ひき逃げは免停ではなく免許取消!免許を守るためにできる3つのこと

ひき逃げは免停?
弁護士 若林翔
2025年09月05日更新

「ひき逃げをしてしまった…免停になるのか?」
「何日間の免停で済むのか知りたい」
このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

残念ながら、ひき逃げは免許停止では済みません。ひき逃げの違反点数は35点一発で免許は取消となり、最短でも3年間は免許を再取得できなくなります。

ただし、事故の状況や対応次第では、そもそも「ひき逃げ」として扱われず、より軽い処分で済む可能性もあります。たとえば、示談によって人身事故扱いを回避できた場合や、事故の認識がなかったことを立証できた場合などです。

この記事では、ひき逃げの違反点数と欠格期間、免停で済む可能性がある2つのケース、そして今からできる3つの対処法について詳しく解説します。

ひき逃げの処分を少しでも軽くしたい方は、ぜひご一読ください。

※令和7年6月1日より、従来の「懲役・禁錮」が「拘禁刑」に1本化されました。

ひき逃げは「免許停止(免停)」ではなく「免許取消(免取)」

ひき逃げは免許停止ではなく、一発で免許取消となります。

免許取消処分を受けると、一定期間は再取得できません。この期間を「欠格期間」といい、前歴(過去3年間の行政処分の回数)や事故の被害程度によって、3年から10年の間で決定されます。

ひき逃げは免停ではなく免許取消

「ひき逃げ(救護義務違反)」の違反点数は35点(免許取消)

ひき逃げをすると、道路交通法の「救護義務違反」として35点の違反点数が加算されます。
違反点数が15点を超えると、過去の処分回数に関わらず免許は取消です。

そのため、過去の処分歴やゴールド免許などの種別に関わらず、ひき逃げとなった時点で免許取消は避けられません。

違反行為違反点数
ひき逃げ
(救護義務違反)
35点
※15点以上で免許取消

事故の結果によって、付加点数も加算される

さらに、ひき逃げの基礎点数(35点)に加えて、被害の重大性に応じた「付加点数」が加算されます。基礎点数と付加点数の合計によって違反点数が決まり、違反点数によって免許の欠格期間の長短が変わってきます。

人身交通事故の付加点数は以下のとおりです。

死亡事故重傷事故
(3か月以上または後遺障害)
重傷事故
(30日以上3か月未満)
軽傷事故
(15日以上)
軽傷事故
(15日未満)
専ら違反者の不注意によるもの20点13点9点6点3点
その他13点9点6点4点2点

(出典:神奈川県警察

たとえば、ひき逃げをした結果、被害者が30日以上3か月未満の重傷を負った場合、もっぱら違反者の不注意によるものであれば、44点(35点+9点)が違反点数です。

免許の欠格期間は最短3年~最長10年

免許取消後の欠格期間は、最短3年~最長10年です。
この欠格期間の長さは、「前歴(過去3年間の行政処分の回数)」「今回の違反点数」の組み合わせで決まります。

前歴が多いほど、また違反点数が高いほど、欠格期間は長くなります。

欠格期間
3年4年5年6年7年8年9年10年
前歴なし35点〜39点40点〜44点45点〜49点50点〜54点55点〜59点60点〜64点65点〜69点70点以上
前歴1回35点〜39点40点〜44点45点〜49点50点〜54点55点〜59点60点〜64点65点以上
前歴2回35点〜39点40点〜44点45点〜49点50点〜54点55点〜59点60点以上
前歴3回以上35点〜39点40点〜44点45点〜49点50点〜54点55点以上

(出典:神奈川県警察

たとえば、前歴なしで軽傷事故(15日未満)の場合、違反点数は37点(35点+2点)となり、欠格期間は3年です。一方、同じ前歴なしでも、死亡事故なら55点(35点+20点)となり、欠格期間は7年に延長されます。

欠格期間が過ぎた後は、自動的に免許が戻ってくるわけではありません。改めて仮免許試験・本免許試験を受けて合格する必要があります。

ひき逃げが免停で済む可能性がある2つのケース

ここまで説明したとおり、ひき逃げ(救護義務違反)で起訴されれば、免許の取消は避けられません。

しかし、実際にはすべての交通事故がひき逃げとして処理されるわけではありません
なかには、事故の状況や被害の程度、その後の対応によってより軽い処分で済むケースもあります。

以下では、ひき逃げで免許取消を回避できる可能性があるケースを2つ紹介します。

ひき逃げで免許取消を回避して免停になる可能性

示談によって診断書の提出を防ぎ、ひき逃げではなく物損事故で処理された場合

1つ目は、示談の成立によって診断書が提出されず、人身事故として扱われなかった場合です。

実は、必ずしも「怪我をした=人身事故」となるわけではありません。
救護義務違反(ひき逃げ)として扱われるか、報告義務違反のみ(当て逃げ)として扱われるかは、基本的に被害者の診断書がベースになります。

そのため、相手のケガが極めて軽微で、双方が合意の上で示談が成立していれば、相手方が診断書を提出しないケースもあります。
相手が人身事故に切り替えなければ、捜査機関としても人身事故(救護義務違反・過失運転致傷)として扱わないのが一般的です。

この場合、民事上の賠償責任は発生しますが、「免許取消」まではいかないでしょう。
行政処分の前歴にもよりますが、通常は「報告義務違反」として扱われるケースが多いです。報告義務違反の違反点数は5点、免許は30日間の停止処分(免停)となります。

ひき逃げの成立を否定できた場合(事故に気づかなかった等)

2つ目は、ひき逃げ(救護義務違反)の成立自体を否定できたケースです。
一例として、そもそも人身事故に気づいていなかったような場合が考えられます。
ひき逃げが成立するには、犯罪の故意(ひき逃げした事実の認識・認容)が必要なので、そもそも事故に気づいていなければ、ひき逃げにはなりません。

ただし、そのためには加害者が単に「気づかなかった」と主張するだけでは不十分です。
ドライブレコーダーの映像や事故現場の状況など、客観的な証拠を用いて、気づかなかったことを適切に主張・立証する必要があります。
決して簡単ではないので、ひき逃げ事件に強い弁護士への相談が不可欠でしょう。

判例でも、「人を負傷させたことの認識が認められない」として、免許の取消処分に対する取消請求が認められた事例があります。

道路交通法72条1項前段の救護義務違反があるとしてされた運転免許取消処分につき,同義務違反成立の前提となる人を負傷させたことの認識が認められないとして,同処分及び同処分を前提としてされた免許を受けることができない期間を指定する処分の取消請求がいずれも認容された事例

(出典:京都地裁平成22年9月7日

ひき逃げを免停で終わらせるためにすべき3つのこと

ここからは、実際に免許取消を回避するためにすべきことを説明していきます。

ひき逃げを免停で終わらせるためにすべきこと

弁護士へ相談する

まず最初にすべきことは、ひき逃げ事件に詳しい弁護士への相談です。
前述したとおり、免許取消を避けるには、ひき逃げ(救護義務違反)として起訴されること自体を防ぐ必要があります。そのためには、被害者との示談交渉や、「事故に気づかなかった」という主張の立証など、専門的な知識と経験が不可欠です。

早期に弁護士に相談することで、ドライブレコーダーの映像保全や目撃者の証言確保など、自分に有利な証拠を適切に収集できます。警察での取り調べにおいても、法的に不利にならない供述方法についてアドバイスを受けられるでしょう。

弁護士は、常にあなたの味方となって、免許の取消を防ぎ、できる限り望ましい結果となるようにサポートをしてくれます。

※関連コラム「ひき逃げ加害者向け!今すぐ弁護士へ依頼すべき理由と選び方のポイント」 

警察へ自首、出頭する

弁護士への相談と並行して重要なのが、警察への自首・出頭です。
「逮捕されるのが怖い」と思うかもしれませんが、自ら出頭することには大きなメリットがあります。自首は「逃亡の意思がない」ことを示す行為であり、情状面で有利に働く可能性が高いのです。
自首・出頭したタイミングが早ければ、救護義務違反(ひき逃げ)ではなく、より軽い処分で済む可能性もあります。

ただし、出頭後の供述は後の処分内容に大きく影響します。
ここで話す内容によっては、大きな不利益を被ることになりかねません。できれば事前に弁護士に相談したうえで、警察へも同行してもらいましょう。

※関連コラム「ひき逃げしてしまった…自首するべき5つの理由と当日の流れを紹介

被害者と示談をする

最後に重要なのが、被害者との示談です。
示談によって、被害者から「処罰を望まない」という意思を示してもらえれば、刑事処分の減軽が期待できます。さらに、被害者が診断書を提出しない判断をした場合、物損事故として扱われ、免許取消を避けられる可能性も出てくるでしょう。

もっとも、ひき逃げの被害者がそう簡単に示談を受け入れられるかと言えば、そうではありません。なかには「お金より罰を与えてほしい」と考える方もいます。

ひき逃げで示談を成立させるには、被害者の感情に寄り添える弁護士のサポートが不可欠です。刑事処分を受けても被害者に賠償金は入らないこと、示談によって手厚い補償を受けられることを、弁護士が粘り強く説明していけば、示談成立の可能性を高められます。

※関連コラム「ひき逃げの示談金相場はどれくらい?高額になる3つのケースを紹介」

ひき逃げの加害者となった方は、グラディアトル法律事務所へご相談ください。

ひき逃げ事故を起こしてしまい、「免許が取り消されるかも…」と不安な方は、ぜひ弊所グラディアトル法律事務所にご相談ください。

当事務所は、これまで数多くの刑事事件、交通事件を解決に導いてきた実績ある法律事務所です。経験豊富な弁護士が、ひき逃げによる免許取消を防ぎ、依頼者の利益を「勝ち取る」ために、迅速かつ的確な刑事弁護を提供いたします。

■ひき逃げ事件でグラディアトル法律事務所ができること

・被害者との早期示談により、物損事故での処理を目指す
・救護義務違反での立件を防ぎ、免許取消処分の回避を目指す
・自首や出頭に同行し、警察での取調べをサポートする
・万が一逮捕されても、早期釈放に向けて全力で弁護活動を行う
・適正な示談金額での解決を図り、法外な請求を防ぐ
・再犯防止の取り組みを裁判所に示し、刑の減軽を目指す

弁護士には厳格な守秘義務が定められているため、ご相談によって事件のことが外部に漏れることは一切ありません。24時間365日相談受付をしていますので、まずはお気軽にご連絡ください。

まとめ

最後に、記事のポイントをまとめます。

■ひき逃げ事件のポイント

・ひき逃げは免許停止ではなく免許取消
・免許の欠格期間は最短3年~最長10年

■免停で済む可能性がある2つのケース

・診断書の提出を防ぎ、物損事故で処理された場合
・「事故に気づかなかった」と証明できた場合

■ひき逃げを免停で終わらせるためにできること

・弁護士へ相談する
・警察へ自首・出頭する
・被害者と示談をする

以上です。
この記事が参考になったと感じましたら、ぜひグラディアトル法律事務所にもご相談ください。一日も早く事件が解決し、平穏な日常を取り戻せることを願っています。

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弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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