名誉毀損の時効を徹底解説!告訴期間やログの保存期間との違いまで網羅!

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弁護士 若林翔
2025年08月08日更新

「もう2年以上前の書き込みだし、さすがに時効で大丈夫だよね…?」
「名前までは書かなかったし、削除もしたし、もう訴えられることはないでしょ?」

そんなふうに“ほっとしている方”、いませんか?
この記事では、現実世界での発言とネットでの投稿、それぞれの名誉毀損の時効の違いや、告訴期間、さらに見落とされがちなログ保存期間について、分かりやすく解説していきます。

この記事で分かること

 名誉毀損罪(刑事)では、現実とネットで、時効の起点がまったく異なる
 ネット投稿は削除しないと、いつまでも時効が始まらない
 民事と刑事で、時効の数え方も違うので注意が必要
 間違えやすい告訴期間は原則“犯人を知ってから6か月以内”
 ログ保存期間は最大1年が多く、証拠が残っている可能性も

名誉毀損の「時効」と聞くと、「投稿から〇年経てば安心」と思い込んでいる方が多いですが、それは非常に危険な勘違いです。
とくにネット上での投稿は、削除しない限り“今も犯行中”とみなされるため、投稿した過去ではなく「削除した未来」から時効が始まります。

こうした複雑なルールは、ネット検索では分かりづらく、判断を誤ると「時効だと思っていたのに訴えられた」という事態にもつながります。
不安がある方は、できるだけ早く弁護士に相談することを強くおすすめします。

このあとからは、現実とネットで異なる時効のルールを具体例つきで解説していきます。
まずは刑事事件としての名誉毀損罪の時効から見ていきましょう。

名誉毀損罪(刑事)の時効は2種類!現実とネットの書込みで変わる!

名誉毀損の刑事の時効は2種類

名誉毀損を現実で行った場合:行為終了時点から時効が進行する

現実世界での名誉毀損は、言葉にしたその瞬間からカウントが始まります。
つまり、その場で発した発言が誰かの名誉を傷つけた場合、「言ったその時」がスタートになります。
刑法では公訴時効というルールがあり、その時効は「行為が終わった時」からカウントするとされています。つまり、名誉毀損では、該当する発言をした時点から数え始めることになります。
例えば、以下のようになります。

場所内容時効カウント開始
職場の会話「あの人、犯罪歴あるらしいよ」発言したその日
学校での噂話「あいつ浮気してるって」話したその日

名誉毀損をネットで行った場合:書込み削除時点から時効が進行する

名誉毀損にあたるネットの投稿を放置していると、何年経っても時効が始まりません。
ネット上での名誉毀損は、投稿が閲覧可能な限り「行為が続いている」とされます。
このため、時効のカウントは投稿を「削除した時」から始まるのです。
例えば、以下のようになります。

投稿内容削除日時効カウント開始
「○○は詐欺師です」2025年7月10日2025年7月10日
「あいつは会社の金を横領してる」削除せず放置進行しない

刑事の時効は、進行から3年経過で成立

名誉毀損罪は、時効が進み始めてから3年経つと、それ以降は処罰されません。
公訴時効は「行為が終わってから3年」というルールがある一方、ネットでは「削除しないと終わらない」ため、放置しているとずっとリスクが残ります。
例えば、以下のようになります。

内容会話・投稿時期削除日時効の成立日
職場の会話
「あの人は犯罪歴がある」
2020年1月(なし)2023年1月
ネットで投稿
「○○は詐欺師です」
2020年1月2025年7月2028年7月

名誉毀損(民事)の時効は、名誉毀損罪(刑事)と異なる!

名誉毀損(民事)の時効は、名誉毀損罪(刑事)と異なる!

名誉毀損(民事)は被害者が損害及び犯人を知った時からカウント

民事の名誉毀損では、「いつ被害者が気づいたか」で時効のカウントが決まります。
つまり、加害者が名誉毀損を行った日ではなく、「被害者が損害及び加害者を知った日」が重要です。ネットの場合、書込みから何年も経って発見されることがあるため、その時点からでも時効が始まります。
具体例:

書込み日加害者特定日時効カウント開始日
2021年3月2022年6月2022年6月

名誉毀損(民事)の時効も進行から3年経過で成立

名誉毀損(民事)では、時効が進行して3年経過した時点で時効が成立し、請求はできなくなります。
ただし、名誉毀損(刑事)のように「行為終了時」ではなく、あくまで「被害者が気づいた日から」です。
民事事件は、被害者の保護を優先して、発見が遅れても3年間の猶予があります。

具体例:

書込み日加害者が特定された日損害賠償請求が可能な期限
2021年3月2024年1月2027年1月まで

名誉毀損(民事)時効は中断・延長されるケースもある


時効の中断=時効の完成の猶予とは

民事の時効の進行は、特定の行為でストップ(中断)されることもあります。
例えば、被害者から内容証明が届けば、届いてから6か月間は、時効が完成しないことになります(=時効の完成の猶予)。

時効の延長=時効の更新とは

民事の時効の進行は、特定の行為で「再スタート」(更新)されることもあります。
例えば、借金の時効が進行していても、一部でも借金の返済をすると、進行していた時効の期間が再びリセットされます。

名誉毀損において、時効の中断・延長されるケースとは

例えば、被害者から、名誉毀損行為の損害賠償請求に関する内容証明郵便が送られてきた場合には、その時効の進行はストップ(中断)されます。
また、さらに名誉毀損の判決が下されれば、時効の更新があったとして、判決が確定した日から時効が再スタートします。

時効と間違えやすい「告訴期間」

告訴期間とは

告訴期間とは、告訴、つまり被害者が警察に犯罪を訴えることができる期間のことです。
逆に言えば、この期間を超えると被害者が被害を訴えることはできなくなります。
名誉毀損罪は、被害者が警察に被害を訴えなければ捜査がなされない「親告罪」であるため、告訴期間の経過は重要です。


告訴期間は“犯人を知ってから6か月”

名誉毀損罪における告訴期間は、被害者が名誉毀損行為の犯人を知った後、6ヶ月以内です。
「犯人を知った」とは、ネットの書込みでは発信者情報開示請求等で犯人の氏名や住所などを知ったことを言います。
投稿を発見した時や、書き込んだ人のハンドルネームを知った時ではありません。

ネットの名誉毀損では犯人を知って6ヶ月を経過しても告訴できる場合もある

インターネットにおける名誉毀損行為は、投稿が削除されていない場合、犯人を知ってから6か月経過しても告訴できるとされています。
これは裁判例において、インターネットにおける名誉毀損行為は、投稿が削除されない限り犯罪行為は継続し、告訴期間のカウントはしないとされているからです。

時効と間違えやすい「ログ保存の期間」

ログの保存期間とは

インターネットの名誉毀損においては、犯人の身元特定の為、アクセス情報である「ログ」のデータが必要となります。
しかし、このログデータは毎日膨大な量となるため、一定の保存期間を過ぎれば削除されるのが一般的です。

プロバイダのログ保存期間は“最大1年”が多い

プロバイダのログ保存期間は、最大1年というケースが多いです。
もっとも、プロバイダによってはそれより長い期間保存しているケースや、被害者側の弁護士からログの保存請求をしており、プロバイダが1年を超えて保存しているケースもあり、油断は禁物です。

投稿を削除してもログは残る

一見、投稿を消せば安全そうに見えますが、ログの保存期間中はプロバイダ側のログデータが残されているため、身元が特定されるリスクが潜在的に続きます

まとめ

• 名誉毀損罪(刑事)の時効は、現実とネットで起点が異なる
• ネットの投稿は削除しない限り、時効が進行しない
• 民事と刑事でカウント開始の基準が違う
• 告訴期間は“犯人を知ってから6か月以内”が原則
• ログ保存期間は1年が多く、削除しても特定リスクが残る

名誉毀損に関する「時効」は非常に複雑で、勘違いが大きなリスクにつながります。
もし投稿が残っていたり、不安な点があれば、早めに弁護士へ相談することがトラブル回避の第一歩です。

名誉棄損で時効のリスクを負うよりできることはあります。本気で対処したいと考えている方は、誹謗中傷案件に強いグラディアトル法律事務所にご相談下さい。

グラディアトル法律事務所では、365日24時間お問い合わせが可能であり、スピーディな対応を求められる案件において迅速な対応をさせていただいております。

数多くのご相談いただいておりますので、当日対応ができない場合がございますが、2日以内には相談設定等のご連絡をさせていただいておりますので、ご安心ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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