名誉毀損で刑事告訴されるケースとは?判例や対処法とあわせて解説

名誉毀損で刑事告訴されるケースとは?判例や対処法とあわせて解説
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弁護士 若林翔
2025年07月15日更新

「名誉毀損で刑事告訴されそう…どうすればいいのか」

「名誉毀損の刑事告訴が受理されるのはどのようなケースなのか」

SNSでの誹謗中傷が絶えない中で、名誉毀損は今や身近にある犯罪のひとつになっています。

実際、名誉毀損で刑事告訴されそうな状況にあり、今後どう行動していけばいいのか判断に迷っている人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、名誉毀損で刑事告訴されるケースや刑事告訴されたあとの流れなどについて解説します。

刑事告訴された場合の対処法も詳しくまとめているので、少しでも円滑な問題解決を望んでいる方は参考にしてみてください。

※刑法改正により、2025年6月から懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されています。

【拘禁刑とは?】
犯罪者を刑事施設に収容し、改善更生に必要な作業を命じたり、指導したりする刑罰のこと。刑務作業は義務ではなく、受刑者の特性に応じた支援プログラムが提供される。

名誉毀損の成立要件|刑事告訴されるケースとは?

名誉毀損の成立要件を満たしている場合は、刑事告訴される可能性があります。

まずは、名誉毀損の構成要件を詳しくみていきましょう。

名誉毀損の成立要件

公然性があること

情報を発信する行為に公然性がある場合は、名誉毀損が成立し得ます。

公然性とは、不特定または多数の人の情報が伝達される状態のことです。

たとえば、複数人が居合わせる職場で不名誉な事実を話したり、SNSに誹謗中傷を投稿したりした場合が該当します。

なお、公然性の有無に関して、明確な人数の基準はありません。

少数の相手にだけ伝えた場合でも、そこから拡散していく可能性が高いときは公然性が認められることがあります。

事実摘示性があること

名誉毀損が成立するためには、「事実摘示性があること」も要件のひとつとされています。

つまり、私的な意見を述べるだけにとどまり、具体的な事実を伝えていなければ、名誉毀損は成立しません

たとえば、「○○さんは以前、詐欺で逮捕されたことがある」や「○○さんが同僚と不倫している」といった発言は、事実を摘示しているため要件を満たします。

一方で、「○○さんはバカだ」といった発言は具体的な事実を示していないため、名誉毀損の要件には該当しません。

なお、摘示された事実が「真実」である必要はなく、虚偽だった場合も名誉毀損は成立します。

名誉を毀損していること

名誉毀損の成立要件には「名誉を毀損していること」も挙げられます。

単に事実を述べるだけでは足りず、その内容が実際に相手の名誉を傷つけていることが求められるわけです。

たとえば、「○○さんには前科がある」と不特定多数の前で発言した場合、社会的評価の低下が予想されるため、名誉毀損の要件を満たす可能性が高いといえるでしょう。

なお、名誉が毀損されているかどうかは、被害者本人の主観や感情で決まるものではありません。

一般的にみてどう影響するかを基準とし、客観的な視点で判断されます。

違法性阻却事由がないこと

以下の違法性阻却事由をすべて満たす場合は、名誉毀損の罪に問われなくなります

  • ・公共の利害に関する事実であること
  • ・公益を図る目的であること
  • ・摘示された事実が真実であることの証明があること

たとえば、多くの消費者が利用する商品・サービスの欠陥を指摘した場合などは、それが社会的評価を下げる内容だったとしても、違法性阻却事由に該当し、免責される可能性が高いといえます。

関連コラム:名誉毀損の構成要件とは?該当する言動の具体例や判例もあわせて解説

名誉毀損は親告罪!刑事告訴されなければ罪に問われない

被害者本人や法定代理人などが刑事告訴しなければ、名誉毀損の罪に問われることはありません。

名誉毀損罪は親告罪であり、検察官が起訴する際には被害者の刑事告訴を必要とするためです。

また、被害者の刑事告訴は必ずしも警察に受理されるわけではありません。

十分な証拠がない場合や被害が軽微である場合などは、警察が受理を断ることもあります。

名誉毀損で刑事告訴されて有罪になった判例

次に、名誉毀損で刑事告訴されて有罪になった判例を2つ紹介します。

名誉毀損で刑事告訴されて有罪になった判例

定期刊行誌で特定の会社・個人を批判する記事を掲載した

まず紹介するのは、自社の定期刊行誌に特定の会社・個人を批判する記事を掲載し、広く頒布したことに対して、名誉毀損の成立を認めた判例です。

【事案概要】

①被告人は雑誌編集責任者として、A社及びB営業部長に関する不適切行為を記事にまとめる企画を立てた。②十分な取材がおこなわれておらず、記事の内容は不確かなものだった。③完成した雑誌は購読契約会員や関係先に郵送された。

(札幌地裁平成21年3月17日判決)

被告人は以前にも名誉毀損で実刑判決を受けており、法規範を軽視する態度が強く批判されました。

一方で、定期刊行誌の発行部数は200部台程度で被害が小規模だったことなどが考慮され、最終的には「懲役1年2ヵ月」が言い渡されています。

公園で拡声器を用いて特定の学校を批判し、その様子を配信した

次に紹介するのは、ヘイトスピーチを受け、その様子をインターネット上で配信されたことに対し、被害者側が刑事告訴して裁判になった事例です。

【事案概要】

①被告人は、朝鮮総聯や朝鮮学校を批判する活動を継続していた②公園で不特定多数に向けて拡声器を使い、「朝鮮学校が日本人を拉致した」などと発言した③自身の活動をインターネット上で公開し、不特定多数が閲覧できる状態にした

(京都地裁令和元年11月29日判決)

本事案では、拡声器を用いていたり、動画をインターネットで公開したりと伝播性の高い方法がとられていたため、悪質性の高さや被害の大きさが指摘されました。

一方で、日本人拉致という公共性の高い問題について、公益を図る目的があったことも考慮され、罰金50万円の判決が言い渡されています。

名誉毀損で刑事告訴されたあとの流れ

名誉毀損で刑事告訴されたあとの流れ

名誉毀損で刑事告訴が受理されると、まず警察による捜査が始まります。

被疑者への事情聴取なども実施されますが、名誉毀損事件では在宅のまま進められるケースが一般的です。

警察の捜査が終了すると、事件は検察に送致され、検察官が起訴・不起訴を判断します。

不起訴になればその時点で釈放されますが、起訴されると刑事裁判に移行し、有罪・無罪や刑罰の内容が言い渡されます。

名誉毀損罪の刑罰は「3年以下の懲役もしくは禁錮(拘禁刑)または50万円以下の罰金」です。

ただし、名誉毀損事件では略式起訴により、書面審理のみで罰金刑が言い渡されることも少なくありません。

なお、逮捕された場合は警察の取り調べ後、検察に送致されるケースが一般的です。

そして、勾留が決定した場合は、起訴・不起訴の判断に至るまで最大23日間にわたる身柄拘束を受ける可能性があります。

名誉毀損で刑事告訴された場合の対処法

次に、名誉毀損で刑事告訴された場合の対処法を2つ紹介します。

名誉毀損で刑事告訴された場合の対処法

早急に示談を成立させる

名誉毀損で刑事告訴された場合は、早急に被害者との示談を成立させることが重要です。

示談が成立し、被害者の処罰感情が和らげば、刑事告訴を取り下げてもらえる可能性があります。

また、示談の成立は当事者間で和解していることの証明になるため、逮捕を回避したり、不起訴になったりしやすくなる点も大きなメリットです。

ただし、加害者から被害者に直接示談を申し込むのは現実的ではありません

余計なトラブルを起こす原因にもなりかねないので、示談交渉は弁護士に任せましょう。

刑事事件が得意な弁護士に相談する

名誉毀損で刑事告訴された場合は、できるだけ早く刑事事件が得意な弁護士に相談してください。

弁護士に相談・依頼すれば、被害者との示談を迅速に進めてくれます

また、取り調べ対応のアドバイスも受けられるので、不用意な発言で不利な立場に追い込まれるようなこともなくなるでしょう。

刑事事件は、初動の対応がなによりも重要です。

早い段階で弁護士が介入できれば、その後の処遇は大きく変わります。

グラディアトル法律事務所は、名誉毀損をはじめ、刑事事件全般を得意とする法律事務所です。

経験豊富な弁護士が24時間体制で相談を受け付けているので、困ったときはいつでもご連絡ください。

名誉毀損の刑事告訴に関してよくある質問

最後に、名誉毀損の刑事告訴に関してよくある質問に回答します。

名誉毀損の刑事告訴に関してよくある質問

刑事告訴が認められる期間は?

名誉毀損の刑事告訴が認められる期間は、「犯人を知った日から6か月以内」です。

ここでいう「犯人を知った」とは、犯人とほかの人の区別がつき、告訴するかしないかを判断できる程度であれば足りるとされています。

つまり、犯人の氏名や住所まで把握している必要はありません。

たとえば、SNSへの書き込みによる名誉毀損事件であれば、被害者が加害者のアカウントを特定した時点から告訴期間のカウントが進みます。

名誉毀損の時効は何年?

名誉毀損には刑事上の公訴時効と民事上の消滅時効があり、それぞれ異なる期間が設けられています。

  • ・公訴時効:時効完成により起訴されなくなる
  • ・消滅時効:時効完成により被害者は損害賠償請求権を失う

刑事上の公訴時効は「犯罪行為が終わったときから3年」です。

民事上の消滅時効は「損害および加害者を知ったときから3年、または、不法行為のときから20年」で完成します。

ネットの書き込みによる名誉毀損はいつまで罪に問われる?

ネットの書き込みによる名誉毀損の場合、書き込みが削除されたときから3年間は刑事上の罪に問われる可能性があります。

上述のとおり、名誉毀損罪の公訴時効は「犯罪行為が終わったときから3年」です。

そして、ネット上の書き込みが残り続けている限り、犯罪行為は続いているものとして捉えられるので、時効が進行するのは書き込みが削除されてからになります。

刑事告訴とは別に民事で訴えられることもある?

名誉毀損は、刑事告訴とは別に民事訴訟で訴えることもあります。

刑事告訴は加害者に刑罰を求める手続きですが、民事訴訟は被害者が加害者に対して損害賠償や記事の削除などを求める手続きです。

つまり、刑事告訴と民事訴訟は目的が異なるので、どちらか一方だけでなく両方を同時に進めることもできます

実際、ひとつの事件に関して、刑事裁判と民事裁判が開かれるケースも珍しくありません。

名誉毀損で刑事告訴されたときはグラディアトル法律事務所に相談を!

本記事のポイントは以下のとおりです。

  • ◆ 公然性・事実摘示性・名誉毀損性がある場合は刑事告訴される可能性がある
  • ◆ 名誉毀損は親告罪なので刑事告訴されなければ罪に問われない
  • ◆ 名誉毀損で刑事告訴された場合は被害者との示談を急ぐ
  • ◆ 名誉毀損の告訴期間は「犯人を知ってから6ヵ月」
  • ◆ 名誉毀損の公訴時効は「犯罪行為が終わったときから3年」

軽はずみに発した言葉によって、名誉毀損の罪に問われることは誰でも起こり得ます。

しかし、名誉毀損はれっきとした犯罪であり、逮捕されたり、刑罰に処されたりする可能性もあるので甘くみてはいけません。

刑事告訴による事件化のおそれがある場合は、一刻も早く弁護士に相談してください。

弁護士が早期に介入すれば、刑事告訴を阻止し、事件化する前に解決できる可能性も十分あります。

グラディアトル法律事務所では、初回無料で相談に応じています

少しでも不安に感じることがあるのなら、お気軽にご連絡ください。

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弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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