「誤認逮捕とはどのような状態を指す言葉なの?」
「誤認逮捕されたらどのような不利益が生じる?」
「誤認逮捕されたときの対処法を知りたい」
誤認逮捕とは、無実の人が犯罪の容疑者として誤って逮捕されてしまうことをいいます。ドラマやニュースの中だけの出来事に思えるかもしれませんが、実際には誰にでも起こり得る深刻な問題です。家族が突然逮捕されれば、本人だけでなく周囲の生活や仕事、信用にも大きな影響が及びます。しかも、逮捕歴は無実であっても前歴として残り、将来にわたって不利益を受ける可能性があります。
こうした誤認逮捕は、捜査機関の判断ミスや証拠の誤解釈などで生じます。中には報道によって名前や顔が広まり、取り返しのつかない損害を負った事例もあります。しかし、逮捕後すぐに正しい対応をとることで、被害を最小限に抑えたり、その後の被害回復につなげたりすることも可能です。
本記事では、
・誤認逮捕の基本知識 ・逮捕直後に家族がとるべき行動 ・誤認逮捕されたときの賠償請求の方法 |
などを詳しく解説します。
弁護士に依頼するべき理由についても触れますので、いざというときの備えとしてぜひ最後までご覧ください。
目次
誤認逮捕とは?
誤認逮捕は、誰にでも起こり得る深刻な問題です。無実であるにもかかわらず逮捕されることで、本人の人生や家族の生活に大きな影響を与えます。以下では、誤認逮捕の基本的な意味と、似た概念である「冤罪」との違いについて整理しておきましょう。
誤認逮捕の意味
誤認逮捕とは、本来無関係の人を犯罪の容疑者と誤って判断し、警察が逮捕してしまうことを指します。事件の捜査では、証拠や目撃証言、防犯カメラ映像などをもとに容疑者を特定しますが、その過程で誤りが生じると、まったくの無実の人が逮捕される危険があります。
たとえば、目撃者の記憶違いや防犯映像の不鮮明さ、捜査当局の思い込みなどが重なると、本当の犯人ではない人物が拘束されてしまうことがあります。こうした誤認逮捕は、逮捕された本人だけでなく、その家族や職場にも深刻な影響を及ぼします。
誤認逮捕と冤罪の違い
誤認逮捕とよく混同される概念に「冤罪(えんざい)」があります。両者は似ていますが、以下のような違いがあります。
・誤認逮捕無実の人が、捜査段階で誤って逮捕されること。 その後、不起訴や無罪判決により誤りが明らかになる。 ・冤罪無実であるにもかかわらず、裁判で有罪判決が下されてしまうこと。 誤認逮捕がきっかけとなり、誤った捜査や判断が続いた結果生じる。 |
つまり、誤認逮捕は「逮捕時点での誤り」であり、冤罪は「有罪判決まで至った誤り」と位置付けられます。誤認逮捕の段階で正しい対応が取られれば冤罪を防ぐことができますが、対応が遅れたり不十分だったりすると、取り返しのつかない冤罪につながる危険があるのです。
誤認逮捕された実際の事例

誤認逮捕は、決して珍しいことではなく、実際に複数の事例が報道されています。以下では、近年報じられた具体的なケースを紹介し、誤認逮捕がもたらす深刻な影響について見ていきましょう。
2度の誤認逮捕により精神的苦痛を受けた男性が1900万円の賠償を求めて提訴
2023年、大阪府警に脅迫容疑などで2度も誤認逮捕された20歳代の男性が、国や大阪府などに対して計約1900万円の損害賠償を求めて提訴しました(出典:読売新聞)。
男性は、知人女性をSNSで脅したとされる脅迫罪やリベンジポルノ防止法違反の容疑で2度にわたり逮捕され、計42日間も身体を拘束されました。しかしその後、警察は誤認逮捕であったことを認め、真犯人とされる「なりすましの男」が逮捕・起訴され、有罪判決が確定しました。
訴状によると、男性は一貫して容疑を否認していたにもかかわらず、警察官から「犯人はあなたしかありえない」と決めつけられ、検察官からも「100%犯人だと思っている」と発言されたとされています。男性は「名誉や尊厳を踏みにじられ、精神的苦痛を受けた」と主張し、違法な取り調べと不当な身体拘束を問題視しています。
この事例は、誤認逮捕が長期化・複数回に及ぶと、社会的信用や精神面に甚大な被害をもたらし、賠償問題に発展する典型例といえます。
運転手ではない同乗者を過失運転致傷罪の疑いで誤認逮捕
2024年9月、愛知県西尾市で発生した交通事故において、実際には運転していなかった同乗者の男性が、過失運転傷害の疑いで誤って逮捕されるという事案がありました(出典:NHK)。
事故は、乗用車が電柱に衝突した後、走ってきたトラックと衝突し、トラックの運転手がけがをしたものです。警察は現場の目撃者から「運転席から出てきた」との証言を得て、乗用車に同乗していた30歳のベトナム人男性をその場で逮捕しました。ところが、実際の運転者は事故後に現場を離れており、約30分後に戻ってきて「自分が運転していた」と申告。ドライブレコーダーを確認した結果、誤認逮捕であることが判明しました。
男性は当初から「自分は運転していない」と否認していたにもかかわらず、警察が目撃情報をうのみにして十分な確認を怠ったことが原因とされています。西尾警察署は誤認逮捕を認めて釈放し、副署長が「大変申し訳ない」と謝罪しました。
このケースは、供述や目撃証言だけに頼って容疑者を特定すると誤認を招く危険があることを示しており、客観的証拠の確認がいかに重要かを物語っています。
脅迫罪の要件を満たしていない状況での誤認逮捕
2024年12月、福岡県警小倉北署で、脅迫の疑いによる誤認逮捕が発生しました。同署は、28歳の男性が刑事課員を名指しして「殺しに来た、絶対にやってやる」などと発言したとして現行犯逮捕しましたが、その後の確認で脅迫罪の構成要件を満たしていないことが判明しました(出典:山陽新聞)。
逮捕当時、名指しされた刑事課員本人は現場に不在であったため、脅迫罪の成立に必要な「害悪の告知」が行われていなかったのです。男性は約5時間後に釈放され、警察は誤認逮捕を認めて謝罪しました。誤認の理由として「逮捕に関わった警察官の法解釈に関する知識不足」が挙げられており、同署は再発防止に努めるとコメントしています。
このケースは、刑法の要件を正確に理解しないまま逮捕が行われると、短時間であっても無実の人が不当に拘束される危険があることを示しています。
誤認逮捕されたらどうなる?|生じる不利益や影響

誤認逮捕は、たとえ短時間で釈放されたとしても、本人や家族の人生に大きな影響を与えます。実際に逮捕・拘束されることで、日常生活や社会的信用は簡単に揺らいでしまい、その後の人生に長期的なダメージを残すことも少なくありません。以下では、誤認逮捕によって生じる代表的な不利益について整理します。
長期間の身柄拘束の可能性
誤認逮捕の場合でも、容疑が晴れるまでには時間がかかることがあります。逮捕から勾留請求、さらには勾留延長と続くと、最長23日間も身柄を拘束される可能性があります。
実際に、過去の事例では40日以上拘束されたケースも報じられており、その間に仕事を失ったり、学業や家庭生活に深刻な支障が生じたりする危険があります。無実であるにもかかわらず社会から隔離されること自体、大きな精神的負担になります。
逮捕歴(前歴)が残る
誤認逮捕は、無罪や不起訴で終わったとしても、「逮捕された」という記録は前歴として警察に残ります。前歴は、一般に公開されることはありませんが、将来の捜査で警察に参照される可能性があります。
そのため、誤認であっても逮捕歴が残ることは、再び無関係の事件で疑いをかけられやすくなるなど、不当な不利益を受ける危険性があるのです。
誤った情報が報道されたことによる日常生活への影響
誤認逮捕が報道されてしまうと、その後に無実が判明しても社会的信用を完全に回復することは困難です。新聞やインターネットニュースに名前や顔写真が掲載されれば、情報が半永久的に残り、転職や進学、近隣住民との関係にまで悪影響を及ぼす可能性があります。
また、SNS上での拡散や風評被害により、家族も含めて精神的なダメージを受けるケースも少なくありません。
誤認逮捕されたときの対処法

誤認逮捕に巻き込まれてしまった場合、冷静に適切な対応をとることが何よりも重要です。逮捕後の言動ひとつで、その後の捜査や裁判の流れが大きく変わる可能性があります。以下では、誤認逮捕の被害を最小限に抑えるために取るべき具体的な対処法を紹介します。
一刻も早く弁護士と面会する
逮捕された本人や家族は、すぐに弁護士へ連絡することが大切です。弁護士は、法律の専門家として、容疑者の権利を守り、取り調べや勾留の適法性をチェックします。弁護士が早期に介入することで、不当な勾留や供述の強要を防ぐことができます。
取り調べでは黙秘権を行使する
取り調べにおいて、無理に話そうとすると不利な供述が調書に残される危険があります。
被疑者には、黙秘権が保障されていますので、事実関係が整理できていない段階では「黙秘します」と伝えるのが賢明です。弁護士と相談した上で必要な範囲の供述をすることが、無実を証明するもっとも安全な方法です。
供述調書への署名・押印をしない
警察や検察が作成する供述調書には、取り調べ時の発言が要約されて記載されます。
しかし、その内容が正確に反映されていないケースや誘導的に作られた調書が作成されるケースもあります。
供述調書に署名押印をしてしまうと後から内容を修正・撤回することが困難になるため、内容に少しでも納得できない部分があるときは、署名・押印を拒否するようにしてください。
身の潔白を証明する証拠を集める
誤認逮捕から早期に解放されるためには、無実を示す客観的証拠を提示することが有効です。たとえば、当時のアリバイを証明する防犯カメラ映像、スマートフォンの位置情報、第三者の証言などが挙げられます。
警察は、犯人だと決めつけて捜査することがあるため、捜査機関に任せきりでは自分の無実を証明することはできません。誤認逮捕されたときは、家族や弁護士と協力して、積極的に証拠を収集することが重要です。
誤認逮捕により損害が生じたときは賠償請求が可能

誤認逮捕によって不当に自由を奪われたり、社会的信用を失ったりした場合、被害者は、国に対して賠償請求ができる可能性があります。補償制度は複数あり、適用の可否や金額はケースによって異なります。以下では、代表的な3つの補償・賠償の方法を紹介します。
誤認逮捕後、不起訴になった場合|被疑者補償規程に基づく請求
誤認逮捕後に不起訴となった場合、その理由が「罪とならず」や「嫌疑なし」であれば、被疑者補償規程に基づいて補償を請求することができます。
この制度は、不当に身柄を拘束された人の権利を守るために設けられているもので、1日あたり1000円~1万2500円の範囲で補償金が支給されます。勾留日数に応じて金額が算定されるため、長期間拘束されていた場合は数十万円単位となることもあります。
ただし、「嫌疑不十分」や「起訴猶予」といった理由で不起訴となった場合は対象外となる点に注意が必要です。請求には、専門的知識が必要になりますので、弁護士にサポートしてもらいながら手続きを進めていきましょう。
誤認逮捕後、起訴されて無罪判決が確定した場合|刑事補償法に基づく請求
逮捕後に起訴され、裁判にかけられた末に無罪判決が確定した場合は、刑事補償法に基づいて補償を請求することができます。
この制度は、無実であることが司法判断によって明確になった場合に適用され、1日あたり1000円~1万2500円の補償金が支給されます。勾留期間に加えて、懲役刑などで実際に刑務所に収容されていた日数についても補償の対象となるため、被害者の生活や名誉回復に大きな意味を持ちます。
実際の補償額は裁判所が判断し、数十万円から数百万円に及ぶケースもあります。誤認逮捕によって社会的信用を失った場合でも、この補償を通じて一定の救済を受けることが可能です。
国家賠償法に基づく請求もできるが認められる可能性は低い
誤認逮捕によって精神的・経済的な損害を受けた場合、国家賠償法に基づいて国に対して損害賠償請求を行うことも可能です。
この請求は、捜査機関の違法行為や明らかな過失が認められる場合に成立しますが、単なる捜査ミスでは賠償が認められにくく、ハードルは高いのが実情です。
もっとも、国家賠償請求には、被害者の救済だけでなく「誤認逮捕という重大な問題を社会に公表し、再発防止につなげる」という意義もあります。過去には数百万円から1000万円を超える損害賠償が争われた事例も存在し、無実であるにもかかわらず人生を大きく損なわれた人々が声を上げています。
こうした請求には弁護士の専門的な支援が不可欠です。
誤認逮捕されたときに弁護士に依頼すべき3つの理由

誤認逮捕は、誰にでも起こり得る深刻な問題です。無実を証明するためには専門的な知識と経験を持つ弁護士の力を借りることが不可欠です。以下では、弁護士に依頼すべき3つの具体的な理由を紹介します。
不利な供述調書の作成を防ぐためのアドバイスができる
警察や検察の取り調べでは、供述調書が極めて重要な証拠として扱われます。
しかし、取り調べの場では緊張や心理的な圧力から、事実とは異なる発言をしてしまうケースも少なくありません。さらに、警察官が誘導的な質問を繰り返したり、不利な部分だけを強調して調書にまとめることもあります。こうした状況で不用意に署名してしまえば、無実であっても「自白」として扱われ、後の裁判で不利に働く恐れがあります。
弁護士がいれば、黙秘権の行使や署名を拒否すべき場面を的確に判断し、正確な供述が残るよう助言してくれるため、誤認逮捕による冤罪リスクを大幅に軽減できます。
早期釈放の実現に向けたサポートが受けられる
逮捕後に勾留されれば、最長で20日以上も自由を奪われる可能性があります。その間に職場や学校に逮捕されたことが知られると、社会的信用を失ったり生活基盤を失う危険も高まります。
弁護士は、このような不利益を避けるため、勾留の必要性がないことを裁判所に訴え、早期釈放に向けて活動します。また、弁護士は、証拠の収集や証人の確保も行い、無実を裏付ける体制を早期に整えてくれるため、誤認逮捕による身柄拘束からの早期釈放を実現することができます。
起訴されたときの無罪立証を任せられる
万が一、誤認逮捕から刑事裁判へと進展した場合、一般人だけで無罪を勝ち取るのは極めて困難です。そのため、誤認逮捕されたときはすぐに刑事事件に強い弁護士に依頼することが重要です。
弁護士は、依頼者の無実を証明するために、供述調書や証拠の矛盾点を指摘したり、防犯カメラの映像解析、第三者によるアリバイ証言、専門家の意見書などを活用して合理的に無罪を立証します。さらに、取り調べ過程の違法性や捜査手続きの不備を追及することで、検察側の主張を崩すことも可能です。
誤認逮捕が起訴に発展しても、刑事事件に強い弁護士がいれば適切な弁護活動を通じて冤罪を防ぎ、名誉を回復するための強力な味方になってくれます。
誤認逮捕の疑いがあるときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

誤認逮捕は「自分には関係ない」と思っていても、誰にでも突然起こり得ます。無実であっても、一度逮捕されれば職場や学校、家族との関係に大きな影響を及ぼし、精神的なダメージも計り知れません。さらに、警察や検察の取り調べの場で不用意な発言をしてしまえば、不当な供述調書が作成され、冤罪に発展する可能性すらあります。
このような状況を打開するために必要なのは、早い段階で刑事弁護の経験豊富な弁護士に相談することです。グラディアトル法律事務所は、誤認逮捕や冤罪事件に数多く対応してきた実績を持ち、的確な初動対応で依頼者の権利を守り抜きます。
私たちが重視しているのは「迅速さ」と「徹底した弁護活動」です。誤認逮捕では時間が経てば経つほど不利になるため、取り調べ前や逮捕直後から弁護士が動くことで、早期の釈放や不起訴の獲得につながります。また、万が一起訴に至ったとしても、緻密な証拠分析と主張で無罪を勝ち取るために尽力します。
「自分は誤解されているのでは」「事実と違うのに逮捕されてしまった」と感じたときは、一人で抱え込まず、すぐにグラディアトル法律事務所にご相談ください。あなたの未来を守るため、全力でサポートします。
まとめ
誤認逮捕は、誰にでも起こり得る深刻な問題です。無実であっても逮捕や拘束によって社会的信用や生活に大きな影響が及び、場合によっては冤罪へ発展する危険もあります。だからこそ、早い段階で弁護士に相談し、適切な対応を取ることが何より重要です。
誤認逮捕されてしまったときは、刑事弁護の実績豊富なグラディアトル法律事務所にご相談ください。