前科や逮捕歴があると海外旅行できない?パスポート・ビザへの影響

前科や逮捕歴があると海外旅行できない?パスポート・ビザへの影響
弁護士 若林翔
2025年10月12日更新

「前科や逮捕歴があると海外旅行ができないって本当?」

「前科や逮捕歴は、パスポートやビザにどのような影響がある?」

「前科や逮捕歴があると渡航が難しい国はある?」

海外旅行に行きたいけれど、「前科があるとパスポートは取れないのでは?」「逮捕歴があると入国できない国があるのでは?」と不安を感じている方も少なくありません。実際に、日本の旅券法や各国の入国管理制度では、一定の場合に前科や逮捕歴が影響を及ぼすことがあります。

たとえば、刑事裁判中や執行猶予中は、パスポートの発給が制限される場合がありますし、アメリカやオーストラリアなど一部の国では、ビザの申請時に前科の有無を申告しなければならず、虚偽申告をすれば入国拒否のリスクもあります。

本記事では、

・前科や逮捕歴があると海外旅行にどのような制限がかかるのか
・パスポートやビザ取得への影響
・前科や逮捕歴に関するよくある質問

などを詳しく解説します。

海外旅行を計画する前にリスクを正しく理解し、安心して行動できるようにしましょう。

前科や逮捕歴があると海外旅行に行けない?|パスポートとビザの基礎知識

前科や逮捕歴がある方の多くが気になるのは「前科や逮捕歴があると海外旅行に行けないのではないか?」という点です。実際、前科や逮捕歴があることで、パスポートの発給やビザの取得に影響が出るケースがあります。以下では、その前提となる基礎知識を整理しておきましょう。

パスポートとは

パスポート(旅券)は、日本国籍を持つ人が海外に渡航する際に必要となる身分証明書です。日本国政府が発行するもので、出入国審査の際には必ず提示が求められます。パスポートを所持していなければ原則として海外旅行はできません。

ただし、パスポートの発行には一定の制限があり、旅券法によって「発給を制限できる事由」が定められています。そのため、前科や刑事手続き中の状況によっては、パスポートが取得できない場合があるのです。

ビザとは

ビザ(査証)は、渡航先の国が「入国を認めます」と証明する許可証のようなものです。日本のパスポートは世界的に信用度が高く、多くの国で短期滞在ならビザが免除されています。しかし、アメリカ・オーストラリア・カナダなど一部の国では、入国前にビザ申請が必要です。

このとき、申請書には犯罪歴の有無を回答する欄があり、前科や逮捕歴がある場合は入国を拒否されることがあります。特に、虚偽の申告をした場合は、今後の渡航自体が難しくなるリスクもあるため注意が必要です。

前科や逮捕歴があると海外旅行に行けない可能性がある

前科や逮捕歴は、日本国内の手続きと渡航先の入国審査の両方に影響を及ぼします。

①パスポートの取得に影響する場合刑事裁判中、執行猶予中、仮釈放中などは、旅券法の規定によりパスポートが発給されない可能性があります。
②ビザの取得に影響する場合逮捕歴や前科があると、渡航先のビザ審査で拒否される場合があります。

つまり、海外旅行の可否は「日本でパスポートが取得できるか」「渡航先の国でビザが下りるか」という二重のハードルに左右されるのです。

次章以降では、前科とパスポート取得の関係、逮捕歴とビザ申請の関係をさらに詳しく解説していきます。

前科があると海外旅行に必須のパスポートが取得できない

前科があると海外旅行に必須のパスポートが取得できない

海外旅行にはパスポートが欠かせません。しかし、前科がある場合や刑事手続き中の状況によっては、パスポートの発給が制限されることがあります。これは旅券法によって明確に規定されており、一定のケースでは「発給拒否」や「返納命令」が出される可能性があるのです。以下では、前科がパスポート取得に影響する具体的なケースを整理します。

渡航先の法律により入国が認められない場合

旅券法第13条1項1号は、「渡航先の国に入国が認められないと認められるとき」は、旅券発給を拒否できるとしています。

たとえば、麻薬や薬物に関する前科があると、アメリカやオーストラリアなどでは入国が制限される可能性があります。そのため、日本政府もパスポートを発給しても無駄になると判断する場合があるのです。

一定の罪で刑事裁判中または身柄拘束が予定されている場合

刑事裁判が進行中であったり、身柄拘束の可能性が高い場合もパスポートは発給されません。これは、逃亡防止の観点から当然といえます。

たとえば、詐欺事件で起訴され、公判中の被告人が「海外旅行に行きたい」と申請しても、認められる可能性は極めて低いでしょう。

仮釈放中や執行猶予期間中の場合

仮釈放中や執行猶予中は、まだ刑罰が完全に終了していない段階と評価されます。そのため、再犯防止や逃亡防止の観点からパスポートの発給が制限されます。特に、薬物や暴力犯罪の前科がある場合は、制限が厳しくなる傾向にあります。

旅券法23条の規定により刑に処せられた場合

虚偽の情報でパスポートを受け取る行為や偽造したパスポートを使用する行為は、旅券法違反として刑事罰の対象となります。旅券法違反による刑に処せられた場合には、パスポートの発給が制限されます。

公文書偽造罪などの前科がある場合

旅券は公文書にあたるため、過去に公文書偽造罪や旅券不正取得に関わる罪で有罪判決を受けている場合、再びパスポートを取得するのは難しくなります。

日本国の利益や公安を害するおそれがあると認められた場合

旅券法には「公益や公安を害するおそれがある場合」という包括的な規定があります。これは、テロ組織との関与が疑われる人物や反社会的勢力とのつながりがあるとみられるケースなど国益に関わる場面で適用されることがあります。

逮捕歴があると海外旅行先でビザを取得できない可能性がある

パスポートは日本国政府が発行するものであり、取得できれば形式的には海外旅行の準備が整います。しかし、渡航先によっては入国のために「ビザ(査証)」の取得が必要です。そしてこのビザ申請の段階で、逮捕歴の有無が厳しく審査される場合があります。

ビザ審査における犯罪歴の扱い

アメリカ・カナダ・オーストラリアなどの国では、ビザ申請書に「過去に逮捕されたことがあるか」「有罪判決を受けたことがあるか」といった質問が設けられています。

このとき、たとえ不起訴処分や執行猶予中のものであっても、「逮捕された」という事実そのものを申告しなければならないケースが多いのが実情です。

たとえば、アメリカ大使館の公式サイト(FAQ)では、次のように記載されています。

たとえ不起訴処分となった場合でも、逮捕歴があれば必ず申告する必要があります。虚偽の申告を行った場合、永続的に入国を拒否される可能性があります。(出典:在日米国大使館・領事館

つまり「有罪判決を受けていないから大丈夫」と思い込んで虚偽申告をすると、かえって入国を拒否されたり、今後のビザ申請が困難になるリスクがあるのです。

ESTAや電子渡航認証制度との関係

アメリカやオーストラリアでは、短期旅行であればビザ免除プログラム(ESTAやETAS)を利用できる場合があります。

しかし、この電子認証でも犯罪歴についての質問があります。

「はい」と回答すると自動認証が下りない場合があり、その際はビザの個別申請に進む必要があります。つまり、逮捕歴があると通常よりも手続きが煩雑化し、審査が厳しくなる傾向があるのです。

前科・逮捕歴があると渡航が難しい国は?

前科や逮捕歴があるからといって、すべての国への渡航が禁止されるわけではありません。しかし、特に入国管理が厳しい国では、犯罪歴の有無が渡航可否に直結することがあります。以下では、前科や逮捕歴が問題になりやすい国や制度について解説します。

アメリカ(USA)

アメリカは、厳格に犯罪歴をチェックする国のひとつです。

・ESTA(電子渡航認証システム)申請時に「逮捕歴や有罪判決の有無」を回答する必要があります。
・「はい」と回答すると自動認証が下りない可能性が高く、その場合は大使館で面接を受けてビザを申請しなければなりません。
麻薬・薬物犯罪、暴力犯罪、詐欺・窃盗などの犯罪歴は特に厳しく審査されます。

オーストラリア

オーストラリアでも犯罪歴の有無は、重要な審査項目です。

・ETA(電子渡航許可)やビザ申請時に「Character Test」と呼ばれる審査があり、過去に懲役1年以上の刑を受けている場合は入国が拒否される可能性があります。
・執行猶予付き判決や仮釈放中のケースでも「人物審査」で不利になることがあります。

カナダ

カナダは、比較的軽微な犯罪歴でも入国に影響が出ることがあります。たとえば、飲酒運転(DUI)や軽微な暴力事件でも、一定期間は「入国不可(inadmissible)」とされるケースがあります。

前科・逮捕歴と海外旅行に関するよくある質問(Q&A)

前科・逮捕歴と海外旅行に関するよくある質問(Q&A)

前科や逮捕歴が海外旅行に与える影響については、多くの方が誤解をしていたり不安を抱いています。以下では、特に問い合わせの多い疑問をQ&A形式で紹介します。

交通違反や軽微な罰金刑も「前科」として扱われる?

通常の交通違反の反則金や過料は「前科」にはなりません。

前科とは「刑事裁判で有罪判決を受け、刑罰が確定したもの」を指します。スピード違反や駐車違反などの行政処分(反則金・過料)は前科に含まれません。ただし、危険運転致死傷罪や飲酒運転で刑事罰を受けた場合は前科となり、ビザ審査で問題になる可能性があります。

虚偽申告をするとどうなる?

虚偽申告は極めて危険です。入国拒否や長期的な渡航制限につながります。

たとえば、アメリカ大使館のFAQでは、「逮捕歴があるのに虚偽申告をした場合、永続的に入国を拒否される可能性がある」と明記されています。たとえ不起訴や無罪になった場合でも、逮捕歴そのものを隠すことはできません。短期的に旅行できたとしても、後日発覚すれば今後の渡航に大きな制約がかかります。

パスポートに前科の有無は記載される?

パスポートに前科や逮捕歴が記載されることはありません

パスポートはあくまで「日本国籍を有する本人を証明する身分証」であり、犯罪歴が明記されることはありません。ただし、前科や逮捕歴は「旅券法上の制限」「ビザ審査の過程」で確認される可能性があるため、間接的に影響が出ることはあります。

海外旅行をするなら前科を回避することが重要!まずはグラディアトル法律事務所まで相談を

海外旅行をするなら前科を回避することが重要!まずはグラディアトル法律事務所まで相談を

前科や逮捕歴があると、パスポートの発給制限やビザの取得拒否につながり、海外旅行の実現が難しくなる可能性があります。特に、アメリカやオーストラリアなどは犯罪歴に厳しく、虚偽申告をすれば将来的に渡航が不可能となるリスクもあります。海外渡航を検討している方にとって、「前科を作らないこと」こそ最大の予防策といえるでしょう。

もし刑事事件に関わってしまった場合でも、適切な弁護活動により不起訴処分を獲得できれば、前科はつきません。これにより、将来的な海外旅行の自由を守ることができます。

グラディアトル法律事務所では、刑事事件に精通した弁護士が一人ひとりの事情に合わせた解決策を提案します。海外旅行の夢を守るためにも、前科や逮捕歴に関して不安がある方は、ぜひ早めにご相談ください。

まとめ

前科や逮捕歴は、パスポートの発給制限やビザの取得拒否につながり、海外旅行に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、アメリカやオーストラリアなどでは厳格に審査され、虚偽申告をすれば長期的に渡航できなくなるリスクもあります。安心して海外旅行を楽しむためには、まず前科を避けることが重要です。

刑事事件に関わった場合や将来の渡航に不安がある方は、実績豊富なグラディアトル法律事務所へご相談ください。経験豊かな弁護士が、最適な解決策をご提案いたします。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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