リベンジポルノ防止法違反で逮捕されるも不起訴となった事例

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弁護士 若林翔
2025年02月02日更新

事件の概要 SNSで知り合った女性から動画を買ってしまい逮捕

Aさんは、30代の会社員男性です。

AさんはSNSで女性と知り合い、ネット上でやりとりをしながら仲良くしていました。

ある日、相手の女性から、性的な動画を買い取らないかと持ちかけられます。

そういった動画に関心のあったAさんは、動画1本5万円という値段で買い取ってしまいます。

女性から何本か動画を買い取り、はじめは個人的に楽しんでいました。しかし、Aさんは、女性に無断で同じ趣味を持つ友人に動画を売ってしまいます。そして、その友人が、女性に無断でその動画をインターネット上にあげてしまいました。

女性はインターネット上で自分の動画が勝手に載せられているのを発見してしまいます。Aさんとは個人的に動画を楽しむ約束で売買をしていたのですから、女性は怒って警察に相談へ行ってしまいました。

そして、Aさんが女性に無断で性的な動画を友人に売っていることが警察にばれてしまい、リベンジポルノ防止法違反で逮捕されてしまったのです。

事件のポイント リベンジポルノとは?

今回の事件は、いわゆる「リベンジポルノ」が問題となった事件にあたります。

「リベンジポルノ」とは、性的な画像や動画を被写体の同意なくインターネット等で第三者に公開することを言います。

例えば、同意を得て恋人と性行為の動画を撮ったとしても、それだけでは問題となりませんが、別れた後、動画を同意なく勝手にインターネットにあげてしまった場合、リベンジポルノにあたります。

一度インターネット等で公開されてしまうと、そのまま不特定多数の人に拡散されてしまうため、すべて削除することはほぼ不可能といえるでしょう。そのため、一度インターネットに公開されてしまうと、被害者の方は長期間精神的苦痛を受けることになります。

インターネットが普及し、このような被害が拡大していったこともあり、リベンジポルノは社会的に問題視されていました。そのような実情に鑑み、令和4年10月1日に「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」が施行されたのです。

リベンジポルノにあたるのはどんな画像?「私事性的画像記録」の定義

「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」でリベンジポルノの対象となる「私事性的画像記録」とは、人の姿態が撮影された画像において、第三者が閲覧することを認識したうえで撮影したものをいいます。

具体的には以下のような画像を指します。

・性交又は性交類似行為に係る人の姿態

・人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

・衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

・リベンジポルノの刑罰

上記「私事性的画像記録」を「公表」又は「提供」した場合、処罰されることになります。

「公表」とは、被害者が特定できる方法で、不特定多数に画像や動画を提供、公然と陳列することをいいます。つまりインターネットの掲示板に画像や動画をあげ、誰でも見られる状況にする場合などがこれにあたります。

「提供」とは、公表目的で第三者に画像や動画を提供することを言い、動画を直接インターネットにあげなくても、それを第三者にお願いして提供すれば成立するのです。

「公表」した場合、3年以下の懲役刑または50万以下の罰金、「提供」した場合、1年以下の懲役刑または30万以下の罰金に処される可能性があります。

軽い気持ちでインターネットに性的な動画をあげたり、その目的で第三者に提供してしまったことで、このような重い刑罰を受けることになりかねないのです。

事件の争点 自分で拡散しなくてもリベンジポルノにあたる!

痴漢を「していない」ことの証明は自力では困難

先ほど述べた通り、第三者が閲覧することについて相手の同意がなければ、「私事性的画像記録」にあたる可能性があります。

たとえ撮影について同意を得ていたとしても、インターネットにあげることについて同意を得ていなければ、リベンジポルノに該当し、罪に問われるかもしれません。

今回の事件では、Aさんが女性から私的利用目的でもらった性的な動画を無断で友人に提供し、友人がその動画をインターネットにあげています。

たしかに、Aさんは女性の同意を得て性的な動画を購入しています。

しかし、女性はあくまでAさんが個人で楽しむために動画を売ったにすぎず、Aさんの友人に転売することや、インターネットに上げられることまで同意していませんでした。

そのため、「私事性的画像記録」を「提供」したとして、リベンジポルノに該当してしまったのです。

〇事件の解決 示談交渉中に不起訴

Aさんは、逮捕後、勾留されることなく捜査が進められることになりました。

「勾留」といって、身柄を拘束されたまま捜査を進められる場合と、勾留されずに捜査が進む場合があります。

勾留されないからといって、事件が終了したわけではありません。捜査が進んでいく中で起訴不起訴が決定するのです。

Aさんは勾留されませんでしたが、はじめて逮捕され、今後どうなっていくのか不安に感じていました。

そこで、早く弁護士に相談しておこうと考え、インターネットで刑事事件に強い弁護士を探し、弊所にご相談くださったのです。

弁護士は、Aさんから連絡をもらい、すぐに警察に連絡をとることにしました。警察から被害者の女性の連絡先を聞き、示談交渉等を行い、早急に問題解決に導くためです。

示談の成立が直接不起訴や事件の終結に繋がるわけではありませんが、検察が起訴不起訴の判断をする際、示談が成立しているかは重要な判断材料となるので、示談を成立させた方が良いといえます。

弁護士は被害者の方と直接連絡をとり、示談交渉を行いました。

しかし、やはり相手の女性はすでに動画が拡散されてしまっている状況のため、示談に難色を示します。

その後も何度か被害者の方と示談交渉を行いますが、なかなか示談には応じてもらえませんでした。

弁護士は、示談交渉と並行して、Aさんのサポートを行いました。

急に逮捕されてしまい、警察や被害者への対応も分からず、困惑している状況の中、法律のプロである弁護士は心強い味方になります。

取調べで萎縮してしまい、事実と異なることを認めてしまったり、やっていないことを自白してしまうかもしれません。

しかし、弁護士が取調べでのアドバイスなどを行い、サポートをすることで、依頼者の方の不安を取り除くことができます。

Aさんも、弁護士がサポートしたことにより、取り調べでも冷静に当時の状況や、反省しているという想いなどを警察に伝えることができました。

その結果、未だ示談交渉の途中でしたが、不起訴が決定し、事件を無事解決することができたのです。

まとめ

今回は、リベンジポルノの事例をご紹介しました。

もしリベンジポルノで警察に逮捕された場合は、早急に弁護士に相談することが大切といえるでしょう。

早い段階から弁護士を入れることで、問題も早期解決に導くことができるのです。

弊所弁護士にご相談いただければ、適切な解決方法を考えて事件解決までサポートいたします。

おひとりで悩まず、まずは弁護士にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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