取り調べは録音できる?録音で供述調書を修正させた事例とその方法

取調べ 録音
弁護士 若林翔
2025年12月26日更新

「警察の取調べを、こっこり録音できないだろうか…」

取調べを前に、このように考えている方もいるかもしれません。結論から言うと、取調べを録音すること自体は、違法ではありません。

もちろん、現実的には、録音が発覚するとすぐに止めるよう注意されますし、仮に「録音させて欲しい」と警察官に伝えても、認められることはほぼないでしょう。

ただ、違法・不当な取調べを抑止する効果があるのは確かですし、なかには、こっそりと録音する方もいます。さらにいえば、実際に録音はせずとも「録音したい」と強く要求すること自体が、捜査機関に対する牽制になることもあります。

この記事では、まず取調べの録音についての注意点や、実際に弊所グラディアトル法律事務所であった事例を解説します。

そのうえで、そもそも今でも違法・不当な取調べが行われているのか(録音の必要性)、そして取調べに対してどうに対処していくべきなのか、といった実践的な内容もお伝えしていきます。

警察の取り調べで役立つ情報が満載ですので、ぜひ最後まで読み進めてください。

違法・不当な取調べは録音できる

取調べは録音できる

被疑者自身が取調べの様子を録音する行為は違法ではありません。

取調べの録音・録画を禁止する法律はないため、たとえ取調官に隠れて録音しても、それが犯罪になることはないのです。

むしろ、違法・不当な取調べから自分の身を守るための防御策としては、絶大な効果が期待できます。

ただ、実際に取調べの場で警察に「録音してもいいですか?」と尋ねても、まず間違いなく止められます。そこで、もし録音するのなら「取調官にバレないように…」となるのですが、当然、その秘密録音が発覚すれば大きなトラブルに発展するおそれがあります。

そのため、「犯罪でない」からといって自己判断で録音するのではなく、まずは弁護士に連絡して、取調べでの対応策を相談しましょう。

【事例】「取調べを録音したい」と伝えて、供述調書を修正させたケース

あくまでも「弁護士のアドバイスのもと」という前提ですが、ときには「録音してください」と強く要求すること自体が、違法な取調べを防ぐために効果的なケースもあります。

弊所グラディアトル法律事務所の弁護士が担当した事件でも、「取調べを録音してください」と毅然とした態度で伝えたことで、違法な取調べを阻止できたという事案がありました。

この事件のご相談者様は、(おそらく職安法で摘発するために)供述調書に嘘の職業を記載されていたのですが、担当刑事にそれを指摘しても取り合ってもらえませんでした。

そこで、弊所弁護士のアドバイスに従い、担当刑事に「取調べを録音してください」と伝えたそうです。すると、当初は「できないって言ってんだろ!」と恫喝されたものの、毅然とした態度で録音を要求していくと、しばらくして正しい内容に修正してもらえた、とのことでした。

このケースでは、「取調べの録音」そのものが認められたわけではありませんが、録音の要求が違法な取調べに対する抑止力となったことは間違いないでしょう。

ただし、繰り返しますが、あくまでも「弁護士のアドバイスのもとで」という前提です。

安易に録音を要求しても、認めてもらえることはありませんし、かえって警戒されて、状況を悪化させてしまうリスクもあります。

弁護士のアドバイスを受けて、その都度、適切な意思表示を行うことが、ご自身の権利を守ることにつながるのです。

■グラディアトル法律事務所代表、若林の著書「歌舞伎町弁護士」より引用

「見せられた供述調書の内容がおかしかったんです。僕はデリヘルの代表なのに、職業欄がスカウトになっていたり……だから、バヤシ先生から習った通り、『言っていないことが書かれた供述調書にはサインしません。取調べを録音してください』と言いました。」

すると、刑事は「できないって言ってんだろ!」と大声を出した。それでも浅野さんが動じないと、しばらく放置してから、ようやく浅野さんの発言を正確に記した供述調書を作成したという。

(引用:若林翔「歌舞伎町弁護士」(小学館新書))

一部の事件では、取り調べの録音・録画が義務化された

2019年6月1日に施行された改正刑事訴訟法により、一部の重大事件においては、取調べの全過程を録音・録画すること(取調べの可視化)が警察・検察に義務付けられました。

ただし、この録音・録画が義務化の対象とされているのは、以下のようなごく一部の事件に限られています。

① 裁判員裁判対象事件(殺人や強盗致死傷など)

② 検察官の独自捜査事件(政治家や公務員による汚職事件、企業犯罪など)

つまり、私たちが日常的に耳にする窃盗、詐欺、暴行、傷害、多くの薬物事件など、ほとんどの事件は可視化の義務対象外なのです。さらに、逮捕前の被疑者や被疑者以外の参考人の取調べも録音・録画義務付けの対象とはなっていません。

実際、日本弁護士連合会(日弁連)によれば、可視化の対象となる事件は、起訴されて裁判が開かれた全事件のうち3%にも満たないとされています。(参考/日本弁護士連合会「取調べの可視化」)

まだまだ多くの取調べが、可視化されていない密室で行われているのが現状といえるでしょう。

録音はするべき?違法・不当な取調べは今でも行われている

なかには、「現代でも、本当に違法・不当な取調べなんて行われているのだろうか?」と思う方もいるかもしれません。しかし、残念ながら違法・不当な取調べは現代においても存在します。

そのため、取調べをこっそりと録音するかはさておき、「違法・不当な取調べがされる可能性もある」という前提で取調べに臨むことは、ご自身の身を守る上で必要といえるでしょう。

以下、実際の判例やデータを紹介します。

「取調べで誤った供述調書が作成された可能性がある」と裁判所が認めた判例

比較的最近の2023年にも、取調べによって誤った供述調書が作成された可能性を裁判所が認めて、無罪判決を言い渡した事件があります。

「東京地判令和5年10月3日」より引用

「被告人は、その後、公判供述と同旨の説明を警察官にしたものの、供述調書に記載してもらえなかったなどと説明しているところ〜(略)〜本件の捜査担当の警察官の態度からすれば、その可能性を否定はできない。」

この事件では、被告人が警察官に話した内容が、供述調書に正しく記載されなかった可能性が指摘されました。

公判の結果、「本件の捜査担当の警察官の態度からすれば、その可能性を否定はできない」と裁判所が判示し、警察官が虚偽の供述調書を作成した可能性があることを判決で認めています。

警察庁の確認・巡察でも監督対象行為が、毎年確認されている

上記のような取調べを防ぐため、警察の監督官庁である警察庁でも、違法・不当な取調べが行われていないかを監督する規則を設けています(被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則)。

その規則によって警察庁の確認・巡察が実施されているのですが、毎年のように、警察庁が「不適切」と判断した「監督対象行為」が確認されています。

監督対象行為の件数の推移

監督対象行為の類型令和2年令和3年令和4年令和5年令和6年
やむを得ない場合を除き、身体に接触すること10231
直接又は間接に有形力を行使すること(上記に掲げるものを除く)44222
殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること42401
一定の姿勢又は動作をとるよう不当に要求すること00000
便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること52343
人の尊厳を著しく害するような言動をすること30211
合計17813108

(出典:警察庁「令和6年における被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則の施行状況について

件数だけを見ると、決して多いわけではないと感じるかもしれません。しかし、これはあくまでも警察内部の調査で発覚した数字です。

弊所の弁護士が日々ご依頼を受ける中での感覚としても、捜査機関から脅迫的な言動を受けたり、不当に自白を迫られたりするケースは、少なからずあるように感じます。

録音以外で違法・不当な取り調べから身を守る方法

取調べの録音も大切ですが、それ以外の側面から対処していくことも同じように大切です。ここからは、録音以外で違法・不当な取調べから身を守る方法をみていきます。

録音以外で違法な取調べから身を守る方法

黙秘権を「適切に」行使する

まず大切なのが、取調べで黙秘権を「適切に」行使することです。

何人も、取調べにおいて、自分に不利益な供述を強要されることは一切ありません(憲法第38条1項)。なかには、取調官が高圧的な態度で迫ってくることもありますが、話したくないこと、自分に不利になりそうなことについては、話す義務がないのです。

取調官の質問について「まずい」と思ったら、「黙秘権を行使します。」と毅然とした態度で伝えましょう。

ただし、この黙秘権の行使はあくまでも、「適切に」行う必要があります。

いくら法律で認められた権利だからといって、取調官の質問に対して「完全黙秘」を続けると、「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断され、勾留請求の対象となってしまうおそれがあるからです。

事実であることは素直に認めて反省の態度を見せる、しかし自分に不利益な内容や、事実と異なる点については黙秘する、というイメージで取調べに対応しましょう。

納得できない調書にはサインしない

取調べの最後に、取調官はあなたの話した内容をまとめた「供述調書」を作成し、署名と押印を求めてきます。

ここで絶対に覚えておいてほしいのが、調書の内容が自分の話した内容と少しでも違うと感じた場合、サインをする必要は一切ないということです。

調書への署名押印を拒否する「署名押印拒否権」も被疑者に保障された権利です。

刑事訴訟法 第百九十八条

5 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

なかには、取調官から「一旦サインしたら家に帰れますよ。」などと言われることもありますが、一度でも署名・押印すると、たとえ誤っていても、すべてを認めたことになります。後の裁判でその内容を覆すには、大変な労力が必要です。

調書の内容に少しでも納得できなければ、必ず訂正を求めましょう。それでも捜査官が応じない場合は、ためらわずに「署名・押印は拒否します」と断固として告げてください。

すぐに弁護士を呼んでもらう

結局のところ、自分の身を守るために最も大切なのは、すぐに弁護士を呼ぶことです。

取調べを録音することも、確かに「違法・不当な取調べに対する抑止」という意味で効果はあるのですが、そもそも認めてもらえないケースがほとんどです。

それよりも、すぐに警察官や検察官に「弁護士を呼びたい」と伝えて、弁護人の到着を待ちましょう。

黙秘権を行使して下手なことは一切話さない、もちろん調書にもサインしない、そしてひたすら弁護人の到着を待つ、といった対応を徹底することが、違法・不当な取調べを防ぐ最も効果的な方法です。

違法な取り調べを防ぐために弁護士ができること

では、依頼を受けた弁護士には、具体的に何を行うのでしょうか。ここからは、違法な取調べを防ぐために弁護士にできることを説明していきます。

違法な取調べを防ぐために弁護士ができること

取り調べにどう対応するかをアドバイスする

被疑者のもとに到着したら、まずは接見室で事件の内容を詳しく聞き取り、取調べに対する最適な防御方針を打ち立てます。

たとえば、先ほどお伝えした「黙秘権」についても、事件の内容によっては、完全黙秘を貫くことが最善とは限りません。実際には、どの部分を話し、どの部分を黙秘するのか、刑事事件に関する深い知識と経験に基づいた判断が求められます。

被疑者の精神的な支えとなり、過酷な取調べに対して、どのように向き合っていけばいいのかを具体的にアドバイスしていきます。

取り調べ中も近くで待機して、不当な取り調べに抗議する

日本の法律では、残念ながら取調べに弁護士が立ち会うことは認められていません。

もちろん取調べの立ち会いを求めていく場合もあるのですが、実務上、認められるケースは少ないです。

しかし、だからといって何もできないわけではありません。

取調室に入れなくても、近くで待機しておき、休憩時間などを利用して取調べの状況を確認していく、といった対応はできるからです。なかには、あえて休憩時間を多めに挟んでもらい、その都度、状況を確認していくような場合もあります。

この点、取調べ中に弁護人との接見の申し出があった場合の対応について、最高検察庁発出の依命通達では、以下のように記載されています。

検察官が取調べ中の被疑者又は取調べのために検察庁に押送された被疑者について弁護人等から接見の申し出があった場合の対応について

(2)申し出があった時点において現に取調べ中の場合であっても、できる限り早期に接見の機会を与えるようにし、遅くとも、直近の食事又は休憩の際に接見の機会を与えるよう配慮されたい

(最高検企第206号 平成20年5月1日)

つまり、取調べ中であっても、弁護人との接見は認められる可能性が高いということです。

もし暴言や脅迫といった問題行為が明らかになれば、すぐに取調官に対して抗議の申入れを行い、是正を求めていきます。あくまでも事実上の行為なので法的効果はありませんが、抗議によって取調官の態度が緩和されるケースも実際にあります。

さらに、供述調書にサインする場合は、調書にサインする前に内容を報告してもらい、本当にサインしてよいのか等をお伝えしていきます。

万が一逮捕されたら、すぐに身柄解放に向けて弁護活動を開始する

万が一逮捕されたときも、弁護士は早期の身柄解放を目指して活動を開始します。

たとえば、逮捕された後、勾留が決定する前の段階で、検察官に対し「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」と主張する意見書を提出し、勾留そのものを防ぐための活動を行います。

もし勾留が決定してしまった場合でも、その決定が不当であるとして裁判所に不服を申し立てる「準抗告」や、起訴された後に保釈を求める「保釈請求」といった手続きを行い、早期の釈放を目指すことも可能です。

警察・検察の違法な取り調べが不安な方はグラディアトル法律事務所へご相談ください

これから警察の取調べを受ける方、ご家族が逮捕されてしまい、不当な取調べを受けないかご心配な方は、ぜひグラディアトル法律事務所にご相談ください。

弊所グラディアトル法律事務所は、これまで数多くの刑事事件を手がけ、違法・不当な取調べの阻止や、早期の身柄解放に向けた弁護活動に力を注いできました。

「警察の呼び出しにどう対応すればいいか分からない」「威圧的な取調べをされないかが不安」「事実と違う供述調書にサインしてしまいそうだ」など、どんなお悩みでも構いません。一人で抱え込まず、まずは私たちにご相談ください。

弊所では、ご本人、ご家族からのご相談を24時間365日受け付けています。

まとめ

最後に、この記事のポイントをまとめます。

取調べは録音できる?

・被疑者自身が取調べを録音する行為は違法ではない。
・ただし、取調官に許可を求めてもまず断られる。
・発覚すればトラブルになるリスクもあるため、自己判断での録音は危険。

公的な録音・録画(可視化)制度

・一部の事件では、取調べの録音・録画が義務化されている。
・ただし、対象となっている事件は非常に少ない

違法・不当な取調べの実態

・違法な取調べは今でも存在する。
・「事実と違う供述調書が作成された可能性がある」と裁判所が認めるケースもある
・警察内部の調査でも、「監督対象行為」が毎年確認されている

録音以外で、違法・不当な取調べから身を守る方法

・黙秘権を適切に行使する
・納得できない調書にはサインしない
・すぐに弁護士を呼んでもらう

違法な取調べを防ぐために弁護士ができること

・黙秘権の行使方法など、取調べへの具体的な対応策をアドバイスする。
・取調べ中に近くで待機し、不当な行為があれば即座に抗議する。
・万が一逮捕された場合、早期の身柄解放に向けて活動する。

以上です。

取調べに関するお悩みや、ご家族が逮捕されてしまったなど、刑事事件でお困りの方は、ぜひグラディアトル法律事務所にご相談ください。

グラディアトル法律事務所は、これまで数多くの刑事事件を取り扱ってきました。それぞれの弁護士が得意分野をもっておりますので、各事件の特性に応じた充実した刑事弁護をご提供させていただきます。

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弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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