「無免許過失運転で人をけがさせるとどんな刑罰を受けることになるのか」
「なんとかして罪を軽くすることはできないのか」
無免許で車を運転し、人をけがさせたり、死亡させたりした場合は「無免許過失運転致死傷罪」の罪に問われます。
無免許過失運転致死傷罪は重大な犯罪行為であるため、場合によっては刑務所に入ることも覚悟しなければなりません。
実際、無免許過失運転致死傷罪の疑いをもたれ、今後どのような処分が下されるのか不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、無免許運転中の過失致死傷に関して、刑罰や量刑相場などを解説します。
刑罰を軽くするための対処法についても詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
無免許運転で人を死傷させると「無免許過失運転致死傷罪」に問われる
まずは、無免許過失運転致死傷罪の構成要件や刑罰について解説します。

構成要件|無免許で運転上必要な注意を怠り、人を死傷させていること
無免許過失運転致死傷罪の構成要件は、大きく分けて以下の3つです。
- ・無免許で自動車を運転していること
- ・運転に必要な注意を怠ったこと
- ・人を死傷させたこと
「無免許」とは、そもそも免許を取得していない、免許が停止・取消になっているケースなどを指します。
「運転に必要な注意を怠ったこと」は、前方不注意・信号無視・居眠りなどが該当します。
たとえば、免許を持たない人が自動車を運転し、よそ見をして歩行者をはねてしまった場合は、適切な注意を欠いた運転により被害者を死傷させているため、無免許過失運転致死傷罪が成立します。
刑罰|10年以下の拘禁刑
無免許過失運転致死傷罪の刑罰は「10年以下の拘禁刑」です。
通常の過失運転致死傷罪の刑罰が「7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」なので、無免許運転を理由に刑罰が加重されていることがわかります。
免許なしでの運転自体が大きな危険をともなうため、刑罰が加重されるのも当然のことといえるでしょう。
なお、無免許過失運転致死傷罪の刑罰には罰金刑の規定がないので、略式起訴の対象外です。
【略式起訴とは】 正式な裁判を省略し、書面審理のみで判決を言い渡す手続きのこと。100万円以下の罰金または科料にあたる事件が対象となる。 |
つまり、無免許過失運転致死傷罪で起訴されると、必ず公開の裁判が開かれ、検察官からは拘禁刑を求刑されることになります。
無免許過失運転致死傷罪と無免許危険運転致死傷罪の違い
無免許過失運転致死傷罪と無免許危険運転致死傷罪の違いは以下のとおりです。
無免許過失運転致死傷罪 | 無免許危険運転致死傷罪 | |
構成要件 | 無免許で過失により人を死傷させる | 無免許で著しく危険な運転により 人を死傷させる |
具体例 | わき見運転や信号無視など | 酒酔い運転や 極端な速度超過など |
刑罰 | 10年以下の拘禁刑 | 致傷:15年以下の拘禁刑 致死:1年以上20年以下の拘禁刑 |
無免許過失運転致死傷罪には、主に「不注意」による事故が該当します。
一方、無免許危険運転致死傷罪は運転方法自体が危険なものだったと認定されるため、刑罰も重く規定されています。
ただし、危険運転といえるかどうかの判断は難しいケースが多いので、まずは弁護士に相談することが重要です。
無免許過失運転致死傷罪で逮捕されたあとの流れ
無免許過失運転致死傷罪で逮捕されたあとは、おおむね以下の流れで手続きが進められます。

逮捕後は、まず警察官による取調べを受けます。
警察署の取調室で、無免許運転に至った経緯や事故の詳細などを詳しく質問されることになるでしょう。
その後は、48時間以内に検察に送致され、検察官による取調べを受けるケースが一般的です。
そして24時間以内に、検察官は被疑者を釈放するか、引き続き身柄を拘束したまま取調べを続けるかを決定します。
とはいえ、基本的には勾留され、原則10日間・最長20日間の身柄拘束を受けなければなりません。
最終的に、検察官が起訴・不起訴の判断をおこないます。
不起訴になれば、その時点で釈放され、今後罪に問われる心配もありません。
起訴された場合は裁判が開かれ、審理を経て裁判官から判決を言い渡されます。
無免許過失運転致死傷罪の量刑相場
次に、無免許過失運転致傷と無免許過失運転致死に分けて、量刑相場をみていきましょう。

無免許過失運転致傷|実刑率は約13%
2023年における無免許過失運転致傷の実刑率は13.3%です。
実際の科刑状況は以下のとおりです。
6月未満 | 1年未満 | 1年以上 | 2年以上 | 3年 | 5年以下 | |||||
実刑 | 執行猶予 | 実刑 | 執行猶予 | 実刑 | 執行猶予 | 実刑 | 執行猶予 | 実刑 | 執行猶予 | 実刑 |
4 | 17 | 24 | 198 | 24 | 158 | 6 | 27 | 1 | 9 | 3 |
(参考:令和6年版犯罪白書|法務省)
ケースバイケースですが、無免許過失運転致傷の実刑率はそれほど高くありません。
特に被害が軽微であり、加害者本人も反省しているようであれば、執行猶予がつく可能性が高いといえるでしょう。
無免許過失運転致死|実刑率は約69%
2023年における無免許過失運転致死の実刑率は68.8%です。
6月未満 | 1年未満 | 1年以上 | 2年以上 | 3年 | 5年以下 | |||||
実刑 | 執行猶予 | 実刑 | 執行猶予 | 実刑 | 執行猶予 | 実刑 | 執行猶予 | 実刑 | 執行猶予 | 実刑 |
0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 4 | 2 | 1 | 3 | 4 |
(参考:令和6年版犯罪白書|法務省)
無免許過失運転致死罪は人を死亡させる重大な犯罪であるため、「致傷」と比べると実刑率も高くなります。
執行猶予を獲得するためには、戦略的かつ迅速な対応が欠かせません。
実刑になるかどうかでその後の人生は大きく変わってくるので、一刻も早く弁護士に相談してください。
無免許過失運転致死傷罪の罪に問われた場合にやるべきこと
ここでは、無免許過失運転致死傷罪の罪に問われた場合にやるべきことを解説します。

被害者や遺族に謝罪して示談を申し込む
無免許過失運転致死傷罪で罪に問われた場合、被害者や遺族に謝罪し、示談を申し込むことが重要です。
示談の成立は、被害者側と和解した証明になるものです。
被害者本人や遺族の許しを得たことをアピールできれば、不起訴処分になったり、執行猶予がついたりする可能性が高くなります。
また、示談が成立しなくても、示談交渉の過程で誠意を示すことで、検察官や裁判官にプラスの印象を与えられるケースもあります。
ただし、加害者が被害者側に直接示談を申し込むことは、余計なトラブルを起こしかねないのでおすすめしません。
示談交渉に関することは、法律の専門家であり、交渉のプロでもある弁護士に依頼するのが賢明な判断といえるでしょう。
できるだけ早く弁護士に相談する
無免許過失運転致死傷罪の罪に問われたときは、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
弁護士による迅速な法的対応が身柄解放や不起訴処分、刑罰の軽減につながるからです。
具体的には、以下のようなサポートを受けることができます。
- ・逮捕直後の接見
- ・取調べに関する適切な助言
- ・被害者・遺族への謝罪や示談交渉の代理
- ・保険会社との連絡調整
- ・勾留阻止に向けた弁護活動
- ・事故発生の状況や運転態様の法的評価
- ・適切な罪名適用を求めるための意見書提出
- ・捜査機関への働きかけ
- ・裁判における弁護活動
無免許過失運転致死傷罪に該当する場合、厳しい刑事処分を受ける可能性が高いです。
弁護士費用を気にして相談・依頼をためらっていると、あとで後悔することにもなりかねません。
初回相談であれば無料で応じている法律事務所も多いので、一人で悩む前に、まずは弁護士にアドバイスを求めることが大切です。
無免許過失運転致死傷罪に関してよくある質問
最後に、無免許過失運転致死傷罪に関してよくある質問を紹介します。

同様の疑問を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
未成年でも無免許過失運転致死傷罪の刑罰は受ける?
未成年者であっても、無免許過失運転致死傷罪の刑罰を受ける可能性があります。
14歳以上の未成年者が重大な交通犯罪を起こした場合、少年法により更生を目指した保護処分が優先されるのは事実です。
しかし、無免許過失運転致死傷のような重大な事件では、家庭裁判所から検察に送致され、成人と同様、刑事裁判にかけられることがあります。
その結果、有罪になると刑罰に処されてしまうのです。
また、検察送致にならない場合でも、少年院に送られるケースもあるなど、厳しい処分が下されることは覚悟しておかなければなりません。
無免許過失運転致死傷罪の起訴率は?
2023年の統計によると、無免許過失運転致死傷罪の起訴率は77.8%です。(参考:検察統計調査 検察統計|総務省統計局)
具体的には、無免許過失運転致死傷罪で起訴されたのが561人、不起訴になったのが160人とされています。
刑法犯全体の起訴率が約23%であることを踏まえると、無免許過失運転致死傷罪は高い水準にあるといえるでしょう。
無免許運転中の交通事故はグラディアトル法律事務所に相談を!
本記事のポイントは以下のとおりです。
- ・無免許過失運転致死傷罪は無免許で運転し、必要な注意を怠って人を死傷させた場合に成立する
- ・無免許過失運転致死傷罪の刑罰は「10年以下の拘禁刑」
- ・無免許過失運転致死傷罪に問われた際は示談の成立が最重要
- ・無免許過失運転致死傷罪の起訴率は高い水準にある
- ・未成年であっても一定の条件のもと刑事責任を問われる可能性がある
無免許過失運転致死傷罪は起訴され、実刑になる可能性が高い犯罪のひとつです。
適切に対応しなければ、刑務所に入れられ、仕事や家庭を失うおそれもあります。
また、服役後も前科による社会的不利益に苦しむことになるでしょう。
そのため、少しでも今後の処分を軽くしたいのであれば、一刻も早く弁護士に相談してください。
グラディアトル法律事務所では、刑事事件を得意とする弁護士が24時間体制で相談を受け付けています。
初回相談は無料、LINEでの相談にも対応しているので、困ったときはいつでもご連絡ください。