暴行罪の時効は何年で成立する?刑事・民事の時効を弁護士が解説

暴行罪の時効は何年で成立する?刑事・民事の時効を弁護士が解説
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弁護士 若林翔
2024年04月19日更新

「暴行の責任を問われるのではないかと不安に感じている」
「暴行罪の時効はいつ成立するのか把握しておきたい」
など、他人に対して暴行を加えてしまったことで、さまざまな不安や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

実際、暴行罪が成立すると、刑事上の責任・民事上の責任を負う可能性があります。しかし、暴行罪には時効があり、一定期間が経過すれば起訴されたり、損害賠償の支払いを求められたりすることもなくなります。 そのため本記事を参考に、暴行罪の時効について正しく理解しておけば、今後の不安も大きく軽減できるはずです。

本記事では、暴行罪の時効は何年で成立するのかをわかりやすく解説します。時効の起算点や時効の成立を待つ前にできることなども紹介するので、ぜひ最後まで目を通してみてください。

暴行罪の時効には2種類ある

まず、前提として暴行罪の時効には2種類あることを覚えておきましょう。暴行罪では刑事と民事の責任が生じ、それぞれ時効の期間も異なります。

暴行罪の時効期間

では、刑事・民事の時効期間について、それぞれ詳しく解説します。

刑事上の時効:3年

刑事上の時効は「公訴時効」と呼ばれ、暴行をおこなったときから3年で成立します。公訴時効は人を死亡させたかどうかで大別され、さらに刑罰の重さによって時効期間が分けられています。

公訴時効の期間

暴行罪の刑罰は、「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。つまり、上記の表における、時効期間「3年」に該当することになります。

民事上の時効:5年または20年

民事上の時効期間は、被害者が損害と加害者を知ったときから5年です。5年が経過すると、被害者の損害賠償請求権が消滅することになります。

ただし、状況次第では、被害者が誰に暴行を加えられたのかわからないまま一定期間を過ごすケースも考えられるでしょう。この場合、暴行を受けたときから20年が経過するまで時効は成立しません。

暴行罪の時効が成立するとどうなる?

次に、暴行罪の時効が成立するとどうなるのかを解説します。刑事・民事に分けて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

暴行罪の時効の成立で起きること

刑事上の時効:検察官から起訴されなくなる

刑事上の時効が成立すると、検察官から起訴されなくなります。

暴行は、法律に違反する犯罪行為です。検察官から起訴され、裁判で有罪になると、「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」に処されます

また、前科がつくと刑罰に処されるだけでなく、仕事を失ったり、家族との関係が壊れてしまったりと、さまざまな不利益を被ることになるでしょう。

しかし、時効が成立し、検察官から起訴されなくなることは、事実上の無罪放免です。その事件で罪に問われることは、今後一切なくなります。

民事上の時効:被害者に対して損害賠償を支払う義務がなくなる

民事上の時効が成立すると、被害者に対して損害賠償を支払う義務がなくなります。

通常、暴行を受けた被害者には、加害者に対する「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権」が生じます。しかし、時効が成立すれば権利自体が消滅してしまうので、加害者に金銭の支払いを求めることはできなくなります。

なお、刑事と民事は別々の問題です。たとえば刑事上の時効が成立した場合でも、民事上の時効が影響を受けることはありません。

暴行罪の時効はいつから始まる?具体例を挙げながら起算点を解説

暴行罪の時効は、刑事と民事で起算点が異なります。それぞれ具体例を挙げながら解説するので、自身の状況に置き換えながら読み進めてみてください。

暴行罪の時効の起算点

刑事上の時効:暴行が終了したとき

刑事上の時効は、「暴行が終了したとき」が起算点になります。

たとえば、令和6年4月1日23時から暴行を加え始め、4月2日1時に終了した場合は、令和6年4月2日が起算点です。そして、3年後の令和9年4月2日になった時点で時効が完成します。

民事上の時効:暴行による損害と加害者を知ったとき

民事上の時効は、「暴行による損害と加害者を知ったとき」が起算点になります。そのため、面識のない人に暴行を加え、被害者が自分自身の氏名や住所を知らない場合には、時効は進行しません。

ただし、暴行を加えてから20年が経過すると、自身が加害者であることを知られていなくても時効は完成します。

たとえば、令和6年4月1日に暴行を加え、自身が加害者であることを知られていた場合は、令和11年4月1日になった時点で時効完成です。もし、自身が加害者であることを知られていなかった場合には、令和26年4月1日になった時点で時効が完成します。

暴行罪の時効は一定の事由が生じた場合に停止・更新する

暴行罪の時効は、一定の事由が生じた場合に停止・更新する点に注意しておきましょう。では、どのようなケースで時効が停止・更新するのか詳しく見ていきましょう。

刑事上の停止事由

刑事上の時効は、一時的に停止するケースがあります。具体的な時効の停止事由は、以下のとおりです。

・起訴された場合:裁判が終わるまで時効の進行が停止する

・加害者が国外にいる場合:帰国するまで時効の進行が停止する

・加害者に起訴状の謄本が届かない場合:謄本が届くまで時効の進行が停止する

たとえば、暴行が終了した日から2年経過したタイミングで、加害者が国外に逃亡した場合、その時点で時効の進行はストップします。その後帰国すれば時効が再び進行し、1年経過すると合計で3年経過していることになるので時効が完成します。

刑事上の時効の停止イメージ

なお、刑事上の時効は進行が停止することはあっても、更新することはないので注意しておきましょう。

民事上の更新事由

民事上の時効は完成が猶予される場合と、更新される場合の2パターンがあります。完成猶予・更新事由は複数ありますが、代表的なものは以下のとおりです。

民事上の時効の完成猶予・更新事由

時効期限が近づいている場合には、被害者が上記のような手続きをおこない、時効の完成を阻止してくる可能性があります。たとえば、内容証明郵便による支払いの催告によって6ヵ月間の猶予期間を獲得し、その間に訴訟手続きが進められるケースも少なくありません。

暴行罪の検挙率は高い!時効成立を待つ前にできること

時効が成立すれば、その事件に関して起訴されたり、損害賠償を請求されたりすることはなくなります。しかし、令和5年版犯罪白書によると、暴行罪の検挙率は約84%です。時効の成立によって逃げ切ることは、基本的に難しいと考えておきましょう。

暴行罪の時効成立前にできること
(参照:令和5年版犯罪白書「第1編 犯罪の動向」|法務省

ここでは、時効成立を待つ前にできることを解説するので、今後どう行動してよいのか迷っている方は参考にしてみてください。

警察に自首する

暴行罪にあたる行為に及んでしまったときは、警察に自首することも検討してみてください。法律上、自首は刑の減軽・免除の事由になるとされています。暴行の程度などによっては、不起訴処分を獲得できることもあるでしょう。

また、自首すれば逃亡や証拠隠滅の可能性がないことを示せるので、逮捕を回避できるケースもあります。職場や家族にバレることなく、平穏な日常を取り戻せるかもしれません。

ただし、自首には、警察の捜査対象になってしまったり、その場で逮捕されたりといったリスクもあります。そのため、自首を選択肢のひとつに入れる場合には、まず弁護士のアドバイスを受けることが大切です。

被害者に示談を申込む

暴行を加えてしまった場合には、被害者に示談を申込むのもひとつの方法です。示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高くなります。起訴されたとしても、示談が成立していれば、減刑されるケースも少なくありません。

ただし、加害者が直接示談交渉をおこなうことはおすすめしません。連絡を拒否されたり、高額な示談金を請求されたりして、交渉が思うように進まないおそれがあります。また、示談が成立したとしても、どのように示談書を作成すればよいのか悩むことになるでしょう。

そのため、被害者に示談を申込む場合は、弁護士のサポートが必要不可欠といえます。

暴行事件を起こしたときは、まず弁護士に相談を!

暴行事件を起こしたときには、決してひとりで抱え込まず、まずは弁護士に相談しましょう。弁護士に相談すれば、問題が大きくなる前に解決できる可能性が格段に高まります。

弁護士に相談する一番のメリットは、被害者との示談交渉を代わりにおこなってくれる点です。刑事事件を得意としている弁護士は、交渉をスムーズに進めるためのノウハウを熟知しています。そのため、逮捕の回避や不起訴処分の獲得に向けて、迅速に示談交渉をまとめてくれるはずです。

実際にグラディアトル法律事務所では、暴行罪の解決実績が多数あります。たとえば、カフェでトラブルになった相手に暴行を加え、逮捕されてしまった女性の事例です。

 

依頼者の友人から相談を受けたあと、弁護士がすぐさま弁護活動を開始。相手の弁護士と示談金0円での和解を成立させ、釈放・不起訴を実現させることができました。示談が成立したか否かは、起訴・不起訴の判断に大きな影響を及ぼすため、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

他人に暴行を加えた場合、刑事上の時効は3年、民事上の時効は5年または20年で成立します。時効が成立すれば、起訴されることがなくなったり、損害賠償を支払わずに済んだりと、加害者にとって大きなメリットがあります。

しかし、ただ時効の成立を待ち続けることはおすすめしません。暴行罪の検挙率は高く、いずれ警察の捜査対象となり、逮捕・起訴されてしまう可能性は十分あります。また、事件がいつ発覚するのかおびえながら過ごすことは、精神的にも大きなストレスになるでしょう。

そのため、暴行事件を起こしたときは、まず弁護士に相談することが大切です。個々の状況に合わせた最善の対処法をアドバイスしてもらえば、穏便に問題を解決できることもあります。

グラディアトル法律事務所は、暴行事件に関する豊富な解決実績があります。少しでも不安に感じていることがあれば、弊所へご相談ください。LINEでの無料相談にも対応しているので、お気軽にどうぞ。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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