過失運転致死傷で免許はどうなる?違反点数と取消・停止の基準を解説

過失運転致死傷で免許はどうなる?違反点数と取消・停止の基準を解説
弁護士 若林翔
2025年08月29日更新

「交通事故で過失運転致死傷罪で処罰された場合、運転免許はどうなる?」

「免許停止や免許取り消しになるのは違反点数が何点になったとき?」

「交通事故の違反点数についての基本事項を知りたい」

交通事故によって人を死傷させてしまうと、「過失運転致死傷罪」に問われるおそれがあります。そして、この罪に問われた場合、刑事責任だけでなく、免許の停止や取り消しといった行政処分を受ける可能性も出てきます。

こうした行政処分は「違反点数」の加算によって判断されますが、点数の仕組みは意外と複雑です。「何点加算されるのか?」「過去の点数はどう扱われるのか?」「一度免許を失ったらどうなるのか?」といった疑問を抱える方も多いのではないでしょうか。ご自身が事故の加害者になったときに備えて、違反点数に関する基本的知識を身につけておきましょう。

本記事では、

・過失運転致死傷罪における違反点数の仕組み
・免許停止・取消しの基準
・行政処分が決定するまでの流れ

などについて詳しく解説します。

交通事故を起こしてしまった場合には、今後の生活にも大きく影響するため、正しい知識と早めの対応が欠かせません。この記事を通じて、過失運転致死傷罪に関する正確な情報を把握し、適切な対処法を考えていきましょう。

過失運転致死傷罪を犯したときに加算される違反点数

交通事故における行政処分は、違反点数によって決まります。過失運転致死傷罪を犯してしまった場合も同様に、事故の内容に応じて点数が加算され、一定の基準に達すると免許停止や免許取り消しなどの処分が下されます。違反点数は、以下のように「基礎点数」と「付加点数」の合計で計算されます。

基礎点数

基礎点数とは、違反行為そのものに対して加算される点数です。基礎点数は、「一般違反行為」と「特定違反行為」に区別されており、違反行為の内容に応じた点数が定められています。

【一般違反行為の基礎点数】

一般違反行為の種別点数
酒気帯び運転(0.25mg以上)25
酒気帯び運転(0.15~0.24mg)13
過労運転等25
無免許運転25
無車検・無保険運行6
横断歩行者等妨害等2
信号無視2
通行禁止違反2
安全運転義務違反2
速度違反50km以上12
一般道30km以上50km未満6
高速道等40km以上50km未満6
30km以上40km未満3
25km以上30km未満3
20km以上25km未満2
20km未満1
座席ベルト装着義務違反1

【特定違反行為の基礎点数】

特定違反行為の種別点数
運転殺傷等運転殺人等62
運転障害等(治療期間
3か月以上又は後遺障害)
55
運転傷害等
(治療期間30日以上)
51
運転傷害等
(治療期間15日以上 )
48
運転傷害等(治療期間
15日未満又は建造物破損 )
45
危険運転致死傷危険運転致死62
危険運転致死傷(治療期間
3か月以上又は後遺障害)
55
危険運転致死傷
(治療期間30日以上)
51
危険運転致死傷
(治療期間15日以上 )
48
危険運転致死傷
(治療期間15日未満 )
45
酒酔い運転35
麻薬等運転35
救護義務違反(いわゆる轢逃げ)35

たとえば、人身事故を起こした場合、通常は「安全運転義務違反」として2点が加算されます。複数の違反行為を犯したとしてもすべてが加算されるわけではなく、もっとも高い点数が加算されます。

付加点数

付加点数とは、人身事故を起こした場合に基礎点数に加えて加算される点数をいいます。事故の種類や被害の程度、過失の程度に応じて以下のように点数が定められています。

 もっぱら運転者の不注意による事故被害者にも非がある事故
死亡事故20点13点
傷害事故全治3月以上または後遺障害が存するもの13点9点
全治30日以上3月未満のもの9点6点
全治15日以上30日未満のもの6点4点
全治15日未満であるもの又は建造物の損壊に係るもの3点2点

たとえば、横断歩道を青信号で渡る歩行者をはねて死亡させたような事案では、付加点数として20点が加算されます。

違反点数の具体例|過失運転致死傷のケーススタディ

違反点数の計算は、「基礎点数」+「付加点数」の合計で行われます。この合計点数が6点以上となると免許停止(30日以上)、15点以上で免許取消などの行政処分が下されます。

以下では、実際の事故を想定した例を挙げて、どのように点数が加算されるかを見てみましょう。

【例1】安全運転義務違反+死亡事故(もっぱら運転者の不注意)

状況:赤信号を見落として交差点に進入し、横断中の歩行者と衝突。被害者は死亡。

基礎点数:安全運転義務違反……2点
付加点数:死亡事故(運転者に全過失)……20点
合計:22点

⇒免許取消1年(欠格期間1年)

【例2】過失運転致傷罪(治療30日)+速度超過(30km以上)

状況:一般道で制限速度を35km超過して走行中、前方不注意で自転車と接触。被害者は全治30日。

基礎点数:速度超過……6点
付加点数:全治30日以上3月未満の傷害事故(運転者に全過失)……9点
合計:15点

⇒免許取消1年(欠格期間1年)

【例3】信号無視による軽傷事故(治療14日)

状況:黄色信号で交差点に進入、右折車と接触。相手ドライバーは全治14日。

基礎点数:信号無視……2点
付加点数:傷害事故(全治15日未満)……3点
合計:5点

⇒行政処分なし(前歴なしの場合)
※ただし、前歴がある場合は免許停止の対象となることがあります。

【例4】無免許運転+死亡事故(被害者にも過失あり)

状況:無免許で運転中、夜間の横断中歩行者と接触。歩行者は信号無視で横断しており過失あり。

基礎点数:無免許運転……25点
付加点数:死亡事故(被害者にも過失)……13点
合計:38点

⇒免許取消3年(欠格期間3年)

違反点数の累積で行政処分の対象に!過失運転致死傷による免許停止・取り消しの基準

過失運転致死傷罪で加算される点数が一定の基準を超えると、運転免許に対する行政処分(停止・取り消し)が行われます。以下では、その基準について詳しく説明します。

免許停止になる点数

免許停止になる点数と免停期間は、過去3年間の「違反点数」の累計と「前歴(過去に受けた免許停止・免許取り消し)」の回数によって決まります。

免許停止の基準となる過去3年間の前歴の回数に応じた点数と免許停止期間は、以下のとおりです。

免許停止
過去3年間の前歴免許停止期間
30日60日90日120日150日180日
なし6~8点9~11点12~14点
1回4~5点6~7点8~9点
2回2点3点4点
3回2点3点
4回2点3点

人身事故を起こして被害者に怪我をさせた場合、そのけがの程度が「全治15日未満」の軽微なものであれば免許停止を免れることができますが、それを上回る怪我であった場合は、すべて免許停止の対象となります。

免許取り消しになる点数

免許取り消しになる点数と欠格期間(免許の再取得が禁止される期間)は、過去3年間の「違反点数」の累計と「前歴(過去に受けた免許停止・免許取り消し)」の回数によって決まります。

免許取り消し基準となる過去3年間の前歴の回数に応じた点数と欠格期間は、以下のとおりです。

免許取消
過去3年間の前歴欠格期間
1年2年3年4年5年
なし15~24点25~34点35~39点40~44点45点以上
1回10~19点20~29点30~34点35~39点40点以上
2回5~14点15~24点25~29点30~34点35点以上
3回以上4~9点10~19点20~24点25~29点30点以上

死亡事故を起こしてしまった場合の違反点数は、基礎点数2点プラス付加点数(20点or13点)ですので、前歴がなくても一発で免許取り消しの対象となります。

過去の累積点数がリセットされる5つのケース

過去の累積点数がリセットされる5つのケース

交通違反の点数は一生残るわけではなく、一定の条件を満たすことでリセットされることがあります。以下にその5つの代表的なケースを紹介します。

1年間無事故・無違反の場合

もっとも基本的なリセット条件は、違反や事故を起こした日の翌日から1年間、無事故・無違反で過ごすことです。この1年を無事に過ごせば、累積されていた違反点数は自動的に0点となります。

2年間無事故・無違反で軽微な違反をし、その後3か月間無事故・無違反の場合

2年間無事故・無違反だったとしても、うっかり軽微な違反(1点や2点)をしてしまうこともあるでしょう。このような場合でも、違反後3か月間を無事故・無違反で過ごすことで、累積点数がリセットされる仕組みになっています。

安全運転を心がければ、過去の点数を帳消しにできるチャンスがあるというわけです。

免許停止処分を受けた場合

違反点数が一定以上に達すると、免許停止処分を受けることになります。停止処分が満了すれば、点数自体は0点に戻ります。

ただし、処分歴として「前歴1回」が残るため、次回以降の違反に対する行政処分が厳しくなる点に注意が必要です。

免許停止処分満了後、1年以上無事故・無違反の場合

免許停止処分を受けたあと、1年以上無事故・無違反で過ごした場合、「前歴1回」も抹消され、再び前歴0回として扱われます。これにより、行政処分の基準が初回違反時と同じ扱いに戻るため、将来の処分リスクを軽減できます。

違反者講習を受講した場合

違反点数が6点から8点になった場合、本来であれば免許停止の対象になります。しかし、条件を満たせば「違反者講習(特定講習)」という講習を受けることで、免許停止を避けることができます。

受講するかどうかは本人の自由ですが、受講すれば免許停止にはならず、運転を続けることが可能です。

過失運転致死傷罪は違反点数以外にも刑事処分の対象

過失運転致死傷罪は、交通違反としての点数加算だけでなく、刑事罰の対象にもなります。この罪は、自動車運転死傷行為処罰法に基づき、人を死傷させた運転者に対して刑事責任を問うものです。法定刑は、7年以下の懲役・禁錮(拘禁刑)または100万円以下の罰金とされており、過失の程度や被害の内容によって処分が決まります。

たとえば、軽傷事故では略式罰金で済む場合もありますが、死亡事故や重大な過失があるケースでは、正式な刑事裁判で懲役刑となる可能性もあります。なお、被害者と示談が成立しているかどうかや、反省の姿勢、過去の違反歴なども量刑判断に大きく影響します。

違反点数による行政処分とは別に、刑事手続きが並行して進むため、早期に弁護士へ相談し、適切な対応をとることが重要です。

過失運転致死傷の違反点数の累積で行政処分になる流れ

過失運転致死傷の違反点数の累積で行政処分になる流れ

過失運転致死傷罪によって加算された違反点数が一定の基準に達すると免許停止や免許取り消しといった行政処分の対象になります。行政処分が科されるまでには段階的な手続きがあり、以下のような流れで進んでいきます。

事故発生

まずは事故が発生し、警察が現場に出動します。現場では事故の状況確認や関係者の聴取、実況見分などが行われます。救護義務違反や飲酒運転が疑われる場合には、その場での現行犯逮捕となる可能性もあります。

警察による捜査

事故後、警察は当事者に対して取り調べを行い、事故の原因や過失の程度を詳しく捜査します。警察による捜査は、刑事事件としての刑事罰や行政処分としての違反点数を検討するための判断材料となります。

意見の聴取通知書が届く

免許の停止・取り消しの対象となる運転者に対しては、公安委員会から「意見の聴取通知書」が送付されます。これは、行政処分を下す前に本人に弁明の機会を与える手続きです。日時・場所が指定されており、必ず確認しておきましょう。

意見の聴取に出席する

通知書の指示に従い、所定の日時・場所で意見の聴取が実施されます。この場では、事故当時の状況や本人の反省の態度、今後の再発防止策などについて意見を述べることができます。処分の軽減を求めることも可能ですが、重大な事故であるほど処分の変更は難しい傾向にあります。

行政処分の執行

意見の聴取を終えると、後日公安委員会が最終的な行政処分を決定します。免許停止や取消しが確定した場合、所定の期日から効力が発生し、その後は無免許運転となるため注意が必要です。

なお、行政処分と並行して刑事手続きも進行するため、早めに弁護士に相談し、両面からの対策を立てることが重要です。特に、被害者への謝罪や示談交渉が行政・刑事の処分に影響することもあるため、慎重な対応が求められます。

過失運転致死傷の違反点数に関するよくある質問

過失運転致死傷の違反点数に関するよくある質問

過失運転致死傷罪を犯してしまった場合、多くの方が行政処分や違反点数の扱いについて不安や疑問を抱きます。ここでは、よくある質問を3つ取り上げて、わかりやすく説明します。

免許停止・免許取り消しが確定するまでは車を運転しても問題ない?

行政処分が正式に決定・執行されるまでは、免許は有効ですので運転自体は可能です。

ただし、その間に再び事故や違反を起こすと、処分がより重くなるおそれがあるため、慎重な行動が求められます。

被害者と示談が成立すれば違反点数は減る?

示談が成立しても、違反点数には影響しません。

点数は事故の結果と過失内容によって決まるため、個別事情は考慮されません。ただし、示談は刑事処分の軽減には有利に働くことがあります。

過失運転致死傷で加算された点数はいつまで残る

違反点数は、1年間無事故・無違反で過ごせばリセットされます。ただし、前歴がある場合は扱いが異なります。

また、免許停止などの処分を受けると点数は0になりますが、前歴が残る点に注意が必要です。

過失運転致死傷罪を犯してしまったときはグラディアトル法律事務所に相談を

過失運転致死傷罪を犯してしまったときはグラディアトル法律事務所に相談を

過失運転致死傷罪は、違反点数による行政処分だけでなく、刑事処分も伴う重大な事件です。事故の状況や被害の程度によっては、免許の取り消しや実刑判決など、今後の人生に大きな影響を及ぼす結果となる可能性もあります。

そのため、事故後は一刻も早く、専門知識を持つ弁護士に相談することが重要です。特に、被害者との示談交渉、警察や検察への対応、意見の聴取への準備など、個人で対処するには限界があります。早期に適切な対応を取ることで、刑事処分や行政処分の軽減が期待できる場合もあります。

グラディアトル法律事務所では、交通事故や刑事事件に強い弁護士が、加害者側の立場に立ってサポートいたします。豊富な解決実績と迅速な対応で、ご相談者の不安を少しでも和らげるよう尽力いたします。

「今後どうなるのか不安」「被害者との示談をどう進めればよいかわからない」など、どんなお悩みでも構いません。まずはお気軽にご相談ください。

まとめ

過失運転致死傷罪を犯してしまった場合、違反点数が加算されることで免許停止や取り消しといった行政処分が科される可能性があります。特に、死亡事故では、前歴がなくても一発で免許が取り消されるケースもあり、非常に重い処分となります。

また、刑事処分も並行して進むため、示談や捜査対応にも注意が必要です。

今後の生活に大きく関わる問題だからこそ、早めにグラディアトル法律事務所までご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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