「交通事故を起こして、パニックになって逃げてしまった…」
「今からでも現場に戻って自首した方がよいのだろうか…」
このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そんな方にまずお伝えしたいのは、ひき逃げでは最速で自首するべきだということです。
まだ時間が経っておらず、被害者が現場にいる可能性があるなら、迷わず現場に戻って被害者の救護や119番通報を行いましょう。
事故から時間が経てば経つほど、自首は成立しづらくなりますし、状況も悪化していきます。
令和6年版犯罪白書によれば、ひき逃げ事件の検挙率は72%を超えています。
さらに、重傷事故では87.9%、死亡事故ではほぼ100%検挙されています。つまり、ひき逃げで警察から特定される可能性は極めて高いのです。
一方で、速やかに自首すれば、刑罰は最大半分程度まで軽減されます。自首によって、逮捕を回避できたケースもいくつも存在します。
本記事では、ひき逃げで自首する場合のメリットや具体的な手続きの流れ、自首する前に準備すべきことなどを詳しく解説します。
一人で悩まず、まずは正しい知識を身につけて、今後の対応を検討してください。
目次
ひき逃げにおける自首とは
ひき逃げにおける自首とは、警察が犯人を特定する前に、自ら事故を起こしたことを申告することです。自首が成立すれば、刑は最大で半分程度まで軽くなる可能性があります。
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
ひき逃げ事件で自首が成立する要件
ひき逃げで自首が成立するのは、以下2つの条件を満たした場合です。
① 警察が事故を認知していない、または犯人を特定していない状態であること
② 捜査機関に対して自発的に申告すること
簡単にいえば、警察がまだ交通事故を知らない、あるいは事故の加害者が分かっていないタイミングなら自首が成立するということです。
逆に、警察から呼び出しを受けている、あるいはすでに容疑者として特定されているようなケースでは、自首ではなく「出頭」扱いとなります。出頭も情状面で考慮はされますが、自首ほどの減軽効果は期待できません。
【時間別】ひき逃げ後の自首の扱い
事故からの経過時間によって、自首の扱いは大きく変わります。
以下の表は、事故からのタイミング別に、自首が成立する可能性や逮捕を回避できる可能性をまとめたものです。
(※実際には事件の内容によって変わるため、あくまでもイメージとして考えてください。)
自首が成立する可能性 | 自首による逮捕回避の可能性 | |
---|---|---|
事故直後(〜1時間以内) | 高 | 高 |
数時間〜当日 | 高 | 高 |
翌日〜警察から連絡がくるまで | 中 | 中 |
警察からの連絡後 | 低 (※原則、出頭扱いとなる) | 低 |
このように時間が経過すればするほど自首が成立する可能性は低くなっていくため、最速で自首することが大切です。
特に、事故直後なら被害者がまだ現場にいる可能性があります。
その場合は、すぐに現場に戻って被害者を救護し、119番通報も行いましょう。すぐに救護措置を行えば、ひき逃げではなく通常の人身事故として扱われる可能性もあります。
時間が経つほど警察は防犯カメラの映像確認や目撃者への聞き込みなど、犯人特定に向けた捜査を本格化させていくため、自首が成立する可能性は低くなります。
ひき逃げで自首するべき5つの理由
自首には法的にも精神的にも大きなメリットがあります。
なぜひき逃げで自首するべきなのか、5つの理由を詳しく説明します。
逮捕の回避が期待できる
自首をすれば、逮捕される可能性が大幅に下がります。
なぜなら、自首や出頭したという事実によって「逃亡のおそれが低い」「証拠隠滅のおそれが低い」と判断されやすくなるからです。逃亡や証拠隠滅のおそれがなければ、法律上の逮捕要件を満たさないため、警察は逮捕に踏み切りません。
ひき逃げで自首が成立すると、多くは在宅事件として処理されます。
在宅事件とは、逮捕・勾留されることなく、自宅で生活しながら捜査を受ける形式です。必要に応じて警察署に出向いて取り調べを受けますが、通常はその日のうちに帰宅できます。
捜査中も、これまで通り仕事や家庭生活を続けられるため、生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。
前科を避けられる可能性がある
自首すれば、不起訴処分となって前科を避けられる可能性が高まります。
自首した事実を、検察官は「反省している」「再犯の可能性が低い」として評価するからです。
特に、被害者の怪我が軽傷で、示談が成立している場合は、自首した事実と合わせて不起訴となる可能性が高くなります。起訴されなければ、刑務所に入ることもありませんし、前科が付くこともありません。
仮に自首が間に合わず出頭扱いになっても、反省の態度の表れとして、検察官の心証を良くする効果があります。
ひき逃げによる将来への影響を最小限に抑えられるでしょう。
刑罰が大幅に軽くなる
万が一起訴されても、刑罰が大幅に軽くなる可能性があります。自首が成立すると、法律上、罰金や懲役刑ともに最大半分程度まで減軽されます。
第六十八条 法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。三 有期拘禁刑を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。四 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の二分の一を減ずる。
さらに、自首したという事実は情状面でも大きな意味を持ちます。
裁判官の判断にも良い影響を与えるため、仮に懲役刑となったとしても、執行猶予が付く可能性が高まるでしょう。
特に、初犯であったり、謝罪や被害弁償を適切に行っていたりすると、執行猶予付き判決が期待できます。
有罪判決を受けても、一定期間犯罪を起こさなければ刑務所に入らなくて済む制度です。
たとえば、「懲役1年、執行猶予3年」という判決の場合、3年間再犯をしなければ、「刑の言渡し」の効力が失われます。つまり、刑務所に入る必要がなくなります。
示談が成立しやすい
自首をすることで、被害者との示談交渉も進めやすくなります。
自ら警察に行って犯罪事実を申告したという事実は、被害者側からも「誠実な対応」として受け止められやすいからです。
自首によって罪を償う意思を示しつつ、適正な金額で被害弁償も行えば、被害者から嘆願書(厳罰を望まないという意思表示)を取り付けられることもあります。
被害者から許しを得られれば、不起訴処分や執行猶予付き判決となる可能性が大幅に高まるでしょう。
精神的に楽になれる
精神的に楽になれることも、実は大きなメリットです。
ひき逃げ後、「いつ警察が来るか」という恐怖を抱えながら生活することは、想像以上に大きな負担となります。「眠れない」「食事が喉を通らない」「仕事に集中できない」という状態に陥る人も珍しくはありません。
自首することは勇気のいる決断ですが、自首をした人の多くは「やっと楽になれた」「すっきりできた」と話します。被害者に対して償う意味ではもちろん、加害者の生活を考えても自首が最善の選択となるケースが多いのです。
ひき逃げで自首する場合の流れ
ひき逃げで自首することを決めたら、どのような流れで手続きが進むのでしょうか。警察への連絡から裁判までの流れを詳しく説明します。
①警察へ連絡・出頭する
まず行うのは、警察への連絡と出頭です。
もしも、まだ事故直後で被害者が現場にいる可能性があるのなら、すぐに事故現場に戻って119番通報と被害者の救護措置を行いましょう。その後、事故現場から警察に連絡します。
すでに事故から時間が経っている場合は、警察署に電話などで連絡し、自首の意思を伝えます。担当の警察官から指示があり、その場で警察が来るのを待つか、あるいは最寄りの警察署に出向くかのいずれかとなるでしょう。
警察署に出向くときは、事故の状況を説明できるよう、記憶を整理しておくことが大切です。車両の損傷状況を撮影した写真やドライブレコーダーの映像があれば、持参すると良いでしょう。
②取り調べを受ける
警察署に出頭したら、担当の警察官から事件の詳細について取り調べを受けます。法律上の自首が成立していれば、自首調書が作成されます。
取り調べには協力的な姿勢が必要ですが、何の準備もせずに対応することは避けましょう。警察で何を話すかによって、その後の逮捕・起訴の判断が大きく変わってきます。
ひき逃げ事故のことをどのように説明するのか、必ず事前に整理しておきましょう。
特に、事故の状況や逃げた理由については、正直に、かつ適切に説明できるようにしておいてください。
③逮捕または在宅で捜査が実施される
取り調べが終わった後、逮捕されるか在宅で捜査が実施されるかが決まります。
自首が成立すれば、一般的には「逃亡・証拠隠滅のおそれが低い」と判断されやすいです。したがってそのまま帰宅できる可能性もありますが、絶対ではありません。場合によっては、そのまま逮捕されて身柄拘束されるケースもあります。
加害者としてできるのは、逮捕リスクを最小限に抑えるために供述内容を整理しておくこと、そして自分にとって有利な証拠を確保しておくことです。
さらに、万が一逮捕されたときにすぐに釈放されるように、事前に弁護士などにも相談しておきましょう。
④起訴・不起訴の決定がされる
自首した後、本格的な捜査がはじまるでしょう。そしてその結果を踏まえて、検察が起訴・不起訴を判断します。
自首してから起訴・不起訴が決まるまでの日数は、身柄事件となるか在宅事件となるかで異なります。
身柄事件の場合、逮捕から最大23日間で起訴・不起訴が決定されます。
一方、在宅事件となった場合は、起訴までの日数に制限はありません。
1ヶ月以内に判断されるケースもあれば、半年から1年以上かかるケースもあります。被害者との示談交渉の進展状況や、事故の複雑さによっても期間は変わってきます。
不起訴となれば、その時点で刑事手続きは終了し、前科も付きません。一方、起訴された場合は刑事裁判にかけられることになります。
自首する前に必ず行っておくべきこと
ここからは、自首するリスクを最大限に減らすために、事前に行っておくべきことを説明します。
弁護士に依頼する
まず大切なのが、弁護士に相談することです。
事故直後で、まだ救護措置が可能な場合はそちらを優先すべきです。しかし、すでに事故現場から離れて時間が経っているなら、自首する前に弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。
弁護士によっては、警察署まで同行してくれるケースもありますし、自首する前に弁護士から警察に電話して本人に繋いでくれるケースもあります。
ひき逃げに詳しい弁護士なら、警察で何を話せばいいのか、万が一逮捕されたらどうすればいいのかなど、リスクを抑えるための方策を最大限に考えてくれます。
証拠を保全する(ドラレコ・車両の状態など)
自首前に、事故の客観的証拠をしっかり保全しておくことも重要です。
具体的には、ドライブレコーダーの映像を保存し、事故当時の車両の損傷状況を写真で記録しておきます。特にドライブレコーダーの映像は、多くが上書き式で一定時間が経つと消えてしまうため、早めの保存が必要です。
証拠によって、被害者側にも過失があったと分かれば一定程度考慮してもらえますし、万が一被害者が事実と異なる主張をしていれば、それを証明できます。
「交通ルールを守っていた」「法定速度を維持していた」などの事実が映像で確認できれば、裁判で有利に働くこともあります。
ただし、状況によってはドライブレコーダーの映像で逆に不利になることもあるため、提出するかどうかの判断は弁護士に相談して慎重に決めましょう。
家族に連絡する
自首を決断したら、家族にも連絡して事情を説明しておきましょう。
万が一逮捕された場合、数日間は家に帰れなくなるため、家族に何も伝えずに自首すると、突然連絡が取れなくなります。
逮捕後の釈放には身元引受人が必要になりますし、裁判でも再発防止の観点から家族の監督が求められることもあります。今後の生活や仕事への影響についても、家族と相談しておく必要があるでしょう。
事前に家族と情報を共有し、今後の対応について話し合っておくことで、手続きをスムーズに進められます。
ひき逃げで自首するか迷っている方へ伝えたいこと
この記事を通して、ひき逃げで自首するべき理由、自首するときの流れなどについて解説してきました。今まさに「自首すべきか」と迷っているあなたに最後に伝えたいことがあります。
それは、「自首しない」という選択は状況を悪化させるだけだということです。
令和6年版犯罪白書によれば、ひき逃げ事件全体の検挙率は72.0%を超えており、重傷事故では87.9%、死亡事故ではほぼ100%検挙されています。
つまり、ひき逃げ事件で逃げ続けても、いずれ警察に特定される可能性が極めて高いのです。
今は不安で正常な判断が難しい状況かもしれません。それでも、時間が経てば経つほど、自首は成立しづらくなりますし、逮捕・起訴されるリスクは高くなっていきます。
あなたの将来を守るためにも、改めて自首するメリット・逃げ続けるリスクについてきちんと考えてみてください。そして、信頼できる弁護士に相談して、今できる最善の行動を起こしましょう。
ひき逃げで自首するか迷っている方は、グラディアトル法律事務所へご相談ください。
ひき逃げ事故を起こしてしまい、今後どうなるか不安な方は、ぜひ弊所グラディアトル法律事務所にご相談ください。
当事務所は、これまで数多くの刑事事件、交通事故事件を解決に導いてきた実績ある法律事務所です。経験豊富な弁護士が、罰金刑や執行猶予の獲得を目指し、依頼者の利益を「勝ち取る」ために、迅速かつ的確な刑事弁護を提供いたします。
■ひき逃げ事件でグラディアトル法律事務所ができること
・逮捕を回避し、在宅事件として処理されるよう交渉する
・万が一逮捕されても、早期釈放に向けて全力で弁護活動を行う
・被害者との示談交渉により、不起訴処分や執行猶予の獲得を目指す
・適正な示談金額での解決を図り、法外な請求を防ぐ
・再犯防止の取り組みを裁判所に示し、刑の減軽を目指す
弁護士には厳格な守秘義務が定められているため、ご相談によって事件のことが外部に漏れることは一切ありません。24時間365日相談受付をしていますので、まずはお気軽にご連絡ください。
【Q&A】ひき逃げでよくある質問
Q.自首しても前科は付きますか?
A. いいえ。前科が付くかは、裁判で有罪となるかで決まるので、必ず前科が付くわけではありません。たとえば、検察官が不起訴処分を決定すれば、前科は付きません。
Q.免許は取り消されますか?
A. はい、ひき逃げの場合は原則として免許取消となります。
ひき逃げ(救護義務違反)は違反点数が35点となり、免許取消処分の対象です。欠格期間は最低3年間で、この期間は新たに免許を取得できません。
ただし、自首により刑事処分が軽くなれば、行政処分でも情状が考慮される可能性はあります。免許への取消処分は、以下の記事で詳しく解説したのであわせてご確認ください。
Q.自首したら必ず逮捕されますか?
A. いいえ。自首したら必ず逮捕されるわけではありません。
「逃亡のおそれが低い」「証拠隠滅のおそれが低い」と判断されれば、逮捕要件を満たさないため、逮捕を回避できる可能性があります。
事件の内容にもよりますが、自首したという事実は、一般的に逮捕を避ける方向に働きます。
Q.逮捕されたら、何日間拘束されますか?
A. 逮捕された場合、最大で23日間の身柄拘束を受ける可能性があります。
具体的には、逮捕から48時間以内に警察から検察へ送致され、検察官が24時間以内に勾留請求を判断します。勾留が決定されると、原則10日間、延長されれば最大20日間身柄拘束が続けられます。
Q.ひき逃げをしたことは会社にバレますか?
A. 警察から直ちに会社に連絡がいくわけではありません。在宅事件として処理されれば、通常通り出勤できるため、すぐに会社に知られる可能性は低いでしょう。
ただし、運転業務がある場合は、業務に支障が出るため説明が必要になります。また、起訴されて前科が付けば、失職する職種もあります。
ケースによって異なるので、弁護士に相談することを強くおすすめします。
Q.自動車保険(任意・自賠責)は使えますか?
A. 被害者に対して発生した損害は保険の対象となります。示談金も任意保険から支払われるケースが一般的です。
まとめ
最後に、記事のポイントをまとめます。
■ひき逃げで自首が成立する要件
・捜査機関に対して自発的に申告したこと
・逮捕を回避し、在宅事件として処理される可能性が高い
・不起訴処分となり前科を避けられる可能性が高まる
・被害者との示談が成立しやすくなる
・精神的な負担から解放される
① 警察へ連絡・出頭する
↓
② 取り調べを受ける(自首調書の作成)
↓
③ 逮捕または在宅で捜査が実施される
↓
④ 起訴・不起訴の決定(身柄事件なら最大23日以内、在宅なら期限なし)
↓
⑤ 起訴された場合は刑事裁判へ
■自首する前に必ずすべきこと
・弁護士に相談してアドバイスを受ける
・ドライブレコーダーや車両の証拠を保全する
・家族に連絡して事情を説明する
以上です。
この記事が参考になったと感じましたら、ぜひグラディアトル法律事務所にご相談ください。