などで、回数・期限の制限はない
- ◆ 再審請求が認められるのは新証拠が見つかった場合などに限られる
- ◆ 再審請求が認められる可能性は低いが、成功例は実在する
再審請求が認められれば、判決が確定した裁判をやり直してもらうことができます。
冤罪で刑罰を受けている場合は、一刻も早く行動を起こすべきです。
しかし、再審請求には専門的な知識が必要になるため、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
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