覚醒剤の所持・使用が発覚すると逮捕され、長期間にわたる身柄拘束を受ける可能性があります。
なかでも起訴されたあとの勾留期間は原則2ヵ月に及び、制限なく更新されていくため、心身ともに疲弊していく人も少なくありません。
そこで検討すべきなのが、保釈金制度の活用です。
保釈金を支払えば、判決が出るまでの間、身柄拘束を受けることなく日常生活を送れるようになります。
しかし、保釈金制度の具体的な活用方法について理解している人は多くないでしょう。
そこで本記事では、覚醒剤事件の保釈金相場や保釈条件などを解説します。
保釈金を支払ってから身柄が解放されるまでの流れも詳しく記載しているので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
目次
覚醒剤で逮捕されても保釈金を支払えば起訴後の身柄拘束から解放される
覚醒剤で逮捕され起訴された場合、保釈金を支払うことで身柄拘束から一時的に解放されます。
そもそも被告人は犯罪を犯した疑いがあるだけで、確定しているわけではありません。
それにも関わらず、長期間にわたる起訴後の勾留がおこなわれると、被告人が受ける不利益が大きくなりすぎるので、暫定的な身柄解放が認められているのです。
なお、令和4年の刑事裁判における保釈率は以下のようになっています。
終局処理総人員 | 勾留総人員 | 保釈人員 | 保釈率 | |
地方裁判所 | 42,278人 | 30,713人 | 9,891人 | 32.2% |
簡易裁判所 | 2,629人 | 1,595人 | 285人 | 17.9% |
(参照:令和5年版犯罪白書|法務省)
保釈中は一定の制約が課せられますが、基本的には普段通りの生活を送ることが可能です。
そして、裁判が開かれるたびに、裁判所に出廷する必要があります。
関連コラム:家族が覚醒剤で逮捕されたらどうなる?流れと対処法を徹底解説!
覚醒剤事件の保釈金相場は150万円~200万円程度
覚醒剤事件の保釈金相場は、150万円から200万円程度を目安に考えておくとよいでしょう。
保釈制度は、保釈金を裁判所に預けることで身柄を解放してもらう制度です。
つまり、保釈金には担保のような役割があるため、没収された場合に痛手となる金額でなければなりません。
そのなかで、150万円~200万円程度の保釈金を納付させておけば、被告人が逃亡を図ることなく、裁判に出頭するだろうと考えられているのです。
とはいえ、保釈金額は犯罪の性質や被告人の経済状況などを総合的に考慮したうえで、裁判官が決定します。
場合によっては、200万円を超える高額な保釈金の納付を求められることもあります。
覚醒剤事件で支払った保釈金は原則返金される
覚醒剤事件で支払った保釈金は、原則として裁判終了後に全額返金されます。
保釈金は被告人の出頭を確保するために、裁判所が一時的に預かっているお金です。
裁判所が定めたルールを守って出頭していれば、判決が確定してから数日後に返金してもらえます。
なお、有罪判決が出た場合でも保釈金は返金されます。
一方で、保釈中のルールに違反した場合は保釈金が没収され、二度と手元には返ってきません。
覚醒剤事件の保釈金額に影響する主な要素
次に、覚醒剤事件の保釈金額に影響する主な要素について解説します。
犯罪の重大性
覚醒剤事件の保釈金額は、犯罪の重大性によって変動します。
重大な犯罪ほど刑罰が重くなると同時に、被告人が逃亡する可能性も高くなるので、逃亡を防ぐために高額な保釈金が設定されるのです。
たとえば、個人で少量の覚醒剤を所持・使用していた場合と、密売に関与していた場合とでは、保釈金額も大きく変わってくるでしょう。
加害者の経済状況
加害者の経済状況も、覚醒剤事件の保釈金額に影響します。
保釈金は被告人の逃亡を防ぎ、出頭を確保するための担保になるものであり、没収された場合に経済的ダメージが生じなければ意味がありません。
そのため、裁判所は被告人の経済状況を考慮したうえで、没収されると困る金額を設定します。
上述のとおり、一般的な会社員や公務員の場合、保釈金の相場は150万円から200万円程度です。
一方、高収入の職業や有名人が保釈される際には、300万円以上の保釈金を支払うケースも珍しくありません。
なお、被告人の経済力が乏しい場合でも、保釈金が過度に低くなることはなく、100万円程度に設定されます。
覚醒剤事件で保釈金による身柄解放が認められるための条件
まず、一定の除外事由に該当していない限り、原則として保釈請求は許可されることになっています(権利保釈)。
【権利保釈の除外事由】
・死刑、無期または短期1年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯した場合 ・死刑、無期または長期10年超の懲役・禁錮の宣告を過去に受けた場合 ・常習として長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯した場合 ・証拠隠滅の可能性が高い場合 ・被害者や関係者に危害を加える可能性が高い場合 ・被告人の氏名や住居が不明な場合 |
ただし、権利保釈が認められなくても、保釈の相当性・必要性が認められた場合には、裁判所の裁量で保釈が許可されることもあります。
覚醒剤事件で保釈が認められにくい2つのケース
次に、覚醒剤事件で保釈が認められにくい2つのケースを紹介します。
前科があり実刑が見込まれる場合
醒剤事件で保釈が認められにくいケースのひとつは、前科があり実刑が見込まれる場合です。
まず、前科があると覚醒剤の常習性を疑われます。
そのため、身柄解放後の覚醒剤使用を防ぐために、保釈が見送られる傾向にあるのです。
また、実刑が見込まれる場合は逃亡する動機が強くなるので、刑務所に収監されるまで身柄が拘束されるケースが多いといえます。
とはいえ、保釈の可能性が完全になくなるわけではありません。
反省の態度を示し、更生に向けた具体的な取り組みを進めるなど、適切に対応することで保釈が認められる可能性はあります。
否認している場合
被告人が起訴事実を否認している場合も、自白事件と比較して保釈が認められにくくなります。
保釈を認めると証拠隠滅を図ったり、関係者と口裏合わせをしたりする可能性があると判断されるためです。
ただし、否認事件であっても、証拠隠滅の可能性がないことなど主張し、裁判官を説得できた場合は保釈が認められることもあるので、弁護士と相談しながら対策を練るようにしましょう。
覚醒剤事件で保釈金を支払って身柄が解放されるまでの流れ
次に、覚醒剤事件で保釈金を支払って身柄が解放されるまでの一般的な流れを解説します。
裁判所に保釈申請をおこなう
起訴されたあとに保釈を希望する場合は、まず裁判所に保釈申請をおこなう必要があります。
保釈申請ができるのは、被告人や家族、弁護人などです。
保釈請求書に身元引受書や住民票などを添付し、裁判所に提出してください。
保釈請求書に決まった様式はありませんが、保釈の必要性や証拠隠滅の可能性がないことなどを記載するケースが一般的です。
なお、保釈申請は原則として24時間受け付けられているため、土日であっても申請すること自体に問題はありません。
裁判官が検察官の意見を聴取する
保釈申請を受けた裁判官は、情報収集のために検察官の意見を聴取します。
そして、検察官は保釈請求を「相当」とするか「不相当」とするか、もしくは、裁判官に任せるかを理由を付して意見することになります。
とはいえ、検察官の立場で保釈を肯定するケースは多くありません。
基本的には「不相当」として意見されるものと考えておきましょう。
なお、弁護人が希望する場合は、裁判官と弁護人による面接がおこなわれることもあります。
保釈許可決定を受ける
裁判官は検察官の意見や弁護人面接などで得た情報をもとに、保釈の可否を決定します。
保釈許可決定の際には、保釈金額や釈放の条件などもあわせて伝えられるはずです。
なお、保釈が許可されなかった場合は、準抗告によって不服を申し立てることも検討する必要があります。
裁判所に保釈金を納付する
保釈許可決定を受けたあとは、裁判所に保釈金を納付します。
保釈金は現金納付のほか、インターネットバンキングやPay-easy対応のATMを利用して納付することも可能です。
保釈金の納付後は裁判所から検察に連絡がいき、検察から留置施設に釈放の指示が下され、ようやく被告人の身柄が解放されます。
覚醒剤事件の保釈金に関してよくある質問
最後に、覚醒剤の保釈金に関してよくある質問をまとめているので参考にしてみてください。
保釈金が支払えない場合は保釈を諦めるしかない?
経済的な事情で保釈金が支払えない場合でも、保釈の道が完全に閉ざされるわけではありません。
たとえば、日本保釈支援協会の保釈保証金立替制度や全国弁護士協同組合連合会の保釈保証制度を利用するのも選択肢のひとつです。
制度名 | 制度概要 |
---|---|
日本保釈支援協会の保釈保証金立替制度 | ・最大500万円まで保釈金を立て替えてもらえる・2ヵ月ごとに手数料を支払い、保釈金が返還されたら立替金を返済する |
全国弁護士協同組合連合会の保釈保証制度 | ・身元引受人が少額の保証料と自己負担金を支払うことで、全弁協から保証書を発行してもらえる・保証書を裁判所に提出すれば、保釈金を支払えなくても保釈が認められる・自己負担金は保証期間終了後に返還される |
ただし、上記の制度を利用する際は、一定の審査基準を満たす必要があります。
いずれにせよ保釈に関する判断は難しいケースも多いので、まずは弁護士に相談することが重要です。
保釈金を支払ってから実際に保釈されるまでの期間は?
保釈金を支払ってから実際に保釈されるまでの期間は、通常1〜2時間程度です。
納付した時間帯にもよりますが、基本的には当日中に釈放されるものと考えておきましょう。
ただし、保釈申請から保釈決定が出るまでに2~3日営業日、長ければ1週間程度を要する点に注意が必要です。
覚醒剤の保釈金に関する疑問・不安はグラディアトル法律事務所に相談を!
本記事のポイントは以下のとおりです。
- ◆ 保釈金を支払えば起訴後の身柄拘束から解放される
- ◆ 覚醒剤事件の保釈金相場は150万円~200万円程度
- ◆ 覚醒剤事件で支払った保釈金は原則返金される
- ◆ 覚醒剤事件の保釈金額には犯罪の重大性や経済状況が影響する
- ◆ 前科がある場合や否認している場合は保釈が認められにくい
覚醒剤事件を起こして逮捕・勾留されたとしても、起訴後は保釈金を支払うことで日常生活を取り戻せる場合があります。
しかし、保釈の可否は裁判官がさまざまな事情を考慮したうえで決定するので、申請したからといって必ずしも許可されるわけではありません。
そのため、少しでも保釈の可能性を高めたいのであれば、弁護士にサポートを求めるようにしましょう。
刑事事件を得意とする弁護士であれば、被告人が置かれている状況を分析したうえで、速やかに保釈申請を進めてくれるはずです。
実際にグラディアトル法律事務所でも、これまでに数々の覚醒剤事件を取り扱い、解決へと導いてきました。
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初回相談は無料、LINEでの相談にも対応しているので、困ったときはいつでもご連絡ください。