「道路交通法違反を犯した場合、罰金になる?」
「道路交通法違反の罰金と反則金の違いがよくわからない……」
「道路交通法違反で罰金が科された後の具体的な流れを知りたい」
交通違反をしてしまったとき、「罰金」と「反則金」の違いに戸惑った経験はありませんか?
たとえば、スピード違反や信号無視をすると道路交通法違反に対するペナルティとして一定の金銭の支払いを求められますが、それが「反則金」なのか「罰金」なのか、しっかり理解していない方も多いのではないでしょうか。
実は、「反則金」は行政処分として科されるのに対し、「罰金」は刑事罰の一種として科されるもので、両者は性質を異にします。支払うタイミングや金額、支払えなかった場合のリスクも異なるため、正確に理解しておくことが大切です。
本記事では、
・道路交通法違反における罰金と反則金の違い ・道路交通法違反となる主な行為ごとの罰金と反則金 ・罰金と反則金の支払いの流れ、支払えなかった場合のリスク |
などについて詳しく解説します。
万が一違反をしてしまったときに備え、正しい知識を身につけましょう。
なお、道路交通法違反による反則金と罰金の金額をまとめましたので参考にしてみてください。
違反内容 | 罰金(刑罰) | 反則金 | |
一時停止違反 | 3月以下の懲役(拘禁刑)または5万円以下の罰金 | 7000円 | |
スピード違反 | 6月以下の懲役(拘禁刑)または10万円以下の罰金(一般道で時速30㎞以上・高速道路で時速40㎞以上) | 9000~3万5000円 | |
無免許運転 | 3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金 | - | |
飲酒運転 | 酒気帯び運転 | 3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金 | - |
酒酔い運転 | 5年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金 | - | |
ながらスマホ | 6月以下の懲役(拘禁刑)または10万円以下の罰金※事故を起こした場合は、1年以下の懲役(拘禁刑)または30万円以下の罰金 | 1万8000円 | |
通行禁止違反 | 3月以下の懲役(拘禁刑)または5万円以下の罰金 | 7000円 | |
信号無視 | 3月以下の懲役(拘禁刑)または5万円以下の罰金 | 9000円 | |
ひき逃げ(救護義務違反) | 10年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金 | - | |
当て逃げ(安全運転義務違反+危険防止措置義務違反) | 1年以下の懲役(拘禁刑)または10万円以下の罰金(危険防止義務違反)3月以下の懲役(拘禁刑)または5万円以下の罰金(報告義務違反) | - | |
あおり運転 | 3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金※著しい交通の危険を生じさせた場合は、5年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金 | - |
目次
道路交通法違反における罰金と反則金の基礎知識

道路交通法違反をすると、一般的には「罰金」または「反則金」を支払うことになります。しかし、この2つは性質も支払い手続きも大きく異なります。違反をした際の適切な対処のためにも、それぞれの意味を正しく理解しておく必要があります。
刑事罰としての罰金
罰金とは、刑事事件としての処分において科される金銭的な刑罰です。重大な交通違反や反則金の対象外となる違反を行った場合が罰金の対象となります。
罰金であっても前科であることには変わりありませんので、その後の人生に重大な不利益が生じるリスクがある点に注意が必要です。
なお、罰金刑が科される主な違反例には、無免許運転や酒気帯び運転・酒酔い運転、ひき逃げ、あおり運転などが挙げられます。これらは「赤切符」が交付され、刑事事件として捜査が進められます。
行政処分としての反則金
反則金は、比較的軽微な交通違反に科される行政上の制裁金であり、刑事罰ではありません。支払うことで刑事手続に進まず、前科もつきません。主にスピード違反や信号無視、一時停止違反などが対象です。
反則金の対象になる場合は、「青切符」と呼ばれる交通反則告知書が交付されます。これに基づき、所定の期間内に反則金を納付すれば、それ以上の処分は基本的にありません。
罰金と反則金の違い
以下に、罰金と反則金の主な違いをまとめます。
罰金 | 反則金 | |
---|---|---|
種類 | 刑事罰 | 行政処分 |
前科 | 前科がつく | 前科はつかない |
対象者 | 赤切符交付者 | 青切符交付者 |
主な違反例 | 無免許運転や酒気帯び運転・酒酔い運転、ひき逃げ、あおり運転など | スピード違反や信号無視、一時停止違反など |
不納付時の扱い | 労役場留置 | 刑事事件に移行して罰金刑が科される |
道路交通法違反となる主な行為ごとの罰金・反則金一覧
以下に、代表的な道路交通法違反となる行為ごとに科される罰金や反則金の金額をまとめましたので参考にしてみてください。
違反内容 | 罰金(刑罰) | 反則金 | |
一時停止違反 | 3月以下の懲役(拘禁刑)または5万円以下の罰金 | 7000円 | |
スピード違反 | 6月以下の懲役(拘禁刑)または10万円以下の罰金(一般道で時速30㎞以上・高速道路で時速40㎞以上) | 9000~3万5000円 | |
無免許運転 | 3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金 | - | |
飲酒運転 | 酒気帯び運転 | 3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金 | - |
酒酔い運転 | 5年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金 | - | |
ながらスマホ | 6月以下の懲役(拘禁刑)または10万円以下の罰金 ※事故を起こした場合は、1年以下の懲役(拘禁刑)または30万円以下の罰金 | 1万8000円 | |
通行禁止違反 | 3月以下の懲役(拘禁刑)または5万円以下の罰金 | 7000円 | |
信号無視 | 3月以下の懲役(拘禁刑)または5万円以下の罰金 | 9000円 | |
ひき逃げ(救護義務違反) | 10年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金 | - | |
当て逃げ(安全運転義務違反+危険防止措置義務違反) | 1年以下の懲役(拘禁刑)または10万円以下の罰金(危険防止義務違反)3月以下の懲役(拘禁刑)または5万円以下の罰金(報告義務違反) | - | |
あおり運転 | 3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金 ※著しい交通の危険を生じさせた場合は、5年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金 | - |
一時停止違反
停止線のある交差点などで一時停止を怠ると、一時停止違反として反則金が科されます。反則金の金額は、普通車で7000円です。
一時停止違反は、青切符対応がとなりますので、期限までに反則金を納付すれば罰金を科されることはありません。
スピード違反
スピード違反による罰則は、速度超過の程度により内容が異なります。
一般道で30km/h未満、高速道路で40km/h未満の速度超過であれば反則金で済みますが、一般道で30km/h以上、高速道路では40km/h以上の速度超過になると罰金対象で赤切符が交付され、刑事手続へ進みます。
無免許運転
無免許運転とは、運転免許を有しない人が車を運転することをいいます。無免許には、以下の3つの種類があります。
・免許を取得していない |
・免許を取り消されている |
・免許資格停止中 |
無免許運転には反則金がありませんので、違反すると3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金が科されます。
飲酒運転(酒気帯び運転・酒酔い運転)
飲酒運転には、酒気帯び運転と酒酔い運転の種類があります。
・酒気帯び運転:呼気1L中にアルコールが0.15mg以上検出された状態で運転すること |
・酒酔い運転:アルコール濃度に関わらずアルコールの影響で正常な運転ができないおそれがある状態で運転すること |
飲酒運転には反則金がありませんので、酒気帯び運転に該当する場合には3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金、酒酔い運転に該当する場合には5年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金が科されます。
ながらスマホ
走行中のスマートフォン使用(ながらスマホ)は「携帯電話使用等違反」として取り締まり対象です。
スマートフォンを保持して通話したり、画像を注視したりした場合は、反則金1万8000円が科されますが、ながらスマホにより事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合には反則金はありませんので、1年以下の懲役(拘禁刑)または30万円以下の罰金が科されます。
通行禁止違反
車両通行止めなどの標識に違反した場合、通行禁止違反となり反則金が科されます。
反則金の金額は、普通車で7000円です。
通行禁止違反は、青切符対応がとなりますので、期限までに反則金を納付すれば罰金を科されることはありません。
信号無視
赤信号を無視して進行した場合、信号無視違反となり、反則金9000円が科されます。
なお、信号無視により事故を引き起こした場合は刑事事件化する可能性があります。
ひき逃げ・当て逃げ
ひき逃げとは、人身事故を起こしたにも関わらず必要な救護措置をせずに現場から立ち去る行為をいいます。また、当て逃げとは、物損事故を起こしたにもかかわらず、必要な措置を講じることなく現場から立ち去る行為をいいます。
いずれも反則金の対象外ですので、ひき逃げをした場合は、救護義務違反として10年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金が、当て逃げをした場合は以下の刑罰が科されます。
・危険防止義務違反:1年以下の懲役(拘禁刑)または10万円以下の罰金 |
・報告義務違反:3月以下の懲役(拘禁刑)または5万円以下の罰金 |
あおり運転
あおり運転とは、他の車に対して執拗に威嚇したり、挑発的な行動をとる危険な運転行為を指します。法律上は「妨害運転」として位置づけられており、2020年の道路交通法改正により新たに設けられた規制です。
具体的には、対向車線への不要なはみ出し、急ブレーキを繰り返す行為、過度な車間距離の接近など10類型の運転行為が違反とされ、警察による厳格な取り締まり対象となっています。
なお、あおり運転には反則金がありませんので、3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金が科され、さらに著しい交通の危険を生じさせた場合は、5年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金が科されます。
道路交通法違反で反則金を支払う流れ

道路交通法違反のうち、比較的軽微な違反行為をした場合には「反則金制度」が適用されます。この制度は、刑事事件として立件することなく、行政処分として金銭を納付することで手続きを完了させるものです。以下では、反則金の支払いがどのような流れで進むのか、順を追って説明します。
警察官から「交通反則告知書(青切符)」と「仮納付書」が交付される
軽微な交通違反が確認されると、警察官から「交通反則告知書(通称:青切符)」と「仮納付書」が交付されます。この時点では、違反者は刑事手続きに進まず、行政上の反則金納付で済ませることが可能です。
仮納付書で反則金の納付|告知日を含む8日以内
仮納付書に記載された反則金は、交付日を含めて8日以内に納付する必要があります。支払いは銀行・郵便局・コンビニエンスストアなどで対応可能です。
期限内に納付すれば、原則としてそれ以上の追及はなく、前科も残りません。
(期限内に納付をしない場合)「通告書」と「納付書」が交付される
期限内に反則金を納めなかった場合、後日「通告書」と「納付書」が郵送されます。これが届いた時点でも、まだ反則金の納付で手続きを終えることは可能です。
納付書で反則金の納付|通告日を含む11日以内
通告書が届いてからは、指定された期日(原則として通告日を含め11日以内)までに反則金を納めなければなりません。
これが反則金で済ませる最終的な機会となります。
(期限内に納付をしない場合)刑事事件に移行
反則金の支払いを期限までに行わなかった場合、事件は刑事手続へと移行します。刑事事件になると裁判所による略式命令で罰金刑が科され、前科がついてしまうため、放置は絶対に避けるべきです。
道路交通法違反で罰金を支払う流れ

重大な道路交通法違反を行った場合、反則金制度は適用されず、刑事事件の対象になります。このようなケースでは、警察官から交付される「赤切符(交通切符告知票)」をきっかけに、正式な刑事手続きへと進む点が特徴です。以下では、実際に罰金を支払うまでの流れを段階ごとに詳しく見ていきましょう。
警察官から「交通切符告知票(赤切符)」が交付される
交通違反の現場で、警察官がその違反を重大と判断した場合、「赤切符」が交付されます。赤切符は、反則金では済まされない刑事事件として扱うことを示す書類であり、無免許運転や酒気帯び運転、スピード超過(30km/h以上)などが典型的な対象となります。
警察の捜査
赤切符が切られた後、警察は必要に応じて事情聴取や証拠収集を行います。違反の程度や背景を調査し、検察に送致するかどうかを判断するための重要なプロセスです。
悪質な違反行為や事故などが発生した場合には、警察により逮捕される可能性もあります。
検察官送致・略式命令請求
警察による捜査が完了すると、事件は検察官に送られます。多くの場合、交通違反の内容が明白で軽微なものであれば、正式な裁判を経ずに「略式命令」という簡易な手続きによって罰金刑を科すよう請求されます。
略式命令により罰金刑が科される
略式命令が裁判所から出されると、被告人(違反者)には罰金刑が科されます。
略式命令の告知を受けたときから14日以内に正式裁判の請求をしなければ、略式命令は確定し、罰金刑の前科がつくことになります。
罰金の納付|略式命令謄本を受け取った日から14日以内
略式命令の謄本と罰金の納付書が自宅に届いたら、指定された金融機関や郵便局で14日以内に罰金を納める必要があります。期限を過ぎると、労役場留置といったさらなる処分を受ける可能性があるため、速やかに対応することが重要です。
道路交通法違反で反則金・罰金を支払えない場合のリスク

道路交通法違反で科される反則金や罰金は、納付期限が明確に定められており、これを過ぎてしまうと深刻なリスクを招くおそれがあります。
反則金を支払えない場合には刑事事件に移行し、罰金刑が科される
反則金は軽微な違反に対する行政処分としての措置ですが、期限内に納付しなければ刑事手続きに移行します。手続きが進むと、検察官が略式命令を請求し、裁判所で罰金刑が科される可能性があります。
この場合、違反者は「前科」がつくことになり、就職や資格取得など今後の生活にも悪影響を及ぼしかねません。たとえ反則金の金額が小さくても、支払わないという選択がもたらすリスクは極めて大きいのです。
罰金を支払えない場合には労役場留置
罰金刑が確定しているにもかかわらず、正当な理由なく支払わない場合、最終的には「労役場留置」が命じられることになります。これは罰金の代わりに身体拘束を受け、一定期間労役に服する制度です。1日あたり5000円の換算で罰金額に応じた期間を拘束されることになり、実質的には自由を奪われる刑罰といえます。
経済的事情などで支払いが難しい場合でも、放置せず早めに弁護士へ相談することが重要です。
道路交通法違反を犯したときはグラディアトル法律事務所に相談を

道路交通法違反には、一時停止の見落としや速度超過といった軽微なものから、飲酒運転や無免許運転、ひき逃げといった重大な違反までさまざまな種類があります。中でも、赤切符が交付されたような重大な違反では、刑事事件として扱われ、罰金刑や懲役刑、前科が付く可能性もあるため、早急な対応が必要不可欠です。
グラディアトル法律事務所では、交通事件や刑事手続に精通した弁護士が在籍しており、赤切符を受け取った直後のご相談から略式命令、正式裁判への対応まで、幅広くサポートいたします。「このまま放置しても大丈夫なのか」「前科がつくのを避けたい」といったお悩みに対しても、最適なアドバイスができますのでまずは当事務所までご相談ください。
初期対応が今後の結果を大きく左右することがあるため、できる限り早期の相談をおすすめします。
まとめ
道路交通法違反で科される「罰金」と「反則金」には大きな違いがあります。軽微な違反は反則金で済むものの、重大な違反は罰金刑として前科が残るおそれもあります。
違反内容ごとの金額や手続きの流れを把握し、万が一に備えた対応ができるようにしておきましょう。
重大な違反にあたるかどうか不安な場合や、警察や検察から呼び出しを受けた場合には、早めにグラディアトル法律事務所までご相談ください。