「危険運転致死傷罪で有罪になった場合の量刑はどのくらい?」
「危険運転致死傷罪の量刑に影響を与える事情には何がある?」
「危険運転致死傷罪の量刑を軽くするためのポイントを知りたい」
危険運転致死傷罪は、飲酒運転やあおり運転、極端な速度超過など、悪質かつ危険な運転によって人を死傷させた場合に問われる重大な犯罪です。交通犯罪の中でも特に厳しい刑罰が科される罪であり、「初犯でも実刑になるのか」「執行猶予はつくのか」「量刑はどの程度になるのか」といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
実際のところ、危険運転致死傷罪の量刑は一律ではなく、事故の内容や被害者の被害程度、過去の前科前歴、示談の有無、被告人の反省態度など、さまざまな事情によって決まります。負傷事故であれば執行猶予が付く可能性もありますが、死亡事故となると実刑判決が下されるケースも少なくありません。
本記事では、
・危険運転致死傷罪における量刑相場や執行猶予が付く可能性 ・危険運転致死傷罪の量刑に影響を与える具体的な事情 ・危険運転致死傷罪の量刑を軽減するために行うべき対策 |
などについて詳しく解説します。
危険運転致死傷罪で逮捕・起訴された方やご家族が今後どのように対応すべきかを判断するための参考として、ぜひ最後までご覧ください。
目次
危険運転致死傷罪の量刑相場

危険運転致死傷罪の法定刑は、致傷の場合で最長15年、致死の場合には最長20年の懲役(拘禁刑)です。しかし、実際に裁判で言い渡される刑期(量刑)にはある程度の傾向があり、過去の統計をもとに一定の「相場」を把握することが可能です。
以下では、令和6年版の犯罪白書をもとに、危険運転致傷罪および危険運転致死罪それぞれの量刑相場を見ていきます。
危険運転致傷罪の場合|懲役・禁錮(拘禁刑)1~3年程度
危険運転によって他人に傷害を負わせた場合は、「危険運転致傷罪」として処罰されます。犯罪白書によると、危険運転致傷罪で有罪となった事件では、おおむね懲役1年から3年程度の刑期が多くなっています。
ただし、飲酒運転や無免許運転など、危険運転の内容が悪質であればあるほど重い刑が下される傾向にあります。また、被害者が重傷を負った場合や複数人が負傷したケースでは、相場よりも刑期が伸びることもあります。
危険運転致死罪の場合|懲役・禁錮(拘禁刑)3~10年程度
危険運転により被害者が死亡した場合には「危険運転致死罪」となり、より重い刑罰が科されます。犯罪白書によれば、危険運転致死罪の量刑はおおむね懲役3年~10年程度が相場となっています。
特に、飲酒や薬物の影響下での運転、極端な速度超過、悪質なあおり運転などがある場合は、実刑かつ長期の懲役刑が選択される傾向があります。また、前科がある場合や反省の態度が見られない場合には、より重い量刑が科されることもあります。
なお、危険運転致死罪で執行猶予が付いた事件は32件中1件のみ(約3%)ですので、ほとんどのケースで実刑となるのが現状です。
危険運転致死傷罪で執行猶予はつく?
危険運転致死傷罪は、通常の交通事故とは異なり、故意に近い悪質な運転行為が原因とされるため、量刑も重くなる傾向があります。しかし、すべてのケースで実刑が確定するわけではなく、一定の条件を満たせば執行猶予がつく可能性もあります。以下では、致傷罪・致死罪それぞれについて、執行猶予の判断傾向を見ていきましょう。
危険運転致傷罪は執行猶予の可能性あり
令和6年版の犯罪白書によると、危険運転致傷罪で有罪判決となった事件のうち、約89.1%の事件で執行猶予が付いています。
このことから危険運転致傷罪の事案であれば、執行猶予の可能性が高いといえるでしょう。
なお、飲酒や無免許運転があったとしても、情状が特に有利と認められれば、執行猶予が付される可能性もゼロではありませんので、事故後の行動が重要になります。
危険運転致死罪は原則実刑
危険運転致死罪において執行猶予が付くケースは非常に少なく、有罪判決を受けた者の約96.9%が実刑判決となっています。特に、死亡事故に至った原因が飲酒・薬物・あおり運転・極端な速度超過といった悪質な運転である場合、執行猶予が認められる可能性はほぼないと考えてよいでしょう。
執行猶予が付く可能性があるとすれば、例えば過失の程度が限定的である、被害者遺族との間で真摯な謝罪と高額な示談が成立している、被告人が若年で初犯かつ社会復帰の見込みが高いなど、非常に特殊な事情がある場合に限られます。
執行猶予の判断は情状次第
執行猶予が認められるかどうかは、事故の態様や被害の深刻さだけでなく、事故後の対応、謝罪や示談の有無、再犯防止への取り組みなどが重視されます。
そのため、危険運転致死傷罪で少しでも軽い処分を目指すためには、早期に弁護士に相談し、適切な対応と情状立証を進めることが極めて重要です。
危険運転致死傷罪の量刑に影響を与える5つの事情

危険運転致死傷罪における量刑は、法律上の上限が定められているものの、実際の刑期は事件ごとの事情によって大きく変わります。以下では、量刑判断に影響を与える主な5つの事情について説明します。
被害結果の程度(被害者の怪我の程度または死亡、被害者の人数)
まず、量刑にもっとも直接的な影響を与えるのが「被害の結果」です。単なる軽傷と重度の障害、あるいは死亡とでは、刑の重さがまったく異なります。たとえば、被害者が死亡した場合は危険運転致死罪となり、刑期は長期化する傾向にあります。
また、複数人が被害を受けたケースや被害者に重大な後遺症が残ったケースでは、さらに重い処分となる可能性が高いです。
事故態様の悪質性(飲酒、無免許、あおり、速度超過など)
次に重視されるのが「運転行為の悪質性」です。飲酒運転、薬物使用、無免許運転、極端な速度超過、あおり運転などがあると、「社会的危険性が高い」と判断され、より重い量刑が科される傾向にあります。
特に近年は、悪質な運転による重大事故への社会的関心が高まっており、こうしたケースでは実刑率が上昇しているのが実情です。
被害者との示談
被害者やその遺族と示談が成立しているかどうかも、量刑に大きな影響を与える事情の一つです。示談が成立すれば、被害者側の処罰感情が和らいでいると判断され、情状酌量の材料となります。
加えて、示談の中で誠意ある謝罪や賠償が行われていれば、被告人の反省の姿勢を裏付ける要素ともなります。
前科前歴の有無
被告人に過去の前科や交通違反歴がある場合、それが不利に働くこともあります。特に、過去にも飲酒運転などの危険行為で処罰された経歴がある場合、「再犯のリスクが高い」とみなされ、重い処分を受ける可能性が高まります。
一方で、今回の事故が初犯であり、交通違反歴も軽微であるような場合は、量刑判断において有利な情状として考慮されることがあります。
本人の反省(事故後の対応、被害者への謝罪、反省の態度など)
事故後にどのような対応を取ったか、被害者への謝罪を行っているか、裁判で真摯に反省しているかといった「反省の態度」も、量刑に大きな影響を与えます。反省の姿勢が明確に示されている場合は、一定の減軽理由として認められる可能性があります。
反対に、事故後に逃走したり、責任を否認し続ける態度を取っていた場合は、反省の意思がないと判断され、より厳しい量刑となるおそれがあります。
危険運転致死傷罪の量刑を軽くするためのポイント

危険運転致死傷罪は、厳罰化の流れの中で重い刑罰が科されやすい犯罪ですが、状況によっては量刑を軽くできる余地もあります。以下では、量刑を軽くするために有効な3つのポイントを紹介します。
危険運転致死傷罪の適用を争う
危険運転致死傷罪は、極めて悪質な運転があったときに限って適用される犯罪であり、その立証には高いハードルがあります。そのため、実際の事案では過失運転致死傷罪の範囲にとどまるケースも少なくありません。
たとえば、「飲酒運転ではあったが正常な運転能力を失っていなかった」「速度超過が一時的だった」など、構成要件を満たさない可能性がある場合は、危険運転ではなく過失運転として争うことで、量刑を大きく軽減できることがあります。
被害者に謝罪して示談を行う
被害者や遺族に対する謝罪と示談は、量刑軽減において極めて重要です。誠実な謝罪と賠償を通じて、被害感情がやわらぎ、被告人の反省の姿勢が裁判所に伝われば、執行猶予や刑の減軽の判断につながる可能性が高くなります。
特に、死亡事故の場合、被害者遺族との信頼関係を築くことは簡単ではありませんが、弁護士を通じて慎重に交渉を進めることで、前向きな結果を得られるケースもあります。
再犯防止に向けた取り組みを行う
裁判所は「今後同じ過ちを繰り返さないか」という観点も重視します。したがって、再犯防止に向けた具体的な取り組みを行うことは、量刑を軽くする上で有効です。
たとえば、以下のような行動が再犯防止に向けた取り組みとして効果的です。
・自主的に運転免許を返納する |
・車両を処分し、今後運転しない旨を誓約する |
・飲酒運転が原因の場合はアルコール依存症の治療やカウンセリングを受ける |
・交通安全教育を自主的に受講する |
こうした行動があれば、単なる言い訳ではなく、具体的な反省と再発防止の意思があることを裁判所に示す証拠となります。
危険運転致死傷罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください
危険運転致死傷罪は、刑罰が重く、社会的な注目度も高いため、早期かつ的確な弁護活動が不可欠です。特に、危険運転か過失運転かの区別や量刑の軽減、被害者との示談交渉などは、一般の方が自力で対応するには限界があります。そのため、一刻も早く刑事弁護に強い弁護士に相談することが重要です。
グラディアトル法律事務所では、危険運転致死傷罪に関する多数の弁護実績があり、初動対応から裁判対策まで一貫してサポートいたします。たとえば、「本当に危険運転に該当するのか」「過失運転致死傷との境界線はどうなのか」といった法的な争点についても、刑事事件に精通した弁護士が徹底的に調査し、より軽い罪への切り替えを目指します。
また、被害者や遺族との示談交渉も、経験ある弁護士が丁寧に対応いたします。謝罪や賠償の意向があっても、当事者同士では感情的な対立が深まりやすく、交渉がこじれるケースも少なくありません。当事務所では、被害者側の心情にも配慮した対応を心がけ、適切な条件での示談成立をサポートします。
「実刑を避けたい」「執行猶予を目指したい」とお考えの方は、ぜひ一度、グラディアトル法律事務所にご相談ください。刑事事件における確かな経験と実績をもとに、あなたにとって最良の結果を導くため全力で対応いたします。
まとめ
危険運転致死傷罪は、事故の態様や被害の程度によって量刑が大きく異なり、悪質なケースでは実刑判決となる可能性が高い罪です。しかし、執行猶予が認められる事例もあり、適切な弁護活動や真摯な対応によって、量刑を軽くできる可能性もあります。
特に、適用条文の精査や被害者との示談交渉、再犯防止の取り組みは、裁判所の心証に大きな影響を与えるポイントです。危険運転致死傷罪でお悩みの方は、早期に弁護士へ相談し、今後の対応を一緒に考えていくことが重要です。
グラディアトル法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が最善の結果を目指して対応いたします。まずはお気軽にご相談ください。