任意同行とは?拒否するリスクや応じたときの流れ、対処法を解説

任意同行とは?拒否するリスクや応じたときの流れ、対処法を解説
弁護士 若林翔
2025年10月09日更新

「任意同行とはどのような手続きなの?」

「任意同行を拒否することはできる?」

「任意同行に応じた後の具体的な流れを知りたい」

警察から突然「任意同行をお願いします」と声をかけられたら、多くの人は驚きと不安で頭が真っ白になってしまうでしょう。任意同行はあくまで「任意」の協力であり、逮捕のように強制的に身柄を拘束されるものではありません。しかし、実際には断りにくい状況で行われることが多く、その後の取り調べの内容によっては逮捕に発展するケースも少なくありません。

任意同行は、犯罪捜査において被疑者や関係者に対して行われるほか、職務質問の延長で求められることもあります。表面的には「自由に拒否できる手続き」であるにもかかわらず、実際にその場で拒否すると逮捕のリスクが高まる場合もあり、慎重な判断が必要です。

本記事では、

・任意同行の意味や「任意出頭」「逮捕」との違い
・警察が任意同行を求める典型的なケース
・任意同行を拒否できるのか、応じた場合にどのような流れになるのか
・任意同行を求められた際に取るべき正しい対処法

などについて詳しく解説します。

任意同行に応じるかどうかは、その後の刑事手続きに大きな影響を与える可能性があります。突然の場面に直面して慌てないためにも、あらかじめ正しい知識を身につけておくことが大切です。

任意同行とは?

「任意同行」という言葉は、ニュースなどでも耳にしますが、実際にどのような意味を持ち、逮捕や任意出頭とどう違うのかを正しく理解している人は少ないかもしれません。以下では、任意同行の基本的な意味と類似する手続きとの違いを説明します。

任意同行の意味

任意同行とは、警察官が被疑者や参考人に対し、事件の捜査のために警察署などへ同行するよう求める手続きのことをいいます。ポイントは「任意」という言葉のとおり、本人の自由意思に基づくもので、強制的に連れて行かれるものではありません。

警察は、逮捕状を持たない場合、強制的に身柄を拘束することはできないため、その代替手段として「任意同行」が用いられているのです。

ただし、現実には「拒否できます」と説明されることはほとんどなく、同行を断りづらい状況で行われることが多いのが実情です。そのため、形式上は任意であっても、事実上は半ば強制に近い形で行われる場合もあることを理解しておく必要があります。

任意同行と任意出頭・逮捕の違い

任意同行と混同されやすい用語に「任意出頭」や「逮捕」があります。それぞれの違いを整理しておきましょう。

・任意同行警察官がその場で対象者に対し「警察署まで来てください」と求めるもの。対象者の自由意思に基づくため、形式上は拒否が可能。
・任意出頭後日、警察署や検察庁に来てもらうよう「呼び出し」をする手続き。書面や電話で通知されることが多く、こちらも任意であるため強制力はない。
・逮捕裁判所の令状に基づき、強制的に身柄を拘束する手続き。逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に行われ、本人の意思では拒否できない。

このように、任意同行と逮捕の最大の違いは「強制力の有無」にあります。

任意同行は、あくまで「任意」ですが、同行後の取り調べ内容によっては逮捕に発展するケースもあり、軽く考えてしまうのは危険です。

任意同行を求められる2つのケース

任意同行は、主に「犯罪捜査のために被疑者に対して行う場合」と「職務質問の延長として行う場合」の2つに分けられます。それぞれのケースごとに任意同行の意味合いや位置づけが異なるため、違いを理解しておくことが重要です。

犯罪捜査のために被疑者に任意同行を求めるケース

警察が被疑者と疑われる人物に対して、事件の捜査を進めるために任意同行を求めるケースです。

警察は、逮捕令状がない段階では強制的に被疑者の身柄を拘束できません。そのため、まずは任意同行という形で対象者を警察署に呼び、事情聴取や取り調べを行います。対象者が任意に応じれば、警察署に同行し、取り調べを行うことが可能になります。

この場合、任意同行は「逮捕前の任意の協力」という位置づけですが、取り調べの内容によってはそのまま逮捕に移行することもあります。つまり、形式上は自由に同行を断れるはずでも、実際には「事実上の逮捕に近い段階」として機能しているのが現実です。

職務質問の際に任意同行を求めるケース

もう一つのケースは、警察官が職務質問を行っている最中に、対象者に任意同行を求める場合です。

職務質問は、警察官職務執行法に基づいて行われ、通行人などに対して犯罪の予防や捜査のために質問するものです。職務質問の場面で「ここで質問を続けると本人に不利になる」「交通や周囲に迷惑がかかる」と判断された場合、警察署で改めて事情を聴くために任意同行を求めることができます。

たとえば、繁華街でのトラブルや交通事故現場など、人目が多く落ち着いた聞き取りができない状況では、警察署での任意同行が要請されやすいといえます。

ただし、この場合も同行はあくまで任意であり、強制力はありません。しかし、実際に拒否した場合には不審の目を向けられ、状況次第ではその後逮捕に切り替わるリスクも否定できません。

任意同行を拒否できる?

任意同行は、「任意」と名がついているとおり、原則として拒否することが可能です。しかし、現実にはその場で拒否することで状況が悪化したり、逮捕に発展したりするリスクもあります。以下では、任意同行の拒否の可否とそのリスク、そして基本的な対応方針について説明します。

拒否できるが逮捕のリスクが高くなる

法律上、任意同行には強制力がなく、同行を断っても処罰されることはありません。つまり、任意同行を拒否することは可能です。

ただし、警察が任意同行を求めている背景には、対象者を被疑者として疑っている場合や重要な参考人と見ている場合が多くあります。そのため、ここで拒否をすれば、「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」があると判断され、警察が逮捕に踏み切る可能性が高まります。

特に、重大事件や証拠が揃っているケースでは、任意同行を拒否したこと自体が逮捕の決定打になることもあるため、注意が必要です。

任意同行には基本的には素直に応じるべき

任意同行を拒否すると上記のようなリスクがあることから、任意同行を求められた場合、よほどの事情がない限り「素直に応じる」ことが基本的な対応となります。無理に拒否をしてその場で逮捕に切り替えられるよりも、まずは任意同行に応じた上で、弁護士の助言を受けながら適切に対応する方が安全です。

もちろん、応じるにしても漫然と警察署に行くのではなく、任意同行の理由を確認すること、弁護士に相談しておくこと、家族や職場に連絡しておくことが重要です。こうした備えをしておくことで、不要な不利益を被るリスクを減らせます。

任意同行を求められたときの対処法

任意同行を求められたときの対処法

任意同行はあくまで「任意」とはいえ、警察に求められた以上、その後の捜査や逮捕に発展する可能性を否定できません。だからこそ、無防備に応じるのではなく、事前に取るべき対応を押さえておくことが大切です。以下では、任意同行を求められた際に実際に行うべき3つの対処法を説明します。

任意同行を求める理由を確認する

任意同行を求められたとき、まず確認すべきは「なぜ自分が警察署に行かなければならないのか」という理由です。

警察官に対して、

・事件に関する被疑者として呼ばれているのか
・参考人として事情を聴きたいだけなのか

を明確に尋ねるようにしましょう。

警察が「事件に関与している疑いがある」と考えている場合、事情聴取の内容によってはそのまま逮捕に発展する危険があります。理由を確認することで、自分の立場を把握し、今後の対応を判断しやすくなります。

警察署に行く前に弁護士に相談する

任意同行を求められたときは、可能な限り警察署に行く前に弁護士へ相談してください。

弁護士に相談することで、

・今後逮捕される可能性が高いかどうか
・取り調べで答えるべきこと・答えるべきでないこと
・警察とのやりとりの注意点

といったアドバイスを受けられます。

また、弁護士に依頼していれば、万が一その場で逮捕に切り替わった場合でも、すぐに接見(面会)に来てもらえるため安心です。任意同行を軽く考えず、早めに専門家のサポートを受けることが重要です。

家族や職場に連絡する

任意同行に応じる前には、必ず家族や職場に一報を入れておきましょう。

なぜなら、任意同行後にそのまま逮捕されてしまうケースもあるからです。逮捕されると最長72時間は外部と自由に連絡が取れなくなり、家族や職場に事情を説明することができなくなります。

あらかじめ事情を伝えておけば、万が一身柄拘束となった場合でも不要なトラブルや不信感を避けることができます。

任意同行に応じた後の流れ

任意同行に応じた後の流れ

任意同行に応じると、警察署での取り調べやその後の刑事手続きに進んでいきます。任意同行は、逮捕と違い強制力がないものの、その後の対応次第では逮捕や勾留に移行するリスクもあるため、流れを事前に理解しておくことが大切です。以下では、任意同行後に想定される一般的な手続きの流れを説明します。

警察署での取り調べ

任意同行に応じると、まず警察署で取り調べが行われます。

ここでは事件の関与について質問されたり、状況を説明するよう求められたりします。任意であるため途中で帰宅することも理論上可能ですが、実際には「もう少し聞きたいことがあるため協力をお願いします」と言われるため、数時間にわたる取り調べとなることが多いです。

この取り調べでの供述内容が、その後の処遇に大きく影響します。軽率な発言を避けるためにも、あらかじめ弁護士に相談しておくことが望ましいでしょう。

逮捕の必要性・理由がないと判断されれば在宅事件として捜査が進む

取り調べの結果、逃亡や証拠隠滅のおそれがなく、逮捕の必要性がないと判断された場合には、そのまま帰宅を許されます。この場合、事件は「在宅事件」として扱われ、今後は呼び出しによる事情聴取や検察への送致手続きが進められます。

在宅事件であっても有罪判決や起訴に至る可能性はあるため、任意同行後も気を緩めず弁護士のサポートを受けながら対応していくことが重要です。

逃亡・証拠隠滅のおそれがある場合は逮捕・勾留による身柄拘束

一方、取り調べの中で逃亡の危険や証拠隠滅のおそれがあると判断されれば、その場で逮捕されることもあります。逮捕されると最長72時間は警察署に留置され、さらに検察官の請求と裁判官の判断によっては10日間(最大20日間の勾留が続く可能性があります。

つまり、任意同行に応じたつもりが、結果的に長期の身柄拘束に発展するケースもあるため、十分な警戒が必要です。

最終的に検察官が起訴または不起訴の判断をする

任意同行後の捜査を経て、最終的には検察官が集められた証拠や供述をもとに、起訴するか不起訴にするかを判断します。

不起訴となれば事件は終了しますが、起訴された場合は裁判に進み、有罪か無罪かが判断されます。このように任意同行が刑事手続きのスタート地点になり得ることを理解しておくべきです。

任意同行に関するよくある質問(Q&A)

任意同行に関するよくある質問(Q&A)

以下では、任意同行に関してよく寄せられる質問にQ&A形式で答えていきます。

任意同行されやすい時間帯はある?

特に法律で時間帯が制限されているわけではありませんが、実務上は早朝や日中に任意同行が行われることが多いといわれています。

これは、取り調べやその後の手続きをスムーズに進めるため、警察が1日の活動時間を確保したいと考えるためです。

ただし、職務質問をきっかけとする任意同行については、時間帯に関係なく求められます。

弁護士に警察署まで付き添ってもらうことはできる?

可能です。任意同行は任意の手続きであるため、弁護士に依頼すれば 一緒に警察署へ行くことができます。

ただし、取り調べの場面では弁護士は同席することはできません。そのため、警察署に行く前に弁護士と打ち合わせをしておき、どのように対応すべきかアドバイスを受けておくことが重要です。

任意同行後の取り調べを録音することはできる?

任意同行後の取り調べを録音することは、法律上禁止されてしませんので、録音することも可能です。

ただし、録音が警察官に気付かれると、データの消去を求められるため、録音するなら警察官にバレないようこっそりと行うべきでしょう。

任意同行後の取り調べにかかる時間は?

事件の内容や警察の判断によって大きく異なりますが、数時間から半日程度かかるのが一般的です。場合によっては夕方まで取り調べが続くこともあります。

取り調べが長引き、途中で帰宅を申し出ても、実際には「もう少し協力してほしい」と引き留められるケースも多いため、事実上は長時間拘束される可能性があることを理解しておくべきです。

任意同行を求められたときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

任意同行を求められたときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

任意同行は「任意」とはいえ、実際には拒否が難しく、その後の取り調べ次第で逮捕や勾留につながる重大な局面です。警察から突然声をかけられたとき、ほとんどの方は冷静な判断ができず、不利な供述をしてしまうリスクがあります。

だからこそ、任意同行を求められたら一人で対応せず、すぐに弁護士へ相談することが重要です。弁護士であれば、同行に応じるべきかの判断、警察署での立ち振る舞い、取り調べで答えるべきこと・答えるべきでないことまで、具体的かつ実践的なアドバイスを行えます。また、万一その場で逮捕に切り替わった場合でも、迅速に接見に駆けつけ、依頼者の権利を守る行動を取ることができます。

グラディアトル法律事務所は、刑事事件に関する豊富な実績を持ち、任意同行の段階から数多くの依頼者をサポートしてきました。スピード対応を強みとし、24時間365日、警察対応に関するご相談を受け付けています。任意同行は一刻を争う場面だからこそ、経験豊富な弁護士が即座に動くことが何より重要です。

「警察から任意同行を求められた」「このあと逮捕されるのではないか」と不安を抱えたときは、迷わずグラディアトル法律事務所にご連絡ください。初期対応の速さが、逮捕回避や不起訴獲得といった有利な結果へ直結します。

まとめ

任意同行は、形式上「任意」とされていますが、実際には断りにくく、取り調べの内容次第では逮捕や勾留に発展する重大な局面です。正しい知識と備えがなければ、不利な供述をしてしまい将来に大きな影響を及ぼす可能性があります。

警察から任意同行を求められたときは一人で対応せず、必ず弁護士に相談してください。経験豊富なグラディアトル法律事務所が迅速に対応し、あなたの権利を守ります。 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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