遊ぶお金が必要になったり、借金の返済に追われたりするなかで「少額なら大丈夫だろう」と甘い考えに至り、会社のお金を横領してしまう人は少なくありません。
しかし、少額であっても業務上横領罪は成立します。
状況次第では逮捕されたり、会社を解雇されたりすることもあるでしょう。
そのため、たとえ少額でも、横領事件を起こした場合はできるだけ早く弁護士に相談し、今後の対応についてアドバイスを受けるようにしてください。
とはいえ、横領事件では横領額が少額だからこそのポイントがあるのも事実です。
そこで本記事では、少額の業務上横領事件を起こした場合の処遇について解説します。
逮捕や解雇を回避するためにやるべきことなども記載しているので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
目次
業務上横領罪は少額でも成立する
まずは、業務上横領が発覚した場合に、横領額が少額であることはどのような影響を及ぼすのかを詳しくみていきましょう。
業務上横領罪の成立に金額は直接関係しない
業務上横領罪が成立するかどうかの判断において、横領した金額の大小は直接関係しません。
会社から管理を任されている金品を自分のものにした時点で、業務上横領罪が成立します。
刑法の条文をみても、金額の基準は示されていません。
極端な話、経理担当者が社内の金庫にある1円を私的に利用すれば、それは業務上横領です。
関連コラム:業務上横領罪の構成要件とは?成立するケース・しないケースを解説!
少額なら刑事処分が軽くなることはある
横領額が少額にとどまっているなら、刑事処分が軽くなることはあります。
横領事件において、横領額は被害状況を直接的に示すものです。
つまり、横領額が少額なら被害もそれほど大きくないと判断されやすくなります。
その結果、不起訴処分につながることもあれば、裁判で執行猶予付き判決を獲得できることもあるわけです。
なお、一律に線引きできるものではありませんが、横領額が100万円以下であれば執行猶予がつきやすいといえます。
ただし、同種前科がある場合や悪質性が高いと判断された場合などは、少額でも厳しい処分が下されるおそれがあるので、横領額の大小に関わらず速やかに対処を講じることが重要です。
関連コラム:業務上横領の量刑はどのくらい?執行猶予や刑期に影響する要因も解説
業務上横領は少額でも迅速に対処すべき!想定される6つのリスク
次に、業務上横領の罪を犯した場合に想定される6つのリスクを解説します。
刑事告訴される
業務上横領をおこなうと、刑事告訴されるリスクがあります。
業務上横領は会社からの信頼を裏切り、経済的損失を与える重大な犯罪です。
そのため、会社側は強い処罰感情を抱くケースが多く、刑事告訴を選択することも十分考えられます。
特に、被害弁償を拒否している場合は、刑事告訴される可能性が非常に高いです。
刑事告訴され、検察に起訴された場合は「10年以下の懲役刑」に科される可能性があります。
実刑判決を受けるリスクもあるため、一刻も早く被害弁償を済ませ、刑事告訴を食い止めることが重要です。
関連コラム:業務上横領で刑事告訴されたらどうなる?その後の流れや対処法を解説
逮捕される
業務上横領の加害者は、たとえ横領額が少額であっても逮捕されるリスクがあります。
会社が被害届を提出したり、刑事告訴したりすると警察が捜査を開始します。
その結果、証拠が揃っていて、逃亡・証拠隠滅のおそれがあると判断された場合は、警察が逮捕に乗り出します。
関連コラム:業務上横領罪の構成要件とは?成立するケース・しないケースを解説!
逮捕されると、その後最大23日間にわたって身柄拘束を受けることになります。
警察の捜査に対しては嘘をついたり、余計な言い訳をしたりせず、協力的な姿勢をみせるようにしましょう。
関連コラム:横領で逮捕されるケースとは?逮捕のリスクや逮捕回避の対処法を解説
関連コラム:業務上横領で逮捕までの流れは?7つのステップに分けて具体的に解説
刑罰に処される
業務上横領の加害者が起訴され、有罪になると刑罰に処されます。
業務上横領罪の刑罰は「10年以下の懲役」です。
罰金刑はなく、執行猶予を獲得できなければ刑務所に入らなければなりません。
横領額が少額だからといって、必ずしも実刑を回避できるわけではないので、起訴された場合でも諦めずに刑の軽減を目指すことが大切です。
会社を解雇される
会社を解雇されることも、業務上横領にともなうリスクのひとつといえます。
たとえ少額であっても、業務上横領が信頼関係を裏切る行為であることに変わりありません。
そのため、横領の加害者は、就業規則に基づき懲戒解雇の対象になることがほとんどです。
実際、少額の横領事件で懲戒解雇が有効と認められた事例はいくつも存在します。
事案 | 判例 |
---|---|
バスの乗務員が乗客から得た1,100円を横領して懲戒解雇(東京地方裁判所平成23年5月25日判決) | 運賃の不正取得は極めて悪質であり、金額の大小にかかわらず懲戒解雇は有効 |
信用金庫の調査役が顧客から集金した1万円を着服して懲戒解雇(東京高等裁判所平成元年3月16日判決) | 金融機関の信用を失う行為であり、懲戒解雇は有効 |
懇親会費の水増し清算により、10万円を着服して懲戒解雇 | 背信性が高く、依願退職を拒否していたこともあり、懲戒解雇は有効 |
なお、横領行為を理由とした懲戒解雇では、解雇予告手当が原則不要とされています。
即日解雇される場合でも、金銭的な補償を受けることはできません。
実名報道される
業務上横領事件では、実名報道されるリスクがある点にも注意が必要です。
特に、加害者の社会的地位が高い場合や巧妙な手口を用いていた場合などは、世間の関心が高まるので、実名報道されやすくなります。
また、企業が信頼を回復するために、積極的に情報公開するケースも少なくありません。
SNSでニュースが瞬く間に拡散してしまう今の世の中、実名報道が社会生活に及ぼす影響は甚大です。
横領事件を起こしたときは、一刻も早く対策を講じて事件化を回避するようにしましょう。
民事裁判を起こされる
民事裁判を起こされることも、業務上横領で想定されるリスクのひとつです。
業務上横領は、会社に損害を与える民法上の不法行為に該当します。
そのため、会社からの直接的な請求を拒否していると、民事裁判を起こされ、不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性があるのです。
なお、損害賠償金には、実際の横領額に調査費用や弁護士費用などが上乗せされることもあります。
業務上横領では刑事上の責任とは別に、民事上の責任が生じることを覚えておきましょう。
業務上横領で逮捕されたあとの流れ
業務上横領で逮捕されたあとの基本的な流れは以下のとおりです。
業務上横領で逮捕されると、警察による取り調べが実施されます。
その後は48時間以内に検察に送致され、身柄や証拠書類などが引き渡されることになるでしょう。
検察でも引き続き取り調べを受け、24時間以内に勾留されるかどうかが決定します。
とはいえ、ほとんどの事件では24時間以内に捜査が終わらないので、勾留請求されるものと考えてください。
勾留決定後は、原則10日間、最長20日間にわたって身柄拘束を受けなければなりません。
そして、最終的に検察官が起訴・不起訴の判断をおこないます。
不起訴処分になればその時点で釈放されますが、起訴された場合は刑事裁判に移行し、公判が開かれることになります。
少額の業務上横領がバレた場合にやるべきこと
次に、少額の業務上横領がバレた場合にやるべきことを3つ紹介します。
被害弁償をおこない示談を成立させる
少額の業務上横領がバレた場合は、速やかに被害弁償をおこない、示談を成立させましょう。
会社側が一番に望むのは、被害を回復することです。
そのため、示談のなかで被害弁償を済ませれば、警察への通報を踏みとどまってもらえるかもしれません。
また、すでに被害申告がなされていても、示談の成立が有利な事情として扱われ、逮捕を回避したり、不起訴処分を獲得したりできる場合があります。
特に横領額が少額であれば、示談で解決できる可能性が高いので、積極的な姿勢で交渉に臨むことが大切です。
関連コラム:横領したお金を返済できない場合はどうなる?リスクや対処法を解説
会社の調査に協力して反省の態度を示す
少額の業務上横領がバレた場合は、会社の調査に協力し、反省の態度を示すことも重要です。
誠実な対応を続ければ、会社側の処罰感情が和らぎ、懲戒解雇などの厳しい処分を回避できる可能性があります。
また、警察や検察にも好印象を与えられるので、刑事処分が軽くなることも十分考えられるでしょう。
ただし、言われるがままに始末書を作成したり、供述調書にサインすると、あとで立場が悪くなるおそれがあります。
少しでも不利益を受けないようにしたいのであれば、弁護士の助言を受けながら、捜査に協力していくことが重要です。
刑事事件が得意な弁護士に相談する
少額の業務上横領が発覚した際は、できるだけ早く刑事事件に強い弁護士に相談してください。
経験豊富な弁護士であれば、個々の状況を客観的に分析したうえで、今後の対応方針を的確に判断することができます。
なにより、デリケートな示談交渉を任せられる点は大きなメリットです。
弁護士に依頼すれば、会社からの不当な要求を回避しつつ、当事者双方が納得できる着地点を見い出してくれます。
また、捜査機関への働きかけもおこなってくれるので、不起訴処分や減刑の可能性も高くなるでしょう。
関連コラム:横領事件の弁護士費用はいくら?内訳・相場や弁護士選びのコツを解説
業務上横領の罪を犯したときはグラディアトル法律事務所に相談を
業務上横領の罪を犯したときは、グラディアトル法律事務所に相談してください。
弊所は業務上横領をはじめ、刑事事件全般を得意とする法律事務所です。
蓄積されたノウハウに基づく弁護活動によって、これまでにも数々の横領事件を解決に導いてきました。
豊富な経験・知識をもつ弁護士が24時間・365日体制で対応しているので、夜間や休日の相談も可能です。
LINEでの相談も受け付けているため、困ったときはいつでもお問い合わせください。
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まとめ
本記事のポイントは、以下のとおりです。
- ◆ 業務上横領罪は少額でも成立する
- ◆ 横領額が少額なら刑事処分が軽くなる可能性はある
- ◆ 業務上横領が発覚すると、刑事告訴・逮捕・解雇・実名報道・裁判などのリスクがある
- ◆ 業務上横領がバレた場合は示談の成立が重要
たとえ少額であっても業務上横領罪は成立し、罪に問われてしまいます。
犯行の態様や発覚後の対応次第では、実刑になる可能性もゼロではありません。
そのため、業務上横領事件を起こしたときは、一刻も早く弁護士に相談してください。
早い段階で弁護士が介入できれば、事件の影響を最小限に抑えることができます。
グラディアトル法律事務所では初回無料相談に対応しているので、少しでも不安に思うことがあれば一人で悩まず、お気軽にご相談ください。