「過失運転致死傷罪の量刑はどのくらい?」
「過失運転致死傷罪で執行猶予が付く可能性はある?」
「過失運転致死傷罪の量刑を軽くするためのポイントとは?」
交通事故を起こしてしまい、人を死傷させた場合、「過失運転致死傷罪」に問われる可能性があります。事故が不注意によるものであっても、刑事罰が科されることがあり、その量刑は事故の態様や結果によって大きく異なります。
また、事故後の行動によっては過失運転致死傷罪の量刑を軽くできる可能性もありますので、適切な対応を取れるよう基本的な知識を身につけておきましょう。
本記事では、
・過失運転致死傷罪における量刑の相場や執行猶予の可能性 ・過失運転致死傷罪の量刑判断に影響する事情 ・過失運転致死傷罪の量刑を軽くするためのポイント |
などについて詳しく解説します。
事故後の対応に不安を抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
過失運転致死傷罪で起訴されると罰金or禁錮(拘禁刑)?量刑の一般的な考え方

交通事故を起こしてしまい、相手をケガさせたり命を奪ってしまった場合、「過失運転致死傷罪」に問われる可能性があります。過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役・禁錮(拘禁刑)または100万円以下の罰金と定められていますが、実際の量刑は傷害の場合(過失運転致傷罪)と死亡の場合(過失運転致死罪)の場合とで異なります。
以下では、過失運転致死傷罪の量刑の一般的な考え方を説明します。
過失運転致傷罪の場合|罰金刑が一般的
被害者がケガをした場合、過失運転致傷罪に問われます。この場合、よほど悪質な事故態様でない限り、初犯であれば罰金刑となるケースが多数を占めます。
たとえば、軽微な衝突事故で軽傷を負わせてしまった場合、刑罰としては30万円〜50万円程度の罰金が中心です。
ただし、同乗者の制止を振り切って無謀運転をしたようなケースや過去に複数回交通違反がある場合には、罰金刑では済まず、懲役・禁錮刑(拘禁刑)が科されるおそれもあります。
過失運転致死罪の場合|禁錮刑(拘禁刑)が一般的
被害者が死亡した場合、過失運転致死罪に問われます。死亡という重い結果が生じていますので、罰金刑では済まず、懲役・禁錮刑(拘禁刑)が選択されることが多いです。
また、悪質なケースでは実刑判決となることもあり、事故の態様や被告人の過去の交通歴、反省の有無などが重視されます。
過失運転致死傷罪の量刑相場

量刑の実態は、法定刑だけでは判断できません。ここでは、「令和6年版犯罪白書」の統計データに基づき、過失運転致死傷罪の量刑相場を具体的に見ていきましょう。
過失運転致死傷罪の罰金刑の量刑相場
令和6年版犯罪白書によると過失運転致死傷罪の罰金刑事例(死亡・傷害を含む)では、実際の罰金額は、10~100万円の範囲に集中しています。特に、罰金額が30〜50万円の事案が全体の37.7%を占めており、これが過失運転致死傷罪の罰金刑の相場といえるでしょう。
なお、過失運転致死傷罪で略式手続きになった事件は3万5773件で、公判請求になった事件は3372件ですので、9割以上の事件が略式手続きによる罰金刑の対象になっています。
過失運転致死傷罪の禁錮刑(拘禁刑)の量刑相場
令和6年版犯罪白書によると過失運転致傷罪および過失運転致死罪の量刑相場は、以下のようになっています。
・過失運転致傷罪……懲役・禁錮(拘禁刑)6月~2年 ・過失運転致死罪……懲役・禁錮(拘禁刑)1~3年 |
なお、3章で詳しく説明しますが、過失運転致死傷罪の事案では執行猶予が付く可能性が高いため、初犯であれば実刑を回避できるケースが多いでしょう。
過失運転致死傷罪で起訴された場合、執行猶予が付くかどうかは、量刑判断の中でも非常に重要なポイントです。犯罪白書によれば、過失運転致傷罪の事案では約98%、過失運転致死罪の事案では約94%の事件で執行猶予が付いていますので、起訴されて有罪になったとしても執行猶予が付く可能性が高いといえます。
なお、執行猶予が付くかどうかは、以下のような要素が考慮されます。
・初犯か否か ・反省の態度 ・被害者や遺族との示談成立 ・社会復帰の見通し ・危険運転などの重大な過失の有無 |
たとえ、死亡事故であっても、示談が成立し、誠実な謝罪や再発防止策を講じている場合には、執行猶予が認められる可能性は十分にあります。
過失運転致死傷罪の量刑に影響を与える5つの事情

過失運転致死傷罪の量刑は、さまざまな事情を考慮して決められます。以下では、過失運転致死傷罪の量刑に影響を与える主な5つについて説明します。
被害結果の程度(被害者の怪我の程度または死亡)
過失運転致死傷罪の量刑でもっとも重視されるのは被害者の被害状況です。
軽傷事故では罰金刑で済むことが多い一方、重傷事故では高額な罰金や禁錮刑(拘禁刑)が科される可能性が高まります。また、死亡事故となれば、原則として禁錮刑(拘禁刑)が選択されることが多く、執行猶予を獲得できるかどうかが重要なポイントになります。
過失の大小(事故態様、過失の内容・程度)
過失の程度は、量刑に直結する要素です。信号無視や飲酒運転、著しい速度超過など危険性が高い運転をしていた場合は、単純な不注意と比べて重い刑が科されやすくなります。
逆に、やむを得ない状況やわずかな過失で発生した事故は、比較的軽く刑罰で済む可能性が高いです。
被害者との示談
被害者や遺族と示談が成立しているかどうかは非常に重要な要素です。損害賠償や誠意ある謝罪を通じて被害感情が和らいでいれば、執行猶予が付く可能性が高まります。
交通事故の事案では、任意保険に加入しているケースが多いため、被害者に対する賠償金は保険により支払われます。そのため、任意保険に加入していることを示せれば、有利な事情として考慮してもらうことができます。
前科前歴の有無
同種前科がある場合や、過去に重大な交通違反を繰り返している場合は、再犯リスクが高いと判断され、刑が重くなります。初犯であれば執行猶予が付くことも多いですが、同種前科がある人の場合は実刑の可能性もあります。
本人の反省
被告人の態度も量刑に強い影響を与えます。真摯な謝罪や免許返納、再発防止に向けた努力(アルコール依存症治療など)が認められれば、裁判所は更生可能性を考慮して刑を軽くする傾向があります。
過失運転致死傷罪の量刑を軽くするためのポイント

過失運転致死傷罪で起訴された場合でも、適切な対応を取ることで量刑が軽くなる可能性があります。執行猶予がつくか否か、または罰金刑で済むかどうかは、事故後の行動や弁護活動によって大きく左右されます。以下では、量刑を軽減するために重要な3つのポイントを紹介します。
刑事事件に強い弁護士に依頼する
量刑を少しでも軽くしたいと考えるなら、早い段階で刑事事件に精通した弁護士へ相談することが重要です。
過失運転致死傷事件は、証拠収集、検察との交渉、被害者対応、公判弁護など、多岐にわたる対応が必要になります。弁護士が早期に介入すれば、身体拘束(逮捕・勾留)を回避できたり、検察官との交渉によって略式命令(罰金)で終わるよう働きかけることも可能です。
また、起訴された場合でも、執行猶予付き判決を目指す弁護活動や被害者側との示談交渉を適切に進めることで、実刑回避の可能性を高めることができます。自分だけで対応するのは難しいため、信頼できる弁護士に任せることが、もっとも効果的な方法です。
被害者に謝罪して示談を行う
被害者や遺族に対して謝罪し、示談を成立させることは、量刑を軽減する大きな要素です。示談が成立すれば、被害者の処罰感情が緩和されるとともに、損害賠償責任を果たしていることが裁判所にも評価されますので、不起訴処分や罰金刑で済む可能性が高くなります。
ただし、謝罪の仕方やタイミングを誤ると逆効果になることもあります。そのため、弁護士を通じて冷静かつ誠意ある対応を進めるのが安全です。
再犯防止に向けた取り組みを行う
裁判所は、被告人が今後同じ過ちを繰り返さないかどうかも重要な判断材料としています。そのため、再発防止に向けた具体的な取り組みを示すことで、量刑を軽減することが可能です。
たとえば、高齢による判断力の低下や運転技術の不安が原因であれば、自主的に運転免許を返納することが望まれます。また、飲酒運転が事故の要因であった場合には、アルコール依存症治療や専門的なカウンセリングを受けるなどの対応が必要です。
事故車両の売却や運転からの引退を表明することも、裁判所に誠意ある姿勢として受け止められるでしょう。
過失運転致死傷罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

過失運転致死傷罪を犯してしまいお困りの方は、ぜひグラディアトル法律事務所にご相談ください。当事務所には刑事事件の経験豊富な弁護士が多数在籍しており、交通事故に関する弁護活動にも精通しています。逮捕後の迅速な対応から、被害者との示談交渉、公判での主張立証まで、一貫したサポートを提供します。
特に、過失運転致死傷事件は、早期対応が極めて重要です。示談を成立させるタイミングや捜査機関との対応ひとつで、その後の処分や量刑が大きく変わってしまいます。当事務所では、ご依頼者の不安を少しでも早く解消できるよう、24時間365日相談を受け付けており、最短で即日対応が可能です。
また、当事務所ではご家族からのご相談にも対応しており、本人が身柄拘束中の場合でも適切に情報を収集・共有しながら手続きを進めることが可能です。被害者への謝罪や賠償対応のフォローも、弁護士が丁寧にサポートいたします。
一人で悩まず、まずは一度、私たちにご相談ください。あなたとご家族にとって最善の結果を目指し、全力で弁護活動に取り組みます。
まとめ
過失運転致死傷罪は、たとえ不注意による事故であっても、刑罰の対象となる重大な犯罪です。被害者のケガや死亡という結果はもちろん、事故の態様や加害者の反省の姿勢、示談の有無など、多くの事情が量刑に影響します。
特に、死亡事故では禁錮刑(拘禁刑)が科される可能性が高くなりますが、誠意ある謝罪や示談の成立、再発防止への取り組みが認められれば、執行猶予付きの判決が出る可能性もあります。
事故を起こした後に何をするかによって、今後の結果は大きく変わります。一人で悩まず、刑事事件に強い弁護士に相談し、できる限りの対応をしていくことが大切です。過失運転致死傷罪の弁護は、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください。

弁護士 若林翔
弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。
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