ひき逃げの示談金相場はどれくらい?高額になる3つのケースを紹介

ひき逃げの示談金相場はいくら?
弁護士 若林翔
2025年09月05日更新

ひき逃げ事故を起こしてしまった後、最も不安になるのが「示談金はいくらになるのか」という点ではないでしょうか。

警察からの連絡を待ちながら、被害者の容態を心配しつつ、同時に自分の今後のことも考えなければならない…そんな複雑な心境の中で、金銭的な不安も重くのしかかっているかもしれません。

まずは、ひき逃げの示談金の目安をお伝えします。被害の程度によって大きく異なりますが、一般的には以下のような金額となるケースが多いです。

ひき逃げの示談金相場の目安

ご覧のとおり、同じ被害でも金額の幅が大きく、被害感情によっても大幅に変わってきます。そのため、あくまでも参考程度にしかならないので、示談をするときは必ず弁護士に相談してアドバイスを受けたほうがよいでしょう。

なお、任意保険に入っていれば、示談交渉は保険会社が代行してくれますが、刑事処分のことを考えると、それで十分とはいえません

この記事では、ひき逃げの示談金相場や、金額要素、どのような場合に高額になるのかなどを詳しく解説します。さらに、なぜ保険会社ではなく、弁護士に交渉を依頼すべきなのかも、刑事処分への影響を含めて説明します。

正しい知識を持つことで、今後の対応を冷静に判断できるようになるはずです。ぜひ最後までお読みください。

※令和7年6月1日より、従来の「懲役・禁錮」が「拘禁刑」に1本化されました。

ひき逃げの示談金の目安(相場)

ひき逃げの示談金では、まず被害の大きさ(ケガの重さ・後遺障害の有無・死亡事故かどうかなど)が基本的な判断材料となります。

そして、被害者の過失割合被害感情の大きさが考慮されて、具体的な金額が決まります。あくまで参考程度ですが、以下のような金額になるケースが多いです。

被害の程度示談金の目安
人身事故で被害者が軽症の場合10万〜30万円
中程度のケガで後遺障害がない場合数十万〜100万円
後遺障害がある場合数百万円〜数千万円
死亡事故の場合千万円〜1億円

上記からもお分かりのとおり、同じ被害結果でも大きな幅があります。
これは、ひき逃げの示談金が相場に則って決まるものではないからです。示談金の金額に明確な決まりはなく、あくまで「被害者が許すかどうか」によって左右されます

その意味では、ひき逃げ事故の示談金は、通常の交通事故よりも高額になりやすいといえるでしょう。「被害者を助けず、逃げてしまった」という点において、被害感情が強くなりやすいからです。

次章では、ひき逃げの示談金が具体的にどういった要素で決まるのかを、さらに詳しく説明します。

ひき逃げの示談金を決定する3つの金額要素

ひき逃げの示談金は、大きく分けて「積極損害」「消極損害」「慰謝料」の3つの要素から構成されます。それぞれの要素を計算し、合計した金額が示談金の基礎となります。

ひき逃げの示談金を決める要素

積極損害

積極損害とは、交通事故によって被害者が実際に出費した費用のことです。
具体的には、以下のような項目が含まれます。

● 診察費
● 手術費用
● 入院雑費
● 通院交通費
● 車椅子や歩行補助機の費用
● 診断書の発行費用
● 証明書発行費用 など

これらは、いわゆる実費のようなイメージです。領収書や明細によって計算されるため、比較的ハッキリと金額を算出できます。

消極損害

消極損害とは、事故によって失われた利益のことです。
たとえば、仕事を休んだことで得られなくなった収入、後遺障害によって減少した収入などが含まれます。

項目内容
休業損害事故により就労できず、収入が減少・途絶した金額
逸失利益後遺障害によって減少した将来の収入

このうち、特に分かりにくいのが逸失利益でしょう。これは事故によって減少した将来の収入を賠償するための金額です。

たとえば、年収500万円の会社員が交通事故で麻痺が残り、労働能力が50%低下したとします。すると、年間250万円の収入が減少したと考えられます。
この250万円に残りの労働年数を掛けた金額(仮に20年なら5,000万円)が逸失利益として請求される、というイメージです。
(※実際の計算は複雑なので、あくまでもイメージとして考えてください。)

そのため、消極損害の金額は被害者の年齢・職業・年収などに左右されます。被害者が若ければ若いほど、収入が高ければ高いほど、金額も高額になります

慰謝料

慰謝料とは、事故により被害者が被った精神的・肉体的苦痛への賠償です。具体的には、以下の3つに分類されます。

項目ポイント
傷害慰謝料・ケガによって被った苦痛に対する慰謝料
・治療期間・入通院日数などによって計算される
後遺障害慰謝料・後遺障害による苦痛に対する慰謝料
・後遺障害等級に応じて決定する
死亡慰謝料・死亡によって生じる苦痛に対する慰謝料
・被害者本人と遺族の両方に発生する

死亡慰謝料の場合、被害者本人は既に亡くなっているため、遺族が相続してまとめて受け取ることになります。

ひき逃げの示談金が高額になるケース

ここまで、ひき逃げの示談金を決める金額要素を説明しました。
これらを踏まえて、具体的にどのようなケースで示談金が高額になりやすいのかを説明します。

ひき逃げの示談金が高額になるケース

死亡・後遺障害などで被害が重大なケース

1つ目は、被害者に死亡・後遺障害などの結果が生じたケースです。
当然ですが、被害が大きければ大きいほど、示談金は高額になります。先ほど説明した「積極損害・消極損害・慰謝料」の全てが跳ね上がるからです。

たとえば死亡事故の場合、総額で1億円を超えることも珍しくありません
仮に、35歳で年収600万円の会社員が亡くなった場合で計算すると、定年までの30年間で得られたはずの収入(約1億8000万円)から生活費を引いた金額が逸失利益となります。
さらに、死亡慰謝料(本人分と遺族分)なども数千万円以上が追加されます。

後遺障害のケースも示談金は高額になりやすいです。
後遺障害では、障害の重さが1級から14級に分けて評価されて、等級に応じた金額が慰謝料として請求されます。最も重い1級(両目失明や両手足の麻痺など)の場合、弁護士基準(裁判基準)で約2,800万円が必要です。

さらに、逸失利益も含まれるため、このケースでも1億円を超える場合があります。

※関連コラム「ひき逃げ死亡事故は最長30年の拘禁刑?執行猶予が付くケースも紹介」

被害者の過失割合がゼロのケース

2つ目は、被害者の過失割合がゼロのケースです。

過失割合とは、事故の責任が加害者と被害者にそれぞれ何%あるかを示すものです。示談金の計算には、必ずこの「過失割合」が影響します。

被害者に過失があれば、その分だけ示談金が減額されます。とてもザックリいえば、本来の示談金が1000万円でも、被害者に20%の過失があれば、支払うのは800万円になるというイメージです。

ちなみに、過失割合は事故発生時の状況に基づいて判断されるため、ひき逃げ行為自体は過失割合に影響しません。つまり、事故を起こしたときの状況だけで過失割合が決まり、その後逃げたかどうかは関係ないのです。

しかし、たとえば以下のようなケースでは被害者の過失はゼロになり、示談金を満額支払わなければなりません。

● 信号無視をして事故を起こした
● 歩道を歩いている人に突っ込んだ
● 速度超過、飲酒運転などの法令違反があった

過失割合による減額が認められないケースでは、それだけ示談金の負担も大きくなります。

弁護士基準で慰謝料を請求されたケース

3つ目は、弁護士基準で慰謝料を請求されたケースです。
慰謝料の金額計算では、実は3つの基準があります。そしてどの基準を用いるかで、金額が変わってきます。

■慰謝料を計算する基準

基準特徴(例)むちうち3ヶ月通院の場合
自賠責基準最も安い、最低限の補償25万円
任意保険基準保険会社が独自に決める
中間的な金額
38万円(推定)
弁護士基準
(裁判基準)
判例などに基づいた金額
最も高くなりやすい
53万円

このうち、慰謝料が最も高額になるのは弁護士基準を用いられた場合、つまり、相手が弁護士をたてて慰謝料を請求してきたケースです。

弁護士基準が他の基準より高額になるのは、被害者側の様々な事情が考慮されているからです。
自賠責基準や任意保険基準は一律の算定式で計算されますが、弁護士基準では、被害者の家庭内での役割や生活状況、苦痛の大きさなどが考慮されます。
つまり被害者側の様々な事情を踏まえた金額になりやすいのです。

しかし、逆にいえば交渉の余地が大きいということです。
弁護士基準は様々な要素を考慮する分、示談交渉の進め方によって金額も大きく変わってきます。加害者側も弁護士をたててきちんと交渉すれば、請求額の7割〜8割で示談が成立するケースが多いです。

ひき逃げの示談金交渉は誰が行い、誰が支払う?

ここまで読んで、「数千万円や1億円なんて、とても払えない」と不安になった方も多いでしょう。また、「被害者と直接交渉なんてできるのか」と心配になるかもしれません。

しかし、実際には多くの場合、全額を自分で用意したり、自分で交渉したりする必要はありません。
示談交渉を誰が行うか、示談金を誰が支払うかは、あなたが任意保険(自動車保険)に加入しているかどうかによって大きく変わってきます。

以下、それぞれのケースを見ていきましょう。

任意保険に加入している場合

任意保険に加入していれば、原則として保険会社が示談交渉を代行してくれます。
示談金も、対人賠償保険の限度額の範囲内なら、保険会社から被害者に直接支払われます。つまり、加害者が自己資金を用意する必要はありません。

ただし、保険会社が行ってくれるのはあくまでも民事的な解決のみです。
ひき逃げは刑事事件としても立件されるため、刑事事件については自分で弁護人を選任した方が良いでしょう。

なお、任意保険によっては、弁護士特約によって刑事弁護の費用もカバーできるケースがあります。保険の内容によって異なるので保険会社へ確認してみましょう。

任意保険に加入していない場合

一方で、任意保険に加入していなければ、交渉は自分で行い、示談金も自分で支払う必要があります。自賠責保険からも支払われますが、上限があるため、全てをカバーできるケースは少ないです。

【自賠責保険の限度額】

損害の種類支払限度額
傷害120万円
後遺障害最高4,000万円
死亡最高3,000万円

自賠責保険の限度額を超える部分は、加害者本人が自己資産や収入から直接支払う必要があります。

高額になるケースもありますが、ひき逃げの損害賠償は自己破産をしても免責されません。つまり、支払いから逃れることはできないのです。分割払いを交渉したり、資産を売却したりするなど、何らかの方法で支払いを続けていく必要があります。

金銭的な問題もさることながら、示談が成立するかどうかは刑事処分の大きさにも直結します。示談が成立していれば執行猶予が付く可能性が高まりますが、示談なしでは実刑のリスクが高まるからです。
いずれにせよ、速やかに弁護士へ連絡して、どのように対応すべきかを相談するべきでしょう。

ひき逃げの示談交渉を弁護士に依頼するべき理由

ここまで、任意保険の有無によって示談交渉の方法が変わることを説明しました。

任意保険を契約している方の中には、「保険会社が対応してくれるなら、弁護士は不要では?」と思われた方もいるかもしれません。しかし、ひき逃げ事件では、保険に加入していても、していなくても、弁護士への依頼が極めて重要になります。

以下、ひき逃げ事件の示談交渉を弁護士に依頼するべき理由を3つ説明します。

ひき逃げの示談金を弁護士へ依頼する理由

刑事事件にも配慮して示談を成立させてくれる

1つ目の理由は、刑事事件にも配慮して示談を成立させてくれることです。
そもそも、ひき逃げの加害者にとって、示談の最大の目的は、刑事処分を軽くすることにあるはずです。

そのためには、単に示談を成立させるのではなく、宥恕文言(「加害者を許す」という文言)を得たり、嘆願書を取り付けるなど、刑事事件にも配慮した交渉が必要です。

しかし、保険会社は刑事上の処分には関与してくれません。
保険会社は、あくまで民事上の手続きを代行しているだけだからです。示談書に宥恕条項は含まれませんし、嘆願書の取り付けなども期待できません。

■示談における保険会社と弁護士の違い

保険会社弁護士
宥恕文言の取得✕ 期待できない◯ 最優先に取り組む
嘆願書の取得✕ 期待できない◯ 積極的に交渉する
刑事処分の軽減✕ 期待できない◯ 刑の減軽につながる

したがって、刑事処分の軽減を目指すなら、弁護士に依頼して、被害者の宥恕を得る交渉を別途行う必要があります。

被害者感情に寄り添った対応で解決に導ける

2つ目の理由は、被害者感情に寄り添った対応で解決に導けることです。
ひき逃げ被害者や家族の中には、「お金よりも刑罰を与えて欲しい」と思っている人もいます。こういったケースでも、弁護士なら被害者の気持ちに寄り添いながら、被害感情を和らげる方法を考えていきます。

例えば、以下のような方法が考えられます。

・被害者の気持ちに寄り添い、すぐに謝罪を行う
・謝罪文や反省文を添削し、被害者に渡す
・車を売却したり、運転免許を自主的に返納して、反省の意を示す

示談によって刑が減軽されるのは、単に「示談が成立したから」ではなく、「示談によって被害者の被害感情が和らいだから」です。
そのため、一口に示談といっても、「事務的に成立させた示談」と、「被害者の気持ちをくみ取った結果の示談」では、刑事処分への影響度合いが異なります。

上記のように、被害者の気持ちをくみ取り、しっかり寄り添いながら示談交渉を進めていくことが、刑の減軽につながるのです。

刑事事件の弁護によって、刑の減軽も期待できる

3つ目の理由は、示談交渉だけではなく、刑事事件の弁護も行ってくれることです。

弁護士なら、万が一逮捕されてもすぐに釈放に向けて動き出してくれますし、裁判でも前科や実刑を防ぐために最大限に戦ってくれるでしょう。
さらに、加害者にとって不当に不利な取調べが実施されていたり、事実と異なる内容で進められていたら、それを正すための活動も行ってくれます。

早期にひき逃げ事件に強い弁護士へ依頼することで、より有利な結果を導ける可能性が高まります。

※関連コラム「ひき逃げ加害者向け!今すぐ弁護士へ依頼すべき理由と選び方のポイント」

ひき逃げの示談交渉はグラディアトル法律事務所へご相談ください

ひき逃げ事故を起こしてしまい、「示談金がいくらになるのか」「被害者との交渉をどう進めればいいのか」と不安な方は、ぜひ弊所グラディアトル法律事務所にご相談ください。

当事務所は、これまで数多くの刑事事件、交通事件を解決に導いてきた実績ある法律事務所です。経験豊富な弁護士が、ひき逃げの示談を成立させて、依頼者の利益を「勝ち取る」ために、迅速かつ的確な弁護活動を提供いたします。

■ひき逃げの示談交渉でグラディアトル法律事務所ができること

・適正な示談金額を算定し、法外な請求を防ぐ
・早期の示談成立によって、刑事処分の軽減を目指す
・宥恕文言や嘆願書の取得により、不起訴処分を目指す
・任意保険が使えない場合でも、分割払いなどの交渉をする
・被害者の感情に配慮した謝罪や反省文の作成をサポートする
・刑事事件と民事賠償の両面から、最適な解決策を提案する

弁護士には厳格な守秘義務が定められているため、ご相談によって事件が外部に漏れることは一切ありません。24時間365日相談受付をしていますので、まずはお気軽にご連絡ください。

まとめ

最後に、記事のポイントをまとめます。

◉ひき逃げの示談金の目安

・ハッキリとした相場はなく、「被害の大きさ」や「被害感情」で金額が変わる
・通常の交通事故よりも、高額になりやすい
・一般的には、以下ような金額となるケースが多い

被害の程度示談金の目安
人身事故で被害者が軽症の場合10万〜30万円
中程度のケガで後遺障害がない場合数十万〜100万円
後遺障害がある場合数百万円〜数千万円
死亡事故の場合千万円〜1億円

◉示談金を決定する3つの要素

・積極損害(治療費など実費)
・消極損害(休業損害、逸失利益など)
・慰謝料(傷害・後遺障害・死亡慰謝料など)

◉示談金が高額になるケース

・死亡、後遺障害が残ったなど、被害が重大な場合
・被害者の過失割合がゼロの場合(加害者の信号無視など)
・被害者側が弁護士を立てて、「弁護士基準」で慰謝料を請求してきた場合

◉ひき逃げの示談交渉を弁護士に依頼するべき理由

・宥恕文言を得るなど、刑事事件に配慮して、示談を成立させてくれる
・被害者感情に寄り添った対応で刑の減軽につながる
・逮捕の回避や刑の減軽を目指す刑事弁護も行ってくれる

以上です。
この記事が参考になったと感じましたら、ぜひグラディアトル法律事務所にご相談ください。一日も早く事件が解決し、平穏な日常を取り戻せることを願っています。

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弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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