傷害罪で警察が動かないって本当?逮捕された場合の対処法についても解説

傷害罪で警察が動かないって本当?逮捕された場合の対処法についても解説
弁護士 若林翔
2024年06月03日更新

「被害者に怪我をさせて思わず逃げてしまったけど、警察は動かない?」

「いつ逮捕されてしまうのかと気が気じゃない」

「もし逮捕された場合、円満に解決する方法はあるのだろうか」

ネットには「傷害事件に発展しても証拠がなければバレない」という情報が散見していますが、それは誤りです。

令和5年版犯罪白書」によれば、令和4年の傷害の認知件数は19,514件に対し、検挙件数は15,845件検挙率81.1%ですので、警察が動かないという情報には疑問が残ります

では、なぜ警察は動かないという情報が散見しているのでしょうか。

当記事を簡単にまとめますと、

  • ・「傷害罪で警察が動かない」という情報は誤りであるが、事件性や違法性が低かったり、証拠が不十分だと警察は動かないことが多い
  • ・暴行と怪我の因果関係が明白だったり、証拠が揃っている場合、警察が動く可能性は高くなる
  • ・起訴されれば、99.9%で有罪判決を受けることになるので、迅速かつ円滑な示談交渉を進めることが重要
  • ・弁護士に相談することで、適切な法律知識とサポートが得られ、示談交渉が円滑に進む

このようなことが分かります。詳細は、以下で深掘りしていきます。

傷害罪で警察が動かないと言われる理由

傷害罪で警察が動かないと言われる理由

冒頭でお伝えした通り、傷害事件の検挙率を鑑みれば、「傷害罪で警察が動かない」という情報は誤りであることが分かります。

では、なぜそのような噂が流れているのでしょうか。

それには、以下の理由が考えられます。

事件性・違法性が低い

傷害罪において、警察には「民事不介入の原則」というルールが存在し、事件性や違法性が低いと判断されれば、警察は動かない(=介入しない)とされています。

例えば、

  • ・たまたま通行人とぶつかって、その拍子に転んで傷を負った
  • ・友人と野球をしていた際に、ボールが当たった衝撃で怪我をした
  • ・祭りに行った際に、花火の爆音で脳貧血を起こした
  • ・本人の「怪我をした」という証言のみで加害者が誰か分からない
  • ・「実行」行為と傷害結果に因果関係が認められない(※)

上記のようなケースは、故意があると認められないので、傷害事件として警察に動いてもらうことは難しいです。

傷害事件における事件性・悪質性とは、怪我をしたという事実だけでは不十分で、

  • ・ 故意が認められること
  • ・「暴行」行為に因果関係が認められること

といった点が、成立要件に含まれることは覚えておきましょう。

※【「実行」行為と傷害結果の因果関係とは?】

少し難しい言い回しになるため、具体例な例を挙げて解説します。

【因果関係が認められるケース】

加害者Aが被害者Bの胸倉を掴んで押し倒した。

被害者Bは受け身を取ろうと、咄嗟に地面に手を付けたが、手首が変な方向に曲がり骨折してしまった。

上記のケースでは、加害者Aが押し倒した行為で被害者Bが怪我を負ったことが明白なので、因果関係が認められる(=傷害罪が成立する)と言えます。

【因果関係が認められないケース】

AとBはお互いに酔っており、たまたま肩と肩がぶつかって転倒した。

AはBを殴ろうとしたが、連れが止めたこともあり、事なきを得た。

お互いその場を離れたが、その数メートル先でBは再度転んでしまい、その拍子に手首を骨折してしまった。

上記のケースにおいて、お互いぶつかってAはBを殴りかけたものの、結果、行為には至っていません。Bが骨折をしたのは、自身の転倒による結果なので、因果関係は認められない(=傷害罪は成立しない)ということになります。

証拠が不十分

傷害事件において、証拠は非常に重要な役割を持っており、証拠が不十分だと警察は動かないことが多いです。前述でも解説したように、警察には「民事不介入の原則」というルールがあるため、単に「怪我をした」という言葉だけでは、事実確認が難しく、捜査にも消極的になりがちです。

ただ、逆に言えば、証拠が十分に揃っている場合は警察も動くということに他なりません。

また、被害者が全治○ヵ月というレベルの重症で、被害届や診断書も提出しているケースだと、証拠の有無に関係なく、捜査に積極的になるケースもあります。

さらに、傷害行為の現行犯だった場合は、そのまま逮捕されてしまいますので、証拠だけが状況を左右するわけではない、ということを覚えておきましょう。

被害届が受理されていない

傷害の行為を受けた被害者が、加害者を「許せない」「罰したい」という理由から、警察に被害届を提出することがあります。

犯罪捜査規範において、「警察官は、犯罪による被害の届出をする者があったときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない(61条1項)」とありますので、被害届を受けた警察は、程度の有無に問わず受理しなければならない、とされています。

とはいえ、「受理=捜査が開始する」ということではありません。

警察も人員や予算に限りがありますので、被害届の全てを捜査するわけにはいかず、「被害届の内容が薄い」「程度の軽い怪我」といった場合には、被害届を出さないように誘導する場合もあります。

それ以前に、被害者が当時の記憶が曖昧で、被害届を出していないというケースもありますので、そういった場合は警察も動きようがないというのが正しいでしょう。

 

傷害罪で警察が動きやすいケース

傷害罪で警察が動きやすいケース

傷害罪で警察が動かないケースについて解説してきましたが、逆に警察が動きやすいケースについては、以下の通りです。

暴行と怪我の因果関係が認められる

暴行の「実行」行為と怪我の因果関係が認められる場合は、傷害罪が成立し、警察が捜査に積極的な姿勢を見せます。

具体的には、

・殴った箇所に打撲傷を負った

・ナイフなどの凶器で切り傷・刺し傷を負った

・木刀などの鈍器で殴打し骨折させた

・睡眠薬を用いて意識障害を負わせた

・拡声器を相手の耳元で使用し、鼓膜を破った

・小麦粉を相手に振りかけて、呼吸障害に陥らせた

・熱湯に突き落とし、火傷を負わせた etc…

このようなケースは、因果関係が明白であるため、傷害罪が成立する可能性は十分にあります。

傷害罪における暴行の「実行」行為は、殴る・蹴るといった物理的な行為だけでなく、光や音・熱によるエネルギー作用にも適用されます。

また、暴行の「実行」行為の結果、全治数ヶ月を要する重症に至った場合は、悪質性があると判断され、刑が重くなる可能性も高まります。

【傷害行為の“結果”によって刑罰が変わる?】

傷害罪は、「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められていますが、傷害行為の結果死なせてしまった場合は、傷害致死罪となり「3年以上(20年以下)の有期懲役」とさらに重い罪になってしまいます。また、殺意を持って死なせてしまった場合は、さらに重い殺人罪(死刑または無期、もしくは5年以上の懲役)が科せられるので、意思や結果によっても刑罰が変化する点は覚えておきましょう。

証拠が揃っている

傷害罪において、証拠の有無は非常に重要な要素で、証拠が揃っている場合は、警察が動く可能性は非常に高くなります。

具体的には、

・暴行の様子を捉えた防犯カメラやスマホ録画データ

・目撃者(第三者)の証言

・暴行の痕跡がある衣服

・診断書や負傷状況の写真

・加害者が身に付けていたもの(身分証や指紋が付着したものなど)

・加害者の逃走経路を記したもの(電車やバス、タクシーの利用履歴など)

といったものが証拠になります。

ですので、例えその場は逃げおおせたとしても、現場に残った証拠物などから、後日、警察から呼び出しの連絡が来ることも十分に考えられるということです。

 

被害届・告訴状が受理されている

被害届を受理しただけでは警察に捜査義務はありませんが、告訴状を受理した場合は、警察には必ず捜査をする義務が生じます(犯罪捜査規範63条)

告訴状を受理するレベルとなると、物的証拠や状況証拠が充分に揃っていることが多く、逮捕や起訴といった可能性が高くなるでしょう。

その場合は、後述する被害者との示談交渉が明暗を分けますので、逮捕されてしまう前に弁護士に相談することをおすすめします。

 

傷害罪で警察がまだ動いてなくても迅速な示談が重要

傷害罪で警察がまだ動いてなくても迅速な示談が重要

傷害事件を起こしてしまった場合は、被害者と迅速に示談を進めることが重要です。

また、「現場から逃げてしまったけど、証拠がないから大丈夫だろう」と楽観視するのは非常に危険で、単に自分が気付いていないだけで、警察が水面下で動いている可能性は十分に考えられます。

むしろ、まだ警察から連絡が来ていないのだとすれば、その時間こそ、被害者と示談を進める絶好の機会であると理解すべきです。

そのため、警察に逮捕されてしまった場合、まだ警察が動いていない場合でも、被害者と迅速な示談を進めるようにしましょう。

被害者と示談を進める重要性は、以下の通りです。

早期釈放が望める

一般的に、警察に逮捕された場合は、最大で20日間の勾留を受けることになります。

特に逮捕直後は、家族や会社にも連絡を取ることができないので、周囲の人に迷惑をかけることになるだけでなく、無断欠勤による会社の解雇、なんてことにもなりかねません。

被害者と示談を成立させることができれば、早期釈放に繋がり、社会的信用を維持することにも繋がりますが、前述の通り、家族や会社だけでなく被害者とも面会することはできません。

仮に被害者との面会許可が降りたとしても、被害者側が「許せない」「会いたくない」という意思表示を見せれば、示談はおろか連絡を取ることすら困難です。

その場合には、弁護士のサポートが重要になります。弁護士が間に入ることで、被害者も安心して示談交渉に応じてくれるようになり、早期釈放にも繋がります。

不起訴処分で前科を回避できる

被害者が加害者の罰を強く望んでいる場合、示談が上手くいかず起訴されてしまう可能性が高まります。起訴されれば、99.9%で有罪判決を受けることになりますので、罰金刑や懲役刑を受けることになり、前科が付いてしまいます。

「前科といっても言わなきゃバレないんじゃ」と思うかもしれませんが、当事者がネットやSNSで拡散する場合もありますし、そのままネット記事にでもなれば、その情報は半永久的に残り続けます。

その情報がもとで、会社を解雇されたり、再就職が難しくなったり、家族や友人が離れる可能性もありますので、不起訴処分を獲得することが重要になるわけです。

不起訴処分を獲得する方法として、被害者との示談成立に勝るものはありません。

ただ、自力での交渉は困難を極める上、そもそも連絡先を知らなければ、示談しようもありませんので、そういった理由からも、弁護士は非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。

 

傷害罪の示談は弁護士へ依頼すべき

傷害罪の示談は弁護士へ依頼すべき

前述の通り、被害者との自力交渉は難航する上、しつこい交渉が続けば、さらに怒りを買ってしまい、不起訴処分を獲得することが困難になってしまいます。

弊所においても、自力交渉が難航し、ご相談やご依頼をいただくことが多いです。もちろん、そこから被害者との示談交渉を設け、不起訴処分を獲得したケースはありますが、勾留期間が延びてしまったり、示談金が増えてしまったりと、不利な条件を呑まざるを得ない状況になってしまうこともあります。

そのため、傷害事件を起こしてしまった場合は、自力交渉は避けて、最初から弁護士に示談交渉を依頼いただくことをおすすめしております。

迅速且つ円滑な示談交渉を進めることができれば、それだけ不起訴処分の可能性が高まるだけでなく、早期釈放で社会的信用の維持にも繋がります。

示談において、迅速と円滑の両立が可能なのは、傷害罪の実績豊富な弁護士だけですので、傷害罪の示談でお困りの場合は、ぜひ弊所までご連絡ください。

傷害罪の示談・示談金についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

傷害罪の示談金の相場は?示談金を決める要素や示談の流れを解説

 

傷害罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

今回は、傷害罪で警察が動かない理由と、逮捕された場合の対処法について解説しました。

要点をまとめますと、

・傷害罪で警察が動かないという情報は誤りである。令和4年度における傷害事件の検挙率が約81.1%であることから「警察が動かない」という情報に疑問が残る。

・傷害罪で警察が動かない理由には、「事件性や違法性が低い場合」「証拠が不十分な場合」「被害届が受理されていない場合」が挙げられる。

・警察が動きやすいケースには、「暴行と怪我の因果関係が認められる場合」「証拠が揃っている場合」「被害届・告訴状が受理されている場合」がある。

・傷害罪の示談は迅速に進めるべきであり、被害者との示談が早期釈放や前科回避に繋がる。

上記の理由からも、「証拠がない」からと楽観視するのは危険で、日常生活においても、常に逮捕の恐怖に怯えることになります。

もし逮捕されてしまった場合は、速やかに被害者との示談を進めることが重要で、逮捕されてない場合も、同様に示談成立を目指すことが、早期決着・安定した生活の確保に繋がります。

グラディアトル法律事務所は、24時間365日相談受付をしており、「LINE相談可」「全国対応可能」ですので、傷害罪でお困りの場合は、ぜひ弊所までご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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