「車を貸した友だちが無免許運転で捕まってしまった…自分も罪に問われるのだろうか」
無免許運転と知りつつ車を貸す行為は「幇助犯」に該当します。
無免許運転という犯罪行為を手助けしたものとみなされ、刑事罰・行政罰を受ける可能性があるのです。
実際、軽い気持ちで友人にミニバイクを貸した大学生が書類送検されている事例も存在します。
【事案概要】
| 兵庫県警三木署は昨年11月、無免許運転の疑いで三木市内の男子大学生を逮捕した。免許取得歴はなく、乗っていたミニバイクは友人のものだった。学生が無免許と知りながらミニバイクを貸したとして、同署は道交法違反(車両提供)の疑いで、学生の友人を書類送検した(今月18日付)。同署は「同じ部活の中で繰り返されていた可能性もある」といい、大学関係者に学生の指導を徹底するよう求めた。 |
(引用:神戸新聞NEXT)
本記事では、無免許運転の車を貸した側が受ける罰則や検挙されたあとの流れを解説します。
今後どのような処分が下されることになるのか不安に感じている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
目次
無免許運転だと知って車を貸した側が受ける罰則
まずは、無免許運転だと知って車を貸した側が受ける罰則を解説します。
無免許運転の提供罪は、大きく分けて刑事罰と行政罰の対象になるので、それぞれ詳しくみていきましょう。

刑事罰|3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
無免許運転と知りながら車を貸す行為は、無免許運転の提供罪にあたる犯罪です。
起訴され、有罪になると「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」に処されます。
ただし、初犯であれば不起訴処分を獲得し、刑罰を回避できる可能性もゼロではありません。
起訴された場合でも、略式起訴による罰金刑になるケースが一般的です。
| 【略式起訴】法廷での裁判を省略し、書面審理のみで罰金・科料を科す簡易的な起訴手続きのこと |
犯罪を犯した事実は変えられませんが、今後の対応次第で刑罰は軽減できるので、一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。
行政罰|欠格期間2年の免許取消
無免許運転と知りながら車を貸した場合の行政罰は「欠格期間2年の免許取消」です。
欠格期間とは、免許の再取得を禁止される期間のことを指します。
免許取消後2年間も運転ができなくなるので、仕事や日常生活に大きな支障が生じてしまいます。
また、欠格期間を終えて免許を再取得する際には、3万円程度を支払い、原則2日間の「取消処分者講習」を受ける必要があります。

なお、刑事罰とは異なり、行政罰は基本的に回避できません。
免許取消が決定する前に意見聴取の機会はあるものの、実際に罰則が軽くなるケースは稀です。
無免許運転だと知らずに車を貸した場合は原則として罪に問われない
無免許運転であると知らずに車を貸した場合、原則として貸主が罪に問われることはありません。
無免許運転の提供罪は、故意がなければ成立しないためです。
たとえば、友人が普段から運転している様子を見て、有資格者だと信じていた場合などは、車を貸しても処罰の対象外となる可能性があります。
しかし、故意がなかったことの証明は難しいケースも多いです。
単なる言い逃れと受け取られてしまうこともあるので、無実を主張したい場合は弁護士に相談してアドバイスを受けるようにしてください。
無免許運転の車を貸した側として検挙されたあとの流れ
無免許運転の車を貸した側として検挙された場合、刑事処分と行政処分に関する手続きが別々に進んでいきます。
どちらも冷静に対応していけるように、大まかな流れだけでも把握しておきましょう。
刑事処分の流れ

無免許運転の提供罪で検挙されると、まずは警察の取調べがおこなわれます。
素直に罪を認めていれば逮捕の可能性は低く、警察からの呼び出しに応じるかたちで、取調べを受けることになるでしょう。
取調べでは、事件当日の経緯や相手との関係性を聞き取られ、故意の有無が重点的に調べられます。
その後は検察官による取調べを受け、最終的に起訴・不起訴が判断されます。
不起訴になれば、その時点で事件は終了し、刑罰を受けることもありません。
起訴された場合は、審理を経て、裁判官が判決を下します。
なお、初犯であれば略式起訴が選択され、書面審理のみで罰金刑になるケースが一般的です。
ただし、悪質性が高い場合や前科がある場合などは、正式起訴され、公開の法廷で裁判がおこなわれる可能性もあります。
行政処分の流れ

無免許運転の車を貸したことが発覚した場合の行政処分は「聴聞」から始まります。
違反日から数週間~1ヵ月程度経過した頃に「意見の聴取通知書」が届くので、聴聞期日・場所などを必ず確認してください。
聴聞では主に都道府県公安委員会による事実確認が実施され、車を貸した経緯や故意の有無などが聞き取られます。
聴聞でのやり取り次第で行政処分が軽くなる可能性もあるので、誤解されている点や納得のいかない点があれば、遠慮せずに主張しましょう。
次に、聴聞の結果を踏まえて審議がおこなわれ、最終的に処分が決定します。
処分内容は、運転免許取消処分書で本人に伝達されます。
運転免許取消処分書には取消期日や欠格期間の詳細、異議申立ての方法などが記載されているので、漏れなく確認しておくことが大切です。
無免許運転の車を貸した側に関してよくある質問
最後に、無免許運転の車を貸した側に関してよくある質問を紹介します。

車を貸した側が逮捕されることはある?
無免許運転と知りながら車を貸した場合、逮捕される可能性はあります。
無免許運転の提供罪が犯罪である以上、証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合などは、逮捕の要件を満たすためです。
ただし、罪を認めて反省の態度を示している状況であれば、逮捕される可能性は低いといえます。
基本的には在宅事件となり、呼び出しに応じて取調べを受けることになります。
初犯の量刑相場はどのくらい?
無免許運転の車を貸した側が初犯で起訴され、有罪になった場合の量刑相場は「20万円程度の罰金刑」です。
法定刑は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」と定められているものの、初犯であれば悪質性が低く、更生も期待できるとみなされる傾向にあります。
そのため、いきなり拘禁刑になることはほとんどなく、刑罰としては比較的軽い罰金刑が選ばれるのです。
事故が起きた場合は車を貸した側も責任を負う?
無免許運転で事故が起きた場合、車を貸した側も法的責任を問われる可能性があります。
なぜなら、「運行供用者責任」が生じるためです。
| 【運行供用者責任】自動車を自分の管理下で運行し、利益を得ている人(運行供用者)は、交通事故の損害賠償責任を負う |
友人や家族に無償で車を貸していたとしても、運行供用者責任が生じる点に注意してください。
ただし、以下の3点をすべて立証した場合は、運行供用者責任が免責されます。
- ・自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
- ・被害者または運転者以外の第三者に故意・過失があったこと
- ・自動車に構造上の欠陥または機能の障害のなかったこと
たとえば、貸与期間を大幅に超え、返還を求めている最中に事故が発生した場合などは、車が管理下にあったとはいえず、運行供用者責任が生じない可能性もあります。
無免許運転の幇助罪に問われたときはグラディアトル法律事務所に相談を!
本記事のポイントは以下のとおりです。
- ・無免許運転と知って車を貸した場合の刑事罰は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」、行政罰は「免許取消しと欠格期間2年」
- ・無免許運転だと知らずに車を貸した場合は原則として罪に問われない
- ・無免許運転の提供罪で検挙された場合、警察や検察の取調べを受け、起訴・不起訴が判断される
- ・提供罪の初犯であれば20万円程度の罰金刑が相場
- ・無免許運転の車で事故が起きた場合は貸した側も損害賠償責任を負う可能性がある
無免許運転は、車を貸した側も罪に問われることがあります。
しかし、刑事罰に関しては、今後の対応次第で不起訴になったり、刑罰が軽減されたりする可能性も残されています。
そのため、無免許の友人に車を貸して後悔している方や、実際に検挙されてしまった方は、一刻も早く弁護士に相談してアドバイスを受けるようにしましょう。
グラディアトル法律事務所では、刑事事件を得意とする弁護士が24時間365日体制で相談を受け付けています。
初回相談は無料、LINEでの相談にも応じているので、まずはお気軽にご相談ください。
