「結婚詐欺で訴えると言われてしまった」
「結婚する気はないのに、相手からお金や贈り物を受け取ってしまった」
「結婚するとウソをついてお金を受け取ってしまった」
結婚をめぐるトラブルに巻き込まれ、「結婚詐欺で逮捕されるのでは?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
結婚詐欺は、相手を欺いて金銭や財物を得た場合に成立する犯罪です。結婚する意思がないことを相手にはっきりと伝えていたり、金銭のやり取りが一切ない場合は、たとえ結婚を匂わせる言動があったとしても、詐欺罪には問えません。
ただし、万が一逮捕されると、長期間にわたって拘束されるだけでなく、実名で報道されるリスクも出てきます。日常生活や仕事に多大な影響が及ぶことは避けられないでしょう。
逮捕を阻止するには、速やかに弁護士に相談して、交際相手と示談する等の行動を起こすことが必要です。
そこで本記事では、次の点を取り上げました。
◉この記事で分かること ・結婚詐欺で逮捕されるケース、逮捕されないケース ・結婚詐欺が成立するかを判断するポイント ・逮捕されるとどうなるのか ・逮捕を防ぐために弁護士ができること |
結婚詐欺をしてしまった方は、是非ご一読ください。
目次
結婚詐欺で逮捕されるケース
結婚詐欺で逮捕されるのは、基本的に「結婚を理由としたお金のやり取りがあった」場合です。
プロポーズなどではっきり約束していなくても、相手に結婚を匂わせて金銭を受け取っていれば、詐欺罪(刑法246条)が成立し、逮捕されるリスクがあります。
では具体的に、どのようなケースが結婚詐欺に該当するのでしょうか?実際に逮捕された事例を交えながら説明します。
結婚を前提に交際して、お金を要求する
結婚詐欺の典型例は、結婚する意思がないにもかかわらず、あたかも結婚するかのように装って交際を続け、お金を要求するパターンです。
例えば、以下のような理由で金銭を要求するケースが挙げられます。
「借金を返済しないと結婚できない」 「風俗店を辞めてあなたと結婚したいが、違約金が必要」 「親の病気が治ったら、あなたと結婚する(治療費)」 |
理由は様々ですが、どういった理由であれ、相手が「この人とは結婚できる」と誤解してお金を渡しているのであれば、詐欺罪となるリスクがあるのです。
なお、明確に結婚を約束している必要はありません。プロポーズをしていなくても、結婚すると誤信させる挙動(行動)を取っていれば、相手を騙していたとみなされる可能性が高いです。
【結婚詐欺の逮捕事例】
所沢署は12日、詐欺の疑いで、横浜市神奈川区東神奈川2丁目、派遣社員の男(56)を逮捕した。 逮捕容疑は、所沢市に住む当時40代女性に対し、結婚する意思がないのに結婚を前提とした交際を続け、「空き巣に入られて生活費がない」「出張で韓国に行く」「韓国で入院した」などとうそを言って信用させ、2017年10月12日~同11月13日の間、7回にわたり現金計120万円をだまし取った疑い。 (引用:埼玉新聞) |
結婚後の将来を匂わせて、お金をだまし取る
結婚後の将来をほのめかしてお金をだまし取る行為も、結婚詐欺で逮捕されるリスクがあります。
「2人で暮らすマンションを買おう」 「結婚に備えて貯金を増やしたい」 「将来の子どもの教育資金が心配」 など |
「婚活パーティ」や「結婚相談所」などに参加して、既婚者であることを隠して交際を始めたケースは、そもそも「結婚の意思がなかった」とみなされる可能性が高いです。
実際、既婚者であることを隠して婚活パーティに参加し、結婚話を持ちかけて金銭を騙し取ったとして、逮捕されたケースがあります。
【結婚詐欺の逮捕事例】
既婚者でありながら、交際相手に結婚話を持ちかけて計1950万円をだまし取ったとして詐欺罪に問われた福岡市南区、自称自営業の男(64)について、佐賀地裁は15日、懲役4年(求刑・懲役6年)の実刑判決を言い渡した。 判決によると、男は2018年9月6日以降、既婚者であることを隠し、医師を装うなどして参加した婚活パーティーで知り合った佐賀県内の女性(当時40歳代)に「2人で暮らすマンションを買おう」などとうそを言い、計1950万円をだまし取った。 (引用:讀賣新聞) |
詐欺の成立要件に関しての記事も書いていますので、併せてご覧ください。
詐欺罪の成立要件とは?詐欺罪に問われる主な犯罪の手口と種類を解説
結婚詐欺では逮捕されないケース
一方で、「結婚するという約束」を破ったからといって、直ちに結婚詐欺になるわけではありません。結婚詐欺が成立するためには、あくまでも「金銭を騙し取った」という事実が必要不可欠だからです。
道義的に問題があるケースでも、金銭の授受がなければ詐欺罪は成り立ちません。結婚に関するトラブルで「逮捕されることはない」事例を2つ説明します。
身勝手な理由で婚約を破棄した
まず、婚約を一方的に破棄したからといって、それだけで結婚詐欺に問われることはありません。例えば、以下のような理由で婚約を解消したケースです。
「お互いの性格が合わないと感じた」 「将来の価値観の違いに気づいた」 「他に好きな人ができてしまった」 |
どれだけ身勝手な理由であっても、金銭のやり取りが一切なければ、詐欺罪の構成要件(成立要件)を満たしません。したがって、刑事事件として立件されることはないでしょう。
ただし、婚約破棄の理由次第では、相手に精神的苦痛を与えたとして、民法709条に基づく慰謝料請求を受ける可能性はあります。結婚詐欺(詐欺罪)の構成要件を満たさないだけで、民事上の問題が発生しないわけではないのです。
既婚者であることを隠して交際していた
交際相手に対し、自分が既婚者であることを隠していたとしても、それだけでは結婚詐欺として逮捕されることはありません。金銭の授受がない以上、詐欺罪の構成要件を満たさないからです。
「結婚する意思があったのか」に関わらず、刑事事件として扱われることはないでしょう。
「既婚者だと知らずに交際していた」 「離婚すると約束して、不倫関係にいたった」 「結婚を前提に付き合ったのに、妻(夫)がいた」 など |
ただし、婚約破棄のケース同様、民事裁判に発展するリスクは高いです。交際相手はもちろん、配偶者からも慰謝料を請求される可能性があります。
結婚詐欺が成立するかを判断するポイント
結婚詐欺が成立するかどうかは、主に5つのポイントから判断されます。
「結婚をする」と嘘を付いたからといって、直ちに結婚詐欺となるわけではなく、5つのポイントを全て満たした場合のみ、詐欺罪(刑法246条)が成立する可能性があるのです。
結婚を匂わせていたか|欺罔行為
欺罔行為とは、相手を欺く行為のことを指します。
結婚詐欺のケースでは、そもそも結婚する意思がないにもかかわらず、あたかも結婚を前提とした言動をとることが、欺罔行為に該当します。例えば、次のような行為があれば、欺罔行為があったと考えられるでしょう。
・「結婚後に一緒に住むマンションを探そう」と持ちかける ・結婚式場の下見に出かける ・両親への挨拶を済ませる など |
いずれの場合も、結婚する意思がないのであれば、相手を騙す「欺罔行為」として認定される可能性があります。
相手は「結婚できる」と思っていたか|錯誤
次に重要なのが、相手が結婚できると信じている状態、すなわち「錯誤」があったかどうかです。
「借金を肩代わりすれば、結婚してくれる」 「このお金は、結婚のために必要なお金だ」 |
相手がこのように誤信してお金を渡しているのであれば、「錯誤」に陥っていたと言えるでしょう。
ただし、結婚を匂わせる行為があったとしても、相手が「結婚なんてできるわけがない」と思っていたり、詐欺だと気づいていれば、錯誤があったとは認められません。その場合、詐欺未遂となるか、そもそも詐欺罪が成立しない可能性もあるでしょう。
金銭や財物を自ら差し出していたか|交付行為
交付行為とは、被害者が「自らの意思で」金銭や財物を渡す行為のことを指します。
結婚を前提に交際していても、被害者が自らお金を払っていなければ、詐欺罪は成立しません。「交際相手の銀行口座から、ATMで勝手にお金を引き出した」「交際相手の自宅に入って、金銭を盗んだ」などのケースでは、詐欺罪ではなく窃盗罪が成立します。
交付した財産が加害者に渡っているか|財物の移転
「財物の移転」とは、金銭や財物が実際に被害者から加害者へと渡ったことを意味します。
詐欺罪が成立するには、銀行振込や現金の手渡しによって、金銭が現実に移転していることが必要です。「お金を払う」と約束しただけで、実際に金銭が移転していない場合は、「詐欺未遂罪」として扱われる可能性があります。
意図的に行っていたのか|故意
最後に重要なのが、加害者に「故意」があったかです。
結婚詐欺が成立するのは、あくまでも「そもそも結婚する意思がないのに、わざと相手を欺いて金銭を受け取った」というケースだからです。
例えば、次のようなケースでは故意がないため詐欺罪は成立しないでしょう。
「結婚する気持ちがあってお金を借りていたが、別れることになった」 「相手が一方的に結婚を望んでいた」 「こちらから要求していないのに、勝手にお金を渡された」 |
ただし、本人が「結婚するつもりがあった」と主張するだけで、故意がなかったと認められるわけではありません。「交際に至った経緯」「これまでのやり取り」「加害者の言動」などが考慮されて、客観的な事情に基づいて判断されます。
結婚詐欺で逮捕されるとどうなる?
では、もし結婚詐欺の容疑で逮捕されてしまったら、どのような事態に直面するのでしょうか?
10日〜20日間にわたり拘束される
結婚詐欺の容疑で逮捕されると、最大で23日間もの身体拘束を受ける可能性があります。
警察に逮捕されると、すぐに取り調べが始まります。その後、48時間以内に検察に送致され、さらに24時間以内に勾留されるかが決定されます。
勾留が決まると、10日間にわたって留置所に拘束されることになります。ただし、10日間の拘束期間が終われば必ず解放されるわけではありません。裁判所が勾留延長を認めた場合、さらに10日間(最大で20日間)の身体拘束が続くのです。
この間、厳しい取調べが続くことになり、外部との接触も厳しく制限されます。肉体的、精神的な負担はもちろん、仕事にも多大な影響が生じてしまうでしょう。
10年以下の懲役になる
結婚詐欺は、刑法第246条の詐欺罪に該当します。
刑法 第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 |
詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役刑のみです。罰金刑はなく、実刑判決を受けるリスクも非常に高いと言えるでしょう。特に、結婚詐欺の手口が悪質だったり、被害金額が大きかったりする場合は、初犯であっても長期の実刑判決となる可能性があります。
実刑を免れるには、被害弁償をして謝罪の意を伝え、被害者との示談を成立させることが欠かせません。
実名でニュース報道される
結婚詐欺は、事件の性質上、世間の注目を集めやすい犯罪です。
そのため、一旦逮捕されると、多くの事件が、実名でニュース報道されてしまいます。報道のタイミングは、逮捕直後、起訴時、判決時の3つが考えられ、中でも逮捕直後はメディアで大きく取り上げられやすいです。
一度、実名で報道されると、その情報がインターネット上に残り続け、将来の就職や結婚にも多大な影響を及ぼしてしまうでしょう。
報道を完全に防ぐことはできませんが、弁護士を通じて報道機関に働きかけることはできます。また、事件の終結後であれば、ネット上のニュース記事を削除してもらうことも難しくはありません。事件が将来に与える影響も最小限に抑えることができるでしょう。
結婚詐欺の逮捕を防ぐために弁護士ができること
結婚詐欺の逮捕を防ぐには、できる限り早いタイミングで弁護士に相談することが必要です。相談するタイミングが早いほど、逮捕・起訴を阻止できる可能性も高くなるでしょう。
結婚詐欺にあたるかの判断
弁護士は専門的な観点から、あなたの行為が本当に結婚詐欺に該当するのかを判断できます。
被害者から「結婚詐欺だ」と言われていたとしても、実際には「詐欺罪」にならないケースは多いです。例えば、金銭のやり取りがなかった場合は、その典型例と言えるでしょう。また、仮に金銭のやり取りがあったとしても、詐欺罪の成否は加害者・被害者双方の「内心」に大きく左右されます。
「最初は本当に結婚するつもりだったのか」 「ウソをついていたのか」 「そもそもお金を返す気があったのか」 |
これらの事情を立証できるかによっても、詐欺罪の成否は変わってくるのです。こうした事情を一般人が判断することは、ほぼ不可能と言っていいでしょう。
一方、弁護士であれば、過去の判例や専門家としての経験、豊富な知識をもとに、的確な判断を下してくれます。あなたの行為が、あくまで民事上の問題なのか、それとも刑事事件に発展する恐れがあるのかについて、専門的なアドバイスを受けられるでしょう。
刑事事件となるリスクが分かるだけでも、あなたの心理的負担は大幅に軽減されるはずです。
被害者との示談交渉
示談交渉も、できる限り早いタイミングで弁護士に依頼しましょう。
例えば、被害届が出される前に依頼すれば、結婚詐欺が刑事事件になること自体をかなりの確率で阻止できます。示談によって、被害届の提出を阻止できれば、警察が犯行を認知するきっかけがなくなるため、逮捕や起訴の不安に怯える必要もなくなります。
ただし、結婚詐欺の示談交渉は、必ず「刑事事件の解決実績が豊富な弁護士」に依頼しましょう。結婚詐欺の被害者は、加害者から裏切られて、強い精神的ショックを受けています。そのような状況下で示談を成立させるのは、簡単ではありません。
スムーズに示談を成立させるには、経験豊富な弁護士ならではのノウハウと専門的なスキルが欠かせないのです。
刑事事件に強い弁護士であれば、示談交渉のポイントを熟知しています。粘り強く交渉を重ねて、被害者との示談成立に導いてくれるはずです。
警察の取調べに対するアドバイス
警察が事件を認知すると、まず任意の事情聴取を求められることになります。
その場合も、速やかに弁護士に相談し、取調べに臨む際のアドバイスを受けることが重要です。自己判断で、不用意な発言をしてはいけません。事実と異なる内容であっても、一度認めてしまうと、裁判において強力な証拠として扱われてしまいます。
結婚詐欺の取調べは、非常に過酷です。例えば、次のような言葉で、自白を迫られることもあるでしょう。
「調書にサインすれば、自宅に帰れますよ?」 「ここで認めたほうが、被害者も少しは救われると思いませんか?」 「どう考えても計画的ですよね?認めたら刑が軽くなりますよ?」 |
こういった取調べにどう答えるかによって、事件の流れは大きく変わってきます。
捜査に協力的な姿勢は必要ですが、事実と異なることは毅然として主張しなければなりません。自分の立場を不利にしないためにも、黙秘権の行使や回答の仕方について、弁護士のアドバイスを受けることを強くおすすめします。
逮捕、起訴を防ぐための弁護活動
何より心強いのは、弁護士があなたの一番の味方として、最後まで戦い抜いてくれることです。
刑事事件に強い弁護士なら、結婚詐欺の加害者がまず何をすべきか、どうすれば逮捕・起訴を阻止できるのかを熟知しています。
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まとめ
最後に、今回の記事のポイントをまとめます。
◉結婚する約束を破棄しても、直ちに結婚詐欺になるわけではない
◉結婚詐欺になるのは、次の要件を全て満たした場合
・欺罔行為(結婚を匂わせる言動) ・錯誤(被害者が結婚すると誤信) ・交付行為(被害者が自ら金銭を差し出す) ・財物の移転(入金された) ・故意(意図的だったか) |
◉結婚詐欺で逮捕されるリスク
・最長23日間の身柄拘束 ・10年以下の懲役刑 ・実名でのニュース報道 |
◉逮捕を防ぐには、速やかに弁護士への相談が必要
◉結婚詐欺で弁護士ができること
・結婚詐欺が成立しているのかの判断 ・示談交渉をして、刑事事件化を阻止する ・警察の取調べに対するサポート ・逮捕、起訴を防ぐための弁護活動 |
以上です。
結婚詐欺をしてしまった方は、この記事を読み終わったら、すぐに弁護士に相談して、逮捕を防ぐための行動を起こしましょう。
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