「住居侵入罪の構成要件を知りたい」
「住居侵入罪の構成要件に該当する行為にはどのようなものがある?」
「住居侵入罪の構成要件に該当する行為をしたときの対処法とは?」
住居侵入罪は、正当な理由なく他人の住居や建物などの立ち入った場合に成立する犯罪です。無断で住居に立ち入った場合でも住居侵入罪が成立しないケースもあるため、住居侵入罪にあたるかどうかは、住居侵入罪の構成要件を正しく理解する必要があります。
万が一、住居侵入罪に問われてしまうと懲役刑(拘禁刑)や罰金刑が科される可能性もあるため十分に注意して行動しなければなりません。
本記事では、
・住居侵入罪の構成要件
・住居侵入罪の構成要件に該当する行為と該当しない行為
・住居侵入罪の構成要件に該当する行為をしたときの対処法
などについて解説します。
万が一ご自身やご家族が住居侵入罪で逮捕された場合に、どのように対応すればよいのかも紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
住居侵入罪の構成要件をわかりやすく整理
以下では、住居侵入罪の構成要件に該当する具体的な行為を紹介します。
項目 | 内容 |
---|---|
対象となる場所 | 人の住居、人の看守する邸宅、建造物、艦船 ・住居:人が居住している家やアパート ・邸宅:日常的に使用されていない空き家や別荘 ・建造物:住居・邸宅以外の建物(学校、オフィス、庁舎、工場、商業施設等) ・艦船:人が寝泊まりできる程度の船(クルーザー、軍艦等) ※廃墟や空き家でも所有者・管理者がいれば対象になる |
行為 | 管理権者の意思に反する立ち入り ・明示的または推定的承諾があれば成立しない ・商業施設でも盗撮・万引き目的の立ち入りは意思に反する立ち入りとなる可能性あり |
違法性 | 正当な理由がない立ち入り ・窃盗、強盗、盗撮、のぞき、ストーカー目的等は正当な理由がない ・警察官の令状執行、消防士の消火活動は正当な理由が認められる |
故意 | 他人の住居等であることを認識し、意思をもって立ち入ったこと ・自分の家と誤認した場合、客観的状況から誤認がやむを得ないと認められる必要あり |
住居侵入罪が成立するには、刑法130条が規定する構成要件を満たす必要があります。以下では、住居侵入罪の構成要件をわかりやすく整理します。
対象となる場所|人の住居、人の看守する邸宅、建造物、艦船
住居侵入罪の対象となる場所は、「人の住居、人の看守する邸宅、建造物、艦船」です。
・住居:人が居住している家やアパート・邸宅:日常的に使用されていない空き家や別荘・建造物:住居、邸宅以外の建物(学校、オフィス、庁舎、工場、商業施設など)・艦船:人が寝泊まりできる程度の大きさの船(クルーザー、軍艦など) |
廃墟や空き家についても、所有者や管理者が存在する場合、「邸宅」または「建造物」にあたりますので注意が必要です。
行為|管理権者の意思に反する立ち入り
住居侵入罪の対象となる行為は、管理権者の意思に反する立ち入りです。
管理権者とは、当該住居や建造物などを所有・管理する人のことをいい、明示的な承諾がなくても、推定的承諾があれば住居侵入罪は成立しません。
たとえば、デパートなどの商業施設は、買い物をする人に対して立ち入りが許可されているため、承諾を得ていなくても自由に立ち入ることができます。しかし、盗撮目的や万引き目的でも立ち入りについては、管理者が許可した立ち入りの態様とはいえませんので、建造物侵入罪で検挙される可能性があります。
このように住居侵入罪の成否は、当該立ち入りが管理権者の意思に反するかどうかが重要なポイントとなります。
違法性|正当な理由がない
住居侵入罪は、住居等への立ち入りに「正当な理由がない」場合に成立します。
正当な理由がないとは立ち入り目的が違法であるかどうかで判断されますので、窃盗、強盗、盗撮、のぞき、ストーカー目的での立ち入りには正当な理由は認められません。
他方、以下のような目的での立ち入りは、管理権者の承諾がなかったとしても正当な理由がありますので住居侵入罪は成立しません。
・警察官が令状に基づいて被疑者宅に立ち入る
・消防士が消火活動のために窓ガラスを割って建物内に立ち入る
故意があること
住居侵入罪が成立するには、他人の住居等であることについての認識(故意)が必要になります。
自分の家だと思って間違って他人の家に入ってしまったときは、故意がありませんので住居侵入罪は成立しません。ただし、「自分の家だと思った」と主張するだけでは足りず、客観的状況からそのような認識に至るのもやむを得ないといえることが必要です。
関連コラム:住居侵入罪とは?成立要件や刑罰、逮捕されたときの対処法を解説
住居侵入罪の構成要件に該当する具体的な行為

空き巣目的で他人の家に忍び込む行為
空き巣目的で他人の家に忍び込む行為は、住居侵入罪の構成要件に該当する典型的なケースといえるでしょう。
他人の家に忍び込み金品などを盗めば住居侵入罪とともに窃盗罪が成立し、何も盗まなかったとしても他人の家に侵入した時点で住居侵入罪が成立します。
盗撮目的でデパートのトイレに立ち入る行為
デパートなどの商業施設は、誰にでも自由な立ち入りが認められているように思えますが、盗撮などの不当な目的での立ち入りはデパートの管理者の意思に反する立ち入りといえます。
そのため、盗撮目的でデパートのトイレへの立ち入りをすると住居侵入罪が成立します。
肝試しで廃墟に立ち入る行為
誰も使っていない建物であっても所有者や管理者が存在する限り、それは「人の看守する建造物」に該当します。
そのため、肝試しやYouTubeの配信などで廃墟などに立ち入る行為は、住居侵入罪(建造物侵入罪)の構成要件に該当しますので注意が必要です。
離婚した妻が元夫の自宅に勝手に立ち入る行為
元々夫婦で一緒に生活していたとしても、離婚後に妻が元夫の自宅に勝手に立ち入った場合には、住居侵入罪が成立する可能性があります。
元夫が自由に出入りしてもよいと許可していれば問題ありませんが、そうでない場合には他人の住居に立ち入る場合と同様に住居侵入罪の対象となってしまいます。元夫婦であるという事情は「正当な理由」にはなりませんので注意しましょう。
住居侵入罪の構成要件に該当しない具体的な行為

以下では、他人の住居への立ち入りがあるものの住居侵入罪の構成要件に該当しない具体的な行為を紹介します。
他人の家から煙が出ていたため消火目的で立ち入る行為
他人の家から火や煙が出ているのと見つけると、消火や人命救助の目的で他人の住居に立ち入ることがあります。このような立ち入り行為については、「正当な理由」がありますので、住居侵入罪は成立しません。
友人から渡された鍵を利用して友人宅に立ち入る行為
友人が不在の自宅に立ち入ったとしても、事前に友人から鍵を渡されているなら管理者の許可があるといえるため、住居侵入罪は成立しません。
ただし、友人に無断で第三者を連れ込む、友人宅から勝手に金品を持ち出すなどの行為があれば管理者の許諾の範囲を超えていますので、住居侵入罪に問われる可能性があるでしょう。
敷地の外から家の中をのぞく行為
敷地の外から家の中をのぞく行為については、住居等への侵入行為がないため住居侵入罪は成立しません。
ただし、のぞきや盗撮に関しては軽犯罪法違反、迷惑防止条例違反、撮影罪などに該当する可能性がありますので、具体的な態様によって罪に問われるリスクはあるでしょう。
住居侵入罪の構成要件に該当しない行為でも軽犯罪法違反に問われる可能性あり
住居侵入罪の構成要件を満たさない場合でも、行為の態様によっては軽犯罪法違反に該当する可能性があります。
軽犯罪法第1条1項では、以下のような行為を処罰対象としています。
一 人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者三十二 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者 |
住居侵入罪は、人の住居または人の看守する邸宅、建物、艦船が対象となるため、人が住んでおらずかつ看守していない場所については対象外ですが、軽犯罪法ではそのような場所も処罰対象となります。
また、住居侵入罪は、住居などの建物(一部、敷地も含む)を対象としているため、土地や田畑などは対象外ですが、軽犯罪法ではそのような場所も処罰対象となっています。
このように住居侵入罪の構成要件を満たさなくても、軽犯罪法で処罰されることがあるため注意が必要です。
なお、軽犯罪法違反の刑罰は、拘留・科料であるため刑罰としては比較的軽微ですが、これも前科になりますので軽視はできません。
住居侵入罪の構成要件に該当する行為をしたときの対処法

住居侵入罪の構成要件に該当する行為をしてしまった場合、そのまま放置していると逮捕・起訴されるリスクがあります。そのようなリスクを最小限に抑えるためにも以下のような対処法を検討しましょう。
被害者と示談をする
住居侵入罪の構成要件に該当する行為をしてしまったときは、被害者との示談がもっとも有効な対処法となります。
被害者との間で示談が成立すれば、当事者間で事件が解決済みであるとして検察官が起訴を見送り、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。ただし、被害者との直接交渉は、トラブルに発展する可能性があるため、弁護士を通じて行うべきでしょう。
関連コラム:住居侵入の示談金はいくら?高額になるケースや払えないときの対処法
自首をする
自ら警察に出頭して事実を申告する自首は、刑の減軽事由とされており、裁判や処分の面で有利に扱われることがあります。
また、自首をすることで逃亡や証拠隠滅の意思がないことを示せるため、逮捕を回避できるという事実上の効果も期待できます。
ただし、自首をすれば絶対に逮捕されないというわけではないため、自首をするかどうかは弁護士と相談しながら慎重に判断するようにしましょう。
すぐに弁護士に相談する
住居侵入罪で逮捕されると、すぐに取調べが始まり、最長で23日間身柄拘束をされる可能性があります。その間の対応を誤れば、不利な供述をしてしまい、起訴・有罪につながりかねません。
そのため、疑いをかけられた段階からできるだけ早く刑事事件に強い弁護士に相談することが重要です。万が一逮捕されたとしても、事前に弁護士に相談をしていれば、事情をよく把握していますので、弁護士が迅速に面会に駆けつけてくれ、釈放や不起訴を目指して動いてくれます。
住居侵入罪の構成要件に該当する行為をしてしまったときはグラディアトル法律事務所に相談を

住居侵入罪は、肝試しや悪ふざけなど些細な出来心や軽い気持ちから犯してしまうケースも多いですが、そのような動機でも刑事責任を問われることになります。また、窃盗やのぞき、盗撮目的がある場合、住居侵入罪以外にも犯罪が成立するため重い処罰を受ける可能性もあります。
前科がつけば、社会的信用の低下や就職・進学への悪影響など、将来に大きなリスクを抱えることになりますので、そのようなリスクを最小限に抑えるためにもまずは刑事事件に強い弁護士に相談することが大切です。
グラディアトル法律事務所は、刑事事件の弁護に特化した弁護士が多数在籍しており、住居侵入罪に関する豊富な実績がありますので、以下のような対応が可能です。
・逮捕直後のスピーディーな接見対応(最短即日対応可)
・被害者との示談交渉の代行
・勾留阻止や早期釈放の働きかけ
・不起訴の獲得に向けた活動
住居侵入罪は初犯であれば不起訴や略式命令(罰金)で済む可能性もありますが、対応を誤れば起訴されてしまい、正式な刑事裁判に発展するおそれもあります。
そのため、「初めてだから大丈夫」と自己判断せず、できるだけ早期に弁護士のサポートを受けることが、将来へのダメージを最小限に抑えるために不可欠です。
グラディアトル法律事務所では、初回の無料相談を実施しています。
「この行為が犯罪になるのか不安」「すでに警察から連絡があった」といった段階でも構いません。刑事事件は時間との勝負ですので、迷ったらすぐに当事務所までご相談ください。
まとめ
住居侵入罪は、「他人の住居などに正当な理由なく立ち入ること」を処罰対象とする犯罪であり、軽い気持ちの行動でも罪に問われる可能性があります。
住居侵入罪に関する不安がある方は、一人で悩まず、刑事事件に強い弁護士に早めに相談することを強くおすすめします。グラディアトル法律事務所では、迅速な対応と的確なアドバイスで、依頼者の不安を少しでも早く解消するお手伝いをしていますので、まずは当事務所までご相談ください。