「在宅事件とはどのような事件を指す言葉なの?」
「在宅事件になる可能性のある具体的なケースを知りたい」
「在宅事件の被疑者になった場合、どのような点に注意すればいい?」
刑事事件と聞くと「逮捕されて警察に連行される」というイメージを持つ方も多いですが、すべての事件がそうとは限りません。比較的軽微な事件や被害者との示談が成立している場合などは、逮捕されずに自宅で日常生活を送りながら捜査を受ける「在宅事件」として扱われるケースがあります。
在宅事件では、身柄を拘束されないため一見すると負担が軽いように思えますが、捜査が長期化したり、途中で逮捕に切り替わる可能性もあり、決して安心できる状況ではありません。また、警察や検察の呼び出しに応じて取調べを受ける必要があるため、適切な対応を取らなければ不利な結果につながるおそれもあります。
本記事では、
| ・在宅事件の基本的な意味や身柄事件との違い ・在宅事件となるケース ・捜査の流れや注意点 |
などについてわかりやすく解説します。
在宅事件に巻き込まれた方やご家族が今後の対応を判断するうえで参考になる内容をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
在宅事件とは?
「在宅事件」とは、刑事事件の被疑者であっても逮捕・勾留といった身柄拘束を受けず、自宅で通常の生活を続けながら警察や検察の捜査を受ける事件を指します。
一般的に刑事事件と聞くと「警察に逮捕されて身柄を拘束された状態で取調べを受ける」というイメージを持たれがちですが、必ずしもそうではありません。比較的軽微な犯罪や逃亡・証拠隠滅のおそれが小さいと判断される場合には、逮捕されることなく「在宅のまま」手続きが進められるのです。
在宅事件は、「逮捕されないから安心」と考えてしまう方もいますが、必ずしもそうとは言えません。手続きの進み方は、身柄事件と同じであり、途中で状況が変われば逮捕に切り替わる可能性もあるからです。さらに、在宅事件の場合は拘束期間の制限がないため、捜査や処分が長引くことも少なくありません。そのため、在宅事件に関わった場合でも、刑事事件であることに変わりはなく、慎重な対応が求められます。
在宅事件と身柄事件との違い
刑事事件は大きく分けると「在宅事件」と「身柄事件」の2種類があります。両者の最大の違いは、被疑者が身柄を拘束されているかどうかです。
身柄事件とは
「身柄事件」とは、被疑者が逮捕・勾留され、警察署の留置場や拘置所に収容された状態で捜査が進められる事件を指します。
逮捕後は、最長72時間の身柄拘束となり、さらに裁判所の許可が下りれば勾留されて最長20日間、身柄を拘束されたまま取調べを受けることになります。
身柄事件は、自由が大きく制限されるため、仕事や家庭生活に重大な影響が生じるのが特徴です。
在宅事件と身柄事件の比較表
| 在宅事件 | 身柄事件 | |
|---|---|---|
| 身体拘束 | なし(自宅で生活可能) | あり(留置施設で生活) |
| 捜査方法 | 任意出頭による取り調べ | 逮捕後に取り調べ |
| 時間制限 | 特になし | 逮捕72時間+勾留最長20日 |
| 社会生活への影響 | 比較的少ないが不安な状態は続く | 仕事・家庭への影響が大きい |
| 逮捕の可能性 | あり | すでに逮捕済み |
このように、在宅事件と身柄事件の違いは「身柄拘束の有無」に集約されます。在宅事件は、一見すると安心できるように思えますが、捜査や処分の結果によっては逮捕・起訴される可能性がある点を軽視すべきではありません。
在宅事件になる可能性があるケース

すべての刑事事件が在宅事件として扱われるわけではありません。一般的に、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと判断された場合に在宅事件となります。以下では、具体的に在宅事件として扱われやすいケースを紹介します。
重大な事件ではないケース
殺人や強盗など社会的影響の大きな重大事件では、逃亡のおそれがあるため身柄を拘束して捜査するのが通常です。これに対し、万引きや軽度の交通違反、器物損壊といった比較的軽微な犯罪は、在宅事件として進められることが少なくありません。
事件の性質や刑罰の重さが、在宅事件か身柄事件かを分ける重要なポイントになります。
被害者との示談が成立しているケース
被害者と示談が成立している場合、加害者が逃亡したり証拠を隠滅したりする必要性が低いと判断されます。そのため、逮捕・勾留に至らず在宅事件として処理される可能性が高まります。
示談は、不起訴処分を目指すうえでも大きな意味を持つため、早期に弁護士を通じて交渉することが重要です。
罪を認めているケース
被疑者が容疑を否認せず、素直に罪を認めている場合には、証拠隠滅のおそれが小さいと考えられます。この場合も、わざわざ逮捕して身柄を拘束する必要性は低いとされ、在宅事件となるケースが多いといえます。
ただし、罪を認めているからといって必ず在宅事件になるわけではなく、事件の内容や社会的影響の大きさも考慮されます。
安定した身分を有し、身元がはっきりとしているケース
定職に就いている、住居が明確であるといったように社会的基盤が安定している場合には、逃亡のおそれが小さいと判断されやすくなります。逆に、無職で定住先がない場合などは、逃亡の可能性が高いとみなされ、逮捕・勾留されるリスクが大きくなります。
そのため、社会生活が安定しているかどうかも、在宅事件か身柄事件かを分ける大きな要素といえます。
在宅事件における刑事手続きの流れ

在宅事件では、逮捕されて身柄を拘束されることはありませんが、刑事手続き自体は身柄事件と同様に進んでいきます。以下では、典型的な在宅事件の流れを段階ごとに説明します。
事件が発覚し、警察による捜査が開始
まず、事件が発覚すると警察が捜査を開始します。被害者や目撃者からの通報、被害届の提出、あるいは警察官が現認したことなどをきっかけに捜査が始まります。
身柄事件と異なり、この段階で逮捕に至らない場合は、在宅事件として進められる可能性があります。
警察から任意出頭の要請
警察は、被疑者に対して「任意出頭」を求めることがあります。
在宅事件では身柄拘束が行われないため、呼び出しに応じて自ら警察署へ行く必要があります。呼び出しに応じなかった場合には逮捕されるリスクがあるため、必ず出頭することが重要です。
警察署での任意取調べ・供述調書の作成
出頭すると、警察官による取調べが行われます。被疑者の供述内容は「供述調書」としてまとめられ、事件の証拠の一部となります。
取調べは任意とされていますが、強い圧力を感じる場合もあるため、事前に弁護士の助言を受けておくことが望ましいです。
検察官に事件を送致(書類送検)
警察の捜査が終わると、事件記録や証拠書類が検察官に送致されます。これを一般的に「書類送検」といいます。在宅事件では、被疑者本人が検察庁へ送られるわけではなく、事件の資料だけが送られる点が特徴です。
検察官から任意出頭の要請
検察官は、必要に応じて、被疑者を検察庁に呼び出します。
ここでも任意出頭という形が取られますが、無視や拒否をすると逮捕に切り替わる可能性があるため、誠実に対応することが不可欠です。
検察での任意取調べ・供述調書の作成
検察庁に出頭すると、検察官による取調べが行われます。
警察とは異なり、検察官は最終的に起訴・不起訴を決定する立場にあるため、この段階での供述や態度は非常に重要です。
ここでも弁護士のサポートを受けることで、不利な調書作成を避けやすくなります。
検察官による起訴または不起訴の決定
最終的に、検察官が事件を起訴するか不起訴にするかを判断します。不起訴となれば刑事手続きは終了しますが、起訴された場合には裁判に進むことになります。
在宅事件でも起訴されれば公開の刑事裁判が行われるため、社会的影響が大きいことを理解しておく必要があります。
在宅事件には時間制限がないため捜査が長期化するおそれがある
在宅事件の大きな特徴は、捜査期間に明確な制限がない点です。
身柄事件では逮捕から最長20日以内に起訴・不起訴を決定する必要がありますが、在宅事件は身柄拘束がないためこの制約がなく、処理に数か月~半年程度かかることも珍しくありません。場合によっては1年以上続くこともあります。
このように処分の結論が出るまで長期間を要すると、被疑者は「いつ呼び出しがあるのか」「起訴されるのか」と不安を抱えたまま生活を送らなければならず、精神的な負担は大きいといえます。また、呼び出しがあるたびに仕事や家庭の予定を調整しなければならず、生活面での影響も避けられません。さらに、将来的に起訴されるのか、不起訴になるのかが長期間不透明であることは、社会的立場や信用にも影響を及ぼしかねません。
このように長期化するリスクがある在宅事件では、早期の段階から弁護士に相談しておくことが重要です。弁護士が捜査機関との対応をサポートしたり、被害者との示談を早めにまとめたりすることで、手続きの進行が円滑になり、早期に処分を得られる可能性が高まります。
在宅事件になった場合の注意点

在宅事件では身柄拘束がないため一見安心に思えますが、刑事事件であることに変わりはありません。対応を誤れば逮捕に切り替わる可能性もあり、慎重な行動が求められます。以下では、在宅事件で特に注意すべき点を説明します。
警察や検察からの出頭要請には必ず応じる
在宅事件の被疑者は、警察や検察から任意での呼び出しを受けます。これはあくまで「任意」ですが、無視したり拒否したりすると「逃亡のおそれあり」と判断され、逮捕に切り替わる可能性があります。
警察や検察からの呼び出しには必ず応じ、誠実に対応することが重要です。
在宅事件でも途中で逮捕される可能性がある
在宅事件として捜査が進んでいても、状況次第で逮捕に切り替わることがあります。たとえば、被疑者が供述を翻した場合や証拠隠滅の行為をした場合には、逃亡・証拠隠滅のおそれがあると判断されるからです。
在宅だからと油断せず、常に慎重な言動を心がける必要があります。
できる限り早期に弁護士の相談・依頼する
在宅事件は、処理に時間がかかるうえ、取調べの対応次第で結果が大きく変わります。
弁護士に早期に相談すれば、取調べの受け答えに関する助言を受けられるだけでなく、被害者との示談交渉や不起訴処分に向けた弁護活動を早くから進めることができます。「いつ逮捕されるかわからず不安だ」という方は、早めに弁護士へ依頼することが望ましいでしょう。
在宅事件における弁護士の役割

在宅事件は身柄拘束がないため「弁護士に依頼しなくても大丈夫」と考える方も少なくありません。しかし、在宅事件でも取調べへの対応や被害者との示談は、最終的な処分の結果に大きな影響を及ぼすことがあるため、弁護士のサポートは極めて重要です。以下では、弁護士が果たす具体的な役割を説明します。
取調べ対応のアドバイス
警察や検察の取調べでは、被疑者の発言が「供述調書」に記録され、事件の処分を決める重要な資料となります。不用意な発言や誤解を招く言い回しをしてしまうと、不利な内容が調書に残り、不起訴の可能性を狭めてしまうことも少なくありません。特に、在宅事件では「任意だから大丈夫」と油断しやすく、結果的に不利な供述をしてしまうケースが見られます。
弁護士に相談すれば、取調べでどのように答えるべきか、避けるべき表現は何かといった具体的なアドバイスを受けることができますので、初めての取り調べでも安心して対応できます。
被害者との示談交渉
在宅事件においては、被害者との示談が成立しているかどうかが不起訴処分に直結する重要な要素です。
しかし、被疑者本人や家族が直接交渉を試みると、感情的な対立や不適切なやり取りから交渉が決裂するリスクもあります。さらに、謝罪や賠償の方法を誤れば、かえって心証を悪化させてしまうこともあるのです。
弁護士は、法律の専門家として冷静に交渉を行い、適切な賠償額や示談条件を提示できます。また、示談書の作成や法的効力を確保する役割も担い、最終的に不起訴処分を得やすい状況を整えることが可能です。
不起訴処分を得るための弁護活動
在宅事件で最終的に最も重要なのは、不起訴処分を獲得できるかどうかです。
弁護士は、被疑者の反省の態度や更生の見込み、再犯防止のための環境づくりなどを検察官に丁寧に伝えます。加えて、示談成立や謝罪文の提出といった有利な事情を積極的に主張することで、不起訴処分の可能性を高めます。
不起訴になれば裁判にかけられることはなく、前科もつきません。これは被疑者本人だけでなく、その家族や職場にとっても大きな意味を持ちます。社会生活への影響を最小限に抑えるためには、弁護士による粘り強い弁護活動が不可欠です。
在宅事件に関する弁護はグラディアトル法律事務所のお任せください

在宅事件は、逮捕されない分、生活を続けられるという利点があります。
しかし、その一方で、取調べで不利な供述をしてしまったり、被害者との示談交渉がうまくいかなかったりすれば、最終的に起訴され、裁判に進んでしまうリスクもあります。また、在宅事件は身柄事件と異なり捜査期間に制限がないため、処分が決まるまで長期間不安を抱え続けるケースも多く見られます。このような状況を一人で抱え込むのは非常に大きな負担です。
グラディアトル法律事務所では、刑事事件に精通した弁護士が在宅事件のご相談に対応しています。具体的には、取調べに臨む際の具体的なアドバイスを行い、検察官に不利な供述調書が作成されないようサポートします。さらに、被害者との示談交渉も代理人として対応し、適切な条件での早期解決を目指します。そして最終的には、不起訴処分の獲得に向けて検察官に有利な事情を積極的に主張し、依頼者の社会生活への影響を最小限に抑える弁護活動を行います。
在宅事件で不安を感じている方、少しでも早く事件を終結させたい方は、できるだけ早期にご相談ください。豊富な経験を持つ弁護士が、あなたの立場を守りながら最善の解決に導きます。
まとめ
在宅事件は逮捕・勾留がない分、生活を続けられるという利点がありますが、捜査に時間制限がなく長期化しやすい点や、取調べや示談の対応次第で起訴に至るリスクがある点に注意が必要です。呼び出しには必ず応じ、安易に考えず慎重に対応することが大切です。
そのためには、早期に弁護士へ相談することが何よりも有効です。弁護士は取調べ対応の助言や被害者との示談交渉を担い、不起訴処分の獲得を目指す弁護活動を行います。
グラディアトル法律事務所では、刑事事件に豊富な実績を持つ弁護士が在宅事件のご相談に迅速に対応いたします。ご依頼者の不安を少しでも早く解消し、最善の結果へ導くために全力でサポートいたします。在宅事件でお困りの方は、ぜひお早めに当事務所へご相談ください。
