「匿名のSNSで“あいつ最低”って書いただけなのに、侮辱罪だって言われた…本当に捕まるの?」
「友達とのDMでちょっと悪口言っただけなのに、公然性があるってどういうこと?」
こうした疑問や不安を抱えて、この記事をクリックされた方も多いのではないでしょうか。
最近では、ネット上の何気ない一言が「侮辱罪」に問われ、書類送検や慰謝料請求に発展するケースが増加しています。
本記事では、侮辱罪の成立要件の一つである「公然性とは何か?」を中心に、SNS投稿やDM、LINEグループ、職場・飲み会での発言が侮辱罪の対象になるのか徹底解説します。
また、知らずに侮辱罪に該当する行為をしてしまった場合の対処法や、弁護士を通じた示談交渉によるリスク回避方法も紹介しています。

目次
侮辱罪の「公然性」とは?
●侮辱罪が成立するには、「公然性」が必須要件です。
公然性とは、侮辱行為を不特定または特定多数の人が見聞きする状態のことを言います。
✅ 公然性が認められる主なケース
具体例 | 公然性の有無 |
---|---|
SNS(X/Instagramなど)への投稿 | ◎ だれでも見られる=公然性あり |
オープンな掲示板・コメント欄での発言 | ◎ 公然性あり |
職場や学校で他人がいる場での暴言 | ◎ 公然性あり |
電車内や街中で大声での罵倒 | ◎ 周囲に聞かれる可能性あり=公然性あり |
✅ 公然性が認められにくいケース(境界例)
具体例 | 公然性の判断 |
---|---|
1対1のLINEやDMのやり取り | △ 基本は公然性なし(ただし転送・流出で認定の可能性あり) |
家の中で2人きりでの発言 | × 第三者に届く可能性がない=公然性なし |
鍵アカウントでの投稿 | △ フォロワー数や内容によっては判断が分かれる |
● 裁判上のポイント:公然性の有無で罪が成立しないことも
- 侮辱罪は「公然性」がなければ成立しません。
- 逆に言えば、「誰かに見られる/見られる可能性があった」ことを検察側が立証できれば、侮辱罪が成立することもあります。
● SNS時代の「公然性」は成立しやすい
現代ではSNSや掲示板などの利用が一般的なため、意図せずして「公然性」が認定されるケースが増えています。
「鍵をかけているから」「相手にしか送っていないから」という安心は通用しないこともあるため、投稿前の慎重さが求められます。
SNSにおける侮辱罪の公然性の認定可能性について(プラットフォーム別まとめ)
SNSは不特定多数に届く投稿プラットフォームであるため、“公然性”の要件をほぼ満たします。
以下、主なプラットフォーム別に公然性が認められるかをまとめました。
プラットフォーム別の公然性の認定可能性について | |
プラットフォーム・機能 | 公然性の認定可能性 |
X(旧Twitter)のポスト・リプライ | 認められる |
Xの1対1のDM | 原則認められない |
Xのスペース機能 | 認められる |
Instagramの投稿に対するコメント | 認められる |
Instagramの1対1のDM | 原則認められない |
Instagramのストーリー | 認められる |
Instagramのストーリー(「親しい人」に限定) | 公開範囲による |
YouTubeの投稿 | 認められる |
YouTubeの限定公開での投稿 | 認められる(URLの配布範囲による) |
YouTubeのコメント欄・チャット欄 | 認められる |
YouTubeのメンバーシップコンテンツ内のコメント等 | 認められる |
Yahoo!ニュースのコメント欄 | 認められる |
5ちゃんねるなどの匿名掲示板 | 認められる |
公然性以外の侮辱罪成立の境界線とは?
侮辱罪は「公然と人を侮辱すること」によって成立しますが、公然性だけでなく、他の要素も慎重に判断されます。
ここでは、侮辱罪が成立するか否かの境界線を、公然性以外の視点で解説します。
侮辱罪が成立する要件を詳細に解説した記事もあるので、そちらもぜひご覧ください。
関連コラム:侮辱罪の構成要件を徹底解説|どこから罪?名誉毀損との違いもわかりやすく解説
✅ 侮辱罪成立のポイントとその境界線(一覧表)
判断軸 | 成立しやすいケース | 成立しにくい・グレーなケース |
---|---|---|
侮辱の内容 | 「バカ」「クズ」「死ね」など人格攻撃、嘲笑表現 | 意見や主張の一環(例:「合わない考え方だと思う」) |
対象の特定性 | 実名・ハンドル名が明示されている | 誰を指すか曖昧(「ある講師が…」など) |
継続性・悪質性 | 繰り返し・粘着的な投稿、執拗な罵倒 | 単発の投稿、感情的な一言 |
意図(名誉を下げる目的) | 誹謗・中傷の意図が明白 | 批評・表現の自由の範囲に留まる場合 |
侮辱罪成立の具体例2選
名前を出さなくてもアウト?匿名でも侮辱罪が成立する例
匿名掲示板で「無能」と書かれただけ場合や、その個人名は出さずにその匿名掲示板のみで通じるあだ名を書かれた投稿の場合。
このよう場合でも、文脈やスクリーンショットなどによって“誰に対する侮辱か”がわかれば罪になります。
また、匿名アカウントでなされた投稿でも、侮辱罪は成立するので、匿名だから安全といったことはありません。
一言言っただけで訴えられた実例
例として、街中で「くそばばあが、死ね」と言っただけで提訴されたケースもあります。
現場の音声やSNS投稿が証拠となり、侮辱罪で処罰が下ることもあります。
侮辱罪で告訴されたらどうなる?
侮辱罪の刑罰は?懲役・罰金・前科のリスク
侮辱罪の刑罰は、1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料と定められています。
しかも前科として記録され、就職・転職にも影響が及ぶリスクがあります。
告訴されるとどうなる?捜査・逮捕・略式起訴の流れ

まず、侮辱罪は親告罪といい、被害者が告訴しないと警察は捜査しません。
しかし、一旦告訴されると、警察の捜査、事情聴取、場合によっては逮捕、という流れになっていきます。
その後は、起訴され有罪判決が出れば、罰金命令等が出る、という流れです。
告訴が無くても慰謝料が請求される可能性も
たとえ告訴されなくても、被害者は民事で損害賠償請求が可能です。
「社会的評価が傷ついた」と訴えれば、数万円~十万円程度の慰謝料が請求されるケースもあります。
侮辱罪の慰謝料を詳細に解説した記事もありますので、気になる方はこちらもご覧ください。
関連コラム:【図解】侮辱罪の慰謝料の相場は?判例や減額方法も弁護士が解説!
家族や職場に知られる?知られずに対応するには
警察の捜査が進展するにつれて、家族・職場にも知られる可能性があります。
示談により告訴を取り下げさせたり、記録を残さず解決可能な対策と弁護士相談が非常に重要です。
まずは示談を!示談のメリットや不成立のデメリットとは
示談は損害賠償や謝罪文作成を通じ、告訴取り下げと不起訴を目指す最有力の解決策です。
弁護士が示談交渉を代理すれば、適切な金額設定や秘密保持が可能となり、告訴・捜査を回避できます。
示談に失敗すると訴訟・捜査が進み、処罰を避けられなくなる恐れがあります。
侮辱罪・侮辱行為に悩んだ時は弁護士に相談を!

侮辱罪のリスクに直面したら、迷わず弁護士へご相談ください。
投稿内容の修正・削除、相手との示談交渉、裁判回避の戦略など、早めに対応を行うことで刑事処罰や慰謝料リスクを大幅に軽減できます。。
グラディアトル法律事務所では、誹謗中傷案件を数千件以上取り扱ってきており、365日24時間対応可能です。
侮辱行為にお悩みの際は、ぜひグラディアトル法律事務所にご相談ください。
まとめ
本記事のまとめとなります。
・侮辱罪の「公然性」とは、侮辱行為を不特定または特定多数の人が見聞きする状態のこと
・SNS投稿は、公然性が認められる可能性が高い
・職場・LINEグループの発言、匿名・DMでも公然性が認められる可能性がある
・侮辱罪には、告訴・逮捕・前科だけでなく、慰謝料請求にも発展するリスクがある
・示談による早期解決が最善策。弁護士相談が重要
発言の意図に関わらず、状況によっては罪に問われることもあります。
少しでも不安を感じたら、速やかに弁護士へ相談しましょう。