「名誉毀損で前科がつくことはあるの?」
「前科がつくとどうなるの?」
名誉毀損は刑法第230条に定められた犯罪行為であり、刑事裁判で有罪になると前科がついてしまいます。
前科がつくと、社会生活にさまざまな不利益が生じるため、何としても回避しなければなりません。
そのため、名誉毀損で罪に問われるおそれがある場合は、一刻も早く信頼できる弁護士に相談してください。
弁護士の助言を受けながら適切に対処すれば、名誉毀損をしたことが事実であっても、前科をつけずに済む可能性は十分あります。
本記事では、名誉毀損で前科がつく可能性や前科がつくデメリットなどを解説します。
前科を回避するためのポイントなども記載しているので、参考にしてみてください。
※刑法改正により、2025年6月から懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されています。
【拘禁刑とは?】 犯罪者を刑事施設に収容し、改善更生に必要な作業を命じたり、指導したりする刑罰のこと。刑務作業は義務ではなく、受刑者の特性に応じた支援プログラムが提供される。 |
目次
名誉毀損は犯罪!裁判で有罪になると前科がつく
名誉毀損罪で刑事裁判にかけられ有罪になると、前科がつきます。
名誉毀損罪の刑罰は「3年以下の懲役もしくは禁錮(拘禁刑)または50万円以下の罰金」ですが、どのような判決が言い渡されたとしても、前科がつくことに変わりありません。
なお、名誉毀損罪の起訴率は約29%です。(参照:2023年検察庁統計)
日本の刑事裁判においては、起訴されるとほぼ確実に有罪になるため、被疑者のうち約29%は前科がついていることになります。
なお、略式起訴によって罰金刑となった場合でも、前科はつく点に注意してください。
名誉毀損で前科がつくまでの流れ
次に、名誉毀損で前科がつくまでの流れを解説します。
被害者による刑事告訴
名誉毀損が事件化するきっかけになるのは、被害者による刑事告訴です。
名誉毀損罪は親告罪なので、被害者の刑事告訴があってはじめて、捜査機関が動き出します。
被害が明らかであり、十分な証拠が揃っている場合は警察が刑事告訴を受理し、捜査に乗り出す可能性が高いといえるでしょう。
なお、刑事告訴は「被害者が犯人を知った日から6か月以内」が期限とされています。
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関連コラム:名誉毀損で刑事告訴されるケースとは?判例や対処法とあわせて解説
捜査機関による取り調べ
名誉毀損で刑事告訴されると、まずは警察の取り調べを受けることになります。
取り調べでは、犯行の動機・内容や反省の有無などについて詳しく聞き取られることになるでしょう。
名誉毀損事件では身柄拘束を受けずに、在宅事件として捜査に協力していくケースが一般的です。
警察の取調べが終わると検察に事件が引き継がれ、さらなる捜査が進められます(送致)。
逮捕後に送致された場合は勾留請求されるケースが多く、最大20日間にわたる身柄拘束を受けながら、取調べに応じていかなければなりません。
起訴
検察の取り調べを受けたあとは、起訴・不起訴が決定されます。
不起訴処分になれば、その時点で釈放され、今後罪に問われることもありません。
起訴された場合は、刑事裁判へと移行します。
なお、名誉毀損事件では、略式起訴という簡易な手続きが選択されることも少なくありません。
略式起訴では公開の法廷で裁判が開かれず、書面審査だけで判決が下されます。
ただし、略式起訴であっても有罪になった場合は前科がついてしまいます。
刑事裁判での有罪判決
名誉毀損罪で正式起訴されると、公開の法廷で審理がおこなわれます。
そして、検察官と弁護人が証拠をもとに意見を主張し合い、最終的に裁判官が有罪・無罪を判断するわけです。
有罪判決が確定すると「3年以下の懲役もしくは禁錮(拘禁刑)または50万円以下の罰金」の刑罰が言い渡されますが、どのような内容であっても、前科として記録されることに変わりありません。
裁判で無罪判決を勝ち取ると前科はつきませんが、刑事裁判での有罪率は99%を超えており、起訴された時点でほぼ確実に有罪が確定します。
名誉毀損で前科がついた場合に生じる不利益
名誉毀損で前科がついた場合は、以下のような不利益が生じます。
- ◇ 社会的な信頼を失う
- ◇ 家族も不当な扱いを受けるおそれがある
- ◇ 一部の職業・資格が制限される
- ◇ 解雇・退学になる可能性がある
- ◇ 就職活動や転職活動で不利になる
- ◇ 海外渡航が制限される
前科は公表されるものではありませんが、ちょっとしたことをきっかけに勘づかれたり、噂話が広がったりすることも少なくありません。
家族や仕事を失う可能性があることも理解したうえで、前科の回避に向けた対策を講じるようにしましょう。
名誉毀損で前科をつけないための対処法
ここでは、名誉毀損で前科をつけないための対処法を解説します。
名誉毀損が事実であっても、その後の対応次第で前科回避の可能性が大きく高まることを念頭に置いておきましょう。
示談を成立させる
名誉毀損で前科をつけないためには、被害者との示談成立が何よりも重要です。
名誉毀損は親告罪なので、被害者の刑事告訴がなければ起訴されることもありません。
つまり、示談を成立させて刑事告訴を阻止できれば、前科を回避できるのです。
仮に刑事告訴された場合でも、示談の成立によって和解していることを証明できれば、不起訴処分になる可能性が大幅に高まります。
なお、示談書には「告訴を取り下げる」「今後告訴しない」などの文言を明記しておくことが大切です。
刑事事件が得意な弁護士に相談する
前科を回避したいのであれば、できるだけ早く刑事事件が得意な弁護士に相談しましょう。
専門的な知識を有する弁護士に介入してもらえば、事件化を防いだり、不起訴を獲得したりしやすくなります。
具体的には、以下のようなサポートが期待できるでしょう。
- ・示談交渉の代行
- ・逮捕後の接見
- ・取調べ対応のアドバイス
- ・法的に有利な証拠の収集
- ・不起訴に向けた捜査機関への働きかけ
- ・再発防止策の検討
弁護士に相談するタイミングが早ければ早いほど、介入できる余地も多く残されています。
一人で悩んでいても事態は好転しないので、一刻も早く信頼できる弁護士を探してください。
グラディアトル法律事務所では、初回相談を無料で受け付けています。
経験豊富な弁護士が24時間365日体制で対応しているので、困ったときはいつでもご相談ください。
名誉毀損の前科に関してよくある質問
最後に、名誉毀損の前科に関してよくある質問を紹介します。
子どもでも名誉毀損で前科がつくことはある?
子どもが名誉毀損で有罪になり、前科がつく可能性は低いといえるでしょう。
まず、14歳未満には刑事責任能力が認められないので、刑事裁判が開かれることすらありません。
また、14歳以上の未成年も、基本的には家庭裁判所で保護観察や少年院送致などの保護処分を受けることになります。
つまり、14歳以上の未成年が重大な事件を起こし、例外的に検察官送致となった場合に限り、裁判にかけられて前科がつくわけです。
前科があることを言いふらすと名誉毀損になる?
前科があることを言いふらす行為は、名誉毀損になり得ます。
名誉毀損の構成要件は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する」ことです。
「前科があること」は具体的な事実の摘示にあたるため、SNSや職場などで不特定多数に言いふらすと名誉毀損の罪に問われる可能性があります。
なお、実際には前科がない場合でも、言いふらすことで社会的評価が低下していれば、名誉毀損が成立する点に注意しておきましょう。
まとめ
本記事のポイントは以下のとおりです。
- ◆ 名誉毀損で有罪になると前科がつく
- ◆ 前科がつくと社会生活にさまざまな不利益が生じる
- ◆ 名誉毀損事件では前科をつけないためにも示談を急ぐことが重要
- ◆ 子どもが名誉毀損で前科者になる可能性は低い
前科がついてしまうと、生涯消えることはありません。
大切なものを失うことにもなりかねないので、前科がつく可能性が少しでもあるのなら、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
法律の専門家である弁護士に相談すれば、個々のケースに合わせた最善の対応策を提案してくれるはずです。
グラディアトル法律事務所は、名誉毀損をはじめ、刑事事件全般を得意とする法律事務所です。
初回相談は無料、LINEでの相談にも応じているので、お気軽にご連絡ください。