家族が受け子で逮捕されたら?闇バイトの落とし穴とすぐ取るべき行動

家族が受け子で逮捕されたら?闇バイトの落とし穴とすぐ取るべき行動
弁護士 若林翔
2025年08月04日更新

「家族が闇バイトの受け子で逮捕されてしまいどうしたらいいかわからない…」

「闇バイトの受け子で逮捕されたときに家族ができることとは?」

「闇バイトの受け子で逮捕されるとどのようなリスクがあるのか知りたい」

「簡単に稼げる」「すぐに現金が手に入る」などとSNSで甘い誘い文句が並ぶ闇バイトですが、その多くは、詐欺の受け子や出し子など犯罪行為に加担する仕事です。

もし家族が闇バイトで受け子をして逮捕されてしまった場合、突然の出来事に動揺し、何をすべきかわからなくなる方も多いでしょう。しかし、特殊詐欺の受け子は重大な犯罪であり、早期に弁護士へ相談して適切に対応しなければ、長期の身柄拘束や前科、実刑判決を受ける可能性も否定できません。

本記事では、

・闇バイトの受け子の実態
・闇バイトの受け子で逮捕されたときの流れ
・闇バイトの受け子で逮捕されたときに家族がとるべき行動

などを詳しく解説します。

何から手を付ければよいかわからないという方は、本記事を参考に行動してみるとよいでしょう。

危険な闇バイトが急増|特殊詐欺の受け子とは?

危険な闇バイトが急増|特殊詐欺の受け子とは?

闇バイトとは、犯罪行為を報酬と引き換えに請け負うアルバイトの総称です。近年はSNSや掲示板、求人サイトを通じて若年層を中心に急増しており、特に多いのが特殊詐欺の受け子です。

受け子とは、オレオレ詐欺などの特殊詐欺で被害者から現金やキャッシュカードを直接受け取る役割の人を指します。比較的簡単に実行できるため、犯罪組織は「すぐに稼げる仕事」「危険性は低い」などと偽り、未成年者や若者を募集していますが、実際には重大犯罪に加担することになるため絶対に手を出してはいけません。

闇バイトで特殊詐欺の受け子をすると詐欺罪に問われる可能性がある

闇バイトで特殊詐欺の受け子をすると詐欺罪に問われる可能性がある

闇バイトの受け子は、詐欺罪に問われる可能性のある重大は犯罪行為です。

詐欺罪とは、他人に嘘をついて金銭などを騙し取ることで成立する犯罪です(刑法246条)。受け子は、騙された被害者から金品などを受け取る役割を担う人ですので、受け子本人は、被害者を「だます」という行為に関与していません。しかし、別の共犯者(かけ子)が電話で被害者に嘘をついた時点で、詐欺罪の実行の着手が認められるため、その後に関与した受け子も共犯者として詐欺罪に問われることになります。

つまり、犯罪の一部に関与しただけでも詐欺罪の共犯として重い刑事責任を負わされることになるのです。

なお、詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役(拘禁刑)と定められています。

※「拘禁刑(こうきんけい)」とは、従来の刑罰である懲役と禁錮を一本化した刑罰です。改正刑法に基づき、2025年6月1日から、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。

闇バイトだと知らずに受け子をした場合も逮捕される可能性はある?

「荷物を受け取るだけのバイトだと思っていた」「犯罪だとは思わなかった」という供述は少なくありません。

しかし、法律上は「受け子」であることを直接認識していなくても、「何か怪しい仕事ではないか」と感じていた場合には故意が認められる可能性があります。

実際に、SNSで高額報酬を提示され「普通の仕事ではないと思ったが、詳しくは聞かされていなかった」という場合でも、詐欺罪で起訴され有罪判決となるケースが多いのが現実です。そのため、少しでも怪しいと感じたときは魅力的なバイトであっても断るようにしましょう。

闇バイトの受け子で逮捕された実際の事例を紹介

闇バイトの受け子で逮捕された実際の事例を紹介

以下では、闇バイトの受け子で逮捕された実際の事例を紹介します。10代の逮捕事例が多いことからも若年者層が犯罪組織のターゲットにされていることがわかります。

闇バイトに募集して特殊詐欺の受け子として80万円を詐取した疑いで19歳の男を逮捕

2025年5月、熊本県で19歳の男が、特殊詐欺グループの指示を受け、80万円を被害者から受け取ったとして詐欺容疑で逮捕されました。男はSNSで闇バイトの募集を見て応募していたと報じられています。

美里町の82歳の男性から現金80万円をだまし取ったとして19歳の容疑者が詐欺の疑いで警察に逮捕されました。
警察は、「闇バイト」の募集に応じて特殊詐欺の「受け子」として派遣されたとみて、詳しいいきさつを調べています。

逮捕されたのは住所不定・無職の19歳の男の容疑者です。

警察によりますと、先月8日、美里町の82歳の男性に対し、息子や弁護士、国税局の職員などを装った別の人物が、「株の配当金をもらったが、税金が未納で支払わないと逮捕される」などとうその電話をかけたあと、容疑者が男性の自宅付近を訪れ現金80万円をだまし取ったとして、詐欺の疑いが持たれています。
男性の息子から通報を受け、事件が発覚したということです。
容疑者は調べに対し、「詐欺だと分かっていながら現金を受け取った」と容疑を認めているということです。容疑者は、先月にも相良村の80歳の女性から現金180万円をだまし取ろうとしたとして詐欺未遂の疑いで逮捕されています。
警察によりますと、「生活費や遊びに使うお金がほしくて、SNS上で闇バイトに応募した」と話しているということで、特殊詐欺の「受け子」として派遣されたとみて、詳しいいきさつを調べています。
(引用:NHK)現金80万円詐取容疑19歳の男逮捕 闇バイトの受け子か|NHK 熊本県のニュース

闇バイトでオレオレ詐欺の受け取り役を担ったとして18歳の男を逮捕

2025年4月、香川県で18歳の男がオレオレ詐欺の受け子として現金を受け取った疑いで逮捕されました。男は「闇バイトの募集で知人から紹介された」と供述しており、若年層の巻き込まれる実態が浮き彫りとなりました。

息子の知人を装い、三豊市の80代の女性から現金300万円をだまし取ったとして京都府の18歳の容疑者が詐欺の疑いで逮捕されました。
「闇バイト」の募集に応じてオレオレ詐欺の現金の受け取り役を担っていたとみられるということで、警察が詳しいいきさつを調べています。

逮捕されたのは、京都府亀岡市に住む無職の18歳の容疑者です。

警察によりますと、ことし2月三豊市に住む80代の女性から息子の知人を装って現金300万円をだまし取ったとして詐欺の疑いが持たれています。
女性は自宅に息子を名乗る人物から「女性関係のトラブルで示談するのに300万円が必要だ」などという電話があったことから息子の知人を装って訪れた人物に現金を渡したということです。
女性が息子に直接連絡したところうその話だとわかり、警察が周辺の防犯カメラなどを調べたところ容疑者が受け取った疑いがあることから逮捕しました。
調べに対し、容疑を認め、「闇バイトに応募して仕事を紹介してもらった。
指示役から指示を受けて、金を受け取った」と供述しているということです。
警察は容疑者が「闇バイト」の募集に応じてオレオレ詐欺の現金の受け取り役を担っていたとみて詳しいいきさつを調べています。
(引用:NHK)闇バイトでオレオレ詐欺の「受け子」か 京都府の18歳を逮捕|NHK 香川県のニュース

闇バイトの受け子をした人が逮捕されるきかっけ

闇バイトの受け子をした人が逮捕されるきかっけ

闇バイトの受け子が逮捕されるきっかけとしては、主に以下の3つのパターンが考えられます。

だまされたふり作戦

特殊詐欺事件の捜査でもっとも多い検挙方法の一つが「だまされたふり作戦」です。

これは、被害者が警察に相談し、警察の指示を受けながら現金を引き出し、自宅で犯人を待ち構える方法です。受け子が現金を受け取りに現れた瞬間、警察官が現行犯逮捕します。

だまされたふり作戦は、犯行現場で証拠を押さえられるため立証が容易で、受け子にとって言い逃れができない状況に陥ります。最近では高齢者もこの作戦に協力的で、受け子が逮捕されるケースも増えてきています。

防犯カメラによる追跡捜査

特殊詐欺事件の被害現場やATMには、必ずといっていいほど防犯カメラが設置されています。警察は、被害者宅周辺、最寄駅、バス停、コンビニ、銀行ATM、金券ショップなど、あらゆる経路のカメラ映像を収集し、顔や服装、移動経路を徹底的に解析します。

さらに、ICカードの履歴や携帯電話の基地局情報も照合するため、たとえ変装していても身元を特定されるケースが多く、時間差で逮捕に至る例が増えています。

共犯者による供述

闇バイトは複数人で役割分担して実行するため、指示役や運転手など別の共犯者が先に逮捕された際、「受け子として○○を使った」「△△駅で現金を受け取らせた」などと供述し、捜査線上に名前が挙がることも少なくありません。

特に、受け子は末端実行役であり、組織としては「代わりはいくらでもいる」立場のため、指示役が自分の刑を軽くするために供述し、結果的に受け子本人が後日逮捕される流れになることも多いです。

闇バイトの受け子として犯罪に関与するリスク

闇バイトの受け子として犯罪に関与するリスク

闇バイトは安易な気持ちで関与してしまいがちですが、以下のようなリスクがある点に注意が必要です。

逮捕され長期間の身柄拘束を受ける

受け子として逮捕されると、まず警察署の留置場に拘束されます。警察署の留置場は、非常に狭い独居房または雑居房で、テレビやスマホもなく外部との連絡は弁護士を除き制限されます。

勾留が決定されれば最大20日間、さらに起訴されれば裁判が終わるまで拘束が続きます。裁判の判決まで数か月~半年かかるケースも珍しくなく、自由を奪われる生活は心身ともに大きな負担となります。

実名報道により学校や職場にバレてしまう

特殊詐欺事件は社会的注目度が高く、新聞やテレビ、ネットニュースで報じられることもあります。実名報道されると、ネット上に記事が残り続け、将来の就職や転職、結婚、引っ越しの際にも検索で過去の犯罪歴が判明してしまいます。

未成年の場合は原則匿名ですが、事件の重大性によっては実名が出ることもあり、通っている高校や大学に連絡が行けば、停学・退学処分や内定取り消しとなる可能性が高いでしょう。

また、社会人の場合も会社に逮捕が知られれば、無断欠勤状態から解雇されるケースが大半です。

家族としても、地域や親族に知られることで大きな精神的負担を背負うことになります。

闇バイトの受け子は初犯であっても実刑判決になる可能性がある

特殊詐欺事件では、受け子が「初めての犯罪だった」「生活が苦しくて仕方なくやった」と弁解しても、実刑判決となるケースが多くあります。

特に、被害金額が大きい場合、示談が成立していない場合、複数回犯行を行っていた場合だと、執行猶予がつかず刑務所での服役が言い渡されることも珍しくありません。

そのため、初犯だから大丈夫と安易に考えることは非常に危険です。

闇バイトの受け子で家族が逮捕されてしまったときにとるべき行動

闇バイトの受け子で家族が逮捕されてしまったときにとるべき行動

闇バイトの受け子で家族が逮捕されてしまったときは、以下のような行動をとるようにしてください。

まずは落ち着いて事実関係を確認

突然警察から「息子さんが逮捕されました」と連絡があったら、誰でも頭が真っ白になるでしょう。しかし、ここで取り乱しても何も解決しません。

まずは、落ち着いて以下の事項を確認し、今後の対応に必要な情報収集をするようにしてください。

・逮捕された日時
・逮捕されている警察署
・逮捕容疑
・担当の警察官や部署
・被害者の有無

すぐに弁護士に相談して、本人との面会の依頼をする

特殊詐欺事件は組織犯罪であり、勾留や起訴の可能性が高いため、早期に刑事弁護に強い弁護士へ依頼することが重要です。

特に、逮捕中は弁護士以外の者との面会が禁止されていますので、逮捕後すぐに面会して取り調べのアドバイスができるのは弁護士に限られます。また、特殊詐欺事件は、共犯者との口裏合わせや証拠隠滅を防止するために接見禁止がつくことがありますが、その場合でも弁護士なら面会が可能です。

取り調べ対応や今後の流れを説明して精神的支えになってあげるためにも、すぐに弁護士に相談して、本人との面会を依頼するようにしてください。

勾留に切り替わった段階で本人との面会をする

勾留決定後、接見禁止が解除されれば家族も面会可能となります。警察署や拘置所内で短時間ではありますが、本人の不安を和らげ支える存在として重要な時間です。

「大丈夫だから」「弁護士と一緒に頑張ろう」などと声をかけることで、取り調べで精神的に追い込まれるのを防ぐことができます。

また、面会の際には衣服や下着、書籍、現金などの差し入れをすることができますので、本人の希望を聞きながら適宜差し入れをしてあげるとよいでしょう。

示談金の手配や身元引受人として本人をサポートする

不起訴処分や執行猶予判決を獲得するためには、被害者との示談が極めて重要です。逮捕された本人では示談金を準備することができませんので、家族で話し合いをして示談金の工面をしてあげてください。

また、身元引受人として本人を支える意思を示すことは、裁判での情状弁護において重要なポイントとなります。担当弁護士から身元引受人を頼まれた際には、快く応じてあげましょう。

闇バイトで特殊詐欺の受け子に関与してしまったときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

闇バイトで特殊詐欺の受け子に関与してしまったときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

闇バイトで受け子として逮捕されてしまった場合、本人も家族も先が見えない不安でいっぱいになることでしょう。

「初犯だから大丈夫だろう」「警察が真実をわかってくれるだろう」と思っていても、特殊詐欺事件は社会的影響が大きく、厳しい処罰が科される傾向にあります。

グラディアトル法律事務所では、これまで多数の特殊詐欺事件・闇バイト事件に対応してきました。逮捕直後の接見から取り調べ対応、勾留阻止、不起訴獲得、示談交渉、保釈請求、裁判での弁護活動まで、一貫して迅速かつ徹底的にサポートすることができますので、闇バイトの受け子で逮捕されてしまったときはすぐに当事務所までご連絡ください。

また、家族の方からのご相談も多数受け付けており、

「どう接したらいいかわからない」

「示談金の準備はいつまでに必要なのか」

「学校や職場への影響を最小限にするには」

といった細かな疑問や不安にも寄り添い、最善の解決策をご提案します。

グラディアトル法律事務所では、初回相談は無料で受け付けています。

24時間365日相談可能ですので、困ったときはすぐにお問い合わせください。

まとめ

闇バイトで受け子となり逮捕された場合、取り返しのつかない結果を招く可能性があります。初犯であっても実刑となるリスクがあり、前科は一生ついて回ります。

もしも家族が逮捕されてしまったら、まずは落ち着き、刑事事件に強い弁護士へ相談して今後の対応を進めることが、本人と家族の将来を守るために最も重要です。刑事事件に強い弁護士をお探しの方は、グラディアトル法律事務所までご相談ください。

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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