無免許・飲酒運転の4つのリスクとケース別の刑罰について徹底解説

弁護士 若林翔
2025年10月15日更新

「無免許運転の上に飲酒運転をしてしまった。どのような罪に問われてしまうのだろうか」

これを読んでいるあなたは、無免許運転や飲酒運転に心当たりがあり、その悩みを解決すべく当記事に訪れたのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、無免許運転に飲酒運転を重ねた場合、観念的競合(1つの行動で2つ以上の犯罪に該当すること)の観点から、より重い方の刑罰が科されることになります。

さらに、その運転中に信号無視なども重ねた場合は併合罪も適用されることになり、より罪が重くなってしまうことも覚悟する必要があるでしょう。

もう少し分かりやすく解説するために、次の表をご覧ください。

犯行態様刑罰
無免許運転3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金
飲酒運転(酒気帯び運転)3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金
飲酒運転(酒酔い運転)5年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金
無免許運転+飲酒運転5年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金(=観念的競合)
無免許運転+飲酒運転+信号無視拘禁刑が科される場合、その最も重い罪で定めた長期×1.5(=併合罪)
→5年×1.5=7.5年

上記のように、無免許運転単体に比べて、飲酒運転や信号無視などを重ねた場合、より罪が重くなってしまうということです。

また、運転手だけでなく、その同乗者も罰せられることになるため、運転手・同乗者全員が逮捕される可能性があります。

もし無免許運転や飲酒運転に心当たりがある場合は、速やかに弁護士へ相談し、逮捕回避に向けた行動を取ることが求められますが、自分の置かれた状況が今どの段階なのかを把握するためにも、ぜひ当記事を参考にしてください。

あなたの悩みが解決し、平穏な日常を取り戻せることを願っております。

目次

【ケース別】無免許・飲酒運転に関わる刑罰

無免許運転・飲酒運転に関わる刑罰は次の通りです。

【ケース別】無免許・飲酒運転に関わる刑罰

それぞれのケースについて、詳しくお話ししていきます。

【無免許運転】3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金

犯罪法定刑行政処分
無免許運転3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金違反点数25点
欠格期間2年

無免許運転は、運転免許を受けずに車を運転することで、道路交通法で次のように規定されています。

(無免許運転等の禁止)

第六十四条 何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は一般原動機付自転車を運転してはならない。

第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

一 法令の規定による運転の免許を受けている者(第百七条の二の規定により国際運転免許証等で自動車等を運転することができることとされている者を含む。)でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は国際運転免許証等を所持しないで(第八十八条第一項第二号から第四号までのいずれかに該当している場合又は本邦に上陸をした日から起算して滞在期間が一年を超えている場合を含む。)運転した者

参照:e-Gov法令検索「道路交通法」より

上記を要約すると、運転免許を受けていない者(有効期限が切れている場合も含む)が運転した場合は、「3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金」が科されることになります。

同時に、「違反点数25点」の行政処分も科されることになり、向こう2年間、運転免許を受けることが出来なることも覚えておきましょう。

現状、無免許運転が初犯だった場合、実刑となる可能性は低いものの、行為態様が悪質だったり、交通事故などを起こしてしまった場合は、道路交通法違反より重い罪(過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪など)が科されることになりますので、軽く考えず、速やかに弁護士へ相談することが重要です。

Q、免許不携帯との違いは?

免許不携帯とは、運転免許を受けているが、携帯せず運転することを指します。道路交通法第95条において、運転をする者は、常に運転免許証を携帯することが義務付けられています。これを破った場合、反則金3,000円が科されることになるため注意が必要です。

【飲酒運転】5年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金

犯罪法定刑行政処分
酒気帯び運転3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金違反点数13点(25点・免許取り消し※)
免許停止90日間(欠格期間2年※)
酒酔い運転5年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金違反点数35点(免許取り消し)
欠格期間3年

※アルコール0.25mg以上の酒気帯び運転は()内を適用

飲酒運転は、アルコールを摂取(酔った)状態で車を運転することで、無免許運転同様、道路交通法で次のように定められています。

(酒気帯び運転等の禁止)
第六十五条 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
2 何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。

第百十七条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

一 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあつたもの

第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

四 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第二項の規定に違反した者(当該違反により当該車両等の提供を受けた者が身体に前号の政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態で当該車両等を運転した場合に限るものとし、前条第一項第二号に該当する場合を除く。)

参照:e-Gov法令検索「道路交通法」より

上記を要約すると、飲酒運転は「酒気帯び運転(第107条2の2)」と「酒酔い運転(第107条2)」に分類され、どの程度酔っているのかで、罰則も変化することが明記されています。

では、どこからが「酒気帯び運転」で「酒酔い運転」なのかという部分ですが、

  • ◎酒気帯び運転・・・アルコール基準値を超える場合に適用
  • ◎酒酔い運転・・・アルコール基準値に関係なく、正常な運転ができないと判断された場合に適用

上記のように、酒気帯び運転が明確な基準があることに対して、酒酔い運転は、アルコールの影響で正常な運転ができないと判断されれば、基準値に関係なく適用されてしまうので覚えておきましょう。

【無免許運転+飲酒運転】5年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金

冒頭でも触れましたが、無免許運転に飲酒運転を重ねた場合は、刑法54条で定める観念的競合が成立します。

観念的競合について、次の条文をご覧ください。

(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
第五十四条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

参照:e-Gov法令検索「刑法54条」より

上記を要約すると、観念的競合とは、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合に適用され、その最も重い刑で罰するとあります。

今回のケースでいうと、無免許運転(3年以下の拘禁または50万円以下の罰金)に飲酒運転(5年以下の拘禁または100万円以下の罰金)を重ねたことによる観念的競合なので、より重い罰則が定められている飲酒運転の罰則が適用される、となるのです。

【無免許運転+飲酒運転+信号無視】拘禁刑が科される場合、その最も重い罪で定めた長期×1.5

無免許運転に飲酒運転、さらに信号無視を重ねた場合、刑法45条で定める併合罪が成立します。

併合罪について、次の条文をご覧ください。

(併合罪)
第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

(有期拘禁刑の加重)
第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

参照:e-Gov法令検索「刑法45条・47条」より

上記を要約すると、2個以上の罪を犯した場合かつ拘禁刑以上の罪が確定した場合は併合罪が成立し、その最も重い罪で定めた長期に1/2(1.5倍)を加える、とあります。

少し分かりづらいので、実際の判例をもとに説明していきます。

被告人Aは、法定速度(60㎞/時)を超えるスピード90㎞/時で走行していた(①)ことで、付近を取り締まっていた警察官に停止を求められた。一旦は減速したものの、Aは無免許運転(②)だったため、その事実がバレることを恐れ、加速して逃走、法定速度を超える120㎞/時での走行が認められた(③)ことから、併合罪の判決が下された。

東京最高裁昭49・11・28(あ)1433

上記の被告人Aは、大きく分けて3つの犯罪を犯しています。

  • ①スピード違反|6月以下の拘禁(懲役)または10万円以下の罰金
  • ②無免許運転|3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金
  • ③スピード違反|6月以下の拘禁(懲役)または10万円以下の罰金

それぞれが単独の犯罪として成立し、併合罪の要件(2個以上の罪&拘禁刑に処する場合)と合致するので、併合罪が成立してしまった、ということになります。

罰則は、最も重い罪が無免許運転になるため、「3年×1.5=4.5年」の拘禁が科されることになるわけです。

今回ご紹介した判例は、スピード違反×2と無免許運転による併合罪でしたが、飲酒運転や信号無視にも同じことが言えますので、

  • ・無免許運転|3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金
  • ・飲酒運転|5年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金
  • ・信号無視|3月以下の拘禁(懲役)または5万円以下の罰金

この3つの犯罪を犯した場合の併合罪は、「5年×1.5=7.5年」という計算になりますので覚えておきましょう。

【無免許運転の車に同乗】2年以下の拘禁(懲役)または30万円以下の罰金

犯罪法定刑行政処分
無免許運転同乗罪2年以下の拘禁(懲役)または30万円以下の罰金違反点数25点
欠格期間2年

無免許運転の車に同乗した場合も罪に問われます。

次の条文をご覧ください。

第六十四条

2 何人も、前項の規定に違反して自動車又は一般原動機付自転車を運転することとなるおそれがある者に対し、自動車又は一般原動機付自転車を提供してはならない。

3 何人も、自動車(道路運送法第二条第三項に規定する旅客自動車運送事業(以下単に「旅客自動車運送事業」という。)の用に供する自動車で当該業務に従事中のものその他の政令で定める自動車を除く。以下この項において同じ。)又は一般原動機付自転車の運転者が第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けていないこと(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されていることを含む。)を知りながら、当該運転者に対し、当該自動車又は一般原動機付自転車を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する自動車又は一般原動機付自転車に同乗してはならない。

第百十七条の三の二 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。

一 第六十四条(無免許運転等の禁止)第三項の規定に違反した者

参照:e-Gov法令検索「道路交通法」より

上記を要約すると、運転手が無免許であることを知りながら同乗(要求・依頼、車両の提供など含む)することは、無免許運転同乗罪(以下、同乗罪)が成立し、「2年以下の拘禁(懲役)または30万円以下の罰金」が科されることになります。

行政処分についても、運転者同様「違反点数25点(免許取り消し)、欠格期間2年」が科されることになるため注意が必要です。

ただし、運転者が無免許だと知らずに同乗していた場合、同乗罪は成立しませんので、覚えておきましょう。

【飲酒運転の車に同乗】3年以下の懲役または50万円以下の罰金

種類(飲酒運転同乗罪・酒類提供罪)法定刑行政処分
酒気帯び運転2年以下の拘禁(懲役)または30万円以下の罰金違反点数13点(25点・免許取り消し※)
免許停止90日間(欠格期間2年※)
酒酔い運転3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金違反点数35点
欠格期間3年

※アルコール0.25mg以上の酒気帯び運転は()内を適用

運転者が飲酒運転と知りながら同乗(要求・依頼、車両の提供など)した場合、飲酒運転同乗罪(以下、同乗罪)が成立します。

次の条文をご覧ください。

(酒気帯び運転等の禁止)

第六十五条 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。

2 何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。

3 何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。

4 何人も、車両(トロリーバス及び旅客自動車運送事業の用に供する自動車で当該業務に従事中のものその他の政令で定める自動車を除く。以下この項、第百十七条の二の二第一項第六号及び第百十七条の三の二第三号において同じ。)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。参照:e-Gov法令検索「道路交通法」より

上記を要約すると、飲酒運転者の車に同乗してはならないことはもちろんですが、その運転者に酒を提供した者(店舗)も罪に問われます。(=酒類提供罪)

また、同乗罪・提供罪共に、運転者が酒気帯び運転なのか、酒酔い運転なのかでも罰則が変化しますので、注意が必要です。

【運転者が未成年】家裁送致による保護処分

未成年の種類処分
14歳未満逮捕されないが警察の調査を受ける(触法少年)
14歳以上家裁送致による保護処分(犯罪少年)

運転者が未成年の場合、年齢によって処分の内容が変化します。

14歳未満の場合は、いわゆる触法少年として扱われ、刑事責任を問われることはありません。ですが、警察の調査を受ける場合はありますし、行為態様が悪質だと判断されれば、後述する犯罪少年同様、家裁送致による保護処分を受ける可能性もありますので注意が必要です。

14歳以上は、犯罪少年として扱われ、刑事責任が問われる存在(=逮捕の可能性あり)です。

逮捕された場合、家裁送致による保護処分を受けることになりますが、行為態様が悪質だと判断されれば、成人同様、刑事裁判が開かれる可能性があります。

「未成年は罪に問われない」という誤った情報が散見していますが、上記のように何らかの処分を受けることになりますので、「未成年だから大丈夫」と高を括らず、早急に弁護士へ相談するようにしましょう。

無免許運転で飲酒した場合の4つのリスク

無免許運転で飲酒した場合の4つのリスク

無免許運転、飲酒運転した場合の罰則についてお分かりいただけたのではないでしょうか。

次に、無免許・飲酒運転すると、どのようなリスクがあるのかについてお話ししていきます。

リスクについては、次の通りです。

  • ◎逮捕される
  • ◎有罪となれば前科がつく
  • ◎行政処分が下される
  • ◎常習犯の場合、罪が重くなる可能性がある

それぞれについて、詳しくお話ししていきます。

逮捕される

無免許・飲酒運転をすると逮捕される可能性が高いです。

逮捕されると、警察の取り調べを受けることになり、48時間以内に検察官に送致され、10日~20日間の身柄拘束(勾留)、起訴となれば数十日~数ヶ月の身柄拘束が続くなど、日常生活に支障をきたすことは避けられません。

また、取り調べ期間は、会社の同僚はおろか家族であっても面会ができないので、外部に知られることのないまま無断欠勤による解雇、なんてこともあるのです。

逮捕される前に、「4.無免許・飲酒運転で逮捕を回避するためにできること」で解説する適切な行動が求められますが、すでに逮捕されてしまった場合に備えて、家族と十分に話し合っておくことも重要です。

有罪となれば前科がつく

前項でお話した身柄拘束が続き、起訴となれば99.9%の確率で有罪判決を受けることになり、同時に前科がつくことは避けられません。

刑罰については、「1.【ケース別】無免許・飲酒運転に関わる刑罰」でお話しした通りですが、前科がつくことで、

  • ・会社を解雇される
  • ・社会的信用が低下し就職・再就職が困難になる
  • ・家族や友人にも迷惑をかけることになる
  • ・デジタルタトゥーで長期間苦しむことになる
  • ・一部の職業・資格のはく奪や制限がかかる
  • ・渡航制限がかかる
  • ・再犯時、より重い罪を受けることになる

このように、刑罰以外にも日常生活に支障をきたすことになります。

逮捕回避に向けた行動はもちろんですが、逮捕後であっても不起訴処分を獲得することで前科を回避することができますので、速やかに弁護士へ相談することが大切です。

行政処分が科される

無免許・飲酒運転で逮捕された場合、刑罰の他に下記の行政処分が科されることになります。

種類行政処分
無免許運転違反点数25点(免許取り消し)
欠格期間2年
飲酒運転(酒気帯び運転)違反点数13点(25点・免許取り消し※)
免許停止90日間(欠格期間2年※)
飲酒運転(酒酔い運転)違反点数35点
欠格期間3年

※アルコール0.25mg以上の酒気帯び運転は()内を適用

冒頭でもお伝えした通り、無免許運転に飲酒運転を重ねた場合は、観念的競合により、より重い方の「酒酔い運転(35点・欠格期間3年)」が適用されてしまうので注意しましょう。

常習犯(再犯や前科持ち)の場合、罪が重くなる可能性がある

無免許・飲酒運転が常習的と判断されれば、罪が重くなる可能性があります。

次の判例をご覧ください。

加害者Aは、免許取り消し処分を受けて間もない期間にもかかわらず、0.25mgを超えるアルコールを保有する状態で普通貨物自動車を運転した。免許取り消しの理由も、過去複数回に渡り酒気帯び運転で刑事罰・行政処分を受けていたことが原因だった。度重なる飲酒運転に重ね、本件の無免許運転は非常に罪が重いとし、懲役4月の判決が下された。

横浜地裁平13・11・7

上記は、過去に何度も飲酒運転を重ね、その度に処分を受けているにもかかわらず、免許取り消し後間もなく運転(無免許)をしております。

このように、初犯では軽い罪で済んだとしても、回数を重ねたり悪質な犯行だと判断されれば、実刑も十分にあり得ますので注意が必要です。

無免許・飲酒運転で交通事故を起こした場合の刑罰

無免許・飲酒運転に合わせて交通事故を起こした場合は、より重い罪に問われることになります。

より重い罪については、次の通りです。

犯罪刑罰(通常)無免許運転時
過失運転致死傷罪7年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金10年以下の拘禁(懲役)
危険運転致傷罪(2条)15年以下の拘禁(懲役)6月以上の拘禁(懲役)
危険運転致傷罪(3条)12年以下の拘禁(懲役)15年以下の拘禁(懲役)
危険運転致死罪1年以上の拘禁(懲役)6月以上の拘禁(懲役)

それぞれについて詳しくお話ししていきます。

過失運転致死傷罪|7年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金

犯罪刑罰(通常)無免許運転時
過失運転致傷罪7年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金10年(15年※)以下の拘禁(懲役)

※飲酒運転を行った場合は()が適用

過失運転致死傷罪とは、運転上必要な注意を怠り(過失)、その結果、人を死傷させた場合に成立する犯罪です。

次の条文をご覧ください。

(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱)

第四条 アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、十二年以下の拘禁刑に処する。

(過失運転致死傷)

第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

(無免許運転による加重)

3 第四条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十五年以下の拘禁刑に処する。

4 前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の拘禁刑に処する。

参照:e-Gov法令検索「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」より

上記を要約すると、過失運転致死傷罪の刑罰は「7年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金」とありますが、傷害の度合いに応じて減刑(免除)される場合もあると明記されています。

また、飲酒運転(薬物含む)を行い、さらには、その発覚を免れようとする行為が発覚した場合は、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪が成立し「12年以下の拘禁(懲役)」と、さらに罪が重くなります。

さらに、無免許運転が重なる場合は「無免許運転による加重」が適用され、より罪が重くなりますので注意しましょう。

危険運転致死傷罪|1年以上(20年以下)の拘禁(懲役)

犯罪刑罰(通常)無免許運転時
危険運転致傷罪15年以下の拘禁(懲役)6月以上の拘禁(懲役)
危険運転致傷罪(3条)12年以下の拘禁(懲役)15年以下の拘禁(懲役)
危険運転致死罪1年以上(20年以下)の拘禁(懲役)6月以上の拘禁(懲役)

危険運転致傷罪とは、制御困難な高速走行、妨害運転などの危険な運転を行い、人を死傷させた場合に成立する犯罪です。

前項でお話しした過失運転致死傷罪と比較して、極めて悪質と判断された場合も、同罪が適用される場合があります。

次の条文をご覧ください。

(危険運転致死傷)

第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の拘禁刑に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期拘禁刑に処する。

一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為

四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為

六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為

七 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

八 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

第三条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の拘禁刑に処し、人を死亡させた者は十五年以下の拘禁刑に処する。

(無免許運転による加重)

第六条 第二条(第三号を除く。)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る。)が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、六月以上の有期拘禁刑に処する。

2 第三条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、人を負傷させた者は十五年以下の拘禁刑に処し、人を死亡させた者は六月以上の有期拘禁刑に処する。

参照:e-Gov法令検索「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」より

条文の通り、危険運転の行為は8つに定義され、どれかに該当する行為を行い負傷させた場合は「15年以下の拘禁(懲役)」、死亡させた場合は「1年以上(20年以下)の拘禁(懲役)」が科されます。

また前項同様、無免許運転の場合は罪が重くなりますので覚えておきましょう。
下記の記事も読まれています。併せてご覧ください。

無免許・飲酒運転で逮捕を回避するためにできること

無免許・飲酒運転で逮捕を回避するためにできること

無免許・飲酒運転に心当たりがある場合は、速やかに逮捕回避に向けた行動を取ることが重要です。

「現行犯逮捕じゃないから大丈夫」と思うかもしれませんが、昨今、ドライブレコーダーやSNS普及に伴い、どこにでも監視の目がある状況下ですので、数日後に突然逮捕、なんて可能性も十分考えられます。

無免許・飲酒運転で逮捕を回避するための方法は、次の通りです。

  • ◎自首する
  • ◎弁護士に依頼する

それぞれについて詳しくお話ししていきます。

自首する

自首とは、自ら犯罪事実を申告するという方法です。

自首に関して、次の条文をご覧ください。

(自首等)

第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。

参照:e-Gov法令検索「刑法42条」より

「自首したら結局逮捕されることになるのでは」と思うかもしれませんが、条文の通り、自首は任意的減刑事由として認められていますので、軽微な犯行であれば、逮捕を回避できる可能性が高いです。

※ただし、過失運転致死傷罪や危険運転致傷罪が成立するような事案は、軽微な犯行とは言えませんので、速やかに弁護士で相談してください。

他にも、

  • ・報道を回避できる可能性がある
  • ・逮捕となっても早期釈放、不起訴処分の可能性が高くなる
  • ・精神的負担を解消できる
  • ・被害者との示談がスムーズになる

上記のようなメリットがありますので、自首は選択肢の一つとして有効です。

ただし、自首にあたって注意点があります。

それは、すでに被害届が出されていたり、捜査機関が動いているような状況では自首として成立しないということです。

※上記のような状況で自主申告することを「出頭」と言います。

出頭は任意的減刑事由には該当しませんので、逮捕・起訴の可能性が高くなります。

ただ、出頭したという事実は、少なからず反省の意があるとして評価され、減刑になる可能性はあるため無駄ではありません。

もう一つ、自首をした場合は必ず身元引受人が必要になります。

身元引受人になれるのは、原則、家族か会社の同僚・上司、または弁護士という制限があるため、家族や会社に依頼した場合、犯行事実がバレることになってしまいます。

その場合は、弁護士に同行依頼することでバレるリスクを回避することができますので、自首の際は弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士に依頼する

前項の観点からも、弁護士に依頼することは、逮捕前はもちろんのこと、逮捕後であっても早期釈放や不起訴処分の確率が上がるので非常に有効です。

その他にも、

  • ・逮捕回避に向けてどのような行動をすべきか専門的なアドバイスがもらえる
  • ・自首する場合、身元引受人になってくれるので家族・会社にバレる心配がない
  • ・被害者が示談交渉に応じてくれやすくなり、迅速な解決が可能になる
  • ・警察の取り調べが発生する場合、取り調べのコツを教えてくれる
  • ・逮捕後、最大72時間は弁護士のみ接見が許されている

上記のように弁護士にしかできないメリットが多くあるので、平和的解決のためには欠かせない存在です。

弁護士への依頼はどの状況においても有効ですが、理想としては、自力で行動を起こす前に相談いただくことをおすすめします。

具体的なお話しをすると、当所では「被害者と自力交渉をした結果、話が拗れてしまったので何とかしてほしい」というご相談をいただくことがありますが、拗れた状況からの示談交渉は、たとえ弁護士であっても難航します。

もちろんそのような状況からでも示談成立を目指すことはできますが、示談金が高額になったり、行動の制限を課されたりと、不利な条件を呑まざるを得ない可能性が高くなるのです。

上記のケースは、早めに弁護士へご相談いただければ回避できるケースですので、リスクを最小限に抑えるという意味も含めて、速やかに弁護士へ相談しましょう。

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速やかに平和的解決を望むなら、当所「グラディアトル法律事務所」にお任せください。

私たちが当所を強くおすすめする理由は、次の通りです。

  • ◎初回相談料無料なので気軽に相談できるから
  • ◎難しい事件でもスムーズに解決できる実力があるから

上記のポイントについて詳しく説明していきますので、弁護士事務所選びの参考にしてください。

初回相談料無料なので気軽に相談できる

通常、弁護士に相談する場合「相談料」が発生します。

30分5,000円程度が相場となっておりますが、必要なことだと分かっていても、有料では相談するのに躊躇してしまうこともあるでしょう。

そういった不安を取り除き、気軽に相談いただきたいという想いから、当所では「初回無料相談サービス」を実施しております。

「気の迷いで行ってしまった行為を反省したい。どうしたらいい?」「被害者と示談をしたいが、自力でやっても大丈夫?」「恐怖に絶えられない。誰にも相談できず困っている」など、今あなたが感じている悩みを教えてください。

これまでの経験をもとに、あなたと一緒に解決の糸口を探していきます。

難しい事件でもスムーズに解決できる実力があるから

無免許運転や飲酒運転などは、比較的重い刑罰で定義されており、難事件となる場合もあります。

時間が経てば経つほど、それだけ逮捕の確率も高くなり、比例して罪が重くなる傾向にあります。

難しい事件を数々解決してきた私なら、事件を長引かせることなく、最良の結果に導くことが可能です。

まとめ

いかがでしたか。

無免許・飲酒運転の刑罰、リスクについて詳しくお話ししました。

最後にこの記事をまとめましょう。

◎無免許・飲酒運転にかかわる刑罰・行政処分は次の通り

犯罪法定刑行政処分
無免許運転3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金違反点数25点
欠格期間2年
酒気帯び運転3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金違反点数13点(25点・免許取り消し※)
免許停止90日間(欠格期間2年※)
酒酔い運転5年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金違反点数35点(免許取り消し)
欠格期間3年
無免許運転+飲酒運転5年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金(=観念的競合)違反点数35点(免許取り消し)
欠格期間3年
無免許運転+飲酒運転+信号無視拘禁刑が科される場合、その最も重い罪で定めた長期×1.5
→5年×1.5=7.5年
違反点数35点(免許取り消し)
欠格期間3年
無免許運転同乗罪2年以下の拘禁(懲役)または30万円以下の罰金違反点数25点
欠格期間2年
酒気帯び運転同乗罪2年以下の拘禁(懲役)または30万円以下の罰金違反点数13点(25点・免許取り消し※)
免許停止90日間(欠格期間2年※)
酒酔い運転同乗罪3年以下の拘禁(懲役)または50万円以下の罰金違反点数35点
欠格期間3年

※アルコール0.25mg以上の酒気帯び運転は()内を適用

◎未成年による無免許運転の処分は次の通り

未成年の種類処分
14歳未満逮捕されないが警察の調査を受ける(触法少年)
14歳以上家裁送致による保護処分(犯罪少年)

◎無免許・飲酒運転した場合のリスクは次の通り

  • ◇逮捕される
  • ◇有罪となれば前科がつく
  • ◇行政処分が下される
  • ◇常習犯の場合、罪が重くなる可能性がある

◎無免許・飲酒運転で交通事故を起こした場合の刑罰は次の通り

犯罪刑罰(通常)無免許運転時
過失運転致死傷罪7年以下の拘禁(懲役)または100万円以下の罰金10年以下の拘禁(懲役)
危険運転致傷罪(2条)15年以下の拘禁(懲役)6月以上の拘禁(懲役)
危険運転致傷罪(3条)12年以下の拘禁(懲役)15年以下の拘禁(懲役)
危険運転致死罪1年以上の拘禁(懲役)6月以上の拘禁(懲役)

◎無免許・飲酒運転で逮捕を回避するための方法は次の通り

  • ◇自首する
  • ◇弁護士に依頼する
弁護士からのアドバイス

無免許・飲酒運転は、観念的競合や併合罪が成立しやすく、比較的罪の重くなりやすい犯罪です。

そのため、自分の中では軽い認識だったとしても、蓋を開けてみれば、実刑になってしまうほどの重大な犯罪だった、なんてもことも十分に考えられます。平和的解決のためにも、まずは弁護士にご相談ください。

一刻も早く平穏な日常を取り戻せることを願っています。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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