当て逃げの罪は重い?罪になるケース・ならないケースや時効も解説

当て逃げの罪は重い?罪になるケース・ならないケースや時効も解説
弁護士 若林翔
2025年12月25日更新

「当て逃げしてしまった…どんな罪に問われるのだろう」

「罪を軽くするために、今できることを知りたい」

当て逃げは、刑罰が規定されている犯罪行為です。

起訴されて有罪になると、拘禁刑や罰金刑に処せられ、前科もついてしまいます

そのため、当て逃げをしてしまったときは、不起訴処分や刑の軽減に向けて、弁護士とも相談しながら早急に対策を講じることが重要です。

本記事では、当て逃げで問われる罪の種類や刑罰、実際の検挙事例、時効などについて解説します。

当て逃げしてしまったときの対処法も詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

当て逃げで問われる罪の種類と刑罰

まずは、当て逃げで問われる罪の種類と刑罰を解説します。

基本的には2つの罪に問われることになるので、それぞれ詳しくみていきましょう。

当て逃げで問われる罪の種類と刑罰

報告義務違反:3ヵ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金

当て逃げをすると、まず「報告義務違反」の罪に問われます。

報告義務違反は、交通事故を起こした際に、事故の詳細を警察に報告しなかった場合に成立する犯罪行為です。

【警察への報告が義務付けられている事項】

  • ・事故が発生した日時・場所
  • ・損壊した物と損害の程度
  • ・事故車両の積載物
  • ・事故後に講じた措置 など

報告義務違反の刑罰は「3ヵ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金」です。

なお、報告義務は事故の大小を問いません。

たとえ事故の内容が軽微でも、逃げてしまえば報告義務を怠ったと判断されます。

危険防止措置義務違反:1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金

当て逃げは、報告義務違反に加えて、危険防止措置義務違反の罪にも問われます。

危険防止措置義務違反とは、事故現場で二次的な事故を防ぐための措置を怠った場合に成立する犯罪行為です。

たとえば、事故車両を安全な場所に移動させないまま立ち去ったり、交通整理や危険表示をしなかった場合が該当します。

危険防止措置義務違反の刑罰は「1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」です。

なお、2つの罪が同時に生じた場合は重いほうの刑罰を適用するのが原則なので、当て逃げに関しては、危険防止措置義務違反の「1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」の範囲内で処罰が決定されます。

そもそも「当て逃げ」の罪に問われるのはどんなとき?

当て逃げの罪に問われるのは、物損事故を起こして、その場から逃走した場合です。

具体的には、以下のようなケースが考えられます。

駐車場での事故駐車スペースから出る際、隣に停めてあった車の前方に接触し、そのまま立ち去ってしまうケースなど。ドアパンチやバック時の接触で傷をつけて逃げるパターンが多い。
走行中の事故渋滞時に停止中の車に追突しながらも、衝撃が小さく、相手にバレていないと思い、事故現場を離れてしまうケースなど。
車以外との事故狭路で家の塀や電柱、ガードレールなどに接触したが、誰にも見られていない状況をいいことに逃げてしまうケースなど。

 

「大きな事故ではないからバレないだろう」という安易な考えが、当て逃げという犯罪行為につながります。

防犯カメラの映像などから当て逃げが発覚するケースも多いので、逃げ切ろうとするのではなく、自ら早期解決を目指す姿勢が重要です。

当て逃げの罪で検挙されている事例

当て逃げで検挙されるケースについて、具体的な事例をみていきましょう。

まず紹介するのは、物損事故後、保険会社と連絡を取るために現場から離れてしまい、当て逃げとみなされた事例です。

事案概要
道交法違反(当て逃げ)の疑いで書類送検されたとの報道を受けて同日、所属先の「〇〇」がX(旧ツイッター)でコメントを発表して謝罪した。謝罪に続いて「2024年12月、〇〇が事務所近くの道路において運転中、単独での物損事故が発生いたしました。事故当時、車両は自走不能となり、本人はすぐに複数のスタッフに連絡を試みましたが、連絡がつかない状況が続き、また、保険会社の連絡先もその場で把握できなかったため、本人は保険会社の連絡先が事務所にある可能性を考え、車両を現場に残して事務所へ移動いたしました」と説明。(引用:中日新聞)

物損事故を起こしたときは、その場で警察に連絡し、二次被害を防ぐための措置を講じなければなりません。

本事案のように、逃げるつもりでその場から離れたわけではなくても、現場で必要な対処を怠っていた場合は、当て逃げと判断される可能性があります。

次に紹介するのは、酒気帯び運転と当て逃げが併発している事例です。

事案概要
広島県警尾道署は28日、三原市、〇〇(44)を道交法違反(酒気帯び運転、当て逃げ)の疑いで逮捕した。逮捕容疑は2日午前7時25分ごろ、尾道市尾崎本町の市道で酒を飲んで乗用車を運転し、電柱に衝突する事故を起こしたのに、車を放置して逃げた疑い。同署によると、目撃者からの110番で駆け付けた署員が、近くにいた男に職務質問。呼気検査で1リットル当たり約0・5ミリグラムのアルコール分を検出した。「事故を起こした時に酒は飲んでいない」と供述しているという。(引用:中国新聞社)

酒気帯び運転中に物損事故を起こし、その場から立ち去ってしまう事例は決して少なくありません。

しかし、本事案のように目撃者の証言などから犯人が特定され、逮捕に至ることも多いです。

酒気帯び運転が絡んでくると起訴を免れることは難しく、刑罰も重くなることが予想されます。

当て逃げの自覚がなかった場合は罪にならない?

当て逃げの自覚がなかった場合でも、罪に問われる可能性は十分あります

通常、「注意義務を尽くしていれば、事故に気づけたはず」と判断されるので、自覚していなかったという主張は言い訳と捉えられてしまうのです。

たとえば、事故を起こしたという確信がなかったとしても、運転中にぶつかった衝撃や音を感じ取っていたのであれば、当て逃げの認識があったと推定されます

「事故したことに気づく余地すらなかった」と証明できれば、当て逃げの罪を回避できることもありますが、現実的には難しいでしょう。

防犯カメラやドライブレコーダーの記録、車両の損傷具合などが客観的証拠となり、あとから当て逃げと認定されるケースも少なくありません。

【注意】当て逃げは行政責任・民事責任も問われる

当て逃げは、行政責任・民事責任を問われる点にも注意しておく必要があります。

当て逃げで問われる法的責任

行政責任と民事責任の内容をそれぞれ詳しくみていきましょう。

行政責任|違反点数7点加算(30日間の免許停止)

当て逃げをした場合は、行政責任として違反点数が合計7点加算され、30日間の免許停止処分を受けることになります。

違反点数7点の内訳は、安全運転義務違反の2点と危険防止措置義務違反の5点です。

 安全運転義務違反危険防止措置義務違反
要件適切な運転操作や状況判断を怠り、他人に危害を及ぼすような運転をした場合事故後、道路の危険を防止するために必要な措置を講じなかった場合
適用例速度超過・わき見運転・誤操作・安全不確認など事故後に現場から離れて、危険表示や道路整理をせず立ち去る行為

累積違反点数が6点以上になると、免許停止処分になります。

つまり、当て逃げによって7点が加算されると、その時点で、免許停止が確定するわけです。

さらに前歴がある場合やほかの違反行為が発覚した場合は、累積違反点数が高くなるので、免許停止期間も長くなる可能性があります。

【前歴の有無・累積違反点数に応じた免許停止期間】

過去3年以内の運転免許停止等の処分回数停止期間
30日60日90日120日150日180日
なし6点〜8点9点〜11点12点〜14点
1回4点〜5点6点〜7点8点〜9点
2回2点3点4点
3回2点3点
4回以上2点3点

(参照:行政処分基準点数|警視庁

免許停止処分が確定すると、免停通知書が自宅に届きます。

その後は、指定された日に運転免許センターで免許を預け、免停期間後に警察署で返還してもらうのが基本的な流れです。

民事責任|当て逃げによって生じた損害の賠償

当て逃げの加害者は、民事上の損害賠償責任を負います。

つまり、当て逃げによって破損した車両の修理代などを、被害者に支払わなければなりません

具体的には、以下の費用が損害賠償の対象になります。

  • ・車両の修理費用
  • ・代車費用
  • ・レッカー費用
  • ・車両の評価損
  • ・休車損害
  • ・積荷や車内物品の損害
  • ・壁や塀などの修理費用

損害賠償の具体的な金額は、当事者間の話し合いで決めていくケースが一般的です。

正当な理由なく支払いを拒んでいると、裁判に発展する可能性もあるので注意してください。

どうしても納得できない事情がある場合は、弁護士に依頼し、代理で交渉してもらうことをおすすめします。

当て逃げの罪は何年で時効になる?

当て逃げの時効

まず、当て逃げに関する刑事上の時効(公訴時効)は「事故を起こして現場から立ち去ったときから3年」です。

公訴時効が成立すると起訴されなくなるので、今後罪に問われることもありません。

民事上の時効(消滅時効)は「被害者が加害者・損害を知ったときから3年」「事故が起きたときから20年」です。

消滅時効が成立すると、被害者は損害賠償を請求する権利そのものを失います。

なお、行政処分に関しては時効の規定がないので、当て逃げが発覚した時点がいつであろうと、違反点数が加算されます。

当て逃げしてしまったときの対処法

次に、当て逃げしてしまったときの対処法を解説します。

当て逃げしてしまったときの対処法

今後の対応次第で処分の内容が大きく変わることを念頭に置き、早急に行動を起こしましょう。

警察に届け出る

物損事故を起こして現場から離れてしまった場合は、一刻も早く警察に届け出ましょう。

自ら罪を認めて反省する姿勢を示せば、刑事処分が軽くなりやすいためです。

特に、捜査機関に発覚する前であれば「自首」として認められるので、逮捕を回避したり、刑が減軽されたりする可能性が高くなります。

また、警察を通じて被害者と連絡が取れるようになれば、示談交渉にも着手することができます

なお、警察に届け出ると、そのままの流れで取り調べに移行するケースもあるので、あらかじめ弁護士に相談し、アドバイスを受けておくことが重要です。

被害者と連絡が取れる場合は示談を進める

当て逃げの被害者と連絡が取れる場合は、速やかに示談交渉を進めましょう。

被害届が出される前に示談を成立させることで、事件化を防げる可能性があるからです。

また、すでに事件化している場合でも、示談が成立すれば刑事処分の軽減が期待できます

ただし、示談交渉には専門的な知識が求められるうえ、当事者間での話し合いはトラブルになることも少なくありません。

そのため、示談交渉に関することは、法律の専門家であり、交渉のプロである弁護士に依頼するのが賢明な判断といえるでしょう。

できるだけ早く弁護士に相談する

当て逃げしてしまったときは、できるだけ早く弁護士に相談してください。

刑事事件を得意とする弁護士であれば、個々の状況に合わせた最善の対応策を提案・実行してくれるはずです。

具体的には、以下のようなサポートが期待できます。

  • ・示談交渉の代理
  • ・示談書の作成
  • ・自首の同行
  • ・取調べ対応の助言
  • ・証拠の収集
  • ・逮捕や勾留の回避に向けた捜査機関への働きかけ
  • ・不起訴処分や減刑の獲得に必要な弁護活動

弁護士費用特約がついた自動車保険に加入していれば、費用負担なく相談・依頼ができるので有効に活用しましょう。

グラディアトル法律事務所では、経験豊富な弁護士が24時間・365日体制で相談を受け付けているので、お気軽にご相談ください

当て逃げの罪に関してよくある質問

最後に、当て逃げの罪に関してよくある質問に回答します。

当て逃げの罪に関してよくある質問

駐車場での物損事故も当て逃げの罪になる?

駐車場での物損事故でも、現場から立ち去れば当て逃げの罪となります

公共の道路ではないからといって、違法性がなくなるわけではありません。

実際、すれ違いざまに接触事故を起こしたり、ドアの開閉時にぶつけたりしたにも関わらず、その場から立ち去り、当て逃げが成立するケースは多く見受けられます。

自転車での物損事故なら逃走しても当て逃げにならない?

自転車での物損事故でも、逃走すれば当て逃げとして罪に問われます

自転車も道路交通法上の「車両」に該当し、事故後の報告義務や危険防止措置義務が課せられているためです。

また、事故によって損害が生じている場合は、被害者に対する賠償責任も負うことになります。

当て逃げは器物損壊罪にも該当する?

基本的に、当て逃げは器物損壊罪に該当しません

器物損壊罪は「故意犯」であり、物を壊すことについての認識と意図が必要だからです。

物損事故は過失や不注意で起こるケースが大半で、わざと物を破壊しようとしたわけではないため、器物損壊罪は成立しにくいといえるでしょう。

仮に、嫌がらせ目的でわざと車をぶつけた場合などは、故意が認められ、器物損壊罪が成立し得ます

なお、器物損害罪の刑罰は「3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料」です。

当て逃げの加害者になったときはグラディアトル法律事務所に相談を!

本記事のポイントは以下のとおりです。

  • ・当て逃げは報告義務違反と危険防止措置義務違反の罪に問われる
  • ・当て逃げの加害者には違反点数7点が加算され、免許停止(30日間)になる
  • ・当て逃げの加害者は被害者に対する損害賠償責任を負う
  • ・自転車事故でも逃走すると当て逃げ扱いになる
  • ・当て逃げしたときは速やかに警察に届け出て、被害者との示談を進めるべき

当て逃げは、最悪の場合、拘禁刑になる可能性がある重大な犯罪行為です。

一方で、今後の行動次第では起訴を回避したり、刑罰を軽くしたりできる可能性も残されています。

そのため、当て逃げしたことを反省し、少しでも軽い処分を望むのであれば、速やかに弁護士へ相談してください。

グラディアトル法律事務所では、土日や夜間の相談にも対応しており、最短即日中に弁護活動を始めることも可能です。

初回相談は無料、LINE相談も受け付けているので、まずはお気軽にご相談ください

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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