保釈請求が却下されたら?再請求・準抗告など却下後にできる2つの対応

保釈請求が却下されたら
弁護士 若林翔
2025年12月28日更新

ご家族の保釈請求が却下されたという連絡を受けて、 「今後どうなってしまうのか」「もう身体解放は望めないのか」と不安を感じている方もいるでしょう。

ただ、保釈請求が却下されたからといって、ご家族の釈放を諦める必要はありません。 一度却下されても、「再度の保釈請求」や「準抗告・抗告」といった方法によって、引き続き身柄解放を求めていくことができるからです。

たとえば、もし今以下のようなタイミングにあるのなら、積極的に再度の保釈請求を検討するべきです。

・第一回公判後、被告人が自白した

・裁判が進み、証拠調べが終了した

・被害者との示談が成立した など

この記事では、まず保釈請求が却下される確率や理由などを紹介します。 その上で、却下決定を覆すための「再度の保釈請求」や「準抗告」といった具体的な方法についても具体的にお伝えしていきます。

ご家族の早期の身柄解放を実現するために何ができるのかを、一緒に見ていきましょう。

保釈請求却下とは

保釈請求却下とは

そもそも「保釈」とは、勾留中の被告人が、保証金を納めることなどを条件に一時的に身柄を解放される制度です。そして、この保釈請求に対して、裁判所が「認めない」判断することを「保釈請求が却下された」といいます。

ただ、ここで留意したいのが、法律上、保釈請求は原則として「許さなければならない」とされている点です。これは「権利保釈」といわれており、黙秘権などと同様に、被告人を守る権利の一つです。

したがって、裁判所は当然に保釈請求を却下できるわけではなく、あくまでも後述する却下要件に当てはまるケースのみ、例外的に保釈請求を却下できるというのが、原則的な考え方となります。

■刑事訴訟法

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。

一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。

二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。

三 被告人が常習として長期三年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。

四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。

六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

保釈請求が許可される確率は約60%(却下率は40%)

裁判所の司法統計によれば、令和6年中に保釈請求がされた事件は24,563件、同じく令和6年中に保釈が許可された人員は14,734人でした。

そうすると、保釈請求が許可される確率は約59.9%、保釈請求が却下される確率は約40.1%だったということになります。 つまり、およそ10件のうち6件で保釈が認められており、4件が却下されているようなイメージです。

項目件数割合
保釈請求の件数24,563
許可された人員14,73459.9%

(出典:裁判所「令和6年 司法統計年報(刑事編)」※保釈請求の件数は第17表、保釈が許可された人員については第16表より当事務所で計算)

もっとも、これはあくまでも勾留された全ての被告人を対象に計算した数字です。 犯罪の重さ、前科の有無、初犯や再犯などの要素は一切考慮していないので、これをもって「保釈請求の成功率は約6割」ということはできません。

実際には、犯罪の内容や被害の大きさ、そして刑事弁護人のやり方によっても、保釈が認められる可能性は変わってきます。

保釈率と保釈請求が許可される確率の違い

一方で、ニュースなどでは「日本の刑事事件の保釈率は約20〜30%しかないため、身柄解放は難しい」と言われることもあります。これは、「保釈率」と、これまで見てきた「保釈請求が許可される確率」が、そもそも違うものを指しているからです。

保釈請求をするためには、保釈保証金を納付する必要があるため、起訴された被告人全員が保釈請求をするわけではありません。

つまり、計算の対象となっている数字(分母)が違う、ということです。 起訴された人「全体」のなかで保釈された人の割合が、保釈率であり「約20〜30%」。一方で、起訴されて「保釈請求をした人」のうち、保釈が認められた人の割合が先ほど紹介した保釈請求の許可率であり、約60%ということになります。

〈参考〉平成16年〜令和5年の保釈率の推移

保釈請求の却下率

(出典:法務省「令和6年版 犯罪白書 第2編/第3章/第3節/6」)

保釈請求が却下される理由

保釈請求が却下されるのは、裁判所が「刑事訴訟法第89条各号にある6つの事由」にあたると判断した場合です。

刑事訴訟法89条各号にある6つの事由

刑事訴訟法第89条各号にある6つの事由とは、以下のようなケースを指します。

・死刑、無期、または1年以上の拘禁刑にあたる罪で起訴された。

・過去に、死刑、無期、または10年を超える拘禁刑にあたる罪で有罪判決を受けたことがある。

・常習的に、3年以上の拘禁刑にあたる罪を犯した。

・証拠を隠滅すると疑うのに十分な理由がある。

・被害者や事件の関係者、あるいはその親族の身体や財産に危害を加えたり、脅迫したりすると疑うのに十分な理由がある。

・被告人の氏名または住居が分からない。

これらのいずれかに該当すると裁判所に判断された場合、権利としての保釈は認められません。

ただ、上記6つの事由に当てはまる場合でも、裁判官が様々な事情を考慮して、裁量によって保釈を認めるケースがあります(これを「裁量保釈」といいます)。

したがって権利保釈が認められない場合も、たとえば身元引受け人がいるなど、実質的に「罪証隠滅や逃亡のおそれ」が認められないことを弁護人から主張していけば、裁量保釈としての身柄解放が認められる可能性があります。

実務上、多いのは「罪証を隠滅のおそれ」があるから

権利保釈において、上記6つの事由のうちもっとも却下事由とされやすいのが「罪証を隠滅するおそれ」刑事訴訟法第89条第4号)です。

特に、事件を認めていない「否認事件」や、共犯者がいる事件などでは、罪証隠滅の危険性が高いとみなされ、「罪証を隠滅するおそれがある」と容易に判断されてしまう傾向があります。

余罪(他の犯罪事実)が考慮されるケースもある

本来的には、被告人が上記6つの除外事由に当てはまるかは、勾留の基礎となった事実をもとに判断されるべき内容です。

ただ、実務上は勾留の起訴となった事実とは別に、まだ起訴されていない「余罪」の存在が、保釈判断に不利に働くことがあります。

判例でも、まだ勾留状が出ていない別の事件について、裁量保釈を判断するための一資料とすることが認められています。

被告人が甲、乙、丙の三個の公訴事実について起訴され、そのうち甲事実のみについて勾留状が発せられている場合において、裁量保釈の許否を審査するにあたり、甲事実の事案の内容や性質、被告人の経歴、行状、性格等の事情を考察するための一資料として乙、丙各事実を考慮することはさしつかえない。

(出典:最高裁昭和44年7月14日

保釈請求が却下された後、再度の保釈請求をするべき3つのタイミング

保釈請求が却下されたとしても、それで釈放の可能性がなくなるわけではありません。 以下のような事情変更があったタイミングで、「再度の保釈請求」を行っていくと、釈放が認められる可能性があります。

・第一回公判後、被告人が自白した

・裁判が進み、証拠調べが終了した

・被害者との示談が成立した など

以下、それぞれのタイミングについて詳しくみていきます。

①第一回公判後、被告人が自白した

第一回公判後に、被告人が自白をした場合、再度の保釈請求を検討するべきです。

被告人の自白によって、

・自分の犯罪を認めているため、逃亡して裁判を避ける動機が弱まる

・罪証隠滅のために証拠を操作したり、証人に働きかける必要が少なくなる

と考えられるため、裁判所が「もう逃げないだろう」「証拠隠滅の危険はない」と判断しやすくなるからです。

もちろん、保釈「だけ」を目的に自白するのはおすすめしませんが、早期釈放を最優先に考えるなら、担当の弁護人に相談してみるのもよいでしょう。

②裁判が進み、証拠調べが終了した

裁判が進み、証拠調べが終了したタイミングも、再度の保釈請求が認められやすいです。 「罪証隠滅のおそれ」を理由に保釈請求が却下されていた場合、裁判で証拠調べが終わると、証拠隠滅のおそれが認められなくなるからです。

もっとも、証拠調べが終わったタイミングでは、すでに刑事裁判の大部分が終わっていると考えられます。

量刑の目安もある程度見えてくる段階ですので、再度の保釈請求だけではなく、その後の流れ(執行猶予がつくのか、実刑となるのか、控訴するのか等)も踏まえた対応が必要です。

③被害者との示談が成立した

被害者との示談成立も、再度の保釈請求を検討するべきタイミングです。 示談によって被害者から「許し」が得られると、保釈の不許可事由につき「罪証隠滅のおそれ」が大幅に弱まるからです。

被害者と示談が成立しているかは、保釈だけではなく、その後の量刑にも大きく影響します。再度の保釈請求を行うなら、その前提となる事情の変更として、まずは被害者との示談を検討していきましょう。

保釈請求却下後、準抗告・抗告による不服申立てもできる

再度の保釈請求以外に、「準抗告(または抗告)」によって不服申立てをする場合もあります。

再度の保釈請求が、却下後の事情変更によって保釈を求めていくのに対して、「準抗告・抗告」とは、保釈請求を却下した裁判官の判断そのものが不当であるとして、別の裁判官にその判断の見直しを求めていく手続きです。 (※起訴後、第一回公判期日より前の却下に対する不服申立てが「準抗告」、第一回公判期日より後の却下に対する不服申立てが「抗告」です。)

たとえば、「保釈請求却下の判断が誤りであること」や「裁量で保釈を認めるべき事情があること」などを、具体的に主張していきます。場合によっては、弁護人から裁判官に対して面談を求めていくことも考えられるでしょう。

再度の保釈請求をするべきか、あるいは「準抗告・抗告」によって不服申立てをするべきかは、事件の内容によって異なります。専門的な判断が必要になりますので、担当の刑事弁護人に相談してみましょう。

ご家族の保釈請求が却下された方は、グラディアトル法律事務所へご相談ください。

ご家族の保釈請求が却下されてしまい、今後の対応にお悩みの方は、ぜひグラディアトル法律事務所にご相談ください。

本記事で説明したとおり、一度却下された決定を覆すには、却下理由の分析、再度の保釈請求と準抗告のどちらを選択すべきかという判断、そして示談交渉などで保釈に有利な事情を作り出すなど、高度な刑事弁護の技術が必要です。

グラディアトル法律事務所の弁護士は数多くの刑事事件を取り扱っており、早期の身柄解放はもちろん、接見禁止の解除や不起訴処分の獲得など、豊富な解決実績を有しています。

「再度の請求と準抗告、どちらをすべきか」「却下されたがまだやれることはあるのか」「被害者との示談を早く進めたい」など、どんなお悩みでも構いません。

24時間365日相談を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

最後に、記事のポイントをまとめます。

保釈請求却下とは

・保釈は起訴後の被告人が保証金を納めて一時的に釈放される制度

・法律上、保釈請求は原則として「許可しなければならない」(権利保釈)

・刑事訴訟法89条の除外事由に該当する場合のみ、例外的に却下できる

(刑事訴訟法89条の除外事由)

・死刑、無期、1年以上の拘禁刑にあたる罪で起訴された

・過去に重い罪で有罪判決を受けたことがある

・常習的に3年以上の拘禁刑にあたる罪を犯した

・罪証を隠滅するおそれがある(実務上最も多い理由)

・被害者や関係者に危害を加えるおそれがある

・被告人の氏名または住居が分からない

保釈請求が却下される確率

・保釈請求が却下される確率は約40.1%(令和6年統計)

・保釈請求が許可される確率は約59.9%

・起訴された被告人全体の保釈率(20〜30%)とは異なる

保釈請求が却下されたときの対処法は2つ

①再度の保釈請求をする(示談成立や証拠調べ終了など「新しい事情」ができたとき)

②準抗告や抗告をする(却下した裁判官の判断そのものが不当だと主張するとき)

以上です。 刑事裁判でお困りの方は、ぜひグラディアトル法律事務所にご相談ください。 グラディアトル法律事務所の弁護士は数多くの刑事事件を取り扱っており、圧倒的なノウハウと実績を有しています。

それぞれの弁護士が得意分野をもっておりますので、各事件の特性に応じた充実した刑事弁護をご提供いたします。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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