「少年審判で審判不開始となるのはどのようなケース?」
「審判不開始と不処分の違いとは?」
「審判不開始を獲得するためのポイントを知りたい」
少年事件が家庭裁判所に送致されると、通常は「少年審判」が開かれ、保護観察や少年院送致などの保護処分が検討されます。しかし、すべての事件が必ずしも審判に進むわけではありません。家庭裁判所が「審判を開く必要がない」と判断した場合には「審判不開始」という決定が下され、少年に対して保護処分は行われず、その時点で事件は終了します。
実際の統計によると、少年審判全体の約半数(48.4%)が審判不開始となっており、決して珍しい判断ではありません。少年事件に直面したご家族にとって、「審判不開始」という結論を得られるかどうかは、少年の将来に大きく影響する重要なポイントですので、判断のポイントなどをしっかりと理解しておくことが大切です。
本記事では、
| ・少年審判における審判不開始の意味と不処分との違い ・審判不開始となる典型的なケース ・審判不開始を目指すために重要なポイント  | 
などをわかりやすく解説します。
お子さんやご家族が不安を抱える中で、正しい知識と適切な対応を取るための参考になれば幸いです。
目次
少年審判における「審判不開始」とは?
少年事件が家庭裁判所に送致され、裁判所が「審判を行う必要がない」と判断した場合には、「審判不開始」という決定が出されることがあります。以下では、審判不開始の意味と不処分との違いについて説明しておきましょう。
審判不開始決定の意味
少年事件は、警察や検察での手続きを経て家庭裁判所に送致されると、原則として審判が開かれます。審判では、少年の非行事実の有無や性格、生活環境などが調査され、必要に応じて保護処分(保護観察、少年院送致など)が決定されます。
しかし、家庭裁判所が「審判を開かなくても十分」と判断した場合には、家庭裁判所送致の時点で審判不開始の決定が下されます。審判不開始となれば、少年に対して保護処分は一切行われず、その時点で事件は終了します。
不処分との違い
審判不開始と混同されやすい制度に「不処分」があります。どちらも「処分を科さない」点では同じですが、判断のタイミングと意味が異なります。
| ・審判不開始家庭裁判所が審判を開く前の段階で、事件を終了させる決定をいいます。 証拠不足や非行事実が認められない場合、または審判に付する必要がないと判断された場合に選択されます。 ・不処分家庭裁判所が実際に審判を開いたうえで、少年や保護者からの聴取、調査官の報告などを踏まえ、「処分を科す必要がない」と結論づけた場合に選択されます。  | 
つまり、審判に至る前に終結するのが「審判不開始」、審判を経て終結するのが「不処分」です。
少年審判で審判不開始が選択される割合は48.4%

少年審判の結果としてもっとも多いのは、実は「審判不開始」です。
令和6年版犯罪白書(P133)によると、家庭裁判所に送致された事件のうち、審判不開始は、全体の48.4%を占めています。これは約半数にあたる割合であり、審判不開始が決して珍しい判断ではないことがわかります。
次いで多いのが保護観察(24.6%)であり、さらに不処分(17.1%)、少年院送致(6.6%)などが続きます。少年事件のうち、審判不開始と不処分を合わせると65.5%が処分を科されずに終了しているのです。
この統計からは、「少年審判=必ず処分が下される」というイメージとは異なり、家庭裁判所が少年の状況や環境を丁寧に見極め、処分不要と判断するケースが相当数あることがうかがえます。
審判不開始が約半数を占めるという事実は、ご家族にとっても大きな希望となるでしょう。適切な対応を取ることで、お子さまが処分を受けずに事件を終える可能性は十分に存在するのです。
少年審判で審判不開始決定となる典型的なケース

審判不開始は、家庭裁判所が「この少年については審判を行う必要がない」と判断した場合に選択されます。以下では、審判不開始となる代表的な4つのケースを紹介します。
非行事実の存在の蓋然性がないケース
審判不開始の典型的な理由のひとつは、非行事実を裏づける証拠が不十分な場合です。
たとえば、「被害者の供述以外に裏づけがない」「物証が存在しない」「行為が法律上の犯罪にあたらない」などがこれに該当します。
家庭裁判所は、事実認定に慎重であり、非行事実の存在に合理的な疑いが残る場合には、審判を開かずに事件を終了させます。
事案が軽微であるケース
非行事実が認められたとしても、その内容が軽微で社会的影響が小さい場合には、審判不開始とされることがあります。
たとえば、万引きの金額がごく少額である場合や、一時的な出来心で行われた軽度な非行などです。このような場合、家庭裁判所は「審判を開いてまで保護処分を検討する必要はない」と判断し、審判不開始の決定をする可能性があります。
要保護性がなくなっている場合
家庭裁判所は「少年を保護処分に付す必要性(要保護性)」があるかどうかを重視します。
そのため、家庭裁判所送致の時点で少年がすでに十分に反省し、再び非行に及ばない環境が整っていると判断されれば、審判不開始とされることがあります。
たとえば、保護者の監督体制が強化されている、学校や職場での生活態度が改善されているなどが典型的なケースです。
被害弁償や示談が成立しているケース
被害者との示談が成立し、損害賠償や謝罪が済んでいる場合も、審判不開始の大きな理由となります。被害者が処罰を望んでいないことや、被害が回復されていることは、家庭裁判所の判断に大きな影響を与えるからです。
実際に、少年事件では弁護士が早期に被害者と交渉を行い、示談をまとめることによって審判不開始が選択されるケースも少なくありません。
少年審判で審判不開始決定を獲得するために重要なポイント

審判不開始は、少年や家族にとって、もっとも望ましい結果の一つです。しかし、その判断が下されるかどうかは、事件発覚後の対応や家庭裁判所に提出される資料によって大きく左右されます。以下では、審判不開始を目指すうえで特に重要なポイントを説明します。
犯罪が発覚したときはすぐに弁護士に相談する
事件が発覚した直後の対応が、後の手続きに大きな影響を及ぼします。
弁護士は、警察・検察・家庭裁判所での流れを踏まえて、最適な方針をアドバイスできます。特に、早い段階で弁護士が介入すれば、被害者対応や意見書作成をスムーズに進められるため、審判不開始につながる可能性が高まります。
さらに、本人や家族が不安を抱えている時期に、専門家が間に入ることで精神的な安心感を得られるというメリットもあります。
家庭裁判所送致前に被害者との示談を成立させる
被害者への弁償や謝罪、示談の成立は、審判不開始を得るための有効な方法です。被害回復が図られていれば、家庭裁判所は「保護処分に付す必要は乏しい」と判断しやすくなります。
特に、被害者が処分を望んでいないという意思を示している場合は、審判不開始決定の大きな材料となります。弁護士を通じて示談を進めれば、被害者との直接的な接触によるトラブルを避けつつ、適切な条件で早期解決につなげられる点も大きなメリットといえるでしょう。
本人が更生できる環境を整える
家庭裁判所は、少年が再び非行に及ばないための環境が整っているかを重視します。
家庭での監督体制が強化されていること、学校や職場で真面目に生活していることなどを示すことが重要です。具体的には、保護者が日常的にどのように関わっているかを記録したり、学校や職場からの指導や支援を受けていることを伝えたりすることが有効です。
さらに、地域の支援機関やカウンセリングを受けている場合には、その取り組みも裁判所へのアピール材料となります。
家庭裁判所に意見書を提出する
弁護士が「意見書」を家庭裁判所に提出することも、審判不開始を後押しします。
意見書には、少年が反省していること、生活環境が改善されていること、再非行の可能性が低いことなどを具体的に記載します。また、学校の担任や職場の上司など第三者の評価を添えることで、家庭以外にも更生できる環境が整っていることを示すことができ、より説得力が高まります。
少年審判で審判不開始を目指すならグラディアトル法律事務所に相談を

グラディアトル法律事務所は、これまで数多くの少年事件を取り扱い、審判不開始や不処分といった有利な結果を獲得してきた実績があります。少年審判では、審判不開始を得られるかどうかが少年の将来に大きく影響しますが、そのためには的確な準備と迅速な対応が欠かせません。
弁護士が介入することで、被害者との示談交渉を代理し、スムーズかつ適切に合意を成立させることが可能です。また、家庭裁判所に提出する意見書や資料の作成をサポートし、少年が反省していることや更生できる環境が整っていることを具体的に示すことができます。さらに、家庭や学校・職場での監督体制や支援状況を整理し、裁判所に効果的に伝えることも弁護士の重要な役割です。
少年事件は、スピード感が何より大切です。発覚後の初動で適切な対応を取れるかどうかで、審判不開始の可能性は大きく変わります。ご家族だけで被害者対応や裁判所への資料準備を進めるのは困難な場合が多いため、専門的な知識と経験を持つ弁護士のサポートを受けることが安心につながります。
審判不開始を目指すなら、まずは早期にグラディアトル法律事務所へご相談ください。経験豊富な弁護士が一人ひとりの事情に寄り添い、最良の結果を導くために全力でサポートします。
まとめ
少年審判における「審判不開始」は、保護処分を受けずに事件を終了できるため、少年や家族にとって、もっとも望ましい結果の一つです。審判不開始は決して珍しい判断ではなく、全体の約半数に及びますので、早期に弁護士に相談することが審判不開始を獲得するための有効な対策といえます。
グラディアトル法律事務所では、迅速かつ的確な対応で審判不開始の獲得を全力でサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
