名誉毀損の逮捕率は約11%!逮捕事例や逮捕を回避するポイントを解説

名誉毀損の逮捕率は約11%!逮捕事例や逮捕を回避するポイントを解説
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弁護士 若林翔
2025年07月04日更新

「SNSで悪口を書き込んだことがバレてしまった…逮捕されてしまうのか」

「逮捕を回避するにはどうすればいいのか」

名誉毀損はれっきとした犯罪行為です。

犯行の態様や加害者の態度次第では、逮捕される可能性も十分あります

実際、名誉毀損といえる行為に及んでしまい、いつか逮捕されるのではないかと不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、名誉毀損の逮捕率や実際の逮捕事例などについて解説します。

逮捕を回避するポイントも詳しくまとめているので、ぜひ最後まで目を通してみてください。

※刑法改正により、2025年6月から懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されています。

【拘禁刑とは?】
犯罪者を刑事施設に収容し、改善更生に必要な作業を命じたり、指導したりする刑罰のこと。刑務作業は義務ではなく、受刑者の特性に応じた支援プログラムが提供される。

名誉毀損の逮捕率は約11%!在宅捜査が一般的

名誉毀損事件の逮捕率は約11%です。

名誉毀損の逮捕率は約11%

検察庁の統計によると、2023年に名誉毀損罪で加害者として特定された1,250人のうち、逮捕された人数は132人でした。(参照:2023年検察庁統計調査

名誉毀損は現行犯での逮捕が難しく、比較的軽微な事案が多いため、逮捕率が低くなっているものと考えられます。

ただし、被害が大きい場合や加害者が反省していない場合などは逮捕に至るケースもあるので、軽く考えずに、速やかに対処することが重要です。

名誉毀損で逮捕されるケースとは?

次に、名誉毀損で逮捕される要件を詳しく解説します。

名誉毀損・逮捕の要件

名誉毀損の構成要件|公然性や事実の摘示があること

名誉毀損が成立するには、「公然性」「事実摘示性」「名誉毀損性」の3つの要件をすべて満たす必要があります

要件概要
公然性があること発信した情報を不特定多数が認識できる状況にあること(SNSやインターネット掲示板への書き込み、職場での同僚の前での発言など)
事実摘示性があること具体的な事実を述べていること(「〇〇には前科がある」「〇〇は不倫している」など)※内容が事実かどうかは関係しない
名誉毀損性があること発信した情報によって、社会的評価が実際に下がっていること

たとえば、誰もが閲覧できるSNSに「〇〇は詐欺師だ」と具体的事実を書き込んだ場合、名誉毀損罪が成立する可能性は高いと考えられます。

一方、1対1のメールでの誹謗中傷や主観的な悪口などは要件を満たさないので、名誉毀損罪は基本的に成立しません。

逮捕の要件|嫌疑の相当性と逮捕の必要性があること

名誉毀損で逮捕されるのは、嫌疑の相当性と逮捕の必要性がある場合です。

要件概要
嫌疑の相当性「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があること(投稿画面のスクリーンショット、録音データ、第三者の証言など)
逮捕の必要性逃亡・証拠隠滅のおそれがあること(否認している場合や共犯者がいる場合など)

逮捕は人の自由を奪う重大な手続きなので、安易に実行されるものではありません。

ケースバイケースではあるものの、素直に罪を認めて捜査に協力する姿勢をみせれば、逮捕を回避できる可能性は十分あります。

名誉毀損で逮捕された場合に想定されるリスク

次に、名誉毀損で逮捕された場合に想定されるリスクを3つ紹介します。

名誉毀損で逮捕された場合に想定されるリスク

その後の社会生活に大きな支障が生じることを念頭に、逮捕回避に向けた対策を早急に講じるようにしましょう。

刑罰に処される可能性がある

名誉毀損で逮捕され、裁判で有罪になると刑罰に処されます。

名誉毀損罪の刑罰は「3年以下の懲役もしくは禁錮(拘禁刑)または50万円以下の罰金」です。

最悪の場合は、拘禁刑に処されて刑務所に収容される可能性もゼロではありません。

また、有罪判決が下されると、前科がつく点も注意が必要です。

前科があると就職・転職活動で不利になったり、職業の制限を受けたりと、さまざまな不利益が生じることになります。

家族や会社にバレるおそれがある

名誉毀損で逮捕されると、事件を起こしたことが家族や会社に知られる可能性が高くなります。

詳しくは後述しますが、逮捕後は最大23日間に渡って身柄拘束を受けます

その間は家にも帰れず、出勤もできないので、事件を隠し通すことは難しいでしょう。

なお、逮捕されたからといって、直ちに家族や会社に連絡がいくわけではありません。

逮捕後すぐに釈放してもらうことができれば、誰にも知られず事件を解決できるケースもあります。

実名報道されることも多い

実名報道されやすくなることも、逮捕された場合に懸念されるポイントのひとつです。

特に社会的関心が高い事件を起こした場合や、加害者の社会的地位が高い場合などは、実名報道される傾向にあります。

逮捕直後または検察に送致されるタイミングで報道されるケースが一般的です。

なお、実名報道するかどうかは、報道機関の判断に任されています。

実名報道しないように要望することは可能ですが、確実に止める方法はありません。

名誉毀損の逮捕事例・ニュース

次に、名誉毀損の逮捕事例・ニュースを3つ紹介します。

名誉毀損の逮捕事例・ニュース

SNSで特定企業の評判を傷つける内容を投稿した

まず紹介するのは、以前勤務していた会社の害になるようなSNS投稿をして逮捕された事例です。

【事案概要】

長岡警察署は3月3日、大阪市西成区鶴見橋在住で無職の男性(52歳)を15時35分に、同住所の妻で無職の女性(51歳)を12時49分に、それぞれ名誉毀損の疑いで逮捕した。2人は共謀の上、2022年5月19日頃、不特定多数の者が閲覧できるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)において、長岡市の企業の評判を傷つける内容を公開投稿し、名誉を毀損した疑いがもたれている。この事件は、被害を受けた会社からの届出により警察が認知。この会社は女性容疑者が以前勤務していたという。調べによると、2人は会社の業務に関して、害になるような主張をSNSで吹聴する行為を行ったとされている。

(引用:にいがた経済新聞)

本事案のように、SNSへの不用意な投稿によって名誉毀損罪で逮捕されるケースは後を絶ちません

会社に対する名誉毀損は無視されることも多いですが、経済的な損害が生じた場合などは刑事告訴され逮捕に至る可能性も十分あります。

インターネットサイトへの書き込みで同僚や会社を中傷した

次に紹介するのは、以前勤めていた会社の系列会社や元同僚をインターネットサイトで中傷し、名誉毀損罪で逮捕された事例です。

【事案概要】

名誉毀損の疑いで逮捕されたのは、熊本市東区東本町(ひがしほんまち)に住む会社員の男(28)です。男は2023年12月5日と12月21日に、以前に勤務していた会社の40代の元同僚と、熊本県益城町にあるその会社の系列会社を中傷する内容をインターネットサイトに書き込んだ疑いが持たれています。警察によりますと、男は元同僚について「仕事の態度がだらしなく、親会社を出入り禁止になっている」また系列会社については「社内のパワハラや暴力をもみ消している」といった内容を書き込んでいました。

(引用:熊本放送)

なお、逮捕された男性は具体的な事実を挙げて投稿していますが、その内容が事実かどうかは名誉毀損罪の成立可否に関係しません。

社会的評価の低下につながるものであれば、真実でも作り話でも、名誉毀損罪は成立し得ます。

女性を犯罪者と決めつけて詰め寄る様子を動画サイトに投稿した

最後に紹介するのは、私人逮捕系YouTuberが女性を転売ヤーと決めつけて詰め寄る動画を投稿し、逮捕された事例です。

【事案概要】

「私人逮捕系」などと称するユーチューバーの男(40)が投稿動画で女性の名誉を傷つけたとして名誉毀損容疑で逮捕された。他人の行為を犯罪と決めつけて拘束する動画は近年、SNS上で目立つ。専門家は「私人逮捕が許される状況は限定的。行きすぎた投稿は罪に問われうる」と警鐘を鳴らす。警視庁に13日逮捕された男は「〇〇」と名乗り、ユーチューバーとして活動していた。興行チケットの転売に関わったなどとして、10代の女性に詰め寄る様子を投稿し、女性の名誉を毀損した疑いが持たれている。動画では「転売ヤー」などと字幕が付けられていたという。捜査関係者によると、女性がチケットの転売に関わった事実は確認されていない。

(引用:日本経済新聞)

動画では顔にモザイクすらかけられておらず、しっかりと容姿を確認できる状態だったようです。

動画公開後、被害女性が警察に相談したことで犯行が発覚しました。

名誉毀損で逮捕されたあとの流れ

ここでは、名誉毀損で逮捕されたあとの流れを詳しくみていきましょう。

名誉毀損で逮捕されたあとの流れ

警察の取り調べ・送致|最大48時間

名誉毀損で逮捕されると、警察の取り調べを受けます。

警察署の留置施設などで、事件当時の状況や動機などについて詳しく聞き取られることになるでしょう。

そして、48時間以内に検察に送致されるか、釈放されるかが決定します。

ただし、一度逮捕されている以上、簡単には釈放してもらえないため、よほどの事情がない限りは送致されるものと考えておきましょう。

なお、取り調べ中は、弁護士以外との面会や外部との連絡が原則として制限されます。

検察の取り調べ|最大24時間

検察に送致されると、今度は検察官による取り調べを受けなければなりません。

検察官は警察の捜査資料をもとに、さらなる証拠収集や被疑者への聞き取りなどを進めます。

そして、24時間以内に被疑者を釈放するか、裁判官に勾留請求をおこない、引き続き身柄拘束するかを判断します。

とはいえ、多くの事件では勾留請求がなされており、裁判官が却下することも基本的にはありません。

勾留|最大20日間

勾留が決定すると、原則10日間の身柄拘束を受けることになります。

捜査が十分に進んでいない場合などは、さらに10日間延長されることもあります。

つまり、勾留決定後は、最大20日間にわたって自由が制限されることになるのです。

なお、勾留中は留置施設で取り調べが続きますが、家族や弁護士との面会は認められています。

起訴・不起訴の判断|逮捕後23日以内

勾留期間が終わるまでに、検察官は起訴または不起訴の判断を下します。

不起訴処分になれば、その時点で釈放され、今後罪に問われることもありません。

一方、起訴された場合は刑事裁判に移します。

ただし、名誉毀損事件では略式起訴が選択され、書面審理のみで罰金刑が確定するケースも珍しくありません。

刑事裁判|起訴後1~2ヵ月程度

名誉毀損の罪で起訴されると、通常1~2ヵ月後に刑事裁判が開かれます。

初公判で被告人の身元確認や起訴状朗読、罪状認否がおこなわれたのち、本格的な審理が始まります。

被告人が罪を認めている場合は、1回目の裁判で審理が終了し、2回目に判決を言い渡されるケースが一般的です。

通常のスケジュールであれば、初公判から2週間程度で裁判が終了します。

事実関係に争いがある場合は、何度も審理を繰り返すため、判決までに1年以上かかることも少なくありません。

名誉毀損での逮捕を回避するためのポイント

次に、名誉毀損での逮捕を回避するためのポイントを3つ解説します。

名誉毀損での逮捕を回避するためのポイント

被害者と示談を成立させる

名誉毀損での逮捕を回避するためには、被害者との示談が極めて重要です。

名誉毀損は親告罪であり、被害者が刑事告訴しなければ原則として警察は動きません

つまり、被害者と早期に示談を成立させ、刑事告訴を食い止めることができれば逮捕を回避できます。

ただし、加害者が直接示談を申し入れても、まともに対応してもらえるとは考えにくいです。

足元をみられて、高額な示談金を請求されるリスクもあります。

そのため、示談交渉に踏み切る際には、弁護士を代理人に立てるのが賢明な判断といえるでしょう。

自首を検討する

名誉毀損で逮捕を回避したい場合は、自首することも選択肢のひとつに入れておきましょう。

自首して反省の態度を示すことで、逃亡や証拠隠滅のおそれが少ないと判断され、在宅事件として捜査を進めてもらいやすくなります

また、不起訴処分や刑罰の軽減につながることも自首のメリットです。

ただし、自首した場合でも、事件の内容次第では逮捕されることもあります。

加害者にとって自首はリスクのある選択になるので、事前に弁護士からアドバイスをもらっておくことが大切です。

自首する際には、弁護士に同行してもらうのもよいでしょう。

刑事事件が得意な弁護士に相談する

名誉毀損での逮捕を回避したいのであれば、できるだけ早い段階で、刑事事件が得意な弁護士に相談してください。

弁護士に相談・依頼すれば、逮捕回避に向けて以下のようなサポートをおこなってくれます

弁護士から受けられる主なサポート内容

弁護士が介入するかどうかで、その後の刑事処分は大きく変わってくることを覚えておきましょう。

グラディアトル法律事務所は、名誉毀損事件をはじめ、刑事事件全般を得意とする法律事務所です。

経験豊富な弁護士が24時間・365日体制で相談に応じているので、少しでも不安があるなら迷わずご相談ください。

名誉毀損の逮捕に関してよくある質問

最後に、名誉毀損の逮捕に関してよくある質問に回答します。

名誉毀損の逮捕に関してよくある質問

名誉毀損で逮捕され得る期間は?

名誉毀損で逮捕され得る期間は「犯罪が終わったときから3年」です。

公訴時効の3年が経過すると、その犯罪に関して起訴されなくなるため、逮捕されることもありません。

なお、ネット上での名誉毀損行為に関しては、投稿した内容が削除されてから3年後に時効が成立する点に注意してください。

また、名誉毀損罪には「犯人を知ってから6ヵ月」の刑事告訴期間が存在します。

刑事告訴期間が経過すると捜査機関は動かなくなるので、逮捕される心配もなくなります。

名誉毀損で逮捕されると懲役(拘禁刑)になることもある?

名誉毀損で逮捕されると、懲役(拘禁刑)になる可能性があります

名誉毀損罪の刑罰は「3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金」です。

多くの場合は罰金刑で済みますが、犯行の悪質性が高い場合や加害者に反省の態度が見えない場合などは懲役(拘禁刑)になることもあります。

まとめ

本記事のポイントは以下のとおりです。

  • ◆ 名誉毀損の逮捕率は約11%
  • ◆ 逮捕されると刑罰に処されたり、実名報道されたりするリスクがある
  • ◆ 逮捕されると最大23日間にわたる身柄拘束を受ける
  • ◆ 逮捕を回避するには被害者との示談が重要

犯罪全体でみると、名誉毀損罪の逮捕率は低い水準にあります。

しかし、逮捕されるかどうかは、あくまでも個別に判断されるものです。

そのため、少しでも逮捕の可能性を抑えたいのであれば、弁護士のサポートを得たうえで、個々のケースに応じた対策を講じることが重要です。

グラディアトル法律事務所では、初回相談を無料で受け付けています。

緊急を要する事件では即日の対応も可能なので、困ったときはいつでもご連絡ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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