「あおり運転で有罪になるとどのくらいの罰金が科されるの?」
「あおり運転をすると罰金刑以外にどのようなペナルティがある?」
「罰金を回避するためにできることとは?」
あおり運転は、社会的にも大きな問題となっており、近年の法改正によって厳罰化が進んでいます。
「一時的な感情で車間距離を詰めてしまった」「クラクションを鳴らしてしまった」といった軽い気持ちの行動が、あおり運転とみなされ、重い罰金を科されるケースもあります。罰金も前科であることには変わりありませんので、前科を避けるには早期に被害者との示談交渉などの着手することが大切です。
本記事では、
・あおり運転に対して科される罰金額 ・あおり運転で実際に罰金刑が言い渡された事例 ・罰金に外に生じるペナルティ |
などについて詳しく解説します。
あおり運転で罰金や刑罰を避けたい方、今後の対応に不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
法改正によりあおり運転の罰金・刑罰が厳罰化

2020年6月に道路交通法が改正され、いわゆる「あおり運転」に対して新たに「妨害運転罪」という規定が設けられました。それ以前は、あおり運転という行為が法律上で明確に定義されておらず、「急ブレーキ禁止違反」「車間距離不保持違反」といった交通違反として処理されてきました。
また、悪質なケースでは刑法上の「暴行罪」や「危険運転致死傷罪」が適用されることもありましたが、あおり運転を適切に取り締まるには不十分とされていました。
さらに、あおり運転に伴う重大な事故や社会的に注目される事件が相次いだことから、法改正によって妨害運転罪が創設され、処罰の根拠が明確化されることになりました。
現在では、あおり運転に対しては、「妨害運転罪」が適用され、50万円以下の罰金や3年以下の懲役(拘禁刑)といった厳しい刑罰の対象となっています。些細な気のゆるみや感情的な運転が、取り返しのつかない結果を招くこともあるため、あおり運転に対する理解と注意が必要です。
※「拘禁刑(こうきんけい)」とは、従来の刑罰である懲役と禁錮を一本化した刑罰です。改正刑法に基づき、2025年6月1日から、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。 |
あおり運転で科される罰金・刑罰|妨害運転罪
あおり運転をした場合の刑罰は、著しい交通の危険を生じさせたか否かによって、以下の2つに分けられます。
交通の危険のおそれを生じさるおそれがある場合|3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金
他の車両等の通行を妨害する目的で、急ブレーキ禁止違反や車間距離不保持等の交通の危険を生じさせるおそれのある妨害運転行為をした場合、3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
たとえば、極端に車間距離を詰める行為、必要もないのに何度もクラクションを鳴らす、進路変更を妨げるような割り込み運転などが典型例です。一般的に「あおり運転」と呼ばれる行為については、上記の刑罰が適用されます。
著しい交通の危険を生じさせた場合|5年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金
交通の危険のおそれにとどまらず、実際に著しい交通の危険を生じさせた場合には、より重い法定刑が適用されます。この場合、5年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金が科されることになります。
たとえば、高速道路上でわざと急ブレーキをかけて後続車を驚かせたり、蛇行運転によって他の車が衝突の危険にさらされたりするような場合が該当します。被害の程度や悪質性によっては、罰金刑では済まず懲役刑(拘禁刑)が言い渡される可能性もあります。
あおり運転で罰金刑が科された実際の事例を紹介

以下では、報道などで明らかになっている実際の事例を踏まえて、あおり運転に対して罰金刑が科されたケースをみていきましょう。
原付バイクで自転車にあおり運転したとして罰金20万円の略式命令
2021年、北九州市で原付バイクを運転していた女性が、自転車に乗る男性に対してあおり運転を行った事件がありました。女性は自転車に接近してクラクションを何度も鳴らし、男性の前に立ちはだかるなどの行為を繰り返していました。
この事件では、小倉簡易裁判所から罰金20万円の略式命令が出されました。
原付きバイクで自転車にあおり運転をしたとして、道路交通法違反(妨害運転)の疑いで福岡県警に書類送検された准看護師の女(43)について小倉区検は21日、同罪で略式起訴したと発表した。処分は昨年12月24日付。小倉簡裁は今年1月14日付で罰金20万円の略式命令を出した。略式命令などによると女は昨年8月24日、小倉北区中津口2丁目の市道でバイクを運転中に歩道に進入、男性の乗った自転車の通行を妨げようと約100メートルにわたり、時速約30キロで追いかけて接近したり、何度も警音器を鳴らしたりしたとされる。県警によると、直前に女は近くのコンビニエンスストアの駐車場付近で男性の自転車と接触しかけて口論になったという。あおり運転をめぐっては昨年6月の道交法改正で妨害運転罪が新設され、厳罰化が進んだ。急ブレーキや幅寄せ、車間距離不保持など計10項目を妨害運転とし、懲役や罰金を科すことができるようになった。 (引用:朝日新聞)原付きバイクで自転車にあおり運転 准看護師に罰金命令 |
高速道路でトラックの前に割り込み急ブレーキをしたとして罰金30万円の略式命令
2020年、岡山県内の山陽自動車道において乗用車を運転していた男性がトラックの前に割り込んだうえで急ブレーキをかけた事件がありました。後続のトラックは衝突こそ避けられましたが、非常に危険な状況でした。
この行為については、妨害運転罪が適用され、岡山簡易裁判所から罰金30万円の略式命令が下されました。
高速道路で他の車の進路を妨害する「あおり運転」をしたとして、道路交通法違反容疑で逮捕されたとび職の男(36)について、岡山区検は12日、同法違反で略式起訴し、岡山簡裁は罰金30万円の略式命令を出した。男は即日納付した。起訴状などによると、男は8月11日夜、岡山県浅口市内の山陽自動車道を走行中、追い越し車線のトラックの前に割り込み、急ブレーキをかけたとされる。県警によると、6月施行の改正道交法で創設された「あおり運転(妨害運転)罪」を高速道路上の走行に適用した全国初のケースだった。また、トラックの運転手についても、直前に男の車をあおったなどとして、同法違反容疑で書類送検した。 (引用:読売新聞)高速道でトラックの前に割り込み、急ブレーキ…あおり運転で罰金30万円 |
あおり運転をすると罰金以外にもペナルティがある

あおり運転をした場合、罰金刑だけで済むとは限りません。あおり運転に対するペナルティには、罰金刑以外にも以下のようなものがあります。
違反点数の累積による行政処分
妨害運転罪が適用された場合、違反点数として「25点」または「35点」が加算されます。これは交通違反の中でも非常に重い処分であり、即座に免許取消となり2~10年の欠格期間が適用されます。
つまり、罰金刑で済んだとしても、行政処分によって日常生活に多大な支障が生じる可能性があるのです。自動車を使う仕事に就いている方であれば、仕事にも影響が及ぶおそれがあり、解雇という事態にもなりかねません。
被害者に対する賠償責任
あおり運転によって他者に恐怖心や精神的苦痛を与えた場合、民事上の損害賠償請求がなされることもあります。特に、人身事故に発展した場合には、治療費や休業損害、慰謝料などが請求されますので、高額な賠償金を負担しなければなりません。
場合によっては保険が適用されないケースもあり、その場合は、加害者自身が高額な賠償責任を負うことになります。
実名報道による社会的制裁
悪質なあおり運転の事件では、実名と顔写真が報道されるケースも少なくありません。特に、SNSなどで拡散されると、社会的な信頼や評判が失われることになります。
勤務先に知られて解雇される、家族や近隣住民との関係が悪化するなどの社会的な制裁は、罰金刑よりも重く感じることもあるでしょう。
罰金も前科になる!不起訴処分を獲得するためにできること

あおり運転で罰金刑が科された場合、「前科」がついてしまうことをご存知でしょうか。前科は将来的な就職や転職、資格取得などにも大きな影響を与える可能性があります。前科を避けるには不起訴処分を獲得することが重要になるため、以下では、不起訴処分を獲得するためにできる3つの対応を紹介します。
被害者との示談交渉
不起訴処分を獲得する上でもっとも重要なのが、被害者との示談です。示談により被害が回復され、示談書に「加害者の処罰を望まない」と明記されている場合、検察官が情状を考慮して不起訴と判断する可能性が高まります。
ただし、被害者の処罰感情が強いケースでは示談交渉が難航することもあるため、弁護士のサポートを受けて慎重かつ誠実に対応する必要があります。
再犯防止に向けた取り組み
「今後二度と同じことを繰り返さない」という意思を示すために、再犯防止の取り組みを行うことも重要です。たとえば、自動車を手放したり、運転免許を自主返納したり、運転者向けの講習を自主的に受講するなどの行動が挙げられます。
こうした姿勢は、反省の意思を検察官にアピールすることにつながります。
有利な事情を主張立証する
事案によっては、あおり運転に至った経緯に情状酌量の余地があることもあります。
たとえば、相手側が先に挑発的な行動を取っていた、危険回避の意図があったなどの事情があれば、それを主張して不起訴を目指す余地が生まれます。
もちろん、そうした事情があることを客観的に証明する必要があるため、弁護士に相談しながら対応を進めていきましょう。
あおり運転でお困りの方はグラディアトル法律事務所に相談を

あおり運転で検挙され、罰金刑が科された場合でも、それは「前科」として記録に残ります。前科があることによって、今後の就職や転職、資格取得、さらには社会的信用にも大きな影響を及ぼすおそれがあります。
また、罰金刑にとどまらず、運転免許の取消処分や高額な損害賠償請求、メディアによる実名報道など、生活全体に深刻なダメージを与える事態に発展することも少なくありません。
そのため、あおり運転での処分を少しでも軽くしたい、前科を回避したいとお考えの方は、できるだけ早期に刑事事件に強い弁護士へ相談されることを強くおすすめします。
グラディアトル法律事務所では、これまでに数多くのあおり運転事案に対応しており、迅速な被害者との示談交渉や情状に配慮した主張立証によって、不起訴処分による前科回避や略式命令による実刑回避を実現してきました。
「ついカッとなってやってしまった」「反省しているがどうしたらよいかわからない」とお悩みの方もご安心ください。状況を丁寧にヒアリングし、最適な解決策をご提案いたしますので、あおり運転でお困りの方は、ぜひ一度グラディアトル法律事務所にご相談ください。
まとめ
あおり運転に対しては、2020年の法改正により妨害運転罪が新設され、非常に厳しい罰則が科されるようになりました。罰金額は最大で100万円、妨害運転罪が適用されれば一発で免許取消になり、前科や社会的制裁といった深刻な影響も伴います。
しかし、被害者との示談や再発防止策、有利な事情の主張によって、不起訴処分となる可能性も十分にあります。早期の対応が結果を大きく左右するため、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。
あおり運転をしてしまったという方は、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。