住居侵入罪とは?成立要件や刑罰、逮捕されたときの対処法を解説

住居侵入罪とは?成立要件や刑罰、逮捕されたときの対処法を解説
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弁護士 若林翔
2025年07月04日更新

「ちょっと家をのぞいただけでも住居侵入罪は成立する?」

「住居侵入罪が成立するとどのような刑罰が科される?」

「住居侵入罪で逮捕されてしまったときはどうすればいい?」

住居侵入罪は、正当な理由なく他人の住居に侵入した場合に成立する犯罪です。住居侵入罪単体で見ればそこまで重い犯罪ではありませんが、実際には窃盗や盗撮、ストーカー目的で住居侵入をするケースが多く、他の罪に問われれば重い刑罰が科されることになります。

不法侵入罪を犯してしまったときは、弁護士に相談して適切な対処をすることで、逮捕や起訴を回避できる可能性があります。そのため、早めに弁護士に相談することが重要です。

本記事では、

・住居侵入罪の成立要件と刑罰

・住居侵入罪で逮捕される主なケース

・住居侵入罪で逮捕されてしまったときの対処法

などについて解説します。

万が一ご自身やご家族が住居侵入罪で逮捕された場合に、どのように対応すればよいのかも紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

住居侵入とは?

住居侵入とは、他人の住居や建物などに、正当な理由なく立ち入る行為を指します。簡単にいえば、「入ってはいけない場所」に勝手に立ち入る行為が住居侵入にあたります。

住居侵入は、刑法130条により処罰対象とされていますので、住居侵入行為が発覚すれば刑事事件として扱われる可能性があります。

刑法130条では以下のように規定されています。

(住居侵入等)第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。

日常生活の中でも、「悪気はなかった」「ちょっと入ってみただけ」といった軽い気持ちで他人の敷地や建物に入ってしまい、住居侵入罪として警察に通報されるケースは少なくありません。

特に、空き家や共有マンションの廊下・エントランス、アパートのベランダなど、一見公的に見える空間でも、実は「他人の管理下にある私的空間」とされ、住居侵入とみなされる場合がありますので注意が必要です。

住居侵入罪の成立要件

住居侵入罪の成立要件

住居侵入罪が成立するには、刑法130条が規定する一定の要件を満たす必要があります。以下では、住居侵入罪が成立する3つの要件について説明します。

侵入する対象が「他人の住居」であること

住居侵入罪の対象となるのは、「他人の住居」です。

ここでいう「住居」とは、人が日常的に生活している場所のことを指します。建物だけではなく、建物に付随する敷地も対象になります。

また、マンションやアパートは、部屋の中だけではなくエントランスや廊下、階段、駐車場なども住居侵入罪の対象となります。

正当な理由なく住居に立ち入ったこと

住居侵入罪は、正当な理由なく住居に立ち入った場合に成立します。

正当な理由の有無については、住居の権利者や管理者の意思に反する立ち入りであるかという観点から判断されます。たとえば、誰もいない友人宅に立ち入ったとしても、友人から「勝手に入ってもいいよ」と言われていたのであれば罪に問われることはありません。

他方、離婚協議中で別居をしている夫婦が勝手に配偶者の自宅に立ち入る行為は、元々一緒に暮らしていたとしても罪に問われる可能性があります。

このように家族であっても住居侵入罪が成立する可能性がある点に注意が必要です。

侵入する故意があること

住居侵入罪が成立するには、他人の住居であるという認識が必要です。

マンションなどは同じ部屋の外観ですので、酔って自宅と間違えて他人の家に入ってしまうケースもありますが、そのようなケースでは故意の有無が争点となります。

関連コラム:住居侵入罪の構成要件とは?該当する行為・しない行為を弁護士が解説

住居侵入罪の刑罰

住居侵入罪の刑罰

住居侵入罪の刑罰は、3年以下の懲役(拘禁刑※)または10万円以下の罰金となっています。住居侵入罪単体であれば、初犯なら不起訴処分になる可能性も十分にあり、仮に起訴されたとしても略式命令による罰金刑で済むケースが多いでしょう。

しかし、実際には住居侵入罪は他の犯罪(窃盗罪、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪、撮影罪など)の手段として利用されるケースが多いため、住居侵入罪と同時に他の犯罪も成立している場合には、初犯であっても重い処罰を受ける可能性があります。

※「拘禁刑(こうきんけい)」とは、従来の刑罰である懲役と禁錮を一本化した刑罰です。改正刑法に基づき、2025年6月1日から、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。

関連コラム:住居侵入罪の法定刑とは?量刑に影響する7つの事情を弁護士が解説

住居侵入罪で逮捕される主なケース

住居侵入罪で逮捕される主なケース

以下では、住居侵入罪で逮捕される主なケースを紹介します。

空き巣目的で他人の家に忍び込むケース

住居侵入罪で逮捕されるケースの1つ目は、空き巣目的で他人の家に忍び込むケースです。これはもっとも典型的なケースといえるでしょう。

施錠されていない窓やドアを利用して中に入った場合、住居侵入罪に加えて、窃盗罪も同時に成立する可能性があります。また、家人に見つかって、逃走する際に怪我をさせてしまうと強盗罪に問われる可能性もあります。

盗撮目的で女性宅に入り込むケース

住居侵入罪で逮捕されるケースの2つ目は、盗撮目的で女性宅に入り込むケースです。

カメラを設置して女性の裸や下着姿を盗撮すれば、住居侵入罪に加えて撮影罪(性的姿態等撮影罪)も同時に成立する可能性があります。

また、実際に部屋の中に立ち入らなくてもベランダでカーテンの隙間からのぞく行為も住居侵入罪に問われます。

下着を盗む目的で庭に入り込むケース

住居侵入罪で逮捕されるケースの3つ目は、下着を盗む目的で庭に入り込むケースです。

住居侵入罪の対象は、建物内部だけではなく、敷地やベランダなども含みますので、下着を盗むために他人の敷地やベランダに侵入した場合も、住居侵入罪が成立します。この場合、住居侵入罪と同時に窃盗罪も成立します。

「庭や敷地の一部なら入っても大丈夫」という思い込みは危険です。これも立派な犯罪行為ですので注意が必要です。

ストーカー目的でマンション内に入り込むケース

住居侵入罪で逮捕されるケースの4つ目は、ストーカー目的でマンション内に入り込むケースです。

特定の相手に対するつきまといや待ち伏せ行為の一環としてマンションに侵入する行為も、住居侵入罪が成立します。エントランスや共有部分であっても、正当な理由なく立ち入れば違法行為とされますので注意が必要です。

このようなケースでは、住居侵入罪とともにストーカー規制法違反として処罰される可能性があります。

住居侵入罪で逮捕されたときの流れ

住居侵入罪で逮捕されたときの流れ

以下では、住居侵入罪で逮捕された後、どのような流れで刑事手続きが進むのかを説明します。

逮捕・取り調べ

住居侵入罪で逮捕されると、警察署に連行されて警察官による取り調べを受けます。

住居侵入罪は、他罪の手段として利用される犯罪であることを警察官も熟知していますので、取り調べではどのような目的で侵入したのかなどが詳しく聞かれることになります。

取り調べでの供述内容は、供述調書にまとめられ、今後の処分に大きく影響することになりますので、不用意な発言は避けるべきでしょう。

検察官送致

逮捕から48時間以内に警察官は、検察官に被疑者の身柄を送致します。

検察官は、被疑者の取り調べを行い、勾留の必要性があるかどうかを判断します。

単純な住居侵入罪ではなく、窃盗などの目的が疑われるときはさらに捜査を続けるために裁判官に勾留請求を行います。

なお、勾留請求は、逮捕から72時間以内でかつ送致から24時間以内に行わなければなりません。

勾留・勾留延長

裁判官が勾留を許可すると、原則として10日間身柄を拘束され、捜査が継続します。

さらに身柄拘束を続ける必要があると判断されると最長10日間の勾留延長が認められますので、被疑者の身柄拘束期間は、逮捕から数えると最長で23日間にもなります。

起訴または不起訴の決定

勾留期間が満了するまでに検察官は、事件を起訴するか、不起訴にするかの決定をします。

起訴された場合、刑事裁判が行われ有罪判決が出れば罰金刑や懲役刑(拘禁刑)が課される可能性があります。他方、不起訴処分になれば刑事裁判は行われず、前科がつくこともありません。

住居侵入罪で逮捕されてしまったときの対処法

住居侵入罪で逮捕されてしまった場合にもっとも重要なことは、早期に適切な対応をとることです。以下では、住居侵入罪で逮捕されてしまったときの対処法を説明します。

逮捕後すぐに弁護士に相談・依頼する

まず何よりも大切なことは、逮捕後すぐに弁護士に相談・依頼するということです。

弁護士に依頼することで、以下のようなサポートを受けることができます。

・早期に面会に駆けつけて、取り調べに対するアドバイスをする

・早期の身柄解放に向けた活動を行う

・被害者との示談交渉を行う

刑事事件はスピード勝負と言われています。逮捕から時間が経てば経つほどできる対応が限られてしまい、被疑者の不利益が大きくなるため、できる限り早期に弁護士に相談することが重要です。

被害者との間で示談交渉を行う

住居侵入罪は、被害者との間で示談が成立すれば不起訴になる可能性が高い犯罪です。

特に、初犯であればその他の情状も考慮して検察官が起訴を見送る可能性も十分にあるでしょう。

しかし、逮捕された被疑者自身では示談交渉を行うことができませんので、被害者と示談を進めるなら弁護士のサポートが不可欠です。弁護士に依頼すれば早期に被害者と接触し、示談をまとめることができます。

弁護士が窓口となることで被害者も安心して交渉に臨むことができ、適正な相場で示談をまとめることが可能です。

関連コラム:住居侵入罪における示談の効果とは?示談交渉の流れやポイントを解説

過去の住居侵入罪なら時効を主張する

過去の住居侵入罪であれば、捜査の対象となった時点ですでに時効が成立している可能性があります。

住居侵入罪の時効は3年ですので、これを経過していれば起訴され刑事処分を受けることはありません。住居侵入罪の疑いをかけられたとしても時効が成立しているなら、時効を主張するとよいでしょう。

ただし、時効の成立の有無は、法的な判断を伴いますので自分の判断に自信がないというときはすぐに弁護士に相談するようにしてください。

関連コラム:住居侵入罪の時効とは?成立条件や注意点を弁護士がわかりやすく解説

住居侵入罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せを

住居侵入罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せを

住居侵入罪は、ちょっとした過ちや軽い気持ちでの行動が、重大な刑事事件として扱われる可能性がある非常に注意すべき犯罪です。

特に次のようなケースでは、逮捕・起訴されるリスクが高くなります。

・空き巣、盗撮、下着泥棒などの目的があった場合

・ストーカー行為の一環としてマンションに侵入した場合

「初犯だから大丈夫だろう」と軽く考えてしまうと、前科がついたり、社会的信用を失ったりするリスクがあります。こうした事態を防ぐためにも、刑事事件に強い弁護士に早急に相談することが重要です。

グラディアトル法律事務所では、住居侵入をはじめとする刑事事件に関する豊富な経験と実績がありますので、有利な処分を獲得するためのポイントを熟知しています。早期釈放や不起訴処分の獲得を目指すなら、刑事事件の経験豊富な当事務所にぜひお任せください。

なお、当事務所では最短で即日対応が可能で、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。

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まとめ

住居侵入罪は、他の犯罪の手段として利用される犯罪ですので、住居侵入罪が成立する事案では同時に他の重い犯罪が成立しているケースも少なくありません。そのようなケースでは、早期に適切な対応をしなければ逮捕・起訴されるリスクが高くなるため、できる限り早く弁護士に相談・依頼することが重要です。

グラディアトル法律事務所では、住居侵入を含む刑事事件の対応実績が豊富で、身柄解放や不起訴獲得のためのサポート体制を整えています。お困りの際は、いつでもご相談ください。

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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