「職務質問を拒否しただけで公務執行妨害罪になるの?」
「職務質問を拒否したいときはどうすればいいの?」
職務質問に対応するかどうかは任意で決められるため、法律上、拒否することは可能です。
しかし、拒否の仕方によっては公務執行妨害罪が成立する点に注意しておかなければなりません。
また、職務質問の拒否は事実上難しいので、適切な対応方法を身につけておくことも重要です。
本記事では、職務質問の拒否で公務執行妨害罪が成立する可能性について解説します。
職務質問をスムーズに終わらせるためのポイントなども詳しくまとめているので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
※刑法改正により、2025年6月から懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されています。
【拘禁刑とは?】 犯罪者を刑事施設に収容し、改善更生に必要な作業を命じたり、指導したりする刑罰のこと。刑務作業は義務ではなく、受刑者の特性に応じた支援プログラムが提供される。 |
目次
職務質問を単に拒否するだけでは公務執行妨害罪にあたらない
前提として、職務質問を単に拒否するだけでは公務執行妨害罪にあたりません。
職務質問はあくまでも「任意」の手続きです。
警察官に詰め寄られたからといって質問に答える義務はなく、直ちに身柄を拘束されたり、警察署などに連行されたりすることもありません。
ただし、職務質問を頑なに拒否していると、警察官の不信感は高まるばかりです。
余計なトラブルを起こさないためにも、基本的には素直に応じることをおすすめします。
職務質問を拒否する際の言動・行動次第では公務執行妨害罪が成立する
上述のとおり、職務質問を単に拒否するだけで罪に問われることはありません。
しかし、職務質問を拒否する際の言動・行動次第では公務執行妨害罪が成立し、「3年以下の懲役もしくは禁錮(拘禁刑)または50万円以下の罰金」に処されます。
ここでは、公務執行妨害罪に該当する行為の具体例を詳しくみていきましょう。
警察官に暴行を加えた場合
公務執行妨害罪が成立するケースのひとつは、職務質問してくる警察官に暴行を加えた場合です。
公務執行妨害罪は、職務執行中の公務員に暴行・脅迫を加えることで成立する犯罪です。
警察官が法令に基づき適法に職務質問をおこなっている限り、暴行によって、その職務を妨害する行為は犯罪とみなされます。
たとえば、職務質問を受けている最中に警察官を突き飛ばしたり、胸倉をつかんだりした場合は、公務執行妨害罪に該当する可能性が高いです。
また、警察官の装備品を叩き落とす、パトカーを蹴るといった行為も公務執行妨害罪の要件を満たすことがあります。
なお、実際に職務が妨害されたかどうかは関係なく、職務が妨害され得る程度の暴行がおこなわれた時点で、公務執行妨害が成立します。
警察官を脅迫した場合
職務質問中の警察官を脅迫した場合も、公務執行妨害罪が成立します。
公務執行妨害罪の要件とされる「脅迫」とは、「人を畏怖させる害悪の告知」のことです。
たとえば、職務質問を受けている最中に「殺してやるぞ」「ただで済むと思うなよ」などと警察官に言い放つ行為などが該当します。
一方で、「ふざけるな」「話しかけるな」など、不快な言葉や不満を投げかける程度では脅迫にあたらず、罪に問われることもありません。
関連コラム:公務執行妨害罪は暴言でも成立する?判断基準や実際の逮捕事例を解説
職務質問中に公務執行妨害罪で逮捕された事例
ここでは、職務質問中に公務執行妨害罪で逮捕された事例を3つ紹介します。
飲酒検査を求めてきた警察官の胸を複数回殴打した
まず紹介するのは、職務質問の中に飲酒検査を求めてきた警察官の胸を殴打し、公務執行妨害罪で逮捕された事例です。
【事案概要】
20日午前1時15分ごろ、福岡県春日市の路上でパトロール中の警察官が無灯火で走行する自転車を発見しました。呼び止めて職務質問し、運転していた男から酒のにおいがしたため飲酒検査しようとしたところ、男は検査に応じず警察官の胸を複数回殴打したたことから、男を公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕しました。 |
(引用:RKBオンライン)
本事案は、警察官本人への暴行による公務執行妨害罪の典型パターンといえます。
なお、警察官への暴行によってけがをさせた場合は、傷害罪も成立し、刑罰がより重くなる可能性がある点に注意してください。
職務質問を受けた際に運転していた車をパトカーに衝突させた
次に紹介するのは、職務質問を受けた男が車を発進させ、パトカーに衝突させた事例です。
【事案概要】
警察の職務質問を受けた男が、捜査車両に車を衝突させたとして、公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕されました。・・・警察によりますと、男は23日午後、長崎県五島市で警察の職務質問を受けた際、運転していた車を覆面パトカーに衝突させた疑いがもたれています。警察はその場で男を公務執行妨害の容疑で現行犯逮捕しました。警察の調べに対し男は「進路をふさいだパトカーを車で押しただけ」と容疑を否認しています。 |
(引用:NBC長崎放送)
本事案のように、公務執行妨害罪は必ずしも、警察官に直接的な危害が生じていることを要件としていません。
間接的な有形力の行使も、公務執行妨害罪で逮捕される可能性があります。
職務質問中の警察官に体当たりした
最後に紹介するのは、職務質問してきた警察官に体当たりし、職務執行妨害罪で逮捕された事例です。
【事案概要】
警察の調べによりますと、男は松山市内のパチンコ店の敷地内で11日午前10時5分過ぎ、男性警察官(36)に体当たりする暴行を加えました。警察はパチンコ店から「以前に自転車を盗んだ男が再来店している」と通報を受け出動。男が職務質問で黙秘を続け、男性警察官から続けて事情を聴かれていたところ、いきなり体当たりをしてきたとしています。 |
(引用:EBC News)
逮捕された男性はもともと自転車の窃盗容疑があったため、職務質問を受けた不安や焦りの気持ちから、冷静な判断ができなくなったものと考えられます。
職務質問された時点で犯罪行為を隠し通すことは難しいので、必要以上に罪を重くしないためにも、無駄な抵抗はしないようにしましょう。
職務質問の拒否は事実上難しい!スムーズに終わらせるための対処法
職務質問はあくまでも任意ですが、拒否したところで簡単には引き下がってもらえません。
そのため、職務質問を受けたときはできるだけ協力的な姿勢をみせることが大切です。
ここでは、職務質問をスムーズに終わらせるためのポイントを解説するので参考にしてみてください。
基本的には素直に応じる
職務質問をスムーズに終わらせたいときは、警察官の要望に対して素直に応じるようにしましょう
職務質問を頑なに拒んでいると、警察官が疑念を強く抱き、執拗に質問されやすくなります。
一方、素直に協力しておけば疑いも晴れるので、職務質問は数分程度で終わるはずです。
なお、職務質問では必要以上に言葉を発する必要はなく、最低限の情報を提供すれば十分です。
急いでいるときは時間がないことを説明する
職務質問を受けた際に急いでいるときは、時間がないことを丁寧に説明しましょう。
まっとうな理由があれば、職務質問が短時間で終わるように配慮してもらえます。
急いでいる理由を伝えずにその場を離れようとすると、警察官に怪しまれて、必要以上に時間がかかってしまうので注意してください。
また、名刺や連絡先を提示して、後日改めて対応することを提案してみるのもひとつの方法です。
不当な対応をとられた場合は弁護士に連絡する
職務質問で警察官から不当な対応を受けた場合は、速やかに弁護士に連絡してください。
実際、執拗な質問や強引な所持品検査、長時間の引き留めなど、不当な対応がおこなわれるケースは少なくありません。
しかし、詰め寄ってくる警察官を目の前にして、冷静に対処することは簡単ではないでしょう。
その際、弁護士に電話で相談すれば、適切な対応方法をアドバイスしてもらえるほか、必要に応じて警察官と直接やり取りしてくれることもあります。
なお、弁護士への連絡を警察官が止めることはできないので、堂々と電話しても問題ありません。
職務質問中のトラブルはグラディアトル法律事務所に相談を!
職務質問の拒否は事実上難しいので、できる限り素直に応じることをおすすめします。
万が一、不当な職務質問を受けた場合や、職務質問中に暴行・脅迫行為に及んでしまい、トラブルになった場合などは、できるだけ早く弁護士に相談してください。
グラディアトル法律事務所は、刑事事件全般を得意とする法律事務所です。
経験豊富な弁護士が24時間365日体制で相談に応じているので、休日・夜間を問わず、困ったときはいつでもご連絡ください。
初回相談は無料で対応していますので、お気軽にどうぞ。