「玄関で“令状です”と言われて固まった…。何から確認すべき?」
「許可状があれば拒めないって本当?スマホまで持っていかれるの?」
こんな風に考えてる人、いませんか?
本記事では、ガサ入れ=家宅捜索の基本から、捜索差押許可状の中身(場所・対象物・期間)、実際の流れ、押収の及ぶ範囲、やってはいけない対応までを、はじめての方でもわかる順番で整理します。
あわせて、立会いや記録のコツ、そして専門家に相談する意義も具体的に紹介します。
この記事の概要
・ガサ入れは令状(捜索差押許可状)があって初めて強制力が生まれる ・NG対応:居留守や感情的な反発・漫然的な同意。まずは確認と記録 ・迷ったら早期に専門家へ。違法や過剰の歯止め、返還や今後の戦略に直結 |
いま玄関で対応中なら、まず深呼吸。
許可状の名義・住所・対象物・期間を静かに確認し、押収目録の控えや写真を残してください。
判断を誤ると取り返しがつきません。不安がひとかけらでもあるなら、すぐに弁護士へ相談を。
目次
捜索差押許可状とは何か
捜索差押許可状とは、「ガサ入れ」を適法に行うための令状
「ガサ入れ」とは法律用語ではなく、家宅捜索を指す言葉です。
そして、「捜索差押許可状」と呼ばれる正式な許可状がある時だけ、「ガサ入れ」は強制力を持ち、拒めません。
なぜかというと、家宅を調べたり物を持ち去ったりするのは国民の権利制限です。そのため、裁判官のチェックにより捜査機関の権利濫用を防いでいます。
以上の内容について、刑事訴訟法上で明記されています。
第二百十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。 引用URL: https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131#Mp-Pa_2-Ch_1 |
裁判官が「必要だ」と認めて初めて発付される
結論から言えば、許可状は警察の独断では出ません。裁判官が「証拠がある程度そろい、必要だ」と判断して初めて発付されます。
理由は、プライバシーを強く侵害する手続だからです。令状主義の下、場所や物の特定、合理的な疑いがあるかなどが審査されます。
許可状には「場所」「対象物」「日時」が書かれている
許可状は“どこを、何のために、何を押さえるか”が具体的に書かれています。ここから外れた捜索・差押えは原則できません。
対象外の部屋や、記載のない品物にまで手が伸びそうになったら、許可状の文言で線引きできます。
例えば「居宅・スマートフォン」とあるなら、車内や未記載のパソコンは原則対象外です。
捜索差押許可状に基づき「ガサ入れ」される流れ
まずインターホン越しに警察が「令状」を示す
実務では、到着後に許可状を示して手続が始まります。
適法性の根拠が許可状であるため、示さずに強行されるなら、任意のお願いの域を出ません。
現場では令状を読み上げる/見せるのが通例です。
中に入り、許可状の範囲に沿って部屋を調べる
執行は許可状どおりの“範囲内”で行われます。
令状で「捜索すべき場所」「差押える物」が限定されています。
現実には複数名で手分けし、目的物が小さい事件では細かく確認されます。
捜索の様子は立ち会うことができる(署名を求められることも)
在宅者は原則立ち会うことができます。
押収品のリスト(目録)が作られ、確認や署名を求められることがあります。
リストの控えや写真は大切に保管を。
夜中や早朝などでも、裁判所の判断で執行されることがある
実務では在宅を狙って早朝に来ることが多く、場合によっては夜間執行可の記載がある令状で夜間の開始もあります。
なぜかというと、証拠隠滅のリスクを下げ、確実に対象者に接触するためです。
捜索差押許可状でどこまで押収されるの?
押収される対象は令状に記載されている
持ち去れるのは、許可状に挙がっている“押収物”に限られます。
これは、強制処分の範囲を明確にして、過剰な差押えを防ぐ仕組みだからです。
現場では「スマートフォン」「通帳」など具体的に記載されます。
書類や現金など、事件に関係ありそうな物も持っていかれる
許可状の記載事件との関連が見込まれる書類・通帳・現金などは差押え対象になります。
犯罪収益や取引の痕跡は重要な証拠で、捜査機関は許可状の範囲で確保します。
たとえば詐欺・横領では通帳や帳簿、送金記録、領収書などが対象となります
パソコンやスマホはほぼ必ず対象になる
許可状にデジタル機器が書かれていれば、PCやスマホは優先的に押収され、中身も解析されます。
理由は、通信履歴・位置情報・画像・取引アプリなど、事件立証に直結するからです。
実際、薬物・詐欺・情報流出など幅広い事件で端末押収が中心です。
もっとも、暗証番号やクラウドの扱いまで不必要に答える必要はありません。
ガサ入れ時のすべき対応・すべきでない対応とは?

令状の名義・住所・対象物・押収物のリストを確認すべき
名義・住所・罪名・場所・押収物・有効期間を確認しましょう。そのうえで、さらに押収目録の控えを必ず手に入れましょう。
スマホで許可状と目録を撮影し、冷静に「ここは対象ですか?」と確認するだけで、無用な広がりを抑えられます。
警察に言われるがままに答えるべきではない
手続の中心は「捜索と差押え」。
質問回答は義務ではありません。落ち着いて、必要最小限にとどめましょう。
「その点は後で確認します」と静かに伝え、感情的な応酬は避けるのが得策です。
居留守は無意味、すべきではない
居留守は得策ではありません。在宅を狙って来ていますし、必要な処分で開錠等が取られることもあります。
実際「夜明けに来た」「何度もインターホン」という例は少なくありません。
最終的には開けることになりますし、証拠隠滅を疑われ逮捕等のリスクもあがるので、無駄な居留守はやめましょう。
後から弁護士に見せるために状況を記録しておくと有利
その場の写真・動画・メモ・押収目録の保存は、後日の返還や違法主張のカギになります。
記録が重要なのは、「言った・言わない」で警察になあなあにされることを防ぐことができます。
スマホで許可状・現場配置・押収品の箱・リスト全体を淡々と撮るだけでも、後々かなり役立ちます。
捜索差押の際に弁護士の立会いは可能?
結論として、弁護士は立会いでき、押収目録の確認も可能です。
「住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者」は立ち会うことができるとされています。
住居主などが弁護士を「これらの者に代わるべき者」と指定すれば、弁護士がガサ入れに立ち会うことは可能です。
弁護士相談、立ち合いのメリット3選

捜索のやり方が法律に合っているかチェックしてくれる
専門家が許可状の書きぶりや執行手続を点検すると、違法の芽を拾いやすくなります。
理由は、範囲逸脱・対象外押収・夜間要件の不備など、現場で見落としがちな論点が多いから。
許可状の「場所・物・期限」や押収目録の整合性を精査し、問題があれば返還請求や不服申立ての準備が進みます。
押収範囲が広すぎるとき、意見を述べてくれる
専門家であり、場に慣れている弁護士であれば、押収範囲が広すぎる時に歯止めになってくれます。
現場は緊張しやすく、目的外に及びがちです。許可状の条項を根拠に交渉する力が必要です。
結果として、対象外の部屋・機器・書類への波及を防ぎやすくなり、後の返還や防御の見通しも良くなります。
捜査の様子から、その後の戦略を一緒に考えてくれる
弁護士が捜索差押許可状によるガサ入れに立ち会えば、捜査の今後を予見し、捜査に対する戦略を立てることができます。
なぜなら、どの物を重視して押さえたかで、向こうの狙いが見えるからです。
押収物と質問のテーマが、その後の任意聴取・逮捕・勾留・起訴の流れに直結します。
戦略を立てることで、不起訴や減刑を計画的に狙うことができます。
よくあるQ&A
Q:捜索差押許可状が出たら逮捕?
A:必ずしも逮捕につながるわけではない
ガサ入れは主に“証拠集め”。その結果や他の証拠の状況しだいで任意聴取にとどまることもあります。逮捕の要件は別途必要です。
Q:押収されたものは返却されるか
A:原則返却されるが、されないものも多い
証拠としての必要がなくなれば返還されますが、違法物や放棄物などは戻りません。返還時期も事件処理後になるのが一般的です。
まとめ

· ガサ入れは令状(捜索差押許可状)があって初めて強制力が生まれる · 許可状には「どこで・何を・いつまで」が記載、範囲外は原則NG · 流れ:令状提示→入室→範囲内で捜索→押収→目録作成・確認 · 押収は記載物が中心。端末(PC・スマホ)は対象になりやすい · NG対応:居留守・感情的反発・漫然同意。まずは確認と記録 · 立会い・撮影(許可状と目録)・最低限の受け答えで自己防衛 |
迷ったら早期に法律の 専門家・弁護士へ。違法捜査や過剰な捜査の歯止め、返還や今後の刑事手続における戦略に直結します。