「住居侵入罪で緊急逮捕されるとはどのような状態?」
「緊急逮捕とその他の逮捕とではどのような違いがある?」
「住居侵入罪で緊急逮捕されたときの対処法を知りたい」
緊急逮捕とは、一定の重大な犯罪を対象として、逮捕状の発付を待つことができないような急速を要する事情がある場合に、無令状で逮捕ができる手続きです。住居侵入罪も緊急逮捕の対象となる犯罪に含まれますので、一定の要件を満たせば緊急逮捕される可能性があります。
自分や家族が住居侵入罪で緊急逮捕された場合、何をすべきか冷静に判断できる人は少ないはずです。そのような状況に置かれた場合でも適切な行動がとれるように、基本的な対処法を理解しておくことが大切です。
本記事では、
・住居侵入罪で緊急逮捕をするための4つの要件 ・住居侵入罪の緊急逮捕とその他の逮捕との違い ・住居侵入罪で緊急逮捕されたときの対処法 |
などについて詳しく解説します。
いざというときに備えて、ぜひ最後までご覧ください。
目次
緊急逮捕とは?|住居侵入罪は緊急逮捕の対象となる犯罪
緊急逮捕とは?
緊急逮捕とは、逮捕状の発付を待つ余裕がないほど緊急を要する場合に、裁判官が発付する逮捕状がなくても被疑者を逮捕できる手続きです。
逮捕は、被疑者の身体の自由を奪う重大な処分であることから、被疑者を逮捕するには裁判官が発布した逮捕状により行うのが原則です。
しかし、逮捕状の請求から発付までには数時間はかかるため、発付を待つ間に被疑者が逃亡したり、証拠を隠滅するおそれがあります。そこで、一定の要件を満たす場合に、例外的に逮捕状なく被疑者を逮捕することが認められています。
住居侵入罪は緊急逮捕の対象となる犯罪
緊急逮捕の詳しい要件は2章で解説しますが、緊急逮捕は、法定刑に「死刑、無期懲役・禁錮(拘禁刑)、長期3年以上の懲役・禁錮(拘禁刑)」が定められている犯罪が対象になります。
住居侵入罪の法定刑は「3年以下の懲役(拘禁刑)または10万円以下の罰金」と定められていますので、「長期3年以上の懲役(拘禁刑)」という要件を満たし、緊急逮捕の対象犯罪に含まれます。
※「拘禁刑(こうきんけい)」とは、従来の刑罰である懲役と禁錮を一本化した刑罰です。 改正刑法に基づき、2025年6月1日から、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。 |
関連コラム:住居侵入罪の法定刑とは?量刑に影響する7つの事情を弁護士が解説
住居侵入罪で緊急逮捕をするための4つの要件

緊急逮捕は、無令状で被疑者を逮捕するという例外的な手続きですので、要件も厳格に定められています。住居侵入罪で緊急逮捕されるのは、以下の4つの要件をすべて満たした場合に限られます。
一定の重大犯罪であること
緊急逮捕は、一定の重大犯罪を対象として認められます。一定の重大犯罪とは、法定刑に以下の刑罰が定められている犯罪です。
・死刑 ・無期懲役(拘禁刑) ・無期禁錮(拘禁刑) ・3年以上の懲役(拘禁刑) ・3年以上の禁錮(拘禁刑) |
住居侵入罪の法定刑は「3年以下の懲役(拘禁刑)または10万円以下の罰金」と定められていますので、「長期3年以上の懲役(拘禁刑)」という要件を満たし、緊急逮捕の対象犯罪に含まれます。
犯罪の嫌疑が充分にあること
緊急逮捕を行うには、犯罪の嫌疑が十分にあることが要件となります。
通常逮捕において必要とされるのは「相当な理由」であるのに対し、緊急逮捕においてはそれを上回る「充分な理由」が求められます。つまり、緊急逮捕の判断は、通常逮捕よりもさらに慎重かつ厳格な基準に基づいて行われる必要があります。
したがって、緊急逮捕は捜査機関の一方的な判断だけでは許されず、目撃証言や録音・映像などの客観的証拠、または被疑者自身の供述といった具体的な裏付けがなければ緊急逮捕は認められません。
急速を要すること
逮捕状を請求している間に逃亡や証拠隠滅が行われるおそれがあるなど、「時間的猶予がない状況」が必要です。
たとえば、目撃者の証言で所在が判明し、そのまま逃げるリスクが高いような場合などがこれに該当します。被疑者が警察署に自首してきた場合には、逃亡や証拠隠滅のおそれはないため緊急逮捕をすることは認められないケースが多いでしょう。
逮捕後直ちに令状の交付を受けること
緊急逮捕は、無令状で逮捕ができるといっても、事後的に逮捕状の請求が必要です。
逮捕後は、すぐに裁判所に逮捕状の発付を請求し、正当な手続きに移行しなければならず、正規の令状なしに長期間の被疑者の身柄を拘束することはできません。
住居侵入罪の緊急逮捕とその他の逮捕との違い
逮捕には、緊急逮捕以外にも「通常逮捕」と「現行犯逮捕」があります。以下では、緊急逮捕とその他の逮捕との違いを説明します。
緊急逮捕と現行犯逮捕との違い
現行犯逮捕とは、現に犯罪をしたことが明らかな場合、または犯罪が行われた直後であって、罪を犯したことが明らかである場合に、逮捕状なく他人を逮捕する手続きです。
現行犯逮捕と緊急逮捕は、無令状で被疑者を逮捕できるという点では共通しますが、以下のような相違点があります。
項目 | 現行犯逮捕 | 緊急逮捕 |
---|---|---|
逮捕状の要否 | 不要 | 不要(ただし事後に速やかな令状請求が必要) |
逮捕できる人 | 誰でも可能 | 捜査官のみ(私人逮捕は不可) |
対象となる犯罪 | 制限なし | 一定の重大犯罪のみ |
逮捕の要件 | 犯罪行為の最中または直後 | 犯罪の嫌疑が充分にあること |
現行犯逮捕は、犯罪行為の最中または直後に犯人を逮捕する手続きですので、誤認逮捕のおそれが少ないことから、無令状での逮捕が認められています。
緊急逮捕と通常逮捕との違い
通常逮捕とは、捜査機関が裁判所に逮捕状を請求し、逮捕状発付後に被疑者を逮捕する手続きです。裁判官の令状に基づき逮捕するという点で原則的な逮捕の形といえるでしょう。
緊急逮捕と通常逮捕の大きな違いは、逮捕にあたって令状が必要になるのかという点です。通常逮捕は、逮捕状がなければ被疑者を逮捕することができませんが、緊急逮捕であれば無令状での逮捕が可能です。
緊急逮捕と通常逮捕の違いをまとめると以下のようになります。
項目 | 通常逮捕 | 緊急逮捕 |
---|---|---|
逮捕状の要否 | 事前に逮捕状を得る必要がある | 逮捕時には不要(逮捕後に逮捕状の請求が必要) |
逮捕の要件 | 罪を犯したと疑う相当な理由があること(比較的緩やか) | 犯罪の嫌疑が充分にあること (厳格な要件) |
逮捕できる人 | 捜査官のみ(私人逮捕は不可) | 捜査官のみ(私人逮捕は不可) |
住居侵入罪で緊急逮捕された実際の事例

以下では、実際に住居侵入罪で緊急逮捕が行われた事例をみてみましょう。
知人女性宅に侵入しスマートフォンなどを盗んだ疑いで41歳無職男が緊急逮捕
長崎県対馬市で、知人女性が住むアパートの1室に侵入しスマートフォンなどを盗んだとして、41歳の男が住居侵入と窃盗の疑いで逮捕されました。
逮捕されたのは、自称対馬市厳原町に住む41歳の無職の男です。
警察によりますと、男は25日午前5時前、対馬市内の30代の女性が住むアパートに侵入し、女性と知人男性が所有するスマートフォン合わせて2台(時価6万円相当)を盗んだ疑いが持たれています。
女性と知人男性が帰宅したところ、部屋の中にいた男と鉢合わせになり、男は2人のスマートフォンを盗って逃走したということです。
警察では女性からの通報を受け捜査を進め対馬市内で男を発見、26日午後9時前に住居侵入と窃盗の容疑で緊急逮捕しました。取り調べに対し、男は容疑を認めているということです。
男と女性には男女間のトラブルがあり、1か月ほど前に警察に相談があったということで、警察が動機などを詳しく調べています。
(引用:NBC長崎放送)
「帰ってきたら部屋に男がいてスマホ取って逃げた」41歳の無職男を知人女性宅への住居侵入容疑などで逮捕(NBC長崎放送)
部屋に侵入して男性の頭を殴り殺害しようとした疑いで男を緊急逮捕
大阪府守口市の集合住宅の一室に侵入し、部屋に住む男性の頭を複数回殴るなどして殺害しようとしたとして、52歳の男が緊急逮捕されました。
殺人未遂と住居侵入の疑いで緊急逮捕されたのは、住居・職業不詳の男性(52)容疑者です。
容疑者は、守口市竜田通にある集合住宅の一室に侵入し、この部屋に住む65歳の男性の頭を複数回殴るなどの暴行を加え、殺害しようとした疑いがもたれています。
警察によりますと、2人は顔見知りとみられ、被害者の男性は「いきなり入ってきて警棒のようなもので殴られた」と話しているということです。
男性は頭や両腕など、全治1週間のけがをしました。
容疑者は事件後、男性からスマホを奪って逃走していましたが、その後、被害者の部屋に戻ってきたため、警察が緊急逮捕したということです。
警察の調べに対し、容疑者は「殺すつもりはなかった」と容疑を一部否認していて、警察は2人の間に何らかのトラブルがあったとみて調べています。
(引用:ABCニュース)
「いきなり入ってきて警棒のようなもので殴られた」 部屋に侵入して男性の頭を殴り殺害しようとしたか 男を緊急逮捕(ABCニュース)
住居侵入罪で緊急逮捕された後の流れ

住居侵入罪で緊急逮捕されると、以下のような流れで刑事手続きが進みます。
逮捕・取り調べ
まずは身柄拘束された状態で警察の取り調べを受けます。黙秘権や弁護人選任権などの権利が説明されますが、弁護士不在では不利な供述をしてしまうリスクもあるため注意が必要です。
検察官送致
逮捕から48時間以内に、警察は検察官に事件を送致しなければなりません。
送致を受けた検察官は、被疑者に対する取り調べを行い、勾留請求をするか釈放するかを判断します。
勾留請求をする場合、送致から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に裁判官に対して勾留請求を行わなければなりません。
勾留・勾留延長
裁判官が勾留を認めれば、原則10日間の身体拘束が可能になります。
また、勾留延長も認められれば最長で10日間の身柄拘束期間が追加されますので、逮捕から合計すると最大23日間にも及ぶ身柄拘束を受けることになります。
起訴または不起訴の決定
勾留期間中に検察官が起訴するか否かを判断します。起訴されれば公判請求または略式命令請求となり、ほぼすべての事件が有罪となります。
他方、不起訴になれば前科がつくことはなく、その時点で釈放となります。被害者との示談が成立していれば、不起訴処分となる可能性も高まります。
住居侵入罪で緊急逮捕されたときの対処法

住居侵入罪で逮捕されたときに被疑者やその家族がとるべき対処法は、以下のとおりです。
すぐに弁護士を呼ぶ
逮捕直後にもっとも重要になるのは弁護士によるサポートです。
被疑者が逮捕されると警察による取り調べを受けますが、そこで不利な供述をしてしまうとその後の処分に大きな悪影響を与えることになります。それを避けるには、早期に弁護士と面会して取調べにどのように対応すべきか、不利な供述をしないためのアドバイスなどを受けることが大切です。
家族が逮捕されてしまったときはすぐに弁護士に依頼して、警察署への面会をお願いするとよいでしょう。
被害者との示談をする
住居侵入罪は、それだけであれば比較的軽微な犯罪ですので、被害者との示談が成立すれば不起訴処分を獲得できる可能性も十分にあります。そのため、住居侵入事件を起こしてしまったときはすぐに被害者との示談交渉に着手するようにしましょう。
ただし、逮捕された被疑者では示談交渉ができず、加害者側の家族から被害者に接触しようとしても拒否されるケースが多いため、示談交渉は弁護士に任せた方がよいでしょう。
関連コラム:住居侵入罪における示談の効果とは?示談交渉の流れやポイントを解説
反省の態度を示す
逮捕後に反省の態度を示すことも処分を軽くする事情になります。
取り調べでの言動により反省していることが捜査機関に伝われば、それを踏まえて処分を判断してくれますので、不起訴処分を獲得できる有利な事情になるはずです。
住居侵入罪で緊急逮捕されたときはグラディアトル法律事務所に相談を

住居侵入で緊急逮捕された場合、本人も家族も動揺して冷静な判断ができないことが多いでしょう。しかし、早期に弁護士に相談することで、不利な供述を防ぎ、早期に被害者との示談をまとめるなど有利な処分獲得に向けてさまざまな対策を講じることが可能になります。
グラディアトル法律事務所には、刑事事件を得意とする弁護士が多数在籍しており、住居侵入罪に関する経験も豊富ですので、住居侵入罪の弁護は当事務所にお任せください。
住居侵入罪は、初犯なら罰金や不起訴で済む可能性もありますが、対応を誤ると正式に起訴されて裁判になるリスクもあります。「初めてだから大丈夫」と安易に判断せず、早めに弁護士へ相談することが大切です。
当事務所では初回の相談を無料で受け付けています。「これが犯罪か分からない」「警察から連絡が来た」といった段階でも問題ありません。刑事事件はスピードが重要ですので、少しでも不安があればすぐに当事務所までご相談ください。
まとめ
住居侵入罪は比較的軽微な犯罪と思われがちですが、緊急逮捕の対象となる一定の重大犯罪に該当しますので、状況次第では緊急逮捕という手段がとられることがあります。逮捕後は時間との勝負となるため、少しでも早く弁護士に相談し、示談交渉や勾留回避のための行動をとることが極めて重要です。
自分や家族が住居侵入罪で緊急逮捕されたときは、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。