「役所の窓口で暴言を吐いてしまった…公務執行妨害罪の罪に問われてしまうのか」
「暴言で公務執行妨害罪が成立するのはどのようなケースなのか」
公務執行妨害罪は、職務執行中の公務員に暴行・脅迫を加えた場合に成立する犯罪です。
暴言を吐く行為が「脅迫」にあたるときは、公務執行妨害罪の成立要件を満たし、「3年以下の懲役または禁錮(拘禁刑)あるいは50万円以下の罰金」に処されるおそれがあります。
実際、警察官や役所の職員に暴言を吐いてトラブルになり、公務執行妨害罪で逮捕されてしまうのではないかと不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、暴言で公務執行妨害罪が成立する可能性について解説します。
暴言が公務執行妨害罪になるケース、ならないケースを実際の逮捕事例も交えてわかりやすくまとめているので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
※刑法改正により、2025年6月から懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されています。
【拘禁刑とは?】 犯罪者を刑事施設に収容し、改善更生に必要な作業を命じたり、指導したりする刑罰のこと。刑務作業は義務ではなく、受刑者の特性に応じた支援プログラムが提供される。 |
目次
公務執行妨害罪は暴言でも成立する可能性がある
公務執行妨害罪は、暴言でも成立する可能性があります。
具体的にどのようなケースで公務執行妨害罪が成立し得るのか、詳しくみていきましょう。
暴言が「脅迫」にあたるかどうかが判断基準となる
暴言が公務執行妨害罪に該当するかどうかは、その内容が「脅迫」にあたるかどうかが判断基準となります。
公務執行妨害罪における「脅迫」とは「人を畏怖させる害悪の告知」のことです。
たとえば、「殺すぞ」「夜道に気をつけろ」など、耳にして恐怖を感じるような暴言は脅迫に該当し、公務執行妨害罪が成立し得ます。
一方で、単に不快な言葉や不満を投げかける程度では、公務執行妨害罪は成立しません。
なお、脅迫罪における「脅迫」は「生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加える旨の告知」と、害悪の内容が限定されています。
同じ「脅迫」を対象にした犯罪ではあるものの、公務執行妨害罪における「脅迫」のほうが、より広い意味で定義されている点に注意してください。
公務執行妨害罪になり得る暴言・ならない暴言の具体例
公務執行妨害罪になり得る暴言と、ならない暴言の具体例は以下のとおりです。
公務執行妨害罪になり得る暴言 | 公務執行妨害罪にならない暴言 |
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・殺すぞ ・痛い目に遭わせるぞ ・夜道に気をつけろ ・お前の住所は知っている ・ただじゃおかない ・家に火をつけてやる ・個人情報をネットにさらしてやる | ・早くしろ ・ちゃんと仕事をしろ ・上司を出せ ・ふざけるな ・何をやっているんだ ・税金泥棒 ・バカじゃないのか |
上述のとおり、暴言による公務執行妨害罪の成立可否は、「脅迫」にあたるかどうかがポイントになります。
そのときの状況次第ですが、身体的な危害を加える旨の暴言は相手を畏怖させるに足りることが多く、「脅迫」にあたる可能性が高いです。
公務執行妨害罪が成立する条件とは?
公務執行妨害罪の構成要件は、主に以下の3点が挙げられます。
一つ目の要件は「公務員を対象にしていること」です。
公務員には、警察官・自治体職員・公立学校教員・消防士など幅広い職種が該当します。
公共性の高い業務や公務のサポート業務に従事する民間企業の職員なども、「みなし公務員」として公務執行妨害罪の対象になることがあります。
二つ目の要件は「対象の公務員が職務執行中であること」です。
職務質問する警察官や、窓口対応に従事する役所の職員などが該当します。
一方で、休憩中の公務員に暴言を吐いた場合などは、職務執行中とはいえないため、公務執行妨害罪の適用対象外です。
三つ目の要件は「暴行・脅迫」を加えていることです。
つまり、暴言が「脅迫」にあたる場合は、構成要件のひとつを満たすことになります。
なお、公務執行妨害罪は、暴行罪や脅迫罪などの罪と同時に成立する「観念的競合」が起きやすい犯罪です。
観念的競合が生じた場合は、最も重い罪の法定刑で処罰されます。
暴言による公務執行妨害罪で逮捕された事例
ここでは、暴言による公務執行妨害罪で逮捕された事例を3つ紹介します。
事案概要 |
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公務執行妨害の疑いで再逮捕されたのは宮城県石巻市の無職、〇〇容疑者(54)です。警察によりますと、〇〇容疑者は6月に強盗致傷の疑いで逮捕され3日の取り調べで30代男性警察官に対し「お前、シャバに出たらぶち殺してやっからな」などと脅迫し職務の執行を妨害した疑いが持たれています。警察の調べに対し、〇〇容疑者は黙秘しているということです。(引用:knbニュース) |
公務執行妨害の疑いで指定暴力団道仁会系組員の男3人が6日逮捕されました。今年11月9日午前2時過ぎ、佐賀市大財の路上で「喧嘩があっています」と通行人から110番通報がありました。警察官12人が駆けつけたところ、スナックの店員の30代男性と20代の男性客3人が支払いに関してもめていました。警察が男性らに事情聴取を行っていたところ、複数の男が現場に集まってきて、警察官に対し「うちのシマやぞ、警察は帰れ」「殺すぞ」などと大声で脅迫し、警察官の腕をつかんだり、体当たりしたりするなどの暴行を加えた疑いが持たれています。(引用:RKBオンライン) |
区役所の職員に暴言を吐き、暴行したとして、愛知県警中村署は1日、公務執行妨害の疑いで名古屋市中村区鈍池町、無職、〇〇容疑者(75)を現行犯逮捕した。中村区役所1階で職員用の執務室に入ろうとし、男性職員(31)に制止されたことに激高して「てめえらを殺すなんて簡単だ」と暴言を吐き、職員の手を振り払った疑い。(引用:産経新聞) |
暴言による公務執行妨害罪での逮捕事例は、上記のほかにも数多く存在します。
身体的な危害を加えていないからといって安心するのではなく、逮捕や起訴の回避に向けて、一刻も早く行動を起こすことが重要です。
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暴言による公務執行妨害に関してよくある質問
最後に、暴言による公務執行妨害に関してよくある質問を紹介します。
実際に公務が妨害されていなければ公務執行妨害罪にならない?
実際に公務が妨害されていなくても、公務執行妨害罪が成立することはあります。
公務執行妨害罪は、「妨害した」という結果を要件にしていません。
公務の執行を妨げ得る程度の暴行・脅迫がおこなわれた時点で、その後の結果に関わらず、公務執行妨害罪の対象になり得ます。
クレームや苦情も公務執行妨害罪になり得る?
一般的なクレームや苦情の範囲であれば、公務執行妨害罪が成立することはないでしょう。
たとえば、「早くしてくれよ」「ちゃんと仕事しろよ」など、単に要望や不満を伝えているだけで、罪に問われることはありません。
しかし、クレームや苦情を伝える際に「痛い目に遭わせるぞ!」などの脅迫的な言葉を発したりした場合は、公務執行妨害罪として検挙される可能性があります。
まとめ
本記事のポイントは以下のとおりです。
- ◆ 公務員への暴言が「脅迫」にあたる場合は公務執行妨害罪が成立する
- ◆ 公務員への暴言で逮捕されている事例も多い
- ◆ 暴行・脅迫がおこなわれた時点で、結果に関わらず、公務執行妨害罪は成立する
- ◆ 一般的なクレームや苦情に公務執行妨害罪は適用されない
一時的な感情の高まりで、ついつい暴言を吐いてしまうことは誰にでも起こり得ます。
しかし、行き過ぎた暴言は「脅迫」にあたり、公務執行妨害罪の罪に問われる可能性があります。
犯行の態様次第では、初犯であっても起訴され、「3年以下の懲役または禁錮(拘禁刑)もしくは50万円以下の罰金」の刑罰に処されるおそれがあるため、検挙された場合は一刻も早く弁護士に相談してください。
グラディアトル法律事務所は公務執行妨害事件をはじめ、刑事事件全般に注力している法律事務所です。
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