「交通事故を起こして、パニックになって逃げてしまった…」
「今からでも警察に行った方がいいのか、逮捕されるのではないか…」
このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
事故直後は頭が真っ白になり、その場から離れてしまった。でも今は冷静になって、これからどうすべきか悩んでいる。そんな状況かもしれません。
まず、もし被害者がまだ事故現場にいる可能性があるなら、迷わず現場に戻って救護措置を行い、119番通報をしてください。これが最優先です。
現場に戻れない状況でも、自首や出頭、弁護士への相談、被害者との示談交渉など、事態を改善できる選択肢はあります。
この記事では、ひき逃げで逮捕されないために今すぐできる3つの対処法、逮捕された場合の流れと刑罰、行政処分や民事責任の内容、そして弁護士に依頼するべき理由について解説します。
逮捕を防ぐためにできることはまだ残されています。まずはこの記事を最後まで読んで、逮捕を防ぐために最善の行動を起こしましょう。
目次
ひき逃げで逮捕されないために今すぐできる3つのこと
ひき逃げをしてしまった場合、逮捕を回避するためには以下の3つの対応が重要です。
事件直後なら、自首・出頭を検討する
まず、事故直後なら速やかに自首・出頭を検討しましょう。
事故から少し時間が経っていても、警察がまだ事故を認知していない、あるいは加害者を特定できていない段階であれば、自首が成立します。
自首が成立すれば、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されやすくなるため、逮捕を防げる可能性が格段に高まります。後の裁判でも、反省の態度を示す重要な情状として有利に働くでしょう。
弁護士に相談して、今後の方針を立てる
次に行うべきは、弁護士に相談して今後の方針を立てることです。
相談するときは、できれば直接会って説明するのが望ましいですが、緊急の場合は電話でも構いません。法律事務所によっては、24時間対応の電話相談を実施しており、深夜や早朝でも対応してもらえる場合があります。
「こんな時間に連絡していいのか」と遠慮する必要はありません。
現在の状況を包み隠さず説明して、どのように対応すべきかのアドバイスを受けてください。弁護士には守秘義務があるため、相談内容が警察に伝わることはありません。
警察対応の方針や、今後の流れについて具体的に教えてもらえるはずです。事前に相談しておけば、もし逮捕されてもすぐに釈放に向けて動き出せます。
被害者との連絡が取れる場合は、示談交渉をする
最後に大切なのが、被害者との示談交渉です。
当事者間の紛争を話し合いによって解決することです。
示談で解決されるのは、あくまでも民事上の紛争なので、示談によって必ずしも逮捕・起訴を防げるわけではありません。しかし、被害者への賠償を行い、許しを得ているという事実は、刑事処分を決めるときにも大きく影響します。
示談が成立すれば、逮捕や起訴を回避できる可能性は大幅に高くなります。
なお、示談交渉をするときは、以下のポイントに注意してください。
■ひき逃げ事件の示談交渉のポイント
① 交渉を自分で行わない
② 示談交渉をはじめるタイミングを見極める
スムーズに示談が成立するかは、被害者の感情に強く左右されます。交渉を自分で行うと、感情的な対立につながるためおすすめできません。
示談交渉を打診するタイミングについても、一般的には被害感情が落ちついてからが望ましいとされています。事故の内容や、逮捕・起訴などの状況によって適切な進め方は異なるので、必ず弁護士に相談して、アドバイスを受けましょう。
※関連コラム
「ひき逃げの示談金相場はどれくらい?高額になる3つのケースを紹介」
ひき逃げで逮捕された後の流れ
次に、ひき逃げで逮捕された場合の流れを見ていきましょう。
【24時間〜48時間】警察の取調べが行われる
ひき逃げで逮捕されたら、すぐに警察の取り調べが始まります。警察から聞かれるのは、以下のような内容です。
■取り調べで聞かれる主な内容
・事故当時の状況(信号、対向車の有無、天候など)
・事故が発生した原因
・なぜ逃走したのか
・前科や前歴の有無
・飲酒や免許の有無 など
ここで話した内容は、逮捕・起訴などに大きな影響を与えます。
ただし、虚偽の供述をするのは絶対にやめましょう。現場のブレーキ痕、車両の損傷状況、ドライブレコーダーの映像などから、すぐに嘘だと発覚して心証が悪くなります。
事実を伝えても信じてもらえない場合は、黙秘権なども行使しつつ、すぐに弁護人を選任することをおすすめします。
【72時間以内】検察官によって勾留・釈放が決まる
警察の取り調べが終わったら、事件は検察に引き継がれます。これを一般に「身柄送検」と呼びます。事件を引き継いだ検察官は、送致から24時間以内(逮捕から72時間以内)に身柄拘束を継続(勾留請求)するか釈放するかを決定します。
勾留請求が却下されれば、その時点で釈放されて自宅へ戻れます。一方、勾留が決まると10日間の身柄拘束が継続されることになります。
【10日〜20日】身柄が拘束され続ける
勾留が認められると、10日間(逮捕から13日間)身柄拘束が続けられて、警察・検察による取調べが続けられます。
なお、10日間経てば必ず釈放されるわけではありません。勾留は延長請求される場合もあります。勾留延長が認められると、さらに10日間(逮捕から23日間)身柄拘束が継続されます。
【勾留後】起訴されて裁判になるか、不起訴されて釈放されるかが決まる
勾留が終わると、検察官がひき逃げ事件を起訴するか不起訴にするかを決定します。
起訴には略式起訴と正式起訴(公判請求)の2種類があり、どちらになるかで裁判の有無が変わってきます。
交通事件で公判請求されるケースは少ないですが、ひき逃げ事件では正式起訴されて刑事裁判にかけられる可能性もあります。特に、飲酒運転や無免許運転をしていたり、相手が死亡・重傷となっているようなケースは、正式起訴されて拘禁刑などが求刑される可能性が高いです。
ひき逃げで逮捕される可能性は高め
ここまで逮捕を回避する方法や逮捕後の流れを説明してきましたが、そもそもひき逃げはどの程度の確率で発覚し、逮捕にいたるのでしょうか?
ひき逃げ(救護義務違反)の検挙率は72.1%
まずは、ひき逃げ事件の検挙率に関するデータをご覧ください。
(出典:法務省|令和6年版犯罪白書)
上記データは、ひき逃げ事件の検挙率の推移を示したものです。
検挙率とは、警察が発生を認知した事件のうち、刑事事件として立件した割合です。
「検挙=逮捕」ではありませんが、検挙率の高さは、警察が積極的に捜査を行い、犯人を特定していることを示しています。
令和6年版犯罪白書によれば、ひき逃げ事件全体の検挙率は72.0%を超えています。さらに、重傷事故では87.9%、死亡事故ではほぼ100%検挙されています。
つまり、ひき逃げ事件で犯人が特定される割合は極めて高いと考えられます。
ひき逃げで逮捕される要件
とはいえ、さきほどお伝えしたとおり「検挙=逮捕」ではありません。刑事事件で逮捕に至るのは、基本的に次の要件を満たした場合に限られます。
逮捕要件 | 内容 |
---|---|
①罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある | ひき逃げの加害者であることが、証拠によって認められるか |
②逮捕の必要性がある | 証拠隠滅、逃亡のおそれがあるか |
ただ、ひき逃げ事件では基本的にどちらも認められやすいです。
交通事故は証拠が残りやすく、「②逮捕の必要性」についても、一度現場から逃走したという事実がある以上、逃亡のおそれがあると判断されやすいからです。
特に、被害者が死亡したり、重傷を負っているようなケースでは、逮捕にいたる可能性が高くなります。
ひき逃げから1〜2週間経って、後日逮捕されるケースもある
ひき逃げ事件で逮捕にいたる場合、基本的に事故から2〜3日で警察から連絡がくるケースが多いです。しかし、なかには事故から1〜2週間経って、後日逮捕にいたるケースもあります。
■ひき逃げで後日逮捕された事例
軽トラックで男性をはねて逃げた疑い、54歳男を逮捕 被害者は背骨が折れる重傷 愛知・豊明市
・ひき逃げから逮捕までの期間:4日
・事故を起こした日:2025年8月1日
・逮捕された日:2025年8月5日
(出典:メーテレ(名古屋テレビ放送株式会社))
最近は防犯カメラやドライブレコーダーが普及しています。
そのため、事故から時間が経過していても、車のナンバープレートなどから犯人が特定されて、逮捕にいたるケースが増えているのです。
ひき逃げで逮捕されたときの拘禁(懲役)・罰金
ひき逃げで逮捕されると、下記のような罰金刑や拘禁刑を受けることになります。
【人身事故に対する罪】※いずれか一方
罪名 | 刑の内容 |
---|---|
過失運転致死傷罪 | 7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
危険運転致死傷罪 | 15年以下の拘禁刑、死亡なら1年以上の拘禁刑 |
【逃走行為に対する罪】
罪名 | 刑の内容 |
---|---|
救護義務違反 | 10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
ひき逃げの、「ひき(人身事故)」の部分に対する罪が「過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪」、そして「逃げ(被害者を救護せず離れた)」の部分に対する罪が「救護義務違反」です。
これらは別々の罪ですが、単純に足し算して刑の重さが決まるわけではありません。法定刑の上限は「併合罪」という刑法上のルールによって計算されます。
具体的には以下のような刑罰が、法定刑の上限となります。
■ひき逃げの法定刑の上限
拘禁刑の上限:最長15年
罰金刑の上限:最高200万円
(※過失運転致死傷罪・救護義務違反が成立した場合)
そして、被害の程度や悪質性などを考慮して、この範囲内で実際に言い渡される刑(処断刑)が決められます。
ひき逃げで逮捕されると、免許取消・損害賠償の可能性もある
ひき逃げをすると、刑事処分だけでなく、行政処分と民事責任も問われます。
行政処分|免許の取り消し・免許停止
行政処分とは、運転免許に対する取消処分のことです。
道路交通法では、交通違反や事故に対して違反点数が定められており、ひき逃げの場合は以下の点数が加算されます。
違反内容 | 点数 |
---|---|
ひき逃げ(救護義務違反)の基礎点数 | 35点 |
違反行為に付する付加点数 | 2点〜20点 |
ひき逃げ(救護義務違反)の違反点数は35点、これだけで免許取消の基準(15点以上)を大きく超えるので、一発で免許は取消です。さらに、行政処分の前歴と違反点数の合計に応じて、最低でも3年、最長10年の欠格期間が指定されます。
民事責任|被害者への損害賠償
被害者に対する損害賠償責任も発生します。
具体的には以下のような内容です。
■主な損害賠償の内容
・治療費、入院費
・休業損害(仕事を休んだ分の補償)
・慰謝料(精神的苦痛に対する賠償)
・後遺障害慰謝料(後遺症が残った場合)
・逸失利益(障害を負ったとき、将来得られたはずの収入)
ひき逃げの場合、通常の交通事故よりも慰謝料が増額される傾向があります。救護措置が取られなかった分、被害者の精神的苦痛も大きいと判断されるからです。
損害賠償額は、軽傷でも数十万円から数百万円、重傷なら数千万円、死亡事故では1億円を超えるケースもあります。
ひき逃げしたとき弁護士に依頼するべき4つの理由
ここまで、ひき逃げの逮捕回避方法や処分について説明してきました。最後に、なぜ弁護士に依頼すべきなのか、4つの理由を説明します。
自首や出頭に同行して、不利な取調べを阻止できるから
弁護士に依頼すれば、警察に自首、出頭するときも同行して、取調べ中に近くで待機してくれます。警察でどのように話すべきかも相談できるので、不用意な供述によって不利になる事態を避けられます。
そもそも、一瞬の出来事であるひき逃げの状況を思い出すのは難しいものです。
事故当時、被害者がいつから見えていたのか、カーブミラー等に写っていなかったのか、被害者にも落ち度はなかったのかなど、すべてを正確に供述するのは簡単ではありません。
しかし、曖昧な記憶でも、取調べで供述するとそのまま供述調書として記録されて、事実認定されてしまいます。
たとえば、本当は被害者が夜間に無灯火で自転車を運転していたのに、「加害者の前方不注意だけが原因だった」というような調書が作成されるケースも十分に考えられるのです。
このようなケースでは、被害者側の過失を主張することで、情状として一定の考慮がされる可能性はあるでしょう。
事前に弁護士に相談しておけば、警察で話すべき内容を整理できるので、取調べに対しても適切に対応できます。
逮捕されても、接見にいって被疑者のサポートができるから
自首や出頭が間に合わずに逮捕されてしまった場合も、弁護士に依頼すれば、すぐに接見に行って被疑者のサポートができます。
ひき逃げで逮捕されると、捜査の必要上、家族でも面会はできません。しかし、弁護士だけは接見(面会)が認められています。
すぐに留置場に行って、黙秘権などの権利を伝えたり、取調べのアドバイスをしたり、事件の見通しを伝えるだけでも、被疑者の負担を大きく減らせます。
すぐに釈放に向けた弁護活動を始めれば、処分の軽減も期待できるでしょう。
不起訴、刑の減軽をするために、示談を成立させてくれるから
弁護士に依頼すれば、被害者の連絡先を入手して示談交渉を進めてくれます。
1章でもお伝えしたとおり、ひき逃げ事件では示談によって、不起訴処分となる可能性を高められます。
ただし、ひき逃げの被害者は強い被害感情をもっているので、そう簡単には示談に応じてくれません。スムーズに示談を成立させるには、被害感情が落ち着いたタイミングを見極めて、適切な方法で交渉を進める必要があります。
早すぎれば交渉が難しくなりますが、遅すぎれば起訴決定・刑事裁判に間に合わなくなるリスクもあります。こういった交渉は、刑事事件の経験が豊富な弁護士でなければ難しいです。
行政処分が軽減される可能性があるから
前述したとおり、ひき逃げ(救護義務違反)で有罪となれば、確実に免許取消処分となります。しかし、刑事事件で不起訴処分を獲得できれば、行政処分も軽減される可能性があります。
たとえば、ひき逃げ事件で嫌疑不十分による不起訴を獲得できたようなケースです。
この場合、行政処分としてもひき逃げの違反登録がされなかったり、事実誤認のおそれがあるとして、再審査の申立てが認められる可能性があります。
刑事処分と行政処分は別の手続きですが、適切な弁護活動によって不起訴を目指すことが、結果的に免許を守ることにもつながるのです。
ひき逃げの逮捕を防ぐなら、グラディアトル法律事務所へご相談ください。
ひき逃げ事故を起こしてしまい、「逮捕されるかもしれない」「警察から連絡が来たらどうしよう」と不安な方は、ぜひ弊所グラディアトル法律事務所にご相談ください。
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■ひき逃げ事件でグラディアトル法律事務所ができること
・自首や出頭に同行し、逮捕を回避する
・被害者との早期示談により、不起訴処分を目指す
・警察での取調べ中に待機して、不利な供述を防ぐ
・万が一逮捕されても、72時間以内の早期釈放を目指す
・起訴された場合も、執行猶予付き判決など刑の減軽を目指す
・適正な示談金額での解決を図り、法外な請求を防ぐ
弁護士には厳格な守秘義務が定められているため、ご相談によって事件が外部に漏れることは一切ありません。24時間365日相談受付をしていますので、まずはお気軽にご連絡ください。
まとめ
最後に、記事のポイントをまとめます。
■ひき逃げで逮捕されないために今すぐできること
・事故直後なら自首・出頭を検討する
・弁護士に相談して今後の方針を立てる
・被害者との示談交渉を進める(弁護士経由で)
■ひき逃げで逮捕された場合の流れ
①逮捕〜48時間|警察での取り調べ
↓
②逮捕〜72時間|検察官が勾留・釈放を決定
↓
③4日目〜13日目|勾留(最大10日間)
↓
④14日目〜23日目|勾留延長(最大10日間)
↓
⑤起訴または不起訴の決定
■ひき逃げ事件のポイント
・検挙率は72.1%で、重傷事故では87.9%、死亡事故ではほぼ100%
・法定刑の上限は拘禁刑15年、罰金200万円
・刑事処分だけでなく、行政処分(運転免許取消)、民事責任も問われる
■ひき逃げ事件で弁護士ができること
・自首・出頭に同行して不利な取調べを阻止
・逮捕されても接見で被疑者をサポート
・被害者との示談交渉で不起訴・刑の減軽を目指す
・刑事処分で不起訴を獲得して行政処分の軽減も目指す
以上です。
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