傷害罪の初犯での刑罰とは?不起訴処分を獲得するポイントを解説

傷害罪の初犯での刑罰と不起訴になるためのポイントを解説
弁護士 若林翔
2024年04月20日更新

 「傷害罪の初犯ではどのような刑罰が一般的なのか?」

「傷害罪の初犯でも逮捕や起訴されることはあるの?」

「傷害罪で前科を回避するにはどのような方法があるの?」

初犯とは、これまで一度も刑事事件で有罪判決を受けたことがない人が罪を犯すことをいいます。傷害罪は、他人に怪我をさせてしまった場合に成立する犯罪ですので、喧嘩などが原因で誰でも傷害罪を犯してしまう可能性があります。

傷害罪の初犯の場合には、罰金刑が一般的ですが、事案によっては懲役刑が科される可能性もあります。このような刑罰を回避するためには、被害者と早期に示談をして不起訴処分を獲得することが重要です。

本記事では、

  • 統計からみる傷害罪の初犯の量刑相場
  • 傷害罪の初犯で懲役刑になるケース
  • 初犯以外に傷害罪の量刑を判断する要素

などについてわかりやすく解説します。

被害者との示談交渉にあたっては、弁護士のサポートが不可欠になりますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

 

傷害罪の初犯は罰金か不起訴の可能性が高い

傷害罪の初犯は罰金か不起訴になる可能性が高い

傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています。では、傷害罪の初犯の場合には、どのような刑罰が一般的なのでしょうか。以下では、法務省が公表している「令和5年版犯罪白書」に基づいて、傷害罪の初犯の量刑相場を紹介します。

 

傷害罪の初犯の不起訴率は約80%

令和5年版犯罪白書によると、令和4年中に全国の検察庁で処理された傷害事件は、1万8648件で、そのうち起訴されたものが5429件不起訴となったものが1万1535件、家庭裁判所送致となったものが1654件でした。

これらの統計からみると、傷害罪の不起訴率は、約62%ということになります。

令和4年の検察庁既済事件の身柄状況
引用:「令和5年版 犯罪白書 2-2-3-2表 検察庁既済事件の身柄状況(罪名別)」

 

犯罪白書の罪名別起訴人員中の有前科者の人員
引用:「令和5年版犯罪白書5-2-1表 起訴人員中の有前科者の人員・有前科者率(罪名別)」

 

傷害罪の初犯の不起訴率に関するデータはありませんが、傷害罪で起訴された人員(5429人)のうち、有前科者の人員は、2223人でしたので、その数字から推計すると、傷害罪の初犯の不起訴率は、約80%ということになります。

ただし、傷害罪の初犯の不起訴率は、あくまでも推計ですので正確な数字ではない点に注意が必要です。

 

傷害罪の初犯は起訴されても罰金刑が多い

通常第一審における終局処理人員
引用:「令和5年版犯罪白書2-3-3-1表 通常第一審における終局処理人員(罪名別、裁判内容別)」

 

傷害罪で起訴された事件の総数は、公判請求が2042件、略式請求が3387件の合計5429件でした。公判請求とは通常の刑事裁判の手続きで、略式請求は書面審理だけの簡易な裁判手続きです。

公判請求となった事案のうち、懲役刑が科されたものが1796件罰金刑が科されたものが341件ありましたので、傷害罪で起訴された事件では、懲役刑が約32%、罰金刑が約68%となります。そのため、傷害罪の刑罰としては、罰金刑が選択されるのが一般的だといえます。

一般的に再犯よりも初犯の方が刑罰が軽くなりますので、傷害罪の初犯は、起訴されたとしても罰金刑が多いといえるでしょう。

 

傷害罪の初犯の罰金は略式命令が多い

傷害罪で起訴された場合に罰金刑が科されるパターンとしては、公判請求による罰金刑と略式命令による罰金刑の2つのパターンがあります。公判請求による罰金刑が一般的な裁判で罰金刑が科されるパターンで、略式命令による罰金刑は書面審理のみの簡易な手続きで罰金刑が科されるパターンです。

令和5年版犯罪白書によると、公判請求により罰金刑が科された事件は341件、略式命令により罰金刑が科された事件は、3387件と圧倒的に略式命令によるものが多いです。

そのため、傷害罪の初犯の罰金刑についても、略式命令によることが多いといえるでしょう。

 

傷害罪の初犯で懲役刑となる場合とは?

傷害罪の初犯で懲役刑となるケース

傷害罪の初犯で懲役刑となるのはどのようなケースでしょうか。以下では、傷害罪の初犯で懲役刑が科される代表的なケースを紹介します。

 

犯行態様が悪質なケース

傷害罪の初犯は、罰金刑が科されるケースが多いですが、犯行態様が悪質なケースでは、初犯でも懲役刑が科される可能性があります。

傷害罪の犯行態様にはさまざまなものがありますが、平手で1回肩を叩いたようなケースでは、悪質性が低いといえますが、以下のケースは犯行態様が悪質と判断されます。

  • 複数回執拗に殴る蹴るの暴行を繰り返す
  • 夜間に背後から襲い、相手の反抗を許さない
  • ナイフで顔面を切りつける行為
  • 素手の相手に対して、バットなどの武器で応戦する

 

被害者に重大な結果が生じたケース

傷害罪の量刑では、被害者に生じた結果の程度も考慮されます。初犯であり、被害者に生じた結果が軽微であれば、不起訴処分または罰金の可能性もあります。しかし、被害者に以下のような重大な傷害結果を生じさせた場合には、初犯であっても懲役刑となる可能性があります。

  • 被害者に後遺障害が残ってしまった
  • 顔に一生残るような傷跡を負わせた
  • 長期間の入通院を余儀なくさせるような怪我を負わせた
  • 何度も手術を繰り返すような怪我を負わせた

 

複数の余罪があるケース

余罪とは、いまだ捜査対象となっていない、または起訴されていない罪のことをいいます。傷害罪の初犯であっても、複数の余罪があるようなケースでは、罰金刑ではなく懲役刑が科される可能性があります。ここでいう余罪には、同じ傷害罪の余罪だけではなく、窃盗や詐欺といった別の余罪も含みます。

余罪の有無は、本罪である傷害罪の捜査中に関係者への聞き込みなどを行う中で余罪の存在が明らかになったり、取り調べ中に被疑者本人が自白することで余罪が発覚することがあります。

複数の余罪も併せて起訴された場合、「併合罪」として扱われますので、重い刑の法定刑の長期を1.5倍したものが法定刑の上限になります。すなわち、傷害罪単独で起訴された場合よりも重い刑罰が科される点に注意が必要です。

 

傷害罪の初犯は懲役刑になっても執行猶予になる可能性が高い

傷害罪の初犯で懲役刑になった場合は執行猶予になる可能性が高い

令和5年版犯罪白書」では、地方裁判所における死刑・懲役、禁錮の科刑状況(罪名別)の統計資料がまとめられています。それによると、傷害罪で公判請求された場合の懲役刑の実刑と執行猶予の割合は、以下のようになっています。

なお、実刑と執行猶予は、有罪判決という点で共通しています。しかし、実刑になると判決確定後直ちに刑務所に収容されますが、執行猶予であれば刑の執行が一定期間猶予されるため、直ちに刑務所に収容されることはありません。

傷害罪の懲役刑と執行猶予の割合

このグラフからわかるように、傷害罪で公判請求されたとしても約6割の事件が執行猶予となっています。ここには、前科がある人も含まれていますので、初犯に限ってみれば、さらに高い割合で執行猶予が付くといえるでしょう。

 

傷害罪において「初犯」は減軽要素となる

傷害罪において初犯は減刑要素

傷害罪の量刑を決める際には、以下のような要素を踏まえて判断しています。

  • 犯行態様の悪質性
  • 犯罪の動機
  • 犯罪結果の重大性
  • 前科前歴の有無
  • 被害者の処罰感情
  • 被告人の反省の有無

このうち、「初犯」は刑の減軽要素となりますので、前科がある人に比べて、刑罰が軽くなる傾向にあります。

 

犯行態様の悪質性

犯行態様の悪質性は、執拗性、危険性、残忍性、反復性、巧妙性などを踏まえて総合的に判断されます。

たとえば、ナイフなどの凶器を利用、頭部や顔面への危害、執拗な暴行などの事情がある場合には、刑が加重される事情となります。他方、1回限りの暴行、素手での暴行などの事情は刑が減軽される事情となります。

 

犯罪の動機や計画性の有無

あらかじめ相手に暴行を加えることを計画して行われた犯罪や私怨を晴らすために暴行を加えた場合には、刑が加重される事情となります。

他方、被害者に挑発されて暴行を加えた場合や突発的な喧嘩については、刑が減軽される事情となります。

 

犯罪結果の重大性

傷害罪では被害者に生じた怪我の程度により、量刑が左右されます。

たとえば、重い後遺障害が生じたようなケースでは、刑が加重される事情となりますが、全治1週間程度の軽い打撲だけであれば刑が減軽される事情となります。

 

前科前歴の有無

被告人に前科・前歴がある場合には、更生の可能性が低く、再犯の可能性があるとして量刑が重くなる傾向があります。

他方、前科・前歴のない初犯であれば、更生の可能性が期待できますので、前科・前歴のある被告人に比べて、量刑が軽くなる傾向にあります。

 

被害者の処罰感情

被害者の処罰感情も刑の重さを判断する要素の一つとなります。

被害者が厳罰を希望している場合には、量刑が重くなる傾向にありますが、反対に被害者と示談が成立しており、処罰を希望しない場合には量刑が軽くなる傾向にあります。

 

被告人の反省の有無

被告人が罪を認めて、反省している場合には、量刑が軽くなる傾向があります。

被告人には黙秘権がありますので、黙秘や否認をしているだけで重く処罰されることにはなりませんが、反省がないという点で減軽を受けられない可能性はあります。

 

傷害罪の初犯で不起訴処分を獲得するには被害者との示談が重要

傷害罪の初犯で不起訴処分を獲得するには示談が重要

傷害罪を犯してしまった場合には、犯行態様や被害者に生じた結果、前科・前歴の有無という要素については、事後的に変えることはできません。しかし、被害者の処罰感情という要素については、被害者と示談をすることにより、有利な事情として扱うことが可能です。

特に、傷害罪の初犯は、罰金刑または不起訴になる可能性が高いため、被害者と示談をすることができれば、不起訴処分となる可能性をより高めることができます。

検察官により起訴されてしまえば、ほぼ確実に有罪判決となり、前科が付いてしまいます。前科が付くことにより、制限される資格や職業があったり、解雇などの社会的制裁を受けるリスクが高くなりますので、不起訴処分を獲得することが非常に重要となります。そのため、傷害罪の初犯という方は、できるだけ早く被害者との示談交渉に着手するようにしましょう。

 

傷害罪の初犯でも弁護士のサポートが必須!グラディアトル法律事務所に相談を

傷害座の初犯でも弁護士は必須、相談はグラディアトル法律事務所へ

傷害罪の初犯だからといって、何もしないと検察官より起訴されてしまう可能性もあります。不起訴処分や早期の身柄解放などの有利は処分の獲得を目指すためには、刑事事件に詳しい弁護士のサポートが必須です。

 

経験豊富な弁護士による被害者との示談交渉

傷害罪の初犯で不起訴処分を獲得するためには、被害者との示談が重要になります。

しかし、被害者の感情としては、怪我をさせられた加害者と直接交渉をすることに恐怖や嫌悪感を抱くのが通常ですので、加害者から示談のアプローチをしても、拒否されてしまうケースが多いです。無理に交渉を継続しても、被害者の感情を逆撫でする結果になりますので、示談交渉は、弁護士に任せるのがおすすめです。

弁護士が示談交渉の窓口になれば、被害者としても安心して交渉のテーブルにつくことができます。また、被害者の連絡先がわからないという事案でも、弁護士が捜査機関を通じて被害者と連絡を取ることも可能です。

早期に示談交渉に着手すれば、被害者との示談がまとまる可能性も高くなりますので、傷害事件を犯してしまったときは、早めにグラディアトル法律までご相談ください。

 

逮捕・勾留による身柄拘束からの解放

傷害事件を起こして、逃亡または罪証隠滅のおそれがある場合には、警察により逮捕される可能性があります。逮捕後も引き続き身柄拘束の必要性があると判断されれば、勾留という手続きに切り替わり、逮捕も含めると最長で23日間も身柄拘束されるおそれがあります。

長期間の身柄拘束を受けると肉体的・精神的に疲弊するだけでなく、職場を解雇されるなどの社会的制裁のリスクも高くなります。

弁護士であれば、被害者との示談交渉や捜査機関・裁判所への働きかけなどにより、逮捕・勾留からの早期身柄解放に向けて活動することができます。身柄拘束による不利益を最小限に抑えるためにも、まずは刑事事件に詳しいベリーベスト法律事務所までご相談ください。

 

初回相談無料・24時間365日全国対応

弁護士に相談をしたいけれども経済的に余裕がないという方もご安心ください。グラディアトル法律事務所では、刑事事件に関する相談については、初回相談料を無料で対応しています。弁護士への相談を躊躇して相談のタイミングを逃してしまうのは大問題ですので、まずはお早めに当事務所までご相談ください。

また、当事務所では、24時間365日全国対応をしていますので、ご依頼をいただければ、当日または翌日には、傷害事件の弁護活動をスタートすることができます。刑事事件はスピード勝負といわれていますので、早めに対応することが重要です。

傷害事件を起こしてしまったという方は、お早めに当事務所までご相談ください。

 

まとめ

傷害罪の初犯は、前科・前歴のある人に比べて、刑罰が軽くなる傾向があり、罰金刑または不起訴処分となる可能性が高いです。

傷害罪の初犯の方が不起訴処分を獲得するためには、被害者との示談を成立させることが重要になりますので、早めに弁護士に相談することが大切です。グラディアトル法律事務所では、刑事事件の経験豊富な弁護士が被害者との示談交渉のサポートをすることで有利な処分の獲得を目指すことができますので、まずは当事務所までお気軽にご相談ください。



弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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