「逮捕される可能性のある麻薬にはどのようなものがある?」
「麻薬取締法ではどのような行為が規制対象になっている?」
「麻薬で逮捕されるケースとしてはどのようなものがある?」
麻薬取締法では、大麻、コカイン、ヘロイン、MDMA、LSDなどの麻薬や向精神薬に関する規制をしていますので、このような麻薬等を所持、使用、譲渡・譲受、輸入・輸出、製造、販売、栽培すると麻薬取締法違反で逮捕・勾留される可能性があります。
麻薬などの薬物犯罪の起訴率は、非常に高いため、逮捕・勾留された事件の多くは起訴されて有罪になってしまいます。有罪になれば前科が付いてしまいますが、執行猶予を獲得できれば刑務所に収監されず、これまで通りの生活を送ることが可能です。そのため、麻薬事件では、執行猶予付き判決を獲得することが重要になります。
本記事では、
・麻薬取締法違反で逮捕される可能性のある行為類型 ・麻薬取締法違反で逮捕される4つのケース ・麻薬取締法で逮捕されたときの弁護方針 |
などについてわかりやすく解説します。
麻薬事件で執行猶予付き判決を獲得するには、薬物事件に強い弁護士によるサポートが不可欠ですので、逮捕されたときは一刻も早く弁護士に依頼することをおすすめします。
目次
麻薬取締法で規制されている「麻薬」とは?
麻薬取締法で規制されている麻薬には、主に以下のようなものがあります。
薬物の種類 | 薬物の特徴 |
---|---|
大麻 | 大麻草という植物由来の薬物で「マリファナ」と呼ばれることもある。テトラヒドロカンナビノールという脳に作用する成分が含まれている |
コカイン | 南米原産のコカの葉から作られた強力な中毒性を持つ精神刺激薬。一般に出回っているコカインは細かな白い結晶のパウダー状をしている |
ヘロイン | けしを原料として作られる薬物で、その作用は鎮痛剤として使用される「モルヒネ」と同様だが、モルヒネよりも強力な麻酔作用がある。一般的な形状は白色粉末。 |
MDMA(合成麻薬) | メチレンジオキシメタンフェタミンの略称。気分や知覚に変化をもたらす合成麻薬の一つ。一般的には錠剤やカプセルの形で密売され、「エクスタシー」と呼ばれることもある |
なお、大麻については、以前は大麻取締法の規制対象でしたが、法改正により大麻も「麻薬」としての位置づけに代わり、2024年12月12日からは麻薬取締法の規制対象になっています。
麻薬取締法違反で逮捕される可能性のある行為類型
麻薬取締法違反で逮捕される可能性のある行為としては、以下のようなものが挙げられます。
・麻薬の所持:麻薬を所持する |
・麻薬の使用:麻薬を使用する |
・麻薬の譲渡、譲受:麻薬を人に譲り渡すまたは譲り受ける |
・麻薬の輸入、輸出:麻薬を国内に輸入するまたは国外に輸出する |
・麻薬の製造:麻薬を作る |
・麻薬の栽培:麻薬の原料となる植物を栽培する |
これらの行為をすると麻薬取締法違反として逮捕され、以下のような刑罰が科される可能性があります。
種類 | 態様 | 営利目的の有無 | 法定刑 |
---|---|---|---|
ヘロイン系の麻薬 | 所持、使用、譲渡・譲受 | 営利目的なし | 10年以下の懲役 |
営利目的あり | 1年以上の懲役 ※情状により500万円以下の罰金が追加 | ||
輸入・輸出、製造 | 営利目的なし | 1年以上の懲役 | |
営利目的あり | 無期または3年以下の懲役※情状により1000万円以下の罰金が追加 | ||
ヘロイン系以外の麻薬 | 所持、使用、譲渡・譲受、栽培 | 営利目的なし | 7年以下の懲役 |
営利目的あり | 1年以上10年以下の懲役※情状により300万円以下の罰金が追加 | ||
輸入・輸出、製造 | 営利目的なし | 1年以上10年以下の懲役 | |
営利目的あり | 1年以上の懲役※情状により500万円以下の罰金が追加 |
麻薬取締法違反の罪は、ヘロイン系の麻薬や営利目的がある方が重く処罰されることになります。特に、営利目的でのヘロインの輸入・輸出、製造は、法定刑に「無期懲役」が含まれていますので、裁判員裁判の対象になります。
麻薬取締法違反で逮捕される4つのケース

麻薬取締法違反で逮捕される可能性があるのは、主に以下の4つのケースです。
職務質問で麻薬の所持が発覚して現行犯逮捕
麻薬の常習者は、違法薬物による影響により異常な行動をとったり、明らかに様子がおかしいため、パトロール中の警察官に見つかると職務質問をされることがあります。
職務質問の際に所持品を検査されると麻薬が見つかってしまうこともあります。簡易検査の結果、麻薬であることが判明すれば、その場で現行犯逮捕となります。
任意同行後の尿検査で麻薬の使用が発覚して現行犯逮捕
警察官の職務質問の際には麻薬が発見されなかったとしても、明らかに異常な言動をしている場合、犯罪捜査のために警察署に任意同行を求められることがあります。
任意同行後は薬物使用の有無を確かめるために、尿検査が行われますので、尿から麻薬が検出されれば、麻薬の使用の現行犯として逮捕されてしまいます。
なお、尿の提出はあくまでも任意ですが、拒否し続けるとカテーテルによる強制採尿が行われますので、できる限り任意の応じた方がよいでしょう。
麻薬の売人が捕まり、顧客リストが流出して後日逮捕
麻薬の密売人が捕まると、押収された証拠から顧客リストが流出し、警察が麻薬の購入者の情報を把握します。
密売人の供述や顧客リストなどを踏まえて捜査を進め、麻薬の購入者が特定されれば、ある日突然警察官が自宅にやってきて、逮捕状による後日逮捕(通常逮捕)となる可能性があります。
家族や友人からの通報により逮捕
麻薬を使用していると妄想や幻覚などから異常な行動をとるため、本人のことを心配した家族や友人から警察に通報がなされることがあります。
通報を受けた警察は、薬物事件として捜査を進めますので、その後嫌疑が固まれば、逮捕状による後日逮捕となる可能性があります。また、捜査の段階で、麻薬の所持が明らかになればその時点で現行犯逮捕となる可能性もあります。
麻薬で逮捕された実際の事例
合成麻薬MDMAを所持した疑いで19歳の少年が逮捕
沖縄署は、北谷町美浜の路上で合成麻薬MDMAを含有する錠剤0.84グラムを所持していたなどとして、麻薬取締法違反(所持・使用)の疑いで塗装工の特定少年(19)を逮捕しました。
沖縄署によると、パトロール中の署員が路上にいた特定少年に職務質問をしようとしたところ、逃走を図ったという。所持品検査で所持が判明したとのことです。
(引用:琉球新報)
職務質問から逃走を図った特定少年、麻薬所持・使用の疑いで逮捕 北谷の路上 沖縄署
おとり捜査により大麻コカイン販売目的所持で逮捕
大麻やコカインなどを販売する目的で所持していたなどとして、北九州市に住む20代の3人が逮捕・起訴されました。
取締官が客を装って麻薬を譲り受ける「おとり捜査」で事件が発覚したもので、秘匿性の高い通信アプリを使って若者を中心に密売を繰り返していたとみられるということです。
九州厚生局麻薬取締部によりますと、被告らはことし1月、共謀して大麻やコカイン、合成麻薬のMDMAなどを販売する目的で所持していたなどとして、麻薬取締法違反の罪に問われています。
これまでの調べに対し、いずれも、おおむね容疑を認めているということです。
被告らは去年9月ごろから、複数のスマートフォンを利用しSNS上で販売を呼びかけて、秘匿性の高い通信アプリの「テレグラム」に誘導した上で、麻薬を示す絵文字などの隠語を使って交渉し、手渡しで密売を繰り返していたということです。
去年12月、取締官が客を装って麻薬を譲り受ける「おとり捜査」で事件が発覚したということで、麻薬取締部は、若者を中心に密売を繰り返し、逮捕までのおよそ5か月間で少なくとも2000万円以上を売り上げたとみています
(引用:NHK)
麻薬取締法違反で逮捕された場合の流れ

麻薬取締法違反で逮捕されると、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
警察による取り調べ
麻薬取締法違反で逮捕されると警察署に連行され、警察による取り調べを受けることになります。麻薬のような薬物犯罪は、警察でも芋ずる式に違反者を検挙しようとしますので、関係者を明らかにするために厳しい取り調べが行われることもあります。
取り調べで供述した内容は、後日の裁判の証拠として扱われますので、供述調書に不利な内容が書かれていないかどうかをしっかりとチェックするようにしてください。
なお、逮捕には時間制限があり、警察は、被疑者の逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません。
検察官送致|勾留請求率はほぼ100%
検察官は、被疑者の身柄を引き続き拘束する必要があると判断したときは、送致から24時間以内に、裁判官に勾留請求を行わなければなりません。
2023年検察統計(23-00-41参照)によると、麻薬取締法違反で逮捕された事件は、ほぼすべてが勾留請求されていますので、勾留請求を阻止するのは難しいといえるでしょう。
勾留・勾留延長|勾留決定率は99%以上
裁判官は、被疑者に対する勾留質問を行い、勾留を許可するかどうかの判断を行います。
勾留が許可されるとそこから原則として10日間の身柄拘束となり、さらに勾留延長も許可されれば最長10日間の身柄拘束期間が追加されます。
なお、2023年検察統計(23-00-41参照)によると麻薬取締法違反事件について検察官により勾留請求がされた事件が1151件であるのに対し、勾留が許可されたのは1138件ですので、99%以上の事件で勾留が許可されています。
起訴または不起訴の決定|起訴率は約60%
検察官は、勾留期間が満了するまでの間に起訴または不起訴の決定を行います。
なお、2023年検察統計(23-00-08参照)によると、麻薬取締法違反で起訴された事件は1071件、不起訴になった事件は711件ですので、麻薬取締法違反事件の起訴率は約60%ということになります。
麻薬取締法違反で逮捕された場合のリスク

麻薬取締法違反で逮捕されてしまうと、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
仕事を解雇されるリスク
麻薬取締法違反で逮捕されると、最大で23日間にも及ぶ身柄拘束をされる可能性があります。逮捕・勾留中は、当然会社に行くことはできませんので、長期間の欠勤が続くと、解雇されるリスクが高くなります。
また、多くの会社では就業規則において刑事事件で有罪判決を受けたことを懲戒事由として定めていますので、今後裁判が行われ有罪判決が確定すると懲戒解雇になるリスクもあります。会社員ではなく自営業だったとしても、薬物犯罪に手を染めたことで社会的信用性が失墜しますので、廃業に追い込まれてしまうリスクもあります。
学校を退学になるリスク
未成年者が麻薬取締法違反で逮捕されると、逮捕・勾留後、観護措置をとられますので、成人よりも長期間身柄拘束をされる可能性があります。
少年事件では、普段の生活状況などを調査するために学校に照会が行くこともあるため、学校に薬物犯罪で逮捕されたことを隠すのは難しいでしょう。その後、薬物犯罪で審判が言い渡されれば、学校としても何らかの対応をせざるを得ませんので、最悪のケースでは退学処分になる可能性もあります。
仮に退学にならなかったとしても、周囲に薬物犯罪で逮捕されたとの噂が広がり、結果として自主退学に追い込まれてしまうケースもあります。
薬物依存状態になるリスク
麻薬などの薬物犯罪のおそろしいところは、その依存性にあります。
違法薬物を繰り返し使用していると、薬物がなければ生活できない状況になり、自分の意思だけでは薬物の使用をやめられなくなってしまいます。このような薬物依存は、意識障害や幻覚、妄想といった症状が引き起こされたり、心疾患、脳血管疾患、肝機能障害などを発症することもあるなど精神や身体にさまざまな障害が生じることになりますので、通常の社会生活を送るのが困難な状態になってしまうでしょう。
さらに、違法薬物を購入するためのお金欲しさに、窃盗や強盗など別の犯罪に手を染めてしまうこともあります。
麻薬取締法違反で逮捕されたときの弁護方針

麻薬取締法違反で逮捕された場合には、すぐに弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士に依頼することで、以下のような弁護活動によりサポートしてもらうことができるでしょう。
早期に面会を行い取り調べに対するアドバイス
麻薬取締法違反で逮捕されると警察による厳しい取り調べを受けますので、何も知らずに対応すると不利な内容の供述調書がとられてしまうリスクがあります。
逮捕時に面会できるのは弁護士だけですので、逮捕されたときはすぐに弁護士に依頼することが重要です。依頼を受けた弁護士は迅速に警察署に駆けつけて、被疑者との面会を行い、取り調べに対するアドバイスを行いますので、不利な調書を取られるリスクを回避することが可能です。
保釈請求による身柄の解放
麻薬取締法違反で逮捕・勾留されたとしても、起訴後であれば保釈請求により身柄解放を実現することができます。
捜査段階から弁護士に依頼すれば、起訴後の保釈請求に向けて保釈金や身元引受人の手配を進めてくれますので、起訴後すぐに保釈請求を行うことができます。迅速な身柄解放を実現するためにも早めに弁護士に依頼することが大切です。
薬物依存を克服するための環境調整
麻薬取締法違反で起訴されれば、ほとんどの事件が有罪になりますので、執行猶予付き判決を獲得できるかどうかが重要なポイントになります。そこで重視されるのが再犯の可能性です。
弁護士に依頼すれば、薬物依存専門の医療機関や自助グループなどを紹介してもらうことができますので、適切な治療や支援を受けることで、違法薬物との関係を断ち切ることができるはずです。このような再犯防止に向けた取り組みは、刑事裁判でも有利に評価してもらうことができますので、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高くなるでしょう。
贖罪寄付
贖罪寄付とは、刑事事件の被疑者・被告人が、反省の気持ちを示すために、弁護士会や被害者支援団体などに寄付をすることをいいます。
麻薬取締法違反事件は、被害者が存在しない犯罪ですので、被害者と示談することができませんので、示談により有利な処分を獲得するのは不可能です。
しかし、贖罪寄付をすれば事件を起こしてしまったことに対する反省の気持ちを示せますので、判決でも贖罪寄付をしたことを一定程度考慮してもらうことが可能です。
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麻薬取締法違反で逮捕されたときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

麻薬取締法違反で逮捕されたときは、薬物犯罪に強い弁護士によるサポートを受けることで、早期釈放は執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高くなります。そのため、警察から家族が麻薬で逮捕された旨の連絡がきたときは、すぐに弁護士に相談するようにしてください。
グラディアトル法律事務所では、薬物犯罪の弁護に関する豊富な経験と実績があり、麻薬取締法違反事件の弁護も得意としています。麻薬事件で有利な処分を獲得するためのポイントを熟知しているため、効果的な弁護活動により、執行猶予付き判決を獲得できる可能性を高めることが可能です。
また、当事務所では刑事事件に関してスピード対応を心がけていますので、最短で即日対応が可能です。身柄拘束されている場合には、すぐに警察署に駆けつけて面会を実施しますので、一刻も早く当事務所までご相談ください。
さらに、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。初回法律相談を無料で対応していますので、麻薬取締法違反事件に関する相談をご希望の方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
まとめ
麻薬の所持や使用は、麻薬取締法により規制されていますので、職務質問などをきっかけに麻薬の所持や使用が発覚すると、逮捕・勾留される可能性が高いです。
そのまま起訴されればほとんどの事件が有罪になりますので、執行猶予付き判決を獲得するためにもできる限り早く弁護士に依頼するようにしてください。
家族が麻薬で逮捕されてしまったときは、薬物犯罪に強いグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。