「住居侵入未遂はどのような場合に成立する?」
「住居侵入未遂に問われたときの罰則は?」
「住居侵入未遂で逮捕されたときに弁護士に依頼するメリットとは?」
正当な理由なく他人の住居に立ち入った場合、「住居侵入罪」が成立しますが、室内や敷地内に立ち入っていなくても罪に問われる可能性があります。それが「住居侵入未遂」です。
住居侵入未遂は、住居侵入を企てたものの実際にはまだ侵入していない場合をいい、家人や通行人に目撃されたため途中で侵入をやめたような場合がこれにあたります。
このような住居侵入未遂も刑法では処罰対象とされていますので、逮捕・起訴される可能性は十分にあります。
本記事では、
・住居侵入未遂とは ・住居侵入未遂が成立する具体的なケース ・住居侵入未遂で逮捕されたときに弁護士に依頼するメリット |
などについて解説します。
ご自身やご家族が住居侵入未遂で警察に呼ばれたり、逮捕されたりした場合に備えて、正しい知識を身につけておきましょう。
目次
住居侵入未遂とは?住居侵入は未遂でも処罰対象
住居侵入未遂とは、他人の住居に立ち入ろうとしたものの何らかの理由で住居への侵入を完了しなかった場合を指します。
たとえば、玄関のドアを開けようとしていたところを住人に見つかり、そのまま逃走した場合などがこれに該当します。
刑法132条では、住居侵入未遂を処罰する規定が設けられていますので、住居侵入罪は、既遂だけでなく未遂でも処罰される可能性があります。
(未遂罪)第百三十二条 第百三十条の罪の未遂は、罰する。 |
関連コラム:住居侵入罪とは?成立要件や刑罰、逮捕されたときの対処法を解説
住居侵入未遂が成立する具体的なケース

住居侵入未遂が成立するかどうかは、住居侵入の「実行の着手」があったかどうかで判断されます。実行の着手とは、犯罪行為を開始することをいい、住居侵入罪であれば侵入行為に着手した時点となります。
以下では、住居侵入罪の実行の着手が認められ、住居侵入未遂が成立する具体的なケースを紹介します。
敷地に入ろうとして塀やフェンスを乗り越えようとした
他人の家の敷地に無断で入ろうとして、塀やフェンスを乗り越える動作をした場合、住居侵入の実行行為に着手したと評価されます。なぜなら、塀やフェンスを乗り越えれば、住居等への侵入が完了するため、塀やフェンスを乗り越える動作自体が住居侵入という結果発生の危険性がある行為といえるからです。
そのため、敷地に入ろうとして塀やフェンスを乗り越えようとしたところを家人や通行人に見つかり途中でやめた場合、住居侵入未遂罪が成立します。
ピッキング工具で玄関の鍵をこじ開けようとした
ピッキング用の工具やバールを使って玄関の鍵を開けようとした場合も、住居侵入未遂に該当する可能性があります。なぜなら、ピッキング行為が成功すれば、住居等への侵入が可能になるため、ピッキング行為自体が住居侵入という結果発生の危険性がある行為といえるからです。
そのため、ピッキング工具で玄関のカギをこじ開けようとしたものの、途中で家人や通行人に見つかり逃げ出した場合、住居侵入未遂罪が成立します。
ドアノブを回して室内に入ろうとしたが住人に気づかれてその場を立ち去った
ドアノブを回して室内に入ろうとしたが、住人に気づかれて逃走したケースも、住居侵入未遂と判断される可能性があります。
ただし、ドアノブを回して室内に入ろうとした行為が実行の着手ありと評価されるのは、ドアがカギで施錠されていない場合に限られます。なぜなら、ドアに鍵がかかっている場合、ドアノブを回したとしても室内に侵入することは不可能ですので、ドアノブを回す行為には住居侵入という結果発生の危険性がないからです。
そのため、施錠されていない部屋のドアノブを回して室内に入ろうとしたところ、住人に気付かれて立ち去ったという場合、住居侵入未遂罪が成立します。
住居侵入未遂が成立したときの刑罰

住居侵入未遂罪の罰則は、3年以下の懲役(拘禁刑※)または10万円以下の罰金です。
法定刑自体は、住居侵入既遂罪と同様ですが、未遂犯の場合には法律上の減軽により、既遂に比べて量刑が軽くなる可能性があります。具体的には、未遂による刑の減軽がなされると、「1年6月以下の懲役(拘禁刑)または5万円以下の罰金」まで減刑されます。
このように住居侵入未遂の量刑は、既遂罪に比べて軽いため、前科前歴がなく被害者と示談が成立している場合などは不起訴処分となる可能性も十分にあるといえるでしょう。
※「拘禁刑(こうきんけい)」とは、従来の刑罰である懲役と禁錮を一本化した刑罰です。改正刑法に基づき、2025年6月1日から、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。 |
関連コラム:住居侵入罪の法定刑とは?量刑に影響する7つの事情を弁護士が解説
住居侵入未遂でも逮捕される可能性あり!逮捕された後の流れ

住居侵入未遂であっても、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されれば、現行犯逮捕や通常逮捕される可能性があります。
ここでは、逮捕された場合に一般的に想定される手続きの流れについて説明します。
逮捕・取り調べ
警察官により逮捕されると警察署に連行されて取り調べが行われます。
取り調べで話した内容は供述調書にまとめられて、後々の処分の判断材料となるため不利な供述証書を取られないようにしなければなりません。取り調べの対応がわからず不安なときは、黙秘権を行使して、弁護士と面会するまで供述を拒否するとよいでしょう。
検察官送致
逮捕から48時間以内に被疑者の身柄は検察官に送致されます。
検察官は、被疑者に対する取り調べを行い、勾留請求をするかどうかを検討します。
なお、検察官が勾留請求をする場合、逮捕から72時間以内かつ送致から24時間以内に行わなければなりません。
勾留・勾留延長
裁判官が勾留を許可すると原則として10日間の身柄拘束が行われます。さらに必要と判断されれば勾留期間は最大で10日間まで延長されますので、逮捕から数えると最長23日間の身柄拘束をされる可能性があります。
起訴または不起訴の決定
勾留期間中、または満了時に、検察官が起訴(公判請求または略式命令請求)するか、不起訴にするかの判断を下します。
不起訴処分となれば、刑事事件としての手続きは終了し、前科も付きません。
一方で、起訴された場合には正式裁判へと移行し、有罪となれば刑罰が科されることになります。
住居侵入未遂で逮捕されたときに弁護士に依頼するメリット

住居侵入未遂で逮捕された場合、早期に弁護士へ依頼することが、今後の処分や生活への影響を大きく左右します。以下では、弁護士に依頼することで得られる主なメリットを紹介します。
不利な供述調書が取られるリスクを回避できる
取り調べでは、警察官による誘導的な質問や心理的なプレッシャーの中で、意図せず不利な供述をしてしまうことがあります。
一度署名・押印してしまった供述調書は、後になって「本心ではなかった」と主張しても、撤回できませんので、取り調べには慎重に対応することが求められます。
弁護士が早期に接見を行うことで、黙秘権や供述の注意点をアドバイスし、本人の防御権を守ることが可能となります。不利な供述調書が取られてからでは遅いため、早めに弁護士に依頼するべきです。
早期釈放を実現できる可能性が高くなる
住居侵入未遂で逮捕・勾留されると最長で23日間も身柄拘束を受けることになるため、日常生活への影響は非常に大きなものとなります。身柄拘束による不利益を最小限に抑えるには、早期の身柄解放を実現することが重要です。
弁護士は、検察官や裁判官に対して「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」ことを訴える意見書を提出し、勾留請求の阻止や却下、早期の釈放などを求めることができます。一日でも早く日常生活に戻るためにも逮捕後すぐに弁護士に依頼するようにしてください。
不起訴処分の獲得に向けたサポートができる
不起訴を獲得できれば、前科がつかずに事件を終えることができ、将来への影響を最小限に抑えることができます。
弁護士は、被害者との示談交渉や反省文の提出、再犯防止策の提案などを通じて、不起訴に向けた対応を徹底的にサポートします。特に、初犯である場合や反省の意思が明確である場合には、弁護士の活動によって不起訴となる可能性が高くなるでしょう。
関連コラム:住居侵入罪における示談の効果とは?示談交渉の流れやポイントを解説
住居侵入未遂で逮捕されたときはグラディアトル法律事務所に相談を

住居侵入未遂は、たとえ室内に入っていなくても刑事事件として扱われる可能性のある犯罪です。窃盗やわいせつ目的で侵入するつもりだった場合は、悪質性が高いため逮捕され、厳しい取り調べを受けることもあります。
このような状況になると本人はもちろん、家族も大きな不安を抱えることになるでしょう。
グラディアトル法律事務所は、刑事事件の弁護に特化した弁護士が多数在籍しており、住居侵入罪に関する豊富な実績がありますので、以下のような対応が可能です。
・逮捕直後のスピーディーな接見対応(最短即日対応可) ・被害者との示談交渉の代行 ・勾留阻止や早期釈放の働きかけ ・不起訴の獲得に向けた活動 |
住居侵入罪は初犯であれば不起訴や略式命令(罰金)で済む可能性もありますが、対応を誤れば起訴されてしまい、正式な刑事裁判に発展するおそれもあります。
そのため、「初めてだから大丈夫」と自己判断せず、できるだけ早期に弁護士のサポートを受けることが、将来へのダメージを最小限に抑えるために不可欠です。
グラディアトル法律事務所では、初回の無料相談を実施しています。「この行為が犯罪になるのか不安」「すでに警察から連絡があった」といった段階でも構いません。刑事事件は時間との勝負ですので、迷ったらすぐに当事務所までご相談ください。
まとめ
「実際に住居内に入っていないから罪にならない」と誤解されがちですが、このような場合も住居侵入未遂として処罰対象となる可能性があります。塀を乗り越えようとしたり、ドアノブを回したりといった行為でも、状況次第では住居侵入の意思と実行の着手が認定され、逮捕・起訴されるリスクがある点に注意が必要です。
このような状況に直面したときは、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。住居侵入未遂でお困りの際は、刑事弁護に強いグラディアトル法律事務所へ、ぜひ一度ご相談ください。